ベイブレードNEO 第1話 運命
熱狂的なスポーツとしてベイブレードが流行した世界、根尾町という町に校舎を構える根尾中学校では突如として根尾中ベイブレード部の廃部の知らせが届く。
廃部の決断を下したのは根尾中ベイブレード部部長・門守バン。
しかし、根尾中ベイブレード部の一員である蒼龍ソウタは納得がいかなかった。(ナレーション)
「廃部!?」
「バン、一体なんで……!」
肩を掴み、その理由を尋ねる。
「なんでって、お前も知っているだろ……?」
「俺たちベイブレード部はここ最近負け続きが多い、俺たちに送られてくるのは常に冷たい視線だ」
「今のままが続くならいっそのこと……」
ソウタの顔から目を逸らしながら、自信なさげにその理由を述べた。
「だとしても、そのまま縮こまってもいいのかよ!」
寂れた部室の中に言い争う声が響き渡る。
「お、おい……2人とも、落ち着けって……!!」
__ガチャ
名も無き部員が慌ててその場を収めようとした瞬間、部室のドアが開く。
「失礼する」
一言言って、入室してきた。
「お、お前は! 生徒会長、一角ヒカル!」
「お前達に話があって来た」
「試合が決まった」
根尾中学校生徒会長である一角ヒカルという少年、彼は淡々とした声で試合が決まったと知らせた。
「おぉ! 試合が決まったのか。
俺たちを選ぶなんて見る目があるな!」
「相手は『神世学園』だ」
「神世学園」……その言葉を聞いた瞬間、部室が無音になった。
「え……」
「な……」
「嘘だろ……」
突如告げられた強豪校との試合に殆どの者が顔を真っ青にし、絶望した。
但し、一人を除いて。
「終わった……」
「きっとこれから神世学園にメッタメタのバラバラにされるんだ……」
「よりによって神世と当たるとは」
「〜ッ、ヨッシャー! 燃えてきたぜ!」
「は!?」
「お前、正気か!?」
「神世学園といえばベイブレードカップ21年間無敗の超強豪。俺たちがまともに戦える相手なんかじゃない!」
「それはそうかも知れない」
「俺は神世学園と戦えることが嬉しくて……、
つい……」
神世学園の強さを存じているものからすればソウタの能天気ぶりはイレギュラーそのものだった。
ざわつく部室の中にトーンを落とさず、ヒカルが話をつづける。
「蒼龍ソウタ、浮かれている場合ではない」
「俺も試合に参加しお前らの実力を確かめる」
「廃部にするかどうかはその後だ」
「ヒカル……」
部室の空気は依然、重苦しさに包まれていた。
ベイブレードカップ当日
観客の歓声がネオスタジアムに響く。
「お待たせしました! 皆さんお待ちかねのベイブレードカップの時間です! 実況は私、古面定太がお送りいたします!」
「まずは西軍、ベイブレードカップ21年間無敗! 今大会も制覇か!? 絶対王者 神世学園!」
会場中に鳴り響くマイクの声とともに神世学園が姿を表す。
彼らの登場に観客席が沸き立つ。
「続いて東軍、根尾中学校!」
会場は一気に静寂に包まれた。
「やっぱり俺たち歓迎されていないんじゃ……」
観客席にいる部員は不安を口にして辺りを見渡す。
もはや、会場全体がソウタ達を拒絶しているようだった。
「……」
聞こえていたのかソウタは首を横に振る。
それは「そんなことはない……決して」と言わんばかりだった。
しかし、部員の言っていることに対しては何も反論しなかった。
寧ろ反論できなかった。
「貴様らか、俺たちの対戦相手というのは」
「舐められたものね私たちも」
神世学園のリーダーにして絶対王者・皇龍とメンバーの一人にして紅一点の華炎リン。
絶対王者からかけられる圧は対峙する者に『恐怖心』を与えた。
「……ッ」
蛇に睨まれた蛙のように言葉を発さす怯えることしか出来なかった。
「1stバトル!」
会場音声で、絶対王者との戦いの火ぶたが切って落とされた。
「ここは俺が先に出る」
根尾中学校の先鋒はヒカルが務める。
「見させてもらうぞ、僕らと対等に戦えるか」
対するは神世学園のメンバーの一人、水城コウ。
Ready……Set!
3・2・1 ゴーシュート!
