突如として襲来した神世学園の学園長・神世征二狼。彼のベイ・ロアウルフは圧倒的な受け流し力とカウンター性能を誇り、根尾中ベイブレード部は全く及ばなかった。
悔しさを滲ませるソウタはドラグニルをシュートしまくる。
するとドラグニルはスタジアム内を目にも止まらぬ速さで旋回する。
ソウタ達はその旋回を新たな技として習得するのを目指すのだった。(ナレーション)
__蒼龍家__
「ゴー……シュート!」
自室のスタジアムでさっきのドラグニルの動きを習得しようと試みる。
「やっぱり違うなー……」
だが、中々技の習得には至らなかった。
「練習してから何分……
いや、何時間経ったかな……」
独り言を呟きながらハンカチで汗を拭く。
「冷た……」
ハンカチは濡れに濡れ、冷たくなっていた。
床にも汗が幾らか零れ落ちていた。
「ソウター、入るわよ?」
ノック音が聞こえた後、母親の龍海が部屋に入ってきた。
「母さん?」
「もう晩ごはんが出来たから呼びに来たのよ」
「あっ……もうそんな時間に」
「さっきからドラグニルを回していたようだけど何かあったの?」
母は正座して、ソウタに何があったのかを聞き出す。
「実は……学校に神世学園の学園長が来て、俺達に校舎の破壊を賭けたベイバトルを仕掛けてきたんだ」
「結果は惨敗……」
「校舎破壊については神世のリーダー、皇龍が上手く丸め込んで回避されたけど……なんか悔しくて……」
母の質問に対して、今日あったことを洗いざらい話す。
しかし、話していく度に体が震えていた。
「そうだったの……辛かったわね」
「うん……ッ!」
感情が昂ぶって遂に泣いてしまった。
「ソウタ、少しだけ私からお話してもいい?」
「分かった……」
「あなたの『学校を守る』って心は正しいわ。
学校を壊されそうになったら誰だって怒って当然よ」
「でも『それ』に拘ってしまって自分の体を酷使し続けるのは駄目よ」
__プルプル
「はっ……」
ソウタ自身は気づいていなかったが彼の腕は若干震えていた。
恐らくずっとシュートの練習をしていた反動だろう。
「ごめん……、母さん」
「大丈夫よ、ソウタ」
「ドラグニルもきっと応えてくれるわよ」
「少し休んだらご飯にしましょ」
「うん!」
母の言葉には安らぎがあった。
そのおかげですっかり笑顔を取り戻した。
腕を休ませた後、食卓へ向かうのだった。
暫くして……
「ドラグニル……」
一瞬の輝きからドラグニルの意志を感じ取る。
「行こうぜ!」
3・2・1 ゴーシュート!
「(俺は……いや、俺達は龍達を超えたい……けど、今は大切な場所を守りてぇ!!)」
「ドラグニルーーーッ!!」
心のなかに秘めた思いが無意識の内に咆哮へと繋げる。
「!」
スタジアムにあの時の音が轟いた。
あの旋回が再びソウタの視界に現れたのだった。
「……!!」
「やったーーーーッ!!」
叫びをあげて喜びを噛みしめる。
__根尾中ベイブレード部部室(翌日)__
放課後になった直後、部室のドアを勢いよく開ける。
それは早く仲間たちに新技を見せたいという心の現れだった。
「バン、ヒカル、ツバサ!」
「どうしたんだソウタ?」
「まさか……!」
「そう、そのまさかさ」
「実は出来たんだ」
「あの技が……!」
「何ッ……!?」
「えっ……!」
「もしそれが本当ならやつに勝てるかもしれないが……
一度見せてくれるか?」
「あぁ……いいぜ」
ヒカルの頼みを快諾した後、目を閉じて神経を研ぎ澄ます。
「ゴー……シュート!」
__ギャギャギャ……!
ドラグニルのギアがスタジアムを蹴って、音を轟かせる。
そして、数え切れないほどにスタジアムを旋回した。
「!!」
「どうだ!」
「……凄いのを見させてもらった」
「いくらロアウルフだろうとこの動きはそうそう簡単には受け流せないかもな」
「ヘヘっ…ありがとな、ヒカル!」
「よーし待ってろよ! 征二狼!」
__神世学園(学園長室)__
「失礼します。学園長」
「おや、どうしましたか?」
「校庭にこんな手紙が落ちていまして」
学園長室に教職員が入室する。
手には手紙を持っていて、校庭に落ちていたという。
征二狼はそれを受け取り、開く。
__(手紙)神世学園学園長・神世征二狼殿。貴殿への再戦の準備が出来た。時間は夜だ。心して待て。根尾中ベイブレード部一同__
「ほぅ…」
「分かりました、伝達ありがとうございます」
「戻っていいですよ」
「はっ…!」
「フッ……、もう少しウジウジしてるかと思いましたが……」
「まぁ……いいでしょう。何回も学ばない痴れ者には何度だって現実というのを教えてさしあげます…!」
そう言ってコーヒーカップを手に取り、コーヒーを一口飲む。
__神世学園校庭(夜)__
神世学園の校庭は満月の光で照らされていた。
「……」
「来たぞ……出てこい! 征二狼!」
腹一杯に空気を吸い、静寂を破るような声で征二狼に呼びかける。
「そんなに大きな声を出さなくとも聞こえていますよ」
ソウタの呼びかけに応じて、現れる。
「本当に来るとは……」
「どうやら再戦ということは私を倒すという自信があるようですねぇ……」
「いいでしょう、今度こそ欠片も残さず狩り尽くしてあげます……!」
「来いっ!!」
3・2・1 ゴーシュート!
