救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。   作:ゲーミング千手観音

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感想・お気に入り・評価ありがとうございます。大ッッ変励みになっております。

ルーキーランキングの上の方に入ってたのを確認して3度見しました。一瞬5位入ってたし。
ヒェ……プレッシャーが……ガンバリマス……

廻にとって超絶大事な回です。このお話が無いと廻君は壊れちゃうでしょう。





3: 一年の歳月を経て

 

 

 

「さ、先輩。帰りますよ」

「あれ、おかしいな。今HR終わったばっかりなのに、どうしてもう真白ちゃんが居るんだろう」

 

 キンコンカンコンと聞き慣れたチャイムが鳴り、人によっては部活や手に入れた自由時間を謳歌せんとダッシュで帰宅し始める放課後が始まる。

 

 そして放課後開始と同時に真白ちゃんが僕の席へとやって来た訳だが、流石に早すぎないかなと疑問に思わざるを得ない。

 学年が違うから階も違うハズなんだけど、瞬間移動か何かだろうか?

 

「秘密です。強いて言うなら心の力です」

「そ、そっか……」

 

 そう言うとグイグイと僕の腕を引っ張って先行していく真白ちゃん。

 深く突っ込んではいけない気がするので、素直に納得しておく。

 

「咲ちゃんも行きますよ、私一人じゃどうなるか分からないんですから」

「そうだね、廻君は危なっかしいから私達が着いてないと! ──廻君は私が何があっても護るんだから」

「私“達”ですよ、咲ちゃん。若干出ちゃってます」

「──はっ、ごめんごめん。つい……」

 

 されるがままに真白ちゃんに引っ張られていると、気になる言葉が聞こえた。

 

 

 “護る”。

 

 

 咲さんと真白ちゃんの行動原理は、多分それなんだろう。言動から察せられる。

 その対象は僕で、そうなった原因も恐らく僕。いや、恐らくとかじゃなくて絶対に僕だ。

 

 ……咲さんと真白ちゃんには申し訳無いけど、正直そうなった二人が近くに居て安堵している僕がいる。

 “死”というのは、何回経験したって慣れない。それもそうだろう、生き物である限り切っても切り離せない、必然的で絶対的な“終わり”なのだ。

 そんな概念を“慣れる”なんて出来る訳が無いだろう。

 

 だからこそ、こうしてしまった原因は僕なのに今の状況に安心感を覚えてしまっている。

 それを自覚してしまうと、地獄の日々が終わりそうだからって調子に乗って喋ってしまった事に対する自らへの嫌悪感がジワジワと僕の胸を満たしていく。

 

 

 ……すぅ〜、はぁ〜。

 

 

 二人にバレないよう軽く深呼吸を繰り返して、意識を切り替える。帰ってからいっぱい後悔しよう。今は暗い事を考えるタイミングじゃない。

 こういう時の為に、僕は深呼吸で落ち着くのを体に覚え込ませている。いつでも何処でも、少し時間があればそれだけでその場で出来るから。

 

 今まで通り、人のいない所で考えて後悔して反省すればいい。そうだろ、僕。

 

 

 

 

 余計な事を考えないようにしつつも少し歩けば、遂に玄関にある自分の下駄箱へと到達する。

 いつもと長さは変わらないはずなのに、どうしてこんなに道のりが長く感じたのだろう。いつ咲さんの地雷を踏むか分からないから?それとも、“もしかしたら”の可能性を捨てられなくて、帰路に着くのが怖いから?

 

 ……多分両方だ。

 

 現に、今靴紐を結んでいる手が小刻みに震えている。家から出た時と同じ現象だ。

 い、今かぁ……。どうしよう……。

 

 

「よし、後輩ちゃん! 行くよ、目指すは廻君のお家だ!」

 

 ビシッと僕の家の方向を指差す咲さん。まるで探検隊のリーダーのようだ。

 実際インディージョーンズばりの帰路になった事もあるので、割と間違ってはいないのかも知れない。

 

「はい、行くとしましょうか」

「……そこはオーって言って欲しいな?」

 

 チラチラッと真白ちゃんを見てお願いする咲さん。

 瞳孔から光が失われていない時は日常を感じて大変ほっこりする。

 

「ちらっちらっ。ちらちらっ?」

 

「口で言わないで下さい! 分かりましたよもうっ! ──お、お〜っ……」

 

「「…………」」

 

