救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。 作:ゲーミング千手観音
初(じゃない)投稿です。
この回が特別なだけで、次回からはセリフも入ります。ご了承ください。
────最初は何とも無い日常だった。
暴走した車から、隣の席の女子を庇うまでは。
────意識が戻ると、家に居た。
スマホを確認してみれば、それは庇った日の早朝だった。
────まさかと思った。
そんな非現実的でラノベみたいな展開、本当に起こる訳がないと思っていた。悪夢だったに違いないと、自分に言い聞かせた。
でも夢の割には痛みとか随分とリアルな夢だったな、と思いながら。
────でも、夢じゃなかった。
────地獄が始まったのは、その日からだった。
つい先程に見た“夢”と同じ事が起こった。同じ場所、同じ時間、同じタイミングで。
その前の道から既視感は感じてた。なのに違和感を持たなかったのは、今思えば多分ただの現実逃避だったんだと思う。
その時も僕は学ばないで助けようとした。でも、この時は死への恐怖が
──そしてまた、朝に戻った。
恐怖した。それはもう、今でも思い出して涙が出て、身体中の至る所が勝手に震えるくらいには。
僕の人生であれ以上の恐怖を感じる事はもうきっと無いと思う。
痛かった。苦しかった。暗かった。怖かった。
身体中から出血して、段々と意識が遠くなって。それに比例して、体温が失われていく感覚。
体内で骨と肉がグチャグチャにミキサーされていると分かる、あの苦痛。
あんな感覚もう嫌だと、ベッドの上で号泣した。
────三回目の、同じ景色。
庇っても死んだ後にまた戻ると察していた僕は、胸を掻き毟りたくなる程の罪悪感に駆られながらも、見捨てる事にした。
せめてと思って後ろ手に“119”と入力されたスマホを持ちながら。
特段話すような仲では無かったけれど、それでも知り合いではあったから身体が勝手に助けに行こうとまた動いた。でも僕の頭が、“死にたくない”という感情がそれを阻止して、僕は中途半端な姿勢で止まった。
そうして、目の前で人が轢かれた。
先程僕もそうなっていたと思うと吐き気を催す、つい先程まで
道路の地味な灰色は、その
それと同時に、僕の意識も何故か黒く染まっていった。
────そうして目を覚ました。また戻ったんだと理解した。
何故?どうして?誰が?どういう目的で?どうして僕が?
自分可愛さに見捨てたから?現場に居合わせてしまったから?
“規定の時間”になるまで、頭がそんな思考を止めることは終ぞ無かった。
また戻るのが怖くて。知り合いの死体を見るのが怖くて。死ぬのが、怖くて。
時間になっても、僕は布団に入ったまま。
せめて今日だけでも、学校を休みたい。暫くこの安心する温かさに身を委ねて、何も考えず寝ていたい。
そう本気で思っていた。
暫く経って、車があの女子に突っ込む時間帯になった。まだ僕は布団の中で震えていた。
知り合いが死んでしまう事よりも、早く今日が、特にこの時間が終われと願うばかり。
でも、現実はなんとも残酷で。
またまた、僕の視界はブラックアウトして行った。
────四回目。
嫌でも理解してしまった。
あの子の命が無くなれば、僕はまたこの朝に戻ってくるんだ、と。
確かに、助けられる事なら助けたいとは思った。
でも、だからってこんな仕打ちは無いじゃないかって思った。カミサマを呪ったよ。
とにかく、下手に失敗したらまた
それだけは、嫌だった。
でも、当時はやるしか無いという使命感も少しだけあった。あれだけの目にあって、なのに非日常に少しワクワクしている自分も
そんな英雄気取りな自分はすぐに居なくなる事になったけど。
繰り返される苦痛の前には、そんな心すぐに無くなった。
そんな僕は、“ループが終わるその時まで、全力を持って
今でも変わらない、僕をここまで支えてくれた根っこの部分。意外と、こんなシンプルな覚悟でここまで持ったんだよ。人間って不思議だよね。
────そうして、初めてループして四回目の時から、僕は何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もループを繰り返して、この繰り返しに関しての検証をして。
検証が終われば、更に何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もまた繰り返して、
なんでか、助ける対象の人は皆女の人だったけれど。
色んな死に方もした。
その日の朝から始まるから、事前に準備しておく、なんて事は大抵の場合無理だった。
まず、さっき言ったように轢かれたりとか。
『──待って、止まって! 危な──聞こえてないッ!? ──間に合えッ!』
……この時に自分を捨てて助けなかったら、この地獄は始まってなかったのかなって、未だに考えてしまう。そう思う度に自分への嫌悪感で死にたいくらいだけど。
あ、もう何回も死んでたんだった。
…………笑うところだよ?
