救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。   作:ゲーミング千手観音

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評価・お気に入りありがとうございます。大変励みになっております。
いつの間にか予想の5倍以上伸びてて、書かなきゃ(使命感)という考えの元書き上げました。
正直ビビってます。

ここ好きもしてくれて良いのよ♡
……調子に乗りました、すみません。どうかブラウザバックはしないでください。




1, なんか病んでる

 

 

 その日、廻によって助けられた全ての女子達は夢を見た。

 

 人によってそのシチュエーションは様々であったが、例外なく共通している事が二つ。

 

 ────一つは廻が色々なやり方で自分を助けようとして、何回も何回も目の前で散っていく様を見せられる事。

 

 ────もう一つは、自らの死が何回も何回も繰り返され、その光景全てが主観視点で見せられる事。

 

 

 救いがあるとするならば、記憶の中での自分が死ぬ時は、あくまで死ぬ際の景色を流し込まれているだけで身体的な苦痛は感じないという事くらいか。

 

 

 ────そう、彼女達は記憶を見た。

 

 自分が助けられた際に廻が繰り返してきたループの数々。その全てが情報と悲鳴の濁流となり押し寄せる。

 頭がそれを拒否しようが、グイグイと無理矢理脳内にスペースを作って入り込む。

 

 見たくない、これ以上はやめてと願っても見せつけられるその光景によって、彼女らは理解させられる。

 これは、彼が実際に行ってきた事なのだと。これがあったから、今の私は生きているのだと。

 

 

 ────何十回という彼の犠牲の上に立っているのだ、と。

 

 ただ恩人としか理解出来ていなかった彼は、その実様々な“痛み”を歯を食いしばって耐えて、自分を助けてくれていたのだ。

 

 

 ────そうして彼が何をしてきたかを見せられた彼女らは、一体何を想うのか。

 

 

 助けられてから存在していた、廻への大小様々な感情。それに何が上乗せ……又は上書きされるのか。

 

 

 このお話は、廻にとっては地獄を超えた先にある後日譚。そして彼女らにとっては、無理矢理詰め込まれた記憶の数々に翻弄される、新たな物語(ストーリー)。もとい修羅場である。

 

 

 

 

 

 

 

 ────今、僕は希望に満ち溢れている。

 

 本当に何時ぶりだろう、ここまで気分が晴れやかなのは。

 

 

 何故ここまで気分が良いのか。それは昨日言ったように、今日何も無かったら真に僕は解放されたと認識してもいいから。

 

 地獄を見せられ続けて一年。進級した喜びだとか新鮮な気持ちだとかクラスメイトがどうだとか、そういった物を僕は噛み締める余裕すら無かった。食いしばる事は何回もあったけど。

 

 勉強はループでの無限に感じるほど膨大な量があった時間を利用して行い、テストに至ってはループを使ってたからほぼカンニングみたいな物だった。

 良くあの生活で僕は勉強もしていたなと思う。誰でもいいから褒めて欲しい、本当に。

 

 

 勉強の話はここまでにして、そろそろ学校に行く準備をしなければ。

 

 鏡を見てみれば、久しぶりにゆっくりと睡眠を取れたからか隈があまり付いていない自分と目が合う。

 

 少し前まではこの隈について聞かれたらどう言い訳をするかしか考えていなかった。まぁ、多分上手いこといったとは思うけど。

 まるで宿題をよく忘れる小学生のような生活だ。

 でも、もうそんな事はしなくて良い。

 

 自分はやったんだと実感出来る事の内の一つ。口角が上に行く事なんてもう無いと思っていたのに、まさかまた笑える時が来るとは露程にも思っていなかった。

 

 

 鞄の中身をチェックし、問題無いことを確認したら玄関へ。

 

 靴を見るに、僕が自分の姿を見て感傷に浸っている間に妹はもう家を出ていたようだ、珍しい。早く僕も行かなければ。

 自分の靴を履き、紐を結んでさぁ出るぞと扉に手をかけようとした所で僕の手が無意識に止まる。そこに見えない壁があるかのように、前に手が進む事が無い。

 

 

「……もう大丈夫、もう大丈夫なハズだから」

 

 

 堪らず自分に言い聞かせるように独り言を呟く。

 

 左手で動かなくなった右手を抑える。抑えている左手ごと右手が震えているが、数分もしたら落ち着いたのか動くようになった。

 

 

「今日は早かったな……いつもはもっとかかるのに」

 

