親愛なる弟へ   作:アオイ

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頭に浮かんだ作品です。


 ただいま、カントー

 

 

 

 

 

 セキエイ大会決勝戦。シロガネ山が野生のポケモンの活性化で開催場所を変更することになった今回のジョウトリーグはポケモンリーグの総本山であるセキエイ高原にてカントーリーグと合わせて開催されていた。

 

「行くよ!」

 

 観客席を埋め尽くす歓声が競技場を揺らしていた。

 

「ライチュウ……【10万ボルト】!」

 

 フィールドの中央では1匹の……私のライチュウが肩で息をしている。そして放たれた【10万ボルト】が相手トレーナーのギャラドスに命中した。お互いの手持ちは既に最後の1体。しかしこの1撃を以て相手のポケモンは戦闘不能となった。

 

「ギャラドス!」

 

 審判が旗を掲げた。

 

「ギャラドス戦闘不能! 勝者! マサラタウン出身──アオイ選手!」

 

 歓声が爆発する。

 

「並びにジョウトリーグセキエイ大会……優勝者はマサラタウンのアオイ選手です!」

 

 紙吹雪が舞いライチュウが振り返る。

 

 私は笑みを浮かべながら駆け寄った。

 

「お疲れ様、ライチュウ」

 

「ライ!」

 

 抱き上げると、ライチュウは嬉しそうに鳴いた。カントーを旅し、ジョウトを巡り、数え切れないほどの出会いと別れを経験した。私達の先を行く幼馴染の功績にようやく追いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「3年前……マサラタウンを飛び出して、今やジョウトリーグチャンピオンとなっていた……ね。長くて遠い旅路だったね……」

 

 そして表彰式の後に控室で荷物をまとめていた私は母さんに連絡をしようとポケギアを開いた。でもそこに届いた1通のメールに目を留めた。

 

「差出人は旅先で知り合ったトレーナーの……カオリ?」

 

 ヤマブキジム攻略の際に知り合いポケギアの番号を登録したトレーナーだけど……なんだろう? 

 

 > カントーでポケモン密猟事件が増えているらしい。

 

 私は眉をひそめる。というか似た話は最近何度も聞いていた。

 

【ポケモンの盗難】

【どこかの街で行われているだろう密売】

【トレーナーやポケモンの不自然な失踪事件】。

 

 そして、どれも妙に組織的だったような印象は確かに感じた。だけど冷静に考えればその頻度や発生地方は偶然とは思えないほどに集中してあたる。

 

「またこんな連絡……何が起きてるの?」

 

「チュウ!」

 

 開いたついでに幼馴染【達】に連絡を送る。

 

 >ジョウトリーグは制覇した。四天王を倒したら次はアンタ達にリベンジするから! 

 

 送信先は同じ日に旅立った幼馴染の【レッド】と【グリーン】の2人。だけどすぐに2人からの返信が来た。

 

「グリーンからは……

 

 >中継を観ていたよおめでとう。浮かれて足元掬われるなよ? 

 

 ですってぇ! アイツ絶対に次はブチのめす!」

 

 レッドからは……

 

 >観てた。待ってる。

 

「チュウ!」

 

「ハイハイわかってる……」

 

 ライチュウが肩に飛び乗り私に催促する。そこで私は端末を閉じて滞在先のポケモンセンターへと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンセンターで今回の旅の荷物を整理していたらふと呟いていた。

 

「何かいるよね」

 

「ライ?」

 

「ずっと旅してきて思ったの」

 

 窓の外を見る。夕焼けに染まるセキエイ高原を見ながら呟いていた。

 

「ただの半グレとかそんな次元じゃないようなどこかに大きな組織がいる……そんな気がする」

 

 証拠はないし名前も分からない。けれど妙な確信だけはあった。噂や流れて来る情報がこの2地方で多かったことがその疑惑を強めていく。

 

「この3年間で見てきた事件は、きっと1つの線で繋がっている」

 

 そんな気がしてならなかった。

 

 その時、ポケギアに今度は別の通知が届く。

 

 送り主は母のハナコだった。

 

 件名は短かったがしっかりと親は私のことを見ていた。

 

 > 速報見たわよ。ジョウトリーグ優勝おめでとう。

 

 > サトシが来月旅立つわよ♪ 

 

「クスッ」

 

 私は思わず吹き出した。

 

「もうそんな歳なんだ」

 

 弟のサトシはついこの前まで後ろをついて回る子供だったのに。

 

「ライチュウ」

 

「ライ?」

 

「1度帰ろうか?」

 

 肩のライチュウが首を傾げる。でも次の瞬間その返事はとても元気になった。

 

「ラァイ!」

 

「サトシの旅立ちも見たいし」

 

 私は故郷への帰還を決めたが少しだけ真面目な顔になる。

 

「それに──」

 

 端末を開くと先ほど届いたカオリからのメールが思考を乱す。ここ数か月集めていた情報の大半の発信地はカントー・ジョウト地方に集中していた。だけどその比率は大きく分けると【カントー45%】【ジョウト20%】【イッシュ10%】【その他25%】イッシュは遠いけど隣接しているカントーとジョウトを合わせると【凡そ65%】……恐らく拠点はカントーの方だと思うけど……

 

「調べたいこともあるから」

 

 窓の向こうに広がる西の空。その先には故郷があり名をマサラタウン……私達を【怪物世代】と呼称するトレーナーの出身地だけど本当はただの田舎街。真の怪物はストイックの化身であるレッドと、新たなる知識に貪欲なグリーンの2人。私はその2人が出なかったリーグを優勝しただけで2人とはまだ強さの壁を感じる。

 

「でもこれで後は四天王を全員倒せば実績は並べる!」

 

 そしてまだ姿の見えない何者……か。私は静かに拳を握った。

 

「帰ろうか……カントーへ!」

 

 ライチュウが元気よく鳴いた。

 

「ライチュ!」

 

 こうして、ジョウトリーグを制した私は故郷への帰路につく……だけど私はまだ知らない。

 

 

【自分が追うことになる巨大な犯罪組織の名】も。

 

 

 

 その組織が、弟の旅路とも深く関わることになるのも。そして数か月後……ある三人組の大げさな名乗りが、長い戦いの始まりを告げることになることも──。

 




手持ちや人間関係・実力関係はある程度話数やキャラが整ってから設定集として投稿したいと思います。
 

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