TSして魔法少女になったら頭が可笑しい奴しかいないんだが   作:つる植物

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17 殺気がないのは反則じゃない?

 今日のシミュレーションルームは満員御礼。

 数多くの観客の中に私とエミリーの留学生組ももちろん含まれている。

 

 シミュレーションルームには無手のブラック・ブレイドと……両手で大剣を持ったブルー・カノンが対峙していた。

 

 「エミリーはどっちが勝つと思いますか?」

 「普通に考えたらブラック・ブレイドなんだけど……ブルー・カノンが未知数すぎる、っていうか近接いけるの?」

 「Sクラスになる前は後方が強いオールラウンダーだったみたいですね」

 

 ブルー・カノンはSクラスになってからは遠距離殲滅魔法しか使わなくなったがAクラスの時は組むメンバーによっては近接もこなしていたらしい。

 

 「まぁ、武器はなんでも使えると九条も言ってましたけどね」

 「ふーん、しかしなんでまた武器を持って美鈴と?」

 「おそらく黒井が不可視の斬撃拡張を使ったからだと思うのですが……」

 

 それだけで戦う理由になるとは思わない。

 情報操作の一環と考えてもいいのだけれど……なんとも言えない。

 

 「まぁでも勝負にならないんじゃない?」

 「それはどうかな、エミリー君」

 

 声のした右方向を見ると日本の魔法少女がいた。

 かなりの高身長で髪が短い、男装していたら中性的な男と言われても分からないくらいの人だ。

 高校3年のAクラス1位の魔法少女だ、名前はたしか……。

 

 「あれ、円(まどか)じゃん、来てたの?」

 「こんなビックイベント来ないわけないだろ、留学生諸君」

 

 なんか劇チックな話し方をする人だなと思う。

 こんなふざけた話し方をしているがブラック・ブレイドを除いた近接では日本最強、エミリー相手に10本勝負で5勝をもぎ取ったこともある実力者だ。

 円はエミリーの横に立つと視線はシミレーションルームに向ける。

 

 「円はどうなると思う?」

 「普通に考えたらブラック・ブレイドだけど……ブルー・カノン、いや九条理子はブラック・ブレイドの天敵ではある」

 「天敵?」

 「見ていればわかるよ、まもなく始まりそうだ」

 

 間合いは10メートル離れて開始する。

 開始と同時にブルー・カノンは5発の魔力弾を生成して発射する。

 それを難なくブラック・ブレイドが避けたのだが……。

 

 「なんかブラック・ブレイドの動きが悪い?」

 

 いつものブラック・ブレイドなら突っ込んで斬撃拡張の射程に入り次第首を刎ねそうなものだが、魔力弾ごときに攻めあぐねている。

 

 「なんで?」

 「単純さ、殺気が乗っていないんだよ」

 「あたしもブラック・ブレイドと戦う時は殺気を載せないようにしてるんだけどなぁ」

 「権能で消しているのかも……」

 

 彼女が持つ権能のなかに殺気を消す、もしくは発しても相手が殺気と感じてない可能性がある。

 

 「九条君にとって戦闘とはすなわち作業らしい、黒井君曰く『虫を相手にしているみたい』だそうだ」

 「なるほど、単純に殺気が全く乗ってないのですね」

 「そういうことだ、入学以来無敗を誇っていた黒井君に土を付けたのは後にも先にも九条君だけだ」

 

 なるほど、弾幕に突っ込めないのは死角からくる攻撃に対応出来ない。

 

 「まぁ、彼女の野性的勘なら避けれるだろうけど……」

 

 我が国の対ブラック・ブレイド用シールドをブラック・ブレイドは斬れなかった。

 

 「なるほど、ブラック・ブレイドじゃブルー・カノンのシールドを抜けないのか」

 

 シールドの硬さは範囲に反比例するが魔力には比例する。

 全身を覆うシールドを展開してもブラック・ブレイドが斬れる硬度を超えているのだろう。

 

 「加えてブラック・ブレイドは殺気に当てられなければスイッチが入らない」

 

 破れかぶれで突っ込んだブラック・ブレイドは器用に魔力弾を避けて一閃する。

 

 「あの魔力弾は避けさせるためのものですね」

 

 正確すぎる攻撃をわざわざピンポイントのサイズのシールドで防ぐ。

 ブラック・ブレイドが引こうとした瞬間、彼女の後ろにシールドが展開されていた。

 

 一閃、ブルー・カノンがブラック・ブレイドの刀ごとブラック・ブレイドを真っ二つにした。

 

 「ブラック・ブレイドが負けるなんて……」

 

 真っ二つにされたが直ぐに元に戻る。

 お互いに最初の位置まで戻って行く。

 

 「10本先取ならいつもの光景だ、1本目はブルー・カノン。負けたことでブラック・ブレイドにスイッチが入る、ここからが本番だよ」

「スロースターターとはちょっと違うけど戦闘モードになるのに時間が掛かる感じかな」

「エミリー、ちなみにブルー・カノンをどう評価します?」

「んー、近距離で弾幕張ってるだけだからなぁ、動き自体は平凡の域は出てないね。日本でいうところのBクラス上位って感じだよね」

 

 まぁBクラス程度の実力でブラック・ブレイドに勝てるのがおかしいのだが。

 

「始まった、ブラック・ブレイドが突っ込んだ!」

 

 1戦目とは打ってかわり最初っから突っ込んで行くブラック・ブレイド。

 権能が効いていないにも関わらず普通に死角からの弾幕避けて接近していった。

 

「後ろに目でも付いてるみたいだね、黒井君は」

 

 ある程度近づくとブルー・カノンの首が飛んだ。

 

「不可視の斬撃拡張……だけど手は動いてなかったはずですが……」

「恐らく左足かな、若干変な動きしてたね」

「武器って手以外に出現させれるんだ……」

 

 相変わらず知らない仕様をバンバン使ってくる。

 足に注目していたら手から不可視の斬撃拡張が飛んできたり、普通の斬撃拡張も飛んでくる。

 それを考えずにやってくるからたちが悪い。

 

「なんで全身を覆うシールド出さないだろ?」

「訓練だからじゃない?」

 

 訓練だからこそやるべきだと思うのだけれど……。

 

 模擬戦は10本行われてブルー・カノンが3勝という結果に終わった。

 

「いやぁ、あたしと戦う時全然本気じゃなかったんだね」

「そうみたいですね」

「ブラック・ブレイドが本気を出せる相手はブルー・カノンだけさ」

「こっちも模擬戦やろうかな、円、付き合ってよ」

「問題ない、今日こそ勝ち越してみせるよ」

 

 笑いながら2人で離れて行く。

 

「私は帰ります。さようならエミリー、天野(あまの)さん」 

 

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