2030年。
目覚ましく発展する機械産業、そしてAIの台頭。
もはや小学生でさえ最新型のスマートフォンを与えられ、それら機械の扱えない老人たちは時代に取り残されていく。
ほんの数年前の最新技術はあっという間に世間から型落ち品の烙印を押され、企業の競争は過熱する。
テレビを点ければ『最新』を謳うコマーシャルが流れ、スマホを見れば『最高傑作』を謳う広告が流れる。
まさに、世は黄金時代だった。
技術のインフレーションの真っ只中なのだ。
例え話をしよう。
今、家にある冷蔵庫が壊れたと分かった時、わざわざ修理業者に依頼するだろうか。
答えは、否である。
大企業と癒着している修理業者たちは、法外な値段をふっかけてくるだろう。
そして、それが嫌なら、今だけこの最新機種を安くしておくぞと言って、癒着先の企業の製品を割高で買わせるのだ。
当然、善良な、というか普通に仕事を熟してくれるような業者もいるだろう。
いや、むしろ大多数を占めるはずだ。
しかし、人々は人を信じることに疲れていた。
企業の競争に巻き込まれ、あらゆる真偽不明の情報を流され、騙されることに慣れてしまったのだ。
今は、そういう時代だった。
そういう時代になってしまった。
しかし、そんな時代になってもなお、まだ日本に無いものがあった。
それは──
『むちむちロボ娘メイド喫茶』である。
「だ・か・ら!何度も言わせんなよ!これ以上デカくしたら安定しねえんだよ!」
コードやライトが露出した人型の機械を前に、
「いやあ、それは分かっているんだけどさあ……もうちょっと、具体的にはあと10cmくらいさ。」
「お前が『安全性を一番に』っつったんだろうがよ!?」
「うぐ、まあ、そうなんだけどさあ……」
「なんでそんなにデカくしたいんだよ?」
「脚もうちょっと長い方が可愛くない?」
「だとしても10cmはねえよ。まあ、とにかくさ。この図面通りに
現在俺たちの前にあるのは、
人のからだに狼の頭を付けたようなデザインで、手足は狼のソレを参考に、尻尾も付ける予定。
もちろん、全体的にデフォルメし、可愛さを全面に押し出していくつもりだ。
今はまだ、
コード類やライト、スイッチ部分なんかも全部剥き出しではあるが、このままでも一応稼働するようになっている。
しかし、そんな状態では危険だし、何よりグロテスクで、
そういうわけで、これからまた金属で出来た
本当は毛皮っぽくしても良かったんだけどね……
残念ながら、それを請け負ってくれる会社が見つからなかった。
「で、コイツに何させんの?言われた通りの仕様にはなったけどさあ。そろそろ具体的なこと教えてよ。」
俺の古くからの親友であり、同時に我が社の共同経営者兼専属技術士でもある飯田はそう尋ねる。
「まずは、ウチのファミレスの店頭に置いて宣伝する。でもって、目処がつき次第新たな店舗のマスコットになってもらう。」
「マスコット、にしちゃあ随分仰々しい中身だが。」
「この子
「……お前、正気か?いや、確かに出来なくはないだろうけど。」
「まずはお客さんが入ってきたら席に案内するだろ。でもってお客さんはタッチパネルで料理を注文。裏で人間が作って、この子たちは席と注文を正しく認証し、料理を提供する。」
「手が空いた子は店舗奥のステージに移動し、歌う。そういうアミューズメント的側面を備えたレストランを作る。」
「そうか。で、その仕様を誰が作るわけ?」
「もちろん、お前だ。安心しろ、既に大筋は俺が作った。お前は細部の修正をしてくれれば良い。」
「え、お前プログラミング出来たの?」
「出来ないから勉強したんだよ。同時にお前がどんだけヤバい奴かも分かった。」
「貶してる?」
「褒めてんだよ……とにかく、これでウチが大成功すれば、よその企業もこぞって真似するだろう。大企業の資本力なら尚更な。そうすりゃきっと……」
「何か展望でもあんのか?」
「『むちむちロボ娘メイド喫茶』が世の中に乱立するはずだ……!」
「バカじゃねえの?」
12話程度で終わる予定です。