TSして魔法少女になったら頭が可笑しい奴しかいないんだが   作:つる植物

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8 なんか話が無駄に壮大になってません?

 パーティーが終わり同盟国からの同級生が転校してくる数日前にさかのぼる。

 俺たちSクラスとAクラスの魔法少女が集められ、赤崎本部長からブリーフィングを受けていた。

 

 俺たちは講堂のような場所に集められた。

 俺は一番前の席、真面目な話を聞いていると眠くなるので後ろが良かった。

 隣には九条が、その隣にはSクラス3位の雷同(らいどう)さんがいた。

 残り二つのSクラスの席はあるのに欠席しているらしい。正直、俺も帰って寝たい。

 

 雷同さんはすでに25歳で、さすがに制服は着ていない。

 この人、Sクラスなのにいままでの魔物撃破数が0という変わり者だ。

 いつも魔物の群れの真ん中に解き放たれて命からがら逃げる……いや、魔物の群れの中でお散歩するのがお仕事だ。

 権能で勝手にヘイトを集めることができるので、いわゆる時間稼ぎ要員だ。

 俺と唯一違うのは、味方の魔法の雨が降ってきた時に、俺は権能で攻撃を回避するが、彼女は魔法で亀のように防御してやり過ごすという点だ。

 魔法は回避と防御に振り切っており、俺や九条でも殺すとしたらかなり骨が折れると思う。

 昔は明るい人だったらしいけど、地獄を見過ぎてかなり陰キャみたいな人になっている。

 最近はほとんど戦場に出ていないらしい、うらやましい限りだ。

 何もしていないのに俺と九条にやたら感謝してきた、よくわからない人だ。

 

 赤崎本部長が前に出てきて説明を始める。

 

 「まず初めに、同盟国は世界全体で見てもかなり異質な国です。その最たる例として、どの国でもSクラスは大体1名以上います。しかし同盟国では、少なくとも20年Sクラスが一人も確認できていません」

 

 へー、そういえば俺が戦った女の子もAクラスだったな。

 Sクラス抜きで魔物に対応できるのか不思議だ。

 

 「理由は単純、カートリッジシステムの開発により個人への依存を排除した結果です。これによって、かの国はSクラスが1人もいない代わりにAクラスを量産できるようになりました。Aクラスの比率は30パーセントほどと予想されています」

 

 それは単純にすごいな。この国では大体400人の魔法少女がいるが、Aクラスは確か1割もいなかったはずだ。

 

 「我が国での少子化が叫ばれて久しいですが、かの国には移民が合法、非合法問わず押し寄せて子供の数に困りません。かの国の魔法少女の数はおそらく5000ほどと推察されます」

 

 つまり、大体1500人のAクラスがいるってことか。化け物国家だな。

 

 「かの国ではSクラスはもはや無用と断じています。1機の専用機より100機の汎用機という考えです」

 

 まぁ、Sクラスって言ってもかなりムラがあるから理解できる考えだ。

 どんなに強いSクラスも数の暴力には勝てないと歴史は証明しているしな。

 俺はチラリと横目に九条を見る。話を真剣に聞いている。真面目なやつだ。

 

 (……この女が物量で押しつぶされる姿は想像できん。俺が1500人のAクラスを相手にした場合かなり苦戦すると思うが、九条は遥か間合いの外から全員ぶっ飛ばす姿しか思い浮かばん)

 

 赤崎さんは淡々と説明を続けている。

 

 「実際、かの国は通常戦力でも魔法少女の戦力でも世界1位で敵はいませんでした」

 

 赤崎さんは俺と九条を見る。

 

 「この間までは」

 

 あの国が脅威を覚えるような出来事……なんかあったっけ?

 

 「ブラック・ブレイドとブルー・カノン、君たち2人が同盟国、いや世界にとっての脅威となっている」

 「えぇ!?」

 

 思わず驚きの声が出てしまった。九条は理解できるが、なんで俺まで? 俺はただ刀を振り回すしかできないんですが!?

 

 「幸い、ブラック・ブレイドに関して世界はかなりの過小評価をしています。どんな要人でも暗殺できる程度、と」

 

 日本がやたら俺を過大評価していると思うのですが……。

 そもそも魔物を斬るのは好きだが、人間はあまり斬りたいとは思わない。模擬戦でもあまりいい気はしないのだ。

 

 「しかし、ブルー・カノンに関しての評価はおおむね日本側の評価と一致しています」

 

 九条が口を開く。

 

 「なるほど、それで私たちはどう踊れば?」

 

 赤崎さんは九条を見据えて口を開いた。

 

 「今回の留学を受け入れましたが、日本としての一番の目的は同盟国のブラック・ブレイドへの評価をそのままにすることです。基本、それ以外は些事だと認識していただいて構いません」

 

 俺の評価? ただ刀をぶんぶん振り回すだけの女の子なんですけど!?

 

 「ブラック・ブレイドの評価が日本側と一致する、つまりそれは日本以外がブラック・ブレイドの存在を許容できなくなることです。さりとて、我々がブラック・ブレイドを手放すことはできません。世界を相手に戦争することになります」

 

 えぇ、なんか意味が分からない話になってる。飛躍しすぎでしょ。

 

 「その戦争は勝っても負けても意味がありません。起こさないようにするしかありません」

 

 まぁ、戦争は嫌だから別にいいけど、なんか釈然としない。

 九条が俺に説明をしてくれた。

 

 「美鈴、世界はいまあなたのことを、どんな要人でも殺せる近接戦闘が最強の魔法少女という認識なの。それはどの国も、あなたの斬撃拡張を正しく評価できていないということなのよ」

 

 斬撃拡張か……あれで世界そのものを斬れるようになったら、なんかSクラスになったんだっけか……。

 ちなみに世界を切った際、近くに当時Aクラスだった九条がいた。

 その後すぐにSクラスになってたな、と思い出す。

 そんなにまずいことなのかね、これ。

 

 「今はまだ5メートルの射程しかないけれど、斬撃拡張の世界記録は確か1キロくらいあったはず。それが10キロになったら? 20キロになったら?」

 「そもそも世界が切れる斬撃拡張は詠唱と溜めが必要だから乱発できんぞ。使い勝手悪すぎて基本使ってないし」

 「世界を斬れる、その時点でおかしいのよ。概念に干渉できる魔法少女は歴史上確認されていないわ」

 

 赤崎本部長が俺に言った。

 

 「まぁ、あなたに腹芸を期待していないから基本的に好きにしていい。世界が切れることさえ言わなければ、模擬戦だって好きにして構わない」

 

 むしろデータをどんどん撮らせてそっちに集中させてくれ、とまで言われた。

 模擬戦嫌いなんだけどなあ。

 

 「皆さんも模擬戦をどんどんしてもらって構いません。いい刺激になるでしょう」

 

 Aクラスで特に好戦的な連中ががやがやしだす。

 

 「同盟国もかなり必死です。今回模擬戦を仮想空間で実施するために、カートリッジシステムの詳細なデータを提供してきました」

 

 それって国家機密レベルなんじゃないの? 本気すぎるでしょ……。

 

 「九条さんも模擬戦をしてもらって構いません。むしろこっちも向こうのデータを取りたいのでよろしくお願いします」

 「お任せください。せいぜい踊ってあげましょう」

 「これにて終わりです。解散してください」

 

 みんながわいわいしゃべりながら退席していった。

 

 「なんなんだよ、これ……」

 

 俺がつぶやくと九条は微笑む。

 

 「美鈴が戦うところ、ちょっと楽しみだわ」

 

 だから模擬戦苦手なんだって!

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