救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。   作:ゲーミング千手観音

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評価、お気に入りありがとうございます。大変励みになっております。いや、本当に。

お仕事から帰ったら更に伸びてて、嬉しすぎるがあまり卓上調味料を全部倒してしまいそうになりました。期待に応えたくて書き上げたものになります。

ここ好きと感想も常に待ってます。




2, 後輩の登場

 

 

 

 

「廻君、廻君、廻君…………あ、こっち見た……えへへへへへへ…………」

 

 

 

 

「────どうしよう、これ」

 

 

 困った事になった。

 

 

 咲さんにそれとなく“突然あんな事を言い出した訳”を聞いた所、「僕への恩返し」だとご返答を貰った。

 何故今になって?とも思うし、そもそも何時ぞやかの時に「僕と友達でいてくれるだけで十分お返しだよ」と伝えた記憶がある。咲さんもそれで納得してくれてた……はず。

 

 なのに、こんないきなり人が変わったようになるのはおかしい。

 

 僕にある心当たりと言えば、真白ちゃんに全部言っ、た……こ…………と…………?

 

 

 ────あっ、これかぁ!!

 

 

 多分、真白ちゃんが咲さんに言ったんだろう。そう考えれば、色々と辻褄が合う。

 開口一番が「生き、てる……?」だったり、僕が今までしてきた事を知っているような口ぶりだったり。

 真白ちゃんと咲さんは仲が良いから、それでつい言っちゃったんだと一人納得する。

 

 正直全然知らない人じゃないなら言っても良いんだけども。

 僕が真白ちゃんに少しの注意をする可能性すら無い。そもそも勢いで言っちゃった僕が悪い訳で。

 しかも、正直なところテンションはまだ高いままなのだ。だから本当に、僕が彼女に怒る権利は無い。

 

 

 ……さて、謎は解けた。

 しかし、だとしても咲さんをここから元の咲さんに戻せる自信が僕には無い。

 

 咲さんは凄く優しい。今まで相当数そう感じることを経験してきた。

 だから彼女は、その優しさ故か今までも僕が完璧に誤魔化していたのに何となくで僕の疲れを察知してきて心配してくれる事が何回もあった。

 今回は()()()()()()()というか、恐らくだけど真白ちゃんに僕が何回も死んでいる事を聞かされて、今までなぁなぁで済ませてきてたのが爆発したんだと思う。

 

 つまるところこうなった原因は僕にあるので、僕が何を言っても咲さんには響かないと言う訳だ。どうしよう、今までのループが簡単に見えてしまうくらい難題だ。

 ……いや嘘、流石にループの方が難しい事は何回もあった。少し訂正。

 

 

 ──ちなみに、今はお昼休憩中だ。

 

 保健室では相当に苦労した。今までの記憶を嫌々ながらに振り返ってみた所、咲さんは褒められる事に弱いという情報を僕は思い出した。

 思い立ったが吉日という事で早速実践してみた所、落ち着いてくれたは良いものの多分悪化した。

 

 ……そう思う理由も、ちゃんとある。

 

 授業中ずっと見られてるし、ずっと僕の名前を呼んでいるし、ずっと黒いオーラが出っぱなしだし、ずっと目からは光が消えている。

 

 ……どう見たって悪化している。

 

 ただちょっと咲さんの容姿を褒めて、普段から僕を気遣ってくれている事に関してお礼を言って、声も褒めて頭の良さも褒めて性格も褒めただけなのに。

 なんでこうなったんだろう?全く分からない。

 

 

 そして、そんな恐らく悪化した咲さんと僕は今一緒にご飯を食べている。

 机が隣同士なので、少しお互いの席を動かして向かい合う形にしている。

 当の咲さん本人だが、僕がこうして考え事をしている間も「廻君、廻君……」と呟いては僕をジッと見つめてきている。

 

 ……ご飯が、食べ辛い……。

 

 

 何回でも言うけど、僕は人からの視線には弱いんだ。例え親しい人からのでも。──いや、ちょっと違うか。

 人からの視線に対して胸を抉るような不快感を感じてしまうように()()()()()()()、が正しいかな。

 

 何も面白くない話だから詳細は言わないけど、まぁループ関係と言えばろくでもないことなのは分かるはず。

 つまりはそういう事だ。

 

 そんなだから、今の状況は正直言ってかなりキツイ。更に咲さんからの視線には何か“ジトッ”としたモノが乗っているような気がして、余計に辟易としてしまう。

 

 ()()()()()に向ける視線じゃない。

 そこがコレの異常性かと思う。

 

 近いうちにどうにかしないと、僕がもたない。でも本当にどうすれば……ほ、褒め直す、とか……?