最初の攻撃はまたしても受け流される。
「おやおや、再戦と言ったのではなかったのですか?」
「これでは1回目の時と同じではありませんか?」
余裕な態度で両腕を広げながら、首を横に振る。
「……」
「?」
「おやおや、何も反論する気はないと?」
「……」
(何だ……この沈黙は、それに胸に込み上げてくるこの不快感は……)
ソウタの沈黙に対し、征二狼は次第に苛立っていく。
一方、スタジアム内はドラグニルの攻撃とロアウルフの受け流しの音だけが響く。
「貴様……! 何故黙っているッ!!」
「……」
「どうした、欠片も残さず狩り尽くすんじゃなかったのか?」
「これじゃあまるで、そっちが狩り尽くされるぜ」
沈黙を破って出てきたのは征二狼に対する「挑発」だった。
鋭い表情で淡々と。
「〜〜〜〜!!」
「そんなにお望みなら見せてやる!!」
「ロアウルフ!」
遂に征二狼は歯を剥き出しにして激昂した。
彼は怒りのままにロアウルフとの「共鳴」を始める。
ロアウルフから狼のオーラが現れる。
「ダークネス・ロア!!」
ロアウルフの必殺技でドラグニルは大きく弾かれる。
「!!」
「どうです……?」
「これで分かりましたか? 私とあなたの……」
「……やっと完成したぜ」
「お前のお陰でな……」
ソウタは動じず、意味深長な言葉を言い放つ。
「何?」
「はっ……!?」
ドラグニルのフラットギアがスタジアムに強くグリップし、爆音を立てる。
「何ッ……!?」
「加速したッ……!?」
「貴様、何を……!」
「お前のベイの戦法を利用したのさ」
「ロアウルフはフリー回転するギアの受け流しとブレードでのカウンターを得意とするベイ。それに少しずつぶつかることで加速のためのパワーをためた」
「更にお前の焦りを引き出すことで必殺技を早めに出してもらい、あえて受けた」
ソウタは先程の加速の原理を説明する。
その目つきは堂々としていた。
「そして……たった今完成したんだッ!!」
「爆発力を秘めたような旋回……名をつけるのなら…」
「ドラグニルエクスプロージョン!!」
旋回の末に生み出された新技・ドラグニルエクスプロージョン。
__バガァァン
その技が当たった瞬間、爆風のような音を立ててロアウルフをバーストした。
「何だとォォォォォ……!!」
「っしゃーーー!!」
「やったな、ソウタ!」
「リベンジ達成だな」
「凄いよ!!」
一人の悪への勝利に4人は喜び合う。
だが、悪というのはそうやすやすと身を引いてくれるわけではない。
喜ぶのも束の間、これ以上ない愚行が迫ろうとしていた。
「この私が敗北だと……!?」
「そんなこと……そんなこと……」
「あってはならない、あってはならないんだーーーッ!!」
背後から征二狼がソウタの頭部めがけてロアウルフをシュートする。
「ソウタ!」
「!!」
超スピードで迫るロアウルフ、誰もがソウタの怪我を危惧した瞬間
「フン…」
__ドスッ
「あぐぁ……!」
背後にいた龍が征二狼の頭部にボルトドラゴを打ち込む。
ソウタめがけて一直線だったロアウルフに額をぶつけ倒れ込む。
頭部の前後に2つの痛みを味わうことになった彼の体は悲鳴をあげた。
「龍!?」
「なんで……」
ソウタは信じられなかった。
仮にも仲間であるはずの男に手を下したということが。
「勘違いするな、蒼龍ソウタ」
「こいつはもう使い物にならん。
ただそれだけだ……」
多くは語らず、その場を去った。
「待っ、待ってくれ……!」
「……龍」
「そろそろあいつらに話す時が来たようだな……」
__神世学園メンバー専用ルーム__
「龍、話って……」
「どういうことだ……」
「征二狼はどうしたの……?」
神世学園のメンバー専用の部屋に3人を集め、口を開く。
「よく聞け、お前ら」
「俺達は征二狼の『傀儡』に過ぎなかった……」
「な……」
「何だと……」
「うそ……」
突然告げられた「傀儡」という言葉。神世学園の闇は月をも覆う。(ナレーション)
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ-小林千晃
門守バン-梶裕貴
一角ヒカル-小野賢章
焔ツバサ-榎木淳弥
神世征二狼-遊佐浩二
皇龍-諏訪部順一
水城コウ-内山昂輝
白牙ダイ-鈴木達央
華炎リン-沼倉愛美
蒼龍龍海-井上喜久子
ナレーション-森川智之