救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。   作:ゲーミング千手観音

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次回以降に記憶が注ぎ込まれると言ったな?
あれは嘘だ。

……いやあの、本編前に予めどういう事があったのか書きたくなったっていうか……。

タイトル通り0.5話なので、次回本編開始で今度こそ更に焼かれることになります。
許してヒヤシンス。




0.5, クラスメイトの上手な焼き方

 

 

 

 

 ────初めて彼を見た時の印象は、“暗い人”だった。

 

 悪い言い方をするなら、世間的に言う“陰キャ”ってやつなのかな。

 

 

 自分から誰かに話し掛けに行くような事はせず、授業が終われば本を取り出し、一人でそれに没頭していて。昼食も一人で黙々と食べていたのを覚えてる。

 友達も居なさそうで、たまに来る一年下の後輩ちゃんくらいしか彼と話している人はいなかったと思う。

 

 私とは合わなそうだし、これからも関わる事も無いんだろうって、そう思ってた。

 

 

 

 ────彼に命を助けて貰うまでは。

 

 

 

 ある日いつも通りに通学路を歩いている時、暴走した車が信号を無視して突っ込んできた事があった。

 

 朝に弱い私はぼーっとしていて、気付いた時にはもう自分ではどうしようも無い距離まで車が迫ってたんだ。

 

 

 その時の時間の進み方は、相当遅く感じてた。

 

 あぁ、私ってここで死ぬんだな〜って半ば諦めてたその時、私の体が強い力で引っ張られてギリギリで車に轢かれずに済んだ。

 

 何が起こったのか一瞬理解出来なくて引っ張られた方向を向いてみたら……いつも全然他人と関わろうとしない彼が、私の手を掴んでくれているのが見えた。

 誰が助けてくれたのかなんて、一目瞭然だった。

 

 

 私を助けてくれた彼は、その後すぐに「次からは気を付けて歩いてね」とだけ言い残してフラフラと学校に向かって行った。

 死にかけた恐怖で未だに放心状態だった私は、お礼も言えないままそこに取り残されてた。

 

 なんですぐにお礼を言わなかったのって、もう数え切れないくらい後悔してきた。

 

 

 その日から私はなんとか彼にお礼を言おうと思って行動したけど、結局恥ずかしいやらなんやらでタイミングを逃し続けた。

 それに加えて、彼本人から話を聞いたのか彼と唯一関わりがあった例の後輩ちゃんが私に威嚇してくるから、余計にいつ言えばいいか分からなかった。

 

 きっと、彼を危険に巻き込んでしまったから威嚇されていたんだなって。

 今ではなんとか仲直りしてるけど、恥ずかしがらないでもっと早くに謝れてればもっと仲良くなれてたかも知れないって思うと、後悔してもし切れない。

 

 後輩ちゃんが一緒じゃない時は、教室でほんの少しだけ話す事は出来てたんだから、そこで謝ればよかったのに。

 結局の所、悪いのは全部意気地のない私なのだ。

 

 

 ────結局言えたのは、彼に助けて貰ってから1ヶ月後。

 学校行事である文化祭の時に、周りの目が無い場所でいつからか自由な時は彼に引っ付いて離れなくなっていた後輩ちゃんにも纏めてお礼と謝罪をした。

 

 

 久しぶりにマトモに見た彼の顔は、助けてもらったあの時よりもかなり酷い事になっていた。

 

 目の下には黒く大きい隈がこれでもかと主張していて、立っているだけでふらふらとしていて覚束無い足取りだった。

 

 

 彼はそんな様子なのにも関わらず「気にしていない」と言ってくれた。けど、彼のその今にも消えてしまいそうな様子を見て思わず聞いてしまったんだ。

 「なら、どうしてそんな様子なんですか?」って。

 もし私のせいでそんな事になってるんだとしたら、私の方が気にしてしまう。だから、つい。

 

 でも理由は話してくれなかった。

 聞いた時に凄く苦しそうな顔をしていたから、きっと思い出すのもとても辛いナニカがあったんだ。

 だから深く聞いちゃダメだなと思って、その場では何でもないと誤魔化した。

 

 彼はフラフラと危うい足取りで離れて行って、後輩ちゃんと私はその後二人きりに。

 彼の事をこんなに大事に想っている彼女になら何かわかるんじゃないかと思ってコッソリ理由を聞いてみたけれど……まぁ、やっぱりダメで。

 