最初だけじゃなくて、その後のループでもそこそこの回数轢かれた。なんで人間って運転中に余所見したりお酒飲んだりするんだろうね?そのせいで何人の僕が犠牲になったと思ってるんだろう。
次に多い死因ランキング二位は……圧死かな。上からでも横からでも、取り敢えず物が飛んできて潰されたよ。
『────はっ? なんで爆発が……っ、瓦礫!? 飛んできて──危なッ────』
瓦礫とか鉄骨とか、酷い時には車とか飛んできたよ。
参ってる時は僕って車に好かれてるのかなって思ってた。後で調べてみるとさ、そういうでっかい爆発が起こっても、大体死傷者とか負傷者って0なんだ。
どう考えてもおかしいよね。
その次は……多分、同着くらいで落下死と刃物じゃないかな。
『良かった、じゃあ早くこっちに戻ってき────ッ! 風が!? 待って待って待って待ってくださいお願いしますここまで来たのに! ──せめて、せめて君が死ぬ所だけは────!!』
『────ぁ……? この慣れ親しんだ感覚、は……刺され……て……? なん、で……僕……が……? ぁ……また、か、ぁ…………』
突き落とされたり、自殺しようとしてる子の代わりになったりが落下死。
刃物は主に愉快犯系とか、通り魔とか……その辺かな?調べたらこの死因って外傷性ショックって言うらしいね。これが原因で勉強になったのは癪だけど。
その他にも、オーソドックスな所だと焼死とか溺死とか鈍器で殴打とか……とにかくありとあらゆる死に方をしたかな。
僕の死因の大体に他人が関わっているって気付いた時は、少し悲しかった。
助けようとしていた人、又は助けた人に殺される様な事は無かったのだけが唯一の救いかな、と思う。
そうやってひたすらループして一日を死に物狂いで終わらせたら、日記にその日死んだ回数を記録しておく。
メモしておくと、自分が必死にやってきた事が視覚化されてモチベーションが湧くことがあったから。
それと同時に、これだけ頑張ってもまだ終わらないという現実を突き付けられる、諸刃の剣だったけれど。
一人助けたら、僕の目の前でまた一人が死の危機に陥る悪循環。よく、前に助けたはずの同じ人がまた対象になる事もあった。
何でか、この体質?になってしまってから、そういう危機的状況によく遭遇するようになってしまっていたからか、一日の間で二人が対象になる事もあった。
一人助けても、もう一人が助からなかったら無かったことになってまたやり直し。
初めてそうなった時は、何十回とループしても部屋でボーッとするだけになってた時もあった。……絶望してたんだ。
今思い返しても、あれ程に無気力になっていた時は他に無かった。あともう一歩だっただけに、余計跳ね返ってきてたんだろうと思う。
時に死んで、時に死なせてしまって。その度に自宅で何がダメだったのかを考えて。
……たまに、外にも出ずただ泣くだけの回もあった。
死なせてしまった時は『僕のせいでまた』って、『泣いてないで行動しろよ』って、とうに枯れたはずの涙がまた出るのがセットになっていた。
何度心が壊れそうになったか分からない。いや、本当はもう壊れているけど、守る為に自分に嘘をついているだけなのかも。
……ノリで予測を立ててみたはいいけど、本当にそうなっていそうで少し怖い。大丈夫だよね?
