TSして魔法少女になったら頭が可笑しい奴しかいないんだが   作:つる植物

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7 金髪碧眼の転校生ってロマンですよね

 基本的にどんな時でも冷静沈着を心がけるソフィアは、若干浮ついていた。

 祖国が用意したアパートの一室、鏡の前で黒色のセーラー服を身に纏いくるりと回る。

 

 (すごい! ほんとにアニメの世界に来たみたい!)

 

 祖国には当然、制服などという文化はない。魔法少女は既に軍に組み込まれ、基本的には可愛くもない軍服を着ている。

 ソフィアは日本のアニメを好んで見ていて、若干の……いや、日本の学校生活にあこがれを抱いていたのだ。

 古臭いデザインで何の合理性もないセーラー服だが、輝いて見えた。

 

 (まぁ、お仕事しなきゃいけないんだけど……)

 

 何も考えずに学校生活を満喫できればいいだろうが、自分たちの行動は祖国にも日本にも常時監視されている息苦しいものだし、日本の生徒たちも自分たちを警戒するだろう。

 さらに祖国からは、山のようなミッションを課せられている。

 生徒との模擬戦は、対戦相手の許可があれば良いとの言質は取ってある。

まずは最優先のミッション、ブルー・カノンとの模擬戦をどう実現させるか。

 まずは学校で九条に接触し、対応を検討することに決めた。

 

 登校しながら、ブルー・カノンについて祖国から貰った情報を頭の中で整理する。

 ブラック・ブレイドがすべての情報が割れているのに理解できない対象であるならば、ブルー・カノンは何の情報も分からずに理解できない対象であることだ。

 魔法少女は武器を持つため、持っている武器からある程度状況を把握できることがある。

 ブラック・ブレイドはその最たる例で、刀を使った典型的な近接攻撃タイプだ。まぁ、あんな刀でなんであそこまでできるのかは、いまだに理解できないが。

 ブルー・カノンの持つ杖は、九条財閥の技術の粋の結晶であることは有名な話だ。

 遠距離を得意とする魔法少女は、杖を使っている者が多数いる。

 杖で魔法の発動の補助、威力増加、コントロールの向上、中には仕込み刀で近寄られた際の切り札として使っている者もいる。

 杖で何をしているか分かれば、何を得意として何を得意としていないか、解析できる情報はいくらでもある。

 祖国の諜報機関は優秀なので、ブルー・カノンが使っている杖の設計図を入手できている。

 ブルー・カノンが持つ杖は煌びやかな金細工に大きなサファイアがあり、杖の部分も高級な木材で、黒い漆でコーティングされた、おそらく作成には日本円で億を超えるだろう逸品だ。

 そこまで金を掛けて作られた杖の解析結果は、まさかの「何の能力もない、ただ見た目が綺麗な豪華な杖」だった。

 報告書を何度も読み返したが、結論は同じだった。

 杖の製作者は「お嬢様の青いドレスに合うように作りました」と笑顔で言っていたらしい。

 まぁ、唯一の救いはブルー・カノンの強さに再現性がないことくらいか。さすがにブルー・カノンほどではないにしろ、あれほどの並列制御を杖の補助なしでできていたら、それはそれで大問題だ。

 

 話を戻すが、脅威度で考えればブラック・ブレイドよりブルー・カノンの方が遥かに上だ。

 ブラック・ブレイドによる暗殺は防げないという結論に異論はないが、殺せても数十人、多くても数百人程度でしかない。

 祖国は大混乱だろうが、指導者が死んだところで次はいくらでも用意ができる。

 殺気を感知できるということは、逆を言えば殺気のないものは感知できないので、懐に入れば殺す算段はいくらでもある。

 

 対してブルー・カノンは、3分で都市一つを壊滅できる魔法の行使が可能である。

 もちろん広域殲滅魔法はどの国でも持っている技術であるのだが、普通は専用の場所やかなり長い詠唱、もしくは設定が必要である。

 国内であれば魔力が集まりだした段階で感知できるし、脅威ではあるが対処できないわけではない。

 しかしあれほどの威力を、どの場所からでも3分あれば撃てるというのは悪夢でしかない。

 3分では、感知してから何かをする時間はない。せいぜいシェルターに逃げ込むくらいだ。

 さらに宇宙空間にでも行かれたら、本当に手の施しようがない。彼女が宇宙まで一人で飛んでいける可能性は十分にあるのだ。

 宇宙空間では誰の邪魔もされずに魔法の準備ができる。3分以上、なんなら1日掛けたって問題ない。

 

 更にタチが悪いのは、彼女が初級魔法を1000発撃っているという点だ。

 1000発の魔力弾を生成するのは広域殲滅魔法であり、国際法でかなりの制限が課せられている。

 制限を律儀に守っている国は祖国を含めてほとんどないが、表向きはどこも順守している。

 彼女は広域殲滅魔法を謳っているが、実際は「1発の魔法弾を生成する初級魔法」を同時に1000個使用しているだけでしかなく、表向きに規制する手段が存在しないのである。

 さすがに初級魔法を規制するとなると、それはただの武装放棄と同義であり、そのせいで日本が魔物に蹂躙されては困るのだ。

 

 校門に到着して通行証を提示し、校門をくぐる。

 ソフィアは職員室に向かい、今後を考える。

 しかしソフィアもソフィアの祖国も、なぜブラック・ブレイドの方がランクが上なのかという、初歩的で、それでいて致命的な事実を見落着していた。

 ブルー・カノンは単独で世界の秩序を塗り替え、しかも事実上引退しない世界の脅威である。

 ブラック・ブレイドがブルー・カノンすら霞むほどの厄災であることを、まだ日本以外は把握していない。

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