 顔を赤くしてプルプルと震えつつも腕を恐る恐る上げる真白ちゃんは、僕と咲さんの心臓にクリーンヒットした。

 あの常に──今は常じゃないか──明るい咲さんが黙ってしまうくらいだ。気になって咲さんのいる方を見てみれば、口を両手で抑えて悶絶しているのが観測出来た。

 

「〜〜〜〜ッ、無反応はやめてください!」

「あ、ごめん後輩ちゃん。予想以上に可愛くて思考を放棄してたよ……」

「僕も同じく。危うくショック死しそうになったね」

「──廻君? そういう冗談は金輪際、絶対に、二度としないでね?」

「イ゚ッッ」

 

 いきなり()()()()のをやめて欲しい、本当に心臓に悪いから。

 ぼ、僕的には面白いと思うんだけどなぁ……?

 

 咲さんのこの顔、トラウマになりそうだ。それこそショック死しそうだよ……。

 

 

 しかし、今の真白ちゃんを見て僕は自分の思う以上に癒されたらしく、気付けば手の震えが止まっていた。

 ……今度から家の前で待っていてもらおうか、一度真剣に考える必要があるかも知れない。

 

 

「か、可愛い……。──ほ、ほら、もう行きますよ! 先輩の身に何が起こるか分からないんですから! 私の事はどうでもいいんです!」

「わっ真白ちゃん、ちょっと待って! 当の僕がまだ靴履いてる最中だから! 引っ張らないで!」

「先輩の事なんて知りませんっ! ──初めて先輩に可愛いって言われた……

 

 そんなくだらない事を考えていたら、羞恥心が限界に達した真白ちゃんがここに来るまでより更に強く引っ張ってくる。

 グイグイ、というよりグィィィィィになっている。制服が悲鳴を上げている。伸びないか少し心配だけど、まぁ今までの災害事故事件を共にしたこの制服なら、きっと大丈夫だろう。

 

 真白ちゃんの真の限界が来る前にササッと靴紐を結んで、学校を出る。

 

 ……何かが起こったら、僕が庇えばいい話だしね。()()()()()()だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も起こらなくて良かったです。先輩の言う通り、もう終わったと見ていいと思います」

「うんうん! それに、怖かったら私達が一緒に居るからね! それじゃ、また明日ね!」

 

 

 家の前で咲さんと真白ちゃんに励まされつつ解散したら家へと入り、扉と鍵を閉める。

 閉め切る最後の最後まで手を振ってくれる二人には、本当に感謝してもしきれない。

 

 

 ──帰りも何も起こらなかった。

 どうやら杞憂だったらしい。

 

 

 

 ……そっか、何も起こらなかったんだ。

 

 

 

 

 

 あぁ、あァ、嗚呼。

 

 

 

 

 

 

「────ぼ、僕、本当に……っ。本当に、やり遂げたんだぁ……っ!」

 

 

 

 

 靴も脱がないまま玄関に膝から崩れ落ちる。力が抜けてしまったらしい。

 

 

「う、ぐ……ッ! グズッ……!」

 

 

「う゛あ゛あ゛あ゛……!」

 

 

 それと同時に、涙として、声として、感情が勝手に溢れ出す。我慢しようとも思ったけど、出来るはずもなかった。

 

 

 

 ずっと、ずっとずっとずっと。ずーーーっと、待ち望んでいた瞬間(コト)だったから。

 

 

 

 昨日から続くハイテンションは何処へ行ったのか。今はとにかく泣きたい気分だ。

 

 今まで通り違う事は、嬉し泣きである事。

 達成感と開放感で胸がいっぱいである事。

 

 

 今まで何回ループしただろう。

 何度死んで、何度死なせて。

 何度絶望して、何度()()して。

 

 終わりが見えないこの苦痛から解放されたいと、何度願っただろうか。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛……っ!」

 

 

 声にならない声。

 最早ただの()だ。

 

 喉がいくら痛んでも、()が出るのが止まらない。

 ……止めたく、ない。

 

 本能に従って、とにかく声帯を酷使する。

 

 

 手は自分の涙で濡れすぎて、いくら拭っても拭えた気がしない。遂には拭う事すら諦めて、目元を抑えるだけになる。

 それでも尚、蛇口を無理矢理抑えても関係無いようにとめどなく涙が溢れては、重力に従ってゆっくりと僕の腕を伝って落ちる。

 

 いつからか暗闇も怖くなっていたこの体で、それでも僕は抑えることをやめない。

 高ぶった感情のお陰か、今だけはこの暗闇が心地よく感じるから。この黒く染まった景色に身を委ねる。

 

 