僕はまだ正常なはず。
──とにかく。それでも、助けたい、助かりたいの一心で僕はやり通した。
僕の体内時間で言うと三年だけど、実際の経過日数で言うと一年。つまりは、現在──これを考えている、今だ。
────さて、ここまで振り返った所で。何で僕がこんなトラウマだらけの振り返りをしているのか……気になるでしょ。気になるよね?
そうだよね、うんうん。そう言うと思ったよ。
そんな君の為に教えてあげよう!今すっっっごく気分が良いからね!
……今日、僕は
……もっと言うと────
必ず毎日助ける対象が居たというのに、今はどうだろう。一日が終わりそうになっていると言うのに、そういった人は居なかった。居なかったんだ。
『そんな訳がない、何かあるはずだ』と思わなくもないけど、このループにバグのようなものが生じるとは正直考えにくい。
──今日は、現実の方の時間感覚であのループが始まって丁度一年。あの時と同じ日付。
この事に気付いたのはついさっき。
偶然とは考えにくい。……正確には、偶然だと考えたくない、だけど。
つまり、つまりだよ。
────僕は、やりきった可能性が高いんだ。
ん?
さっきって
それは、
まだ、明日になったらまた
逆に言えば、明日が終わろうとする時まで何も無かったらほぼ確定なんだよ。
多分僕は
やっと、終わるんじゃないかって。
もう人の終わりを見る瞬間も、はたまた自らの終わりを体験する瞬間も来なくなるんじゃないかって。
だからこうやって、話しちゃってるんだ。
僕の、文字通り
──ん?どうしたの?
“勢いがなんか怖い”……?
──あぁ、ごめんね。僕、今本当に浮かれちゃってるみたいでさ……ちょっとハイテンションなんだ。自分を抑えられなくて。
怖がらせちゃったならごめん。
でもさ、だって、だって、やっと終われるんだよ?
終わりの見えない苦痛から解放されたかもしれないんだよ?
親にクリスマスプレゼントを貰った時よりも、誕生日を祝ってもらった時よりも、ソシャゲの推しが単発で引けた時よりも、そして
────────何ッッッッッッ億倍も嬉しいんだよ!!!
あの時の、最初の頃に感じた恐怖とは、大きさは一緒でもベクトルは正反対。
この今の身体の震えは決して恐怖からでもないし、悲哀からでも無いんだよ。こんなの、何時ぶりだろうなって!
それに大体さ、
“何か一人で抱え込んでませんか”って、“どんな事でも受け止めるから話して”って。
責任持ってちゃんと聞いてくれないと。
乗り切ったって気付かなかったら話さなかっただろうけどね。こんな厄介ネタ、言ってなんか変なのに天罰とか喰らわされたら怖いし。
そんな訳だからごめんね、暫くはこのテンションかも。
────ん?
またまたどうしたの?
…………“じゃあ、これからどうするんです”…………?
…………あー、そうだなぁ……この先、また戻っちゃったら怖いし……“
────って、冗談冗談!
ただでさえ慣れないのに、この状況になって自分から死にに行く訳ないよ。
だから落ち着いて?
…………そうだなぁ。これから、かぁ…………
どうしようかなぁ…………?
主人公:本人は壊れてないと思いたがっているが、普通に何処か壊れている。「死のうかな?」も7割は本心。その根源たる想いは、“地獄に戻りたくない”である。
とんでもない話をされてる子:一年前、つまり地獄が始まる前の“彼”をよく知る子。その時から仲が良かった。この一年思い詰めた顔をしているのが我慢出来なくなり問い詰めに来た所、無事に頭が焼かれた。次回以降にこれまでのループの記憶を注がれるので更に焼かれる。可哀想。
面白いと思ったらお気に入り・評価をお願いします。モチベーションに繋がります。