 後輩ちゃん相手でもさっきの苦しそうな顔をして、そのままなぁなぁで話が流れてしまうからまだ聞けていない……と。

 日に日に弱っていく彼が見ていられなくてずっと傍にいるけど、私が近くに居ない時に傷付いて来る、と言っていた。

 

 

 翌日から、彼の様子が気がかりではあるけれど、私の中での一区切りは着いた……と思ったから、頑張って日常会話もするようにして、その頻度も段々と増やしていく事にした。

 

 話してみれば結構話しやすい人で、彼との会話はテンポが心地よく感じるし、なんと言ってもどんなに自分が疲れていても気遣ってくれるその優しさに、気付けばわたしは徐々に夢中になっていった。

 それと同時に心配も増えていく事になったけれど、私に出来るのは彼が自分から話してくれるのを待つ事だけ。そう思ってたから、時間が解決してくれる事を祈って私は日常を過ごして行った。

 

 

 

 

 ──────今にして思えば、もう少し強引に聞き出すべきだった。

 

 

 私は彼のことを気遣っているように見えて、その実彼の底が見えない優しさの沼浸かりきって甘えてただけだった。

 

 

 

 

 助けて貰ってから、早一年。

 

 「もう限界です。強引にでも先輩に話を聞いてきます」と、年下相手なのに思わず後ずさってしまうような圧を出しながら彼の家に突撃して行った後輩ちゃんから、暫くして「助けてください」の一言だけ連絡が来た。

 

 

 それを見た私は慌ててすぐに電話を掛けて、詳しい話を聞く事に。

 

 

 そこで聞いた事は、私を深い深い後悔の渦に閉じ込めるには十分な情報だった。

 

 彼本人からやっと聞き出せたというソレは、彼を──いや、人を壊すには十分すぎる、想像を絶する体験の数々だった。

 私達が呑気に自分から言ってくれるのを……なんて思ってる間に、彼は地獄のような日々を送っていた。

 

 更に聞いていくと、“自殺願望”があると仄めかすような事も言っていたらしい。

 すぐに冗談だって訂正したみたいだけど、ここまで聞いた話を考慮すると冗談じゃない可能性が高い。実際に目の前にいた後輩ちゃんも「アレは本気でした。絶対に」って言ってたし。

 

 彼が大好きな後輩ちゃんが間違えるとは、私は今更考えられなかった。

 

 

 スマホを持っている手に、無意識に力が込められた。

 

 

 あの時、無理にでも聞き出せていれば。迷惑じゃないかなんて考えないで、放課後も定期的にメールしてあげれていれば。いや、そもそも私達が彼の手助けを出来ていれば。

 

 あの時。何故。私のせい?違う。私だけのせいじゃない。なら……私達(助けられた人達)のせい?

 

 ────そうだ。そうじゃないか。彼が酷い想いをしてきた原因は、私達じゃないか。

 

 それなら────

 

 

 通話の向こうで後輩ちゃんが何か大きい声で喋っているような気がするけど、私の意識はそっちに向くことは無かった。

 

 

 ────責任は取らなきゃ。

 

 

 

 ねぇ、“(めぐる)君”。

 

 

 

 

 お願いだから、教えて欲しいの。

 

 

 

 

 ────私は貴方を助ける為に、何をしたら良い?

 

 

 

 私、なんだってするよ?

 

 

 ────命だって────

 

 

 

 

 






“彼”改め、心灰(しんかい)(めぐる):散々ぼかされてたのに一話で名前が出た人。名前の由来は大体そのまんま。実は疲れは上手く隠せていたと思っている。厄ネタを知られたらマズいからね、仕方ないね。
 隠せてる訳ねぇだろ(豹変)

とあるクラスメイト:廻が初めて助けた子。記憶が入り込んだ際、廻が壊れ始めた運命の第一被害者だと知ってヤバい事になる。
 え?ただでさえ今の段階でこんななのに、更にヤバくなるんですか?

後輩ちゃん:前回やっべぇ話を聞かされてた子。クラスメイトちゃんといっぱい話し合って仲良くなったが、今回助けを求めた側なのに何故か助けたい人が増えた。記憶が入り込んでも正気を保てる黄金の精神を持っているが、それはそれとして病む。
 多分今作で廻の次にお労しい枠かもしれない。


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