「う"ぅ〜、ぐすっひぐっ、ごわ"がっだあ"!」
店の真ん前で座り込んでしまった泉さんが泣き叫ぶ。
やっべぇコレ見られたら完全に事案だぞ。
今が夜中で助かったかもしれない。
「いやあ、ごめんね泉ちゃん。まさかそんなに怖がるとは。」
「う"え"ぐ、ぐずぐず……」
「ホントごめんね、泉さん。このバイト、ホントはあの子たちが悪さしないか監視して欲しくて募集したんだ。」
まあ、あんなに自発的に動くとは思ってなかったけど。
ギィ……ギィ……
入口まで来た
良かった、外に出ようという気はないらしい。
だが、こんな風に動き始めたのも、泉さんがくる30分前に分かったことで。
もしかしたら今後外に出たがるようになるかもしれないから、その辺はちゃんと対策しないとマズそうだ。
……やっぱりなんか、双子にメイド服着せたせいで他の子がなんかちょっとアレな──あれ?
「おい、ちょ、え?ちょっ……ちょっと待てなん、え?は?」
俺はある事に気付き、思わず
「ん、どうした?」
「ぐすっ、なんでずが?」
「……お前さ、
「え?なんもしてないけど?うわ……え、ウソだろ。え、マジで?」
前までは、いや昨日までは僅かに膨らみが分かる程度の大きさになっていたはずだ。
というか、全員同じサイズのパーツを付けていたはずだ。
後ろにいる皆と比べてもシルエットがめちゃくちゃ浮いてる。
店内のライトをつけてなかったら気付けなかったかもしれない。
「よく見たら色も馴染んでねえな。」
思わず頭を抱える。
自分のパーツ勝手に予備と交換できんのか……
「な"んな"んですか!無"視"しないでぇ!」
「すみません、大変お見苦しいところを……」
「いや、こっちも色々事情を伝えなかったのが悪いから。ごめんね本当。」
「あの、ホントに満額もらっちゃって良いんですか?」
「まあ、口止め料かな。」
「ハッキリ言いますね。こんなの話したところで誰も信じないと思いますけど……」
「それでも、怖い思いさせちゃったからね。」
「……ありがとうございます。」
「また、今度はあの子たちが動いて──いや、えっと、そう。働いてるときにまた来てよ。」
「はい。じゃあ、またお店来ますね。」
取り敢えず、始発の時間まで事務所にいてもらった泉さんは、そう言って笑顔で帰っていった。
──ライブ、行けると良いね。
「……今日の営業、どうするよ。」
「どうするったって、やるしかないだろ。予約してるお客さんもいるんだから。」
「言うこと聞くか、アイツら?」
「それを祈るしかない……今日の午後には本社に戻らなきゃいかんからな。もう出来ることは少ない。」
「……」
飯田は不安そうな顔をする。
そりゃそうだ。
もしあの子たちが指示に従ってくれなきゃ、良くて廃棄、最悪閉店だ。
自分たちが手塩にかけて生み出した存在を廃棄処分になどしたくはない。
それは俺も同じ気持ちだ。
でも、もしも魔が差してほんのちょっぴりでもお客さんに
ぞっとする。
そうなったら、廃棄処分は免れない。
「はぁ〜、頼むぞ……」
俺たちは夢でも見てたのか……?
「普通、だったな。夜中の出来事がウソみたいに。」
飯田も俺と同じことを思っていたらしい。
そう、普通だった。
いや、普通と言うにはちょいちょい独自にファンサービスもしていた気がするが、今朝の出来事と比べたら無いに等しい。
「このまま、上手くやってくれると良いんだが。」
高速道路の上を、俺たちを乗せた車が自動運転で走る。
揺れは殆ど感じない。
下道とは違い、高速道路は自動運転で
人間の運転ほど、不安定なものはないから。
事実、この形式になってから事故は一度も起こっていない。
「……そういや、言い忘れてたんだけどさ。」
思い出したように飯田は言う。
実際、忘れていたんだろう。
あんなことがあったんだから。
「ん?」
「例の泥棒、いただろ?」
「ああ、名前は確か──
「あいつ、やっぱり例のピザ屋の従業員だったらしい。奴がウチに持ち込んだ工具の中に証拠があったって。」
「上からの指示、かな。」
「だろうな……店側は否定してるが。」
「上手くやれてると、思ってたんだけどなあ。」
「向こうが欲しがってたのはウチとの対等な関係じゃなく、ウチの利益だったってだけだろ。」
「……ちょっと寝る。着いたら起こして。」
おい、俺も眠いんだけど!?
そう控えめに言う飯田の横で、俺は眠りについた。
運転席に座る人間は、法的に眠れないのだ。
別に店の