牧師エドワードのありふれた日常   作:晴口 丸

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*「甘いものの話をしよう」

 

 

「テッドのお父様も、牧師なのですか?」

「まあ、うちのおやじのことは今関係ないでしょ。それより、早く買って帰ろう。チーナが怖い」

 

 いつにない、牧師の冷めきった態度に聖女は顔を覗き込む。それに気づいた彼はバツが悪そうに頬をかいた。

 

「悪いな、気にしないでくれ」

「そう、ですか」

 

 うつむいて隣を歩く聖女に耐え切れなくなったのか、牧師は彼女の頭に手を置く。

 

「早く行こう。シルヴィの好きな野苺のジャムもついでに買おうか」

「! はい!」

 

 無邪気に笑う聖女に牧師は安堵し、行商人の下へ向かった。

 

 

*「買い物かごの一番上」

 

 

「あ、見えました! あれが行商人さんですか?」

 

 村に広間に立派な幌馬車が停まっている。中からは恰幅のいい中年の男が数人の若者に指示しながら自らも荷下ろしを行っていた。

 

「やあロテクさん。見ないうちにいろいろと、大きくなったみたいだね」

「おお、カールマン先生! それに……噂の聖女様ですな!」

 

 行商人は二人を見るなり、肩にかかったタオルで汗を拭いて近寄ってきた。牧師はシスターから預かった財布を軽く振って見せる。

 

「チーナに言われてね。ワインと蝋燭、いつものやつを頼むよ。それと木苺のジャム、よいものを見繕ってくれ。聖女様がご所望なんだ」

「なんと! それではこちらの王都で採れた木苺のジャムはどうでしょう」

「王都……」

 

 聖女の眉尻が下がるのを見て行商人はすぐさま別の品をとりだす。

 

「ではこちらの北の里で採れた品はどうでしょうか? 甘みが強く、きっと聖女様のお口にも合うでしょう!」

「わあ……とっても美味しそうですね、テッド」

「そうだな。じゃあそれも買おう」

「毎度お買い上げ、ありがとうございます、カールマン先生。……しかし先生、このような美しい聖女様を引っ張ってくるとは、隅に置けませんな。村の方々も色めきだっておりますね。何でも、聖女様が祈ると病気にならないとか、災害に遭わないとか……」

 

 その言葉に聖女の肩がピクリと揺れる。反射的に牧師の袖口を握った。

 

「て、テッド……。あの、私……」

「分かってるよ。ロテクさん、聖女といっても一概に強い加護の力を持ってるわけじゃない。彼女の力は特に小さいから、せいぜい『何となく元気な気がする』程度だよ」

「おや、左様で? まあ、それでもかように美しい聖女様がいるというだけで、このさびれたカント村にとっては大ニュースですからねぇ」

 

 行商人は笑いながら、馬車の奥から上質なワインボトルと、白い蝋燭の束を取り出した。

 牧師は代金を払い、聖女にジャムを渡すと、まるで宝石でも受け取ったかのように目を輝かせていた。

 

「チーナにはうまいこと言っておこうな」

 

 

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