 

 ……絶対ダメな未来が見え見えなので、この案は一瞬で却下だ。

 ダメだ、今は思い付かない。

 

 

「ま、真白ちゃん、早く来て……」

「……今私以外の女の話した?」

「してないです、勘違いです……生きててごめんなさい……」

「──“生きててごめんなさい”なんて、そんな事二度と言わないで? ……ね?」

「ひゃいっ」

 

 とんでもない圧に、思わず敬語が出てしまう。

 怖い、ただでさえ目の光が無いのにそこに猛獣が獲物を見つけた時のような眼光が合わさってとんでもない事になってる。

 

 僕、今までループしてきて咲さんのそんな顔見た事無いなって……え?怖がる必要は無い?

 あ、あはは……そうだね……。

 

 ────胃が限界だ。

 今日に至るまでの様々な過程で僕の胃は超絶ストレスに弱くなっている。そろそろまずい。

 

 

 だ、だけどもう少しで頼もしい後輩が来るはず。

 それまでの辛抱────

 

 

「──先輩? 私の事呼びました?」

 

 

 名前の通りに真っ白い、透き通るような白い肌と髪色。そこに薄ピンクの大きいリボンが重なり、本人の可愛さを引き立てている。

 

 僕の後輩であり、ループが始まる前から唯一関わりを持っていた子。

 “深川(みかわ)真白(ましろ)”ちゃんが、僕の顔を覗き込んでいた。

 

 ────助かった!

 思わず、真白ちゃんの手を両手で握ってズイっと顔を近付ける。

 

 

「──“真白ちゃん”っ、いいタイミングだよ本当に!」

「ちょっ、先輩、近いです……っ! もう、そんな無警戒だと()()()()()?」

「あぁ、ごめん真白ちゃん、ついね。次からは気を付けるよ。────()()()()()???」

「気を付けてくださいよ? 全く……」

 

「…………()()()()()?????」

 

 真白ちゃんから凡そ聞いた事のない言葉が飛び出したような気がして復唱してしまうが、一旦気の所為だと思う事にする。

 

 

「ただでさえ先輩は私が居ないとまた無茶をするんですから、常に気を配って下さいね? 怪我なんてしたら()()()()()()()()?」

「耳が痛い……。────()()()()()()()()???」

 

 ダメだ。

 

 なんとか自分を誤魔化そうと思ったが、誤魔化しが効かないくらいしっかりと聞いてしまった。

 真白ちゃんまでナチュラルにおかしくなっている理由が分からない。昨日話した時はまだいつも通りだったはずだ。

 

 なんで?

 

 

「──先輩、ボーッとしてないで、ご飯食べないとお昼終わっちゃいますよ?」

「──あ、あぁ、そうだね。考え事しててつい」

 

 それもそうだと、意識を現実に戻す。

 真白ちゃんの事については聞かなかった事にしておく。それが今この場では懸命であると判断した。

 

「……あの、それで先輩。そろそろ聞いてもいいですか? ……この、明らかにおかしい咲ちゃんについて」

「それが、僕にもなんでこんなになったのか分からなくて……。それでも良いなら、取り敢えず説明するよ」

「お願いします、昨日から様子がおかしくて心配だったんです」

 

 昨日からか。となると多分昨日の夜とかだろうか、とつい考えてしまうが、それ以上は今は考えないでおく。

 こうやってすぐ考え事をしてしまうのも、ループからついた癖だ。考えなくてもいい所で頭を回してしまったり、それのせいで逆に良くない結果になってしまった事もある。

 

 だから、今はこんな事に脳みそを使わず、真白ちゃんに説明するのが先だ。

 

「朝の事から説明すると、実は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────と、いう事なんだ。真白ちゃんはどう思う?」

「やはり先輩はすぐにでも監禁する必要があるかもしれないですね」

「なんで?」

 

 やはり褒めちぎったのが逆効果だったのだろうか、と反省点を見つけ出そうと頭を捻る。

 しかし後輩からジト目を頂戴したので、すぐにわざとらしく傾けていた頭を戻す。

 

「先輩が変な事するせいで、咲ちゃん私に挨拶すらしないくらい変な感じになっちゃってるんですよ。反省してください。……これそもそも私に気付いてない……?」

「すみませんでした」

 

 まだ確定はしていないが、世界が戻る事はもう無いのだから一回一回慎重にやらねばいけないのを失念していたと言われればそうだ。

 プリプリと可愛く怒る後輩に、素直に謝罪する。頭を下げるのも慣れたものだ。

 