一角ヒカルの使用するベイはフラッシュユニコーン。
それに対しコウの使用するベイはダークゲンブ。
ダークゲンブがスタジアム中央で構える。
対してフラッシュユニコーンはひっつくように攻撃する。
同じディフェンスタイプでも戦い方が違う。
「そんなチリチリ攻めているようではゲンブの牙城は崩せない」
「違う、ゲンブの状態を見てみろ」
コウが冷徹に言い放つも、ヒカルは動じる様子を見せない。
「……?」
「ゲンブが傾いた!?」
コウが目を見張る。
スタジアムで強固な防御を築いていたはずのダークゲンブが不安定な動きを見せていた。
「お前のゲンブは低姿勢の防御が特徴。対して俺のユニコーンはいなし刃を上からの攻撃に転用してスタミナを消耗させた」
ユニコーンのいなし刃がダークゲンブを上から押さえつけ、着実にそのスタミナを削り取っていた。
「くっ……!」
先に回転を止めたのはダークゲンブ。
先制点は根尾中学校が獲得した。
「フラッシュユニコーン、スピンフィニッシュ! 根尾中学校に1ポイント!」
「なんと、根尾中学校一回目のバトルにして初ポイント! これは驚きです!」
観客席がざわつく。
「すまない負けてしまって……」
「案ずるな、束の間の幸せを与えておいて絶望へ叩き落とす……それこそが至高……!」
仲間の敗北を責めることはなかった、それは逆に言えば自身のやり方さえできればそれで満足できるという表れだ。
「すげぇよ、ヒカル! もしかしたら俺たち本当に勝っちまうかもしれないぜ!」
「いや、それは見込めない……」
「えっ……なんでだよ!」
「ソウタ、それは出場してみれば分かる」
「だがここはバン、お前が先に出ろ」
「な、何故なんだ」
「(蒼龍ソウタは神世学園の実力を完全に理解していない、すまないがこのままやつを次に出させても意味がない)」
「……!」
(…確かに今のソウタでは間違いなくそのまま叩きのめされる……そうなるのなら……!)
「分かった」
ヒカルの囁いた内容はソウタに実力差というものを確実に見せるようなものだった。
残酷なようだが彼が油断しているという事実は変わらない。
渋々受け入れ、前に出る。
対して神世学園からは……
「うふふ……あなたが私の対戦相手かしら?見た感じ計算するまでもないくらいの実力っぽいけど…?」
バンの相手は華炎リン。
完全に格下とみなされていた。
「計算するまでもないか確かめてみろ!」
そう言ってバンは自身のベイ、デスケルベロスを取り出す。
「計ってあげるわ、バーニングスザク!」
神世学園の紅一点、華炎リンはバーニングスザクを取り出す。
バランスタイプ同士の対決だが、周囲から見ればどちらに軍配があがるかは言うまでもなかった。
__キン
スタジアムに一瞬で弾かれ、ブレードの金属音が鳴り響いた。
「バーニングスザク、オーバーフィニッシュ!
神世学園に2ポイント!」
「くそっ……!」
相棒を拾い上げ、悔しさに身を震わせる。
「あなた達そんな実力でよくも私達に挑もうと思わたわね」
「今のあなた達の実力は『三流』」
「そんな三流の相手をしてくれた私達に感謝しなさい」
「うッ……!」
リンが近づき、バンを『三流』と評する。
心まで折られた彼は膝をつき、項垂れる。
「やっぱり最初に勝てたのはたまたまだったか」
「ただのまぐれか」
観客席は冷たい声に満ちていた。
「さっきからバンを侮辱するな!」
ソウタは観客席に向かって怒る。
「ソウタ……」
バンは跪きながらソウタの名を口にすることしか出来なかった。
「次の勝負、俺が勝って見返してやるぜ!」
絶対に勝って見せると言うソウタに神世学園のメンバー、白牙ダイが近づく。
「大口を叩くやつほど歯ごたえのねぇやつなのが分かるぜ」
「噛みちぎってやるぜ! ファングビャッコ!」
ダイはスタミナタイプのファングビャッコを取り出す。
「スラッシュドラグニル!」
対してソウタはスラッシュドラグニルを取り出す。
タイプ相性上は有利だが……
「ファングブレイク!」
__バァンッ
「ファングビャッコ、バーストフィニッシュ! 神世学園の勝利!」
「分かったか、これがお前の今の実力だ」
「ぐっ……!」
ソウタはなす術なく瞬殺された。
そして、自身の実力をイヤというほどに思い知らされた。
音声ジャッジを通じた判定も彼の心に追い打ちをかけるようだった。
一方、観客席は歓声に包まれる。
「神世学園!見事、その強さは健在でした! 根尾中学校も最初1点を取りましたが及びませんでした」
「くそっ!」
悔しがるソウタに龍が近づく。
「蒼龍ソウタ、龍の名を冠する者として勝負しろ」
「勝ったら貴様らに5点くれてやる」
「尤もダイにも及ばなかったやつができるとは思えんがな」
彼が持ちかけた話に会場全体がざわつく。
「なんと皇龍選手から蒼龍ソウタ選手に宣戦布告です! 蒼龍ソウタ選手、この勝負どういたしますか?」
「……やってやるさ!」
「威勢だけはいいようだな」
Ready……Set!