 

 “いつも”と言ったように、()()も含めて僕のルーティーンのような物だ。あの日からずっと、外に出る時はこうなる。

 

 でも、今日はいつもよりかなり早く収まった。

 きっと僕の心に平穏が戻りつつある事の証明だと自分に言い聞かせつつも、改めて僕は“新たな一歩(かつての日常)”へと歩みを進めた。

 

 今日一日、きっと平和でありますように、と願いながら。

 

 

 

 

 

 

 特になんの問題も起きないまま、無事に教室へと着いた。いつもの癖で周りを警戒しながら歩いてたけど、時間は戻って無いし悲鳴だって聞こえなかった。第一関門は突破したと言ってもいいはず。

 

 唯一の気掛かりなのは、毎朝僕なんかの事を心配して関わってくれていた人()が、今日は居なかったこと。

 

 偶然、だよね……?

 僕の知らない所で巻き込まれてたりとかは今までのパターンだと無いはずだし、きっと大丈夫。そう、だって戻ってないんだもの。

 ……逆を言えば、つまりは普通に嫌われたって事でもあるかも知れない。そう考えた辺りで、頭を振って思考放棄(現実逃避)する。

 

 僕の自意識過剰じゃなければ、少なくとも悪いようには思ってはいないで居てくれた人達だから、今日はたまたまきっと何か事情があったんだろうと自分を納得させる。

 

 

「うん、そうだよ。そうに決まってる。……こんな事考えてるの、我ながら気持ち悪すぎ────」

 

「…………おはよう……」

 

 

 現実逃避でブツブツと心の声を漏らしている間に、その心配してくれる人の内の一人がやって来た。

 

 黒髪セミロングで、春を連想させる綺麗なピンクの瞳と、桜の髪飾りがとても良く似合っている人。

 クラスメイトにして、僕が“最初に助けた人”────“本宮(もとみや)(さく)”。

 いつも明るく振舞ってる快活な人……なハズなんだけど、今日はちょっと様子がおかしい。

 

 体の調子が悪いのかな……?などと思っていると、咲さんと目が合う。

 取り敢えず手を振ってみるけど、振り返される事は無かった。

 

 目を見開いて、ゆっくりと此方に歩いてくる咲さん。少し雰囲気が怖い。どうやら隣にある自分の席では無く、僕の方へと真っ直ぐ向かっているらしい。

 僕何かしちゃったけ?と考えていると、いつの間にか目の前に来ていた咲さんが口を開いた。

 

 

「廻君…………生き、てる? 本物? 本当に廻君……?」

「えっ……と? 本物だけど……」

 

 他のクラスメイトもなんだなんだと僕を見ている。注目されるとトラウマのうちの一つが蘇るからやめて欲しい。

 

 訳も分からないまま本物だと返すと、ペタペタと僕の顔に触れる咲さん。本当にどうしたんだろうか。

 

 

「触れる……死んでない……! ────廻君、ごめ、ごめんなさっ、わたし、貴方をッ……!」

 

 

 かと思えば、いきなり僕に謝罪して泣き出してしまった。

 ほ、本当に何!?

 

「と、取り敢えず保健室……! 歩ける? 咲さん」

「足無くなってない、廻君、歩けてる……!」

「え? どういう事!? え、えと、先生に保健室行ったって説明しておいて貰えますか!? お願いします!」

 

 僕を見ていたクラスメイト達にそれだけ言って、よく分からない事を言う咲さんと共に保健室へと向かう。

 

 

 道中でもずっと泣きっぱなしで、すれ違う人皆に目線を向けられた。人の視線には、いつまで経っても慣れる事は無いんだろうな。

 

 そうしてやっとの思いで保健室まで着く。

 先生はいなさそうだったので、一旦咲さんを座らせて話を聞くことにした。

 

 

「咲さん、落ち着いて。何も考えずゆっくり深呼吸して……そうそう、その調子。そのままそのまま…………うん、少しは落ち着いたみたいで良かった」

 

 スー、ハーと咲さんのペースでゆっくり深呼吸させてあげれば、たちまち先程までの勝手に溢れ出ていたであろう涙は落ち着きを見せた。

 僕も深呼吸にはお世話になった。あの経験が役に立ったと言えるんじゃないだろうか。……そもそもあんな経験はしたくなかったけど。

 

「ごめん、廻君……また私、迷惑かけちゃった……」

「良いよ別に、これくらい。気にしない気にしない」

 