 

「──仕方ない先輩ですね〜……。咲ちゃんには後で私が聞いておきます、先輩は安心してください」

「本当に感謝してもし足りない。ありがとう」

 

「……もう先輩は、頑張らなくても……」

 

「ん? ごめん、聞こえなかった。なんか言った?」

「わざと聞こえないようにしたんです、鈍感先輩」

 

 それは失礼な事をしてしまった、とすぐ謝って身を引く。

 そろそろ咲さんに真白ちゃんが来てる事を言うべきか。

 

「……あの、咲さん?」

「ん、どうしたの? 廻君。私に何か頼み事?」

「あ、いえ。あの……真白ちゃん、来てますよ?」

 

 僕がそう言うと、「え?」と少しキョロキョロと見回し、真白ちゃんを見付けると咲さんの目にジワジワと光が戻っていく。

 光が戻りきると、咲さんは恥ずかしそうに頬を赤くして手を頭に乗せる。

 

 ……戻った……?

 

「あーっ、ごめんね後輩ちゃん! 私ったら、廻君の事見過ぎて後輩ちゃんに気付いてなかったよ……。こんにちは、後輩ちゃん!」

 

 やっと気付いてもらえた真白ちゃんは呆れたように溜息をつくと、

「はい、こんにちはです。後輩ちゃん、じゃなくて真白で良いですからね? もう一年前の感じじゃないんですし」

「私はこれがいいの!」

「そうですか……。あ、あと咲ちゃん、昨日は本当に心配したんですからね? 後で話を聞かせてもらいますよ」

「あー、ごめんね……根掘り葉掘り聞いてよ! 心配かけちゃった分、なんでも答えちゃうよ!」

 

 シュッシュッとやる気を表すように軽いシャドーボクシングを始める咲さん。

 どうやら本当に元に戻ったらしい。それにしても条件が分からないが……まぁ戻ったから、細かく気にする必要は無いだろうか。取り敢えずまたなったら真白ちゃんを呼べば問題無しだろう。

 

 安心したら、飲み物が効いてきたのか、お手洗いに行きたくなってきた。

 咲さんの事は真白ちゃんに任せて、少し席を外そう。

 

 

「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

「了解です」

「分かったよ!」

 

 

 教室を出て男子トイレまで向かう。

 

 それにしても時が戻らないと言うのは本当に良い。前はこのトイレに行くタイミングですら警戒するべき時だった。

 それがちゃんと安心して用を足せるようになったと言うのは、心の余裕が段違いだと一人頷く。

 

 コツコツ。

 カツカツ。カツカツ。

 

「…………」

 

 

 それが僕の努力と必死に生きてきた証だと思うと、なんとも感慨深い。

 ここまでよく耐えてきたものだ。その代わり傷跡が身体中に残っているが、まぁ生きているのだから誤差の範囲内だろう。

 

 コツコツ。

 カツカツ。カツカツ。

 

「………………」

 

 

 男子トイレの前まで着く。

 ……それと同時に、現実逃避もここまでとしよう。

 

 教室を出た時から別に気付いてはいたのだけど、このままだと多分()()()()()。そんな気がしてならない。

 

 

「……あの、なんで着いてきて……?」

 

 後ろを振り返れば、女子トイレを通り過ぎて僕の真後ろを陣取っている咲さんと真白ちゃんが。

 二人もお手洗いだという線はこれで消えた。

 

「? なんでって……」

「それは勿論」

 

 

「廻君は監視しておかないと……」

「先輩がまたどこかに行かないようにですが?」

 

 

 二人の目からは光が無くなっていた。

 

 

 ────あぁ、やっぱり真白ちゃんもなんだ……

 

 

 

 

 折角呪いが無くなったと言うのに、僕の学校生活がかつての日常へと戻る事は無さそうだ。

 

 

 

 






廻:異性から好意を寄せられている事は理解しているが、全て“友達として”だと思っているアホ。クソ。ボケ。ループの末に自尊心が死んだが故な為、許してあげて欲しい。
 許す訳無いだろボケ(一転攻勢)

後輩、及び真白ちゃん改め“深川(みかわ)真白(ましろ):雪女の血族ですか?と聴きたくなる位肌が白い。そこに髪色と美貌も相まって中学時代にイジメられていた所を廻に助けられ、高校まで追いかけて来た。いつも通りの対応に見せかけて、ナチュラルに病んだ。

咲:あーもうめちゃくちゃだよ。廻が余計な事をして病み度倍プッシュ。何をされている方なの?

クラスメイト達:(…………うわぁ……触れんどこ…………)

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