 今の僕は、とても人には見せられない顔をしている事だろう。

 

 涙と鼻水でグチャグチャになって、表情も歪み切っている。

 

 

 でも、大丈夫。見られるとしても妹だけだ。

 両親は海外に出張中だから。

 

 妹相手なら、見られたって別に構わない。

 

 

 だから僕はなりふり構わず、近所迷惑も考えないで、ひたすら自分の感情のままに泣き叫ぶ。

 泣いて泣いて泣いて泣いて、泣き叫んで。

 

 次第に僕の意識は、ゆっくりとフェードアウトして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……朝の変な夢のせいで、今日一日最悪の気分だったよ……。唯一いい事があったとするなら、日課の()()()()()の寝顔観賞の時に珍しくお兄ちゃんが魘されてなかったって事くらいで……」

 

 茶髪にツインテールの女の子は、そうブツブツと言いながらも猫背のまま自宅へと到着する。表札には“心灰”と書かれてあった。

 

 女の子は、ナイーブな顔をしながらも鍵を取り出し、鍵穴へと差し込んで回す。

 ガチャ、と解錠された音を聞くと、落ち込んだ気分に影響されてか、ゆっくりと扉を開いた。

 

 

「────お兄ちゃん……? お兄ちゃん!? だっ、大丈夫!?」

 

 

 扉を開けるとそこには、()()()()()()()()()()が靴を履いたまま目元を腫らして倒れ込んでいる光景が。

 何かあったのかとすぐさま駆け寄り様子を確認すると、規則的な呼吸音と共に肩が上下しているのを確認し、安堵する。

 

 

「な、なんだぁ……寝てるだけかぁ……。──って違う違う、風邪ひいちゃわないように、布団に運ばなきゃ」

 

 

 早朝に彼女を苦しめた()のせいか、最悪のパターンを想像してしまっていたが故に、思わず力が抜ける。

 気を取り直してまず自分が靴を脱ぐと、すぐに廻の靴も脱がせてお姫様抱っこの要領で彼を持ち、自分の部屋へと運ぶ。

 

 

「うっ、やっぱり男の子って重いなぁ……お兄ちゃん、男の子の中でも少し小柄な方だよね? でもちょっと筋肉質だし、それのせいかな……?」

 

 

 落とさないよう階段を慎重に上り自分の部屋の前へと到着するが、このままでは扉を開けづらい事に気付く。

 

 

「お兄ちゃん、ちょーっと降ろすね?」

 

 

 そっと床に一旦降ろすと、起こさないようここもゆっくりと扉を開け、もう一度抱える。

 

 部屋に入り、ようやく目的地である彼女の布団へと廻を降ろすと、素早く自分も座り膝枕の体勢へと移行する。

 

 

「お兄ちゃん、ずっと大変そうだったから……ゆっくり寝かせてあげないと、ね……」

 

 

 なでりなでりと、我が子を慈しむ母親のように廻の頭を撫でる。

 

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……えへへ……」

 

 

 

 

 彼女の名前は心灰(しんかい)亜衣(あい)

 

 心灰廻の妹にして、重度のブラコンだ。

 

 

 

 






廻: 感極まって泣いた。よく頑張ったね……偉いね……。これ以降、彼は徐々にいい方向へと変わって行くことでしょう。でもそれによって更に身の回り子達が焼かれる事になる。
 じゃ、堕とすね……。

咲: 廻の全てが好きで好きで好きでたまらないし今すぐにでも籍を入れたいくらいだが、唯一冗談のセンスだけは嫌い。廻の事を思って“好き”を暴走させないようコッソリと奮闘中。
 廻のせいでその努力も水の泡になる。

真白: 愛のパワーで高速移動が出来るようになった。全ては廻を護る為。いつでも何処でも、可愛い後輩にお任せを。暴走はしないしさせない……つもりらしいが、そこそこの頻度でナチュラルに出てくるし本人に自覚は無い。
 廻のせいで頻度は増していく事になる。

“妹”改め、心灰(しんかい)亜衣(あい): 彼女も名前の由来は直球。日課は毎朝の廻の寝顔観賞。1年ほど前から魘される事が多くなっていて、凄く心配していた。素で日課がこれになるレベルだと言うのに、そこに夢が重なった。終わり。
 血が繋がっているかどうかはまだ不明。メタい話だとどちらにするか作者が迷っているだけ。
近々アンケートを出すかもしれない。


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 感想やここ好きをくれた方も、本当にありがとうございます。引き続き、常にお待ちしております。
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