「ホントにずっと点検だけしてたなあ……」
現在時刻:1時0分
ステージ裏にあるらしい
その光景はどこか、不気味に感じる。
昼間はまるで生きているみたいに動いている彼女たちが、こうして、
それがただ、不気味だった。
その部屋で社長は、彼女たちひとりひとりに何かしていた。
工具を使ってお腹を開いたり、口の中や眼を懐中電灯で照らしたり。
名前を呼んだりもしていたかな。
とにかく、社長はその部屋でずっと作業していたみたいだ。
『あとお願いねー!』
最後に社長は監視カメラに手を振って、そう叫んだ後に裏口から出ていった。
事務所の方で待機しているらしいから、時間が来るまでは本当にここに一人っきりだ。
……なんかスマホで動画でも観るか。
たまに確認するだけで良いらしいし。
現在時刻:2時30分
「ね……眠い……!」
暇すぎる。
ボーッとひたすら何も起こらない画面を見続けるのってホントーに眠い。
スマホの電池も随分使ってしまったし、ずっと座りっぱなしで腰も痛いし。
……ちょっと歩いてこようかな。
別にこの部屋出ちゃだめとは言われてないし。
そもそも、私が歩いてるときに限ってそんなヤバいことが起こるなんて都合の良いこと起こるわけないんだからさ。
うん。
そうだよ。
よし決めた。
懐中電灯借りてちょっと探検しよっと。
そうと決まればまずはどこ行くか決めよう!
やっぱあの人形近くで見たいよねえ。
どうやって行けばいいんだろ。
あ、カメラ見れば分かるかな〜
「……あれ?」
この部屋って、最初からこんなんだったっけ。
なんか変じゃない?
何かが足らないっていうか……
(ま、いっか。行けば分かるでしょ。)
『IDカードか、もしくは制服のバッヂが無いと扉を開けられないから注意してね。』
『帰る時に制服と一緒に事務所に持ってくること。その時にバイト代も渡すよ。』
危ない危ない。
カードを忘れるところだった。
コツ、コツ、コツ、コツ。
無音の世界に自分の足音だけが響く。
「わ!」
声を出してみれば、面白いくらいに反響する。
ちょっと楽しくなってきた。
どうせ自分しかいないって思うと、普段は絶対やらないようなアイデアが湧き出てくる。
くるくる回ってみたり。
「おわっとっと。」
懐中電灯で影絵を作ったり。
「ふふ、力作。」
鼻歌したり。
「ふんふふ〜ん♪」
へんてこなポーズとってみたり。
「そいや!」
一周回ってまた反響で遊んでみたり。
「わ!わ!わ〜〜〜!!」
ギシ……ギシ……
「なに!?」
深夜テンションで舞い上がっていた気持ちに冷水をかけられて、一気に背筋が冷たくなる。
(ウソ、今までの奇行が見られてた!?)
「──は──は──は──は!」
呼吸が浅くなる。
懐中電灯を振り回しても、映るのは誰もいない暗闇。
両手で持っていた懐中電灯を片手に持ち替えて、空いた左手でドライバーを逆手に構える。
……
…………
気の、所為?
誰もいないし、何の音もしない。
心臓がうるさすぎて聞こえないだけ?
でも、襲ってこない。
もし、誰かいるなら襲ってくるはず。
来ないってことは、いないってことだ。
そう、きっとそう。
私が勝手にビビってるだけで。
『何か』がいるなんてことは絶対にない。
たぶん、何か物が落ちたとか、虫がいたとか、そういうのだ。
……戻ろう。
幸い、今いるのはホールに入って直ぐの場所だ。
後退りながら廊下に入って、そのまま壁伝いに警備室に戻れる。
何かいたとしても、それなら襲ってこれないはず。
監視カメラを見なくちゃ。
現在時刻:3時30分
私は、警備室の椅子の上で丸くなっていた。
監視カメラには、何も映っている様子は無い。
(やっぱり、気の所為なのかな。)
例の部屋に感じた違和感は、もうなくなっていた。
現在時刻:??
「ん……」
自分が、警備室の机に突っ伏していたことに気付く。
一体いつから、眠ってしまったのだろうか。
身体を起こして真っ暗に消えてしまったモニターは、それだけ自分が長い間眠りこけていたことを表していた。
──やべ、今何時だろ。
そう思ってスマホを持ち上げたとき。
反射する自分の顔の後ろに。
狼の頭が。
ギシ……ギシ……
ピピピピ。
ピピピピ。
「ッ!」
夢?
鳴っていたのは、スマホのアラームだった。
画面には『AM 06:03』と表示されている。
電池残量は、2%。
警備室に備え付けられた小さな窓から入る陽の光は、今の状況が夢ではないことを教えてくれているように感じた。
現在時刻:6時4分
終わらんかったので3篇構成です。