 本当になんて事は無い、あの日々に比べたら。自分で自分の機嫌を取る事の難しさは知ってるし、何があったかは分からないけど感情を制御出来ない事を悪く思う必要は無いと思う。

 徐々に感情制御の仕方を自分なりに学んでいけば良い。

 

 

「それで、どうしていきなり泣き出したりなんて……」

「……その、廻君にはあんまり言えない事で……ごめんなさい」

「ううん、それならそれで大丈夫。話は聞けなくても、気を紛らわせる雑談くらいなら出来る「廻君、一つだけ聞いてもいい?」────はい」

 

 

 ここまで真剣な顔をする咲さんは、あの日々の時に僕に踏み込もうとしてくれた時以来だ。

 僕もちゃんと答えないといけないと、その声色に思わず背筋が伸びる。

 

 

「────私の事、嫌い?」

「絶対に無いです、そんな事」

 

 

 無い。うん、有り得ない。有り得無さすぎて即答する。

 僕がキツかった時、例え何回ループしても必ず慰めてくれた咲さんを嫌うなんて事有り得ない。

 同じループだから同じ言葉しか無かったけど、それでも絶対に僕を気遣ってくれるという安心感があった。

 

 それに、僕が違う反応を見せれば当然相手も違う反応をする訳で。同じループでも、違った言葉が掛けられる事だってあったんだ。

 それに何回救われた事か。

 

 

「咲さんにはいっぱい助けられたし、それにもう友達でしょ? 嫌う事なんて絶対に無いよ」

 

「────そだ」

 

「……はい?」

 

 

 

「────絶対嘘だ!!!」

 

 

 

 見た事の無い表情。

 目からは光が消え、どう言った感情なのかそこからは中々読み取り辛い。

 少なくともポジティブな感情では無いのは確か。

 

 

「あんなッ、あんな事になって、私を嫌いにならない訳が無いよ……! あんな苦しそうな顔してたんだよ? そんな顔にさせたのは私なんだよ? 寧ろ嫌って、私を嫌ってよ……! 何でもするから、私の()だって貴方に捧げるから! 貴方の気が済むまで、ずっと私は貴方の物だよ? 貴方が私の為にしてくれた事を、こうでもして返さないと私の気が済まないの……! 朝アレを見た時からずっっっとおかしくなりそうで、頭から離れてくれないの! だからね、廻君。私に何をして欲しいか教えて? 全部やるよ、廻君の言う事なら全部! 私の為になんだってしてくれた廻君の心の傷を、私が癒してあげないと──────」

 

 

 ──何が、起こってるんだろう……?

 

 マシンガンのように早口で繰り出される、言葉の洪水。それを僕に乱射してくる咲さんが、本能的に恐怖を感じるようなドス黒いオーラを生じさせている風に錯覚してしまう。

 

 

 

 救助対象が居るかを探すんじゃなくて、僕本人が狙われる事を警戒する必要があったのかも知れない。

 

 ……とても怖いけど、話を聞いた感じ僕に敵意を持っているのは考えにくいので、咲さんを鎮める事が先決だ。

 

 昨日後輩の“真白(ましろ)ちゃん”に話してた時の僕も、似た様な感じだったのだろうか。……今日も会う事になるだろうし、その時に謝ろうと密かに決意する。

 

 

「廻君廻君廻君廻君、何をしたら私は償えるの? 何をしたら貴方を助けられるの? 早く、早く命令して? ねぇ、お願い……」

 

 

 …………そんな事を考えてる暇は無かった。

 どうしたら落ち着いてくれるのか、僕は本っ当に思い出したくは無いが、今までのループを振り返ってヒントを探すのだった。

 

 

 

 






廻の妹:少し存在を示唆された。珍しく廻よりも先に登校していたらしい。当然のように廻に助けられた事があるが、心は壊れていないしマトモな考えが出来る強い子。

クラスメイト改め“本宮(もとみや)(さく)”:すっごい変な病み方した。直近で後輩ちゃんに話を聞かされて壊れかけていた所に追い打ちを掛けられたので、まぁこうなるのも仕方ない。

後輩ちゃん:真白(ましろ)という名前だけ出てきた。朝は必ず廻と登校していたが、今回は居なかったらしい。何でだろうね。

記憶君:今だ、走れ!ゴーゴーゴーゴーゴー!!!(頭になだれ込む)


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