3・2・1 ゴーシュート!
(相手は左回転のボルトドラゴ。ここは相手の動きを読んで……)
「貴様、何か考え事をしているな」
「……!」
「だが覚えておけ、そんなものすぐに無意味になると」
「あっ!」
驚くソウタを他所にスラッシュドラグニルとボルトドラゴが正面衝突する。
「ドラグニル!」
「貴様はこう考えていた」
「あいつのボルトドラゴは左回転、ならばドラゴの動きを読んで避けるしかない、と」
龍は自身のこめかみを指で軽く叩き、ソウタが考えごとをしていると見抜いたことをアピールする。
「……ッ」
「図星だな」
「だが無意味だ」
「ドラゴのギアは渦巻き形状になっている、だからどんな相手でも逃さない」
「ドラゴインパクト!」
ドラゴの強力な必殺技が炸裂しドラグニルは大きく弾き飛ばされる。
「ドラグニル!」
(俺はどうしたら……あいつはベイと一つになっているような感じだ)
(ベイと一つになる?)
ソウタはあることを思い出す。
__蒼龍家(7年前)__
「いっけー!」
「中々の攻撃だ、だが……」
「プロテクタードッグ!」
「あぁー!
バーストした!」
「父ちゃん、本当にベイ強いなー!」
「ハッハッハ!
照れてしまうじゃないか!」
「そういえば父ちゃんからオーラみたいなのを感じたんだけど……」
「おっ、そこに気づいたか!」
「これはベイとの『共鳴』いわば一緒に戦いたいという思いなんだ」
「共鳴……俺にもできるかな?」
「あぁ、ドラグニルと練習していく内にきっと掴めるさ!」
「父ちゃん応援してるからな!」
「私も応援してるからね」
(ドラグニル……お前はここで終わりたくないよな?
まだ戦いたいよな?)
7年前の記憶、父・龍二とのベイバトルで記憶の片隅にあった「共鳴」という言葉、母・龍海の応援…それを思い出したソウタ。
__キラン
その瞬間、ドラグニルが一瞬光を発した。
(……! やっぱり、まだ戦いたいよな相棒!)
「ほう……!」
龍は一瞬、口角を上げる。
「龍!俺はお前を超える!」
「いっけぇぇぇ! ドラグニル!」
ベイから光が出てドラゴンのオーラが実体化する。
「なんだあれは……! 見たことがないぞ」
オーラの出現に観客席がざわつく。
「すごい、あれがソウタの……!」
「これで決める!」
「ドラグニルブースト!」
今度は逆にドラグニルがドラゴを弾き返すが、龍の表情は依然変わらない。
__タッ
「……なッ!」
弾かれたにも関わらず、ギアがスタジアムに食いつき踏みとどまった。
「なななんと!
ボルトドラゴ踏みとどまった!」
「フッ…フフフ…、ハーッハッハッハ! 面白い……! 良いものを見せてもらった」
「ならばこちらもとびきり良いもので返そう」
「ボルトドラゴ!」
高笑いし、ベイの名を呼ぶ。
ベイからどす黒いオーラと青龍のオーラが実体化する。
「うっ、うわぁぁ……!」
「く、苦しい……!」
「この感覚、今までにない!」
オーラの影響は観客席にも波及していた。
しかし、何故かは分からないが観客達が突如苦しみだした。
「ドラゴインパクト・ダーク!」
__バァァン
「……!」
__カン……カラン
ドラグニルのパーツは全てスタジアム外へ散らばった。
「ボルトドラゴ、バーストフィニッシュ! 神世学園の勝利!」
「蒼龍ソウタ選手! 皇龍選手にあと一歩及びませんでした!」
「そんな……」
膝をつき項垂れるソウタに龍が近づき、ドラグニルを拾い上げた。
その後、それをジッと見つめた。
「どうやら貴様のベイ、まだ『喰えるところ』があったようだな」
「時間をやる、次のベイカップまでに鍛えてこい」
喰えるところがある……意味深長な表現をした後、会場を後にした。
「龍……」
暫くしてソウタ達は根尾中学校に帰ってきた。
一方、神世学園は勝ち進め優勝を果たした。
「あいつは次のベイカップで待っていると言った。
けど、ベイブレード部はもう廃部……」
「ごめん、みんな俺のせいで……!」
顔を伝い、床にまで涙が零れ落ちた。
悔しさにまみれつつもこれからやってくる運命を受け入れようとしたその時、再び部室のドアが開く。
「そんなことはありません」
「あ……あなたは……!」
「校長先生!」
ベイブレード部に姿を現したのは根尾中学校の校長、根尾新太だった。
「皆さんに折り行って話があって来ました」
「ベイブレード部の皆さん、神世学園に最後まで諦めず食らいつこうとした姿勢、私はベイブレードファンとして関心を持ちました」
「…ということは?」
「はい、ベイブレード部は廃止せず是非とも続けてください」
「……! 〜〜〜ッ、やったーー!」
「校長先生、ありがとうございます!」
神世学園に敗れた根尾中ベイブレード部。
しかし、身近なファンによってベイブレード部の廃部は撤廃。
ここから根尾中ベイブレード部の歯車は大きく動き出した。(ナレーション)
__イメージCAST__
根尾中学校
蒼龍ソウタ-小林千晃(主人公)
(髪:青と白のインナーカラーでハネた形状/目の色:青)
門守バン-梶裕貴
(髪:赤と黒のツートーンカラーの短髪/目の色:茶色)
一角ヒカル-小野賢章
(髪:水色のポニーテール/目の色:水色)
神世学園
皇龍-諏訪部順一
(髪:逆立った金髪(青のメッシュが入っている)/目の色:オレンジ)
水城コウ-内山昂輝 (髪:水色のハネた形状/目の色:水色)
華炎リン-沼倉愛美 (髪:赤の内巻きボブ/目の色:青緑)
白牙ダイ-鈴木達央 (髪:黒のツンツンヘアー/目の色:黄色/その他:赤いハチマキ)
その他
蒼龍龍二-小山力也 (髪:青のアップバング/目の色:オレンジ)
蒼龍龍海-井上喜久子 (髪:白のウェーブヘア/目の色:水色)
根尾新太-宮澤正 (髪:銀のオールバック/その他:糸目、メガネ)
古面定太-小野坂昌也 (髪:黒のビジネスショート/目の色:黒/その他:メガネ)
ナレーション-森川智之
ベイブレード
スラッシュドラグニルW3.F
(ウイングスリー.フラット)
(ドラゴンモチーフのアタックタイプ。)
デスケルベロス.B3.U
(バランススリー.ユナイト)
(ケルベロスモチーフのバランスタイプ。)
フラッシュユニコーン.D4.S
(ディフェンスフォー.スパイク)
(ユニコーンモチーフのディフェンスタイプ。)
ボルトドラゴ.Sp3.V
(スピアスリー.ボルテックス)
(青龍モチーフのアタックタイプ、爆転シュートベイブレードのドラグーンのオマージュ。)
ダークゲンブ.Wl6.D
(ウォールシックス.ダウン)
(玄武モチーフのディフェンスタイプ、爆転シュートベイブレードのドラシエルのオマージュ。)
バーニングスザク.O4.T
(オペレートフォー.トランス)
(朱雀モチーフのバランスタイプ、爆転シュートベイブレードのドランザーのオマージュ。)
ファングビャッコ.UR5.MB
(アッパーリングファイブ.メタルボール)
(白虎モチーフのスタミナタイプ、爆転シュートベイブレードのドライガーのオマージュ。)
プロテクタードッグ.D4.S
(ディフェンスフォー.スパイク)
(デスケルベロスの名前違いの汎用機)
ベイブレードの構成パーツ
ブレードチップ……ベイブレード全体のロックパーツ。
名前はそのベイのモチーフ。
ブレード……ベイブレードの上部及びメインパーツ。
金属で構成。
メタルディスク……ベイブレードの重量を司るパーツ。
後述するディスクフレームと組み合わせて1つの中間パーツとなる。表記は数字。
ディスクフレーム……メタルディスク外周に取り付けるパーツ。ベイブレードの性能をサポートする。表記はアルファベット。
ギア……ベイブレードの軸パーツ。表記はアルファベット。