ベイブレードカップ第一回戦、爽海学園との対戦で順調に勝利を重ねてきた根尾中学校。
残る相手は代長エルと鮫島ナギとなった。(ナレーション)
「第一回戦もいよいよ終盤、第三戦目に突入です!
お互い残すところ根尾中学校からは一角ヒカル選手、蒼龍ソウタ選手、爽海学園からは代長エル選手、鮫島ナギ選手が控えています!」
「さぁ、いつでも来なよ」
エルはそう言って、自身のベイであるギガントホエールを見せつける。
「!!」
(なんだあのベイ、ブレードがデカい……!)
ソウタとヒカルが驚くのも無理はない。
流線型の大型刃と小型刃が交互に配置されつつも円形に近い形状は2人にプレッシャーを与えた。
「……ソウタ」
「ヒカル?」
(代長エルは俺が引き受ける。お前はリーダーの鮫島ナギを頼む)
(それはいいけど……恐らくあいつのベイはスタミナタイプ。それに対してお前のユニコーンはディフェンスタイプ、タイプ相性上は『不利』だ……)
(ソウタ、忘れたのか?)
(向こうのやつも言っていただろ?ベイバトルはタイプだけで決まるものではない、『武器』の活かしどころだと)
(……ごめん、ヒカル)
「行ってこい!」
「あぁ」
ヒカルは南太郎がツバサに言っていたことを引用し、ソウタに囁きながら諭した。
それを改めて理解したソウタは笑顔でヒカルに激励の言葉を送る。
「待たせたな」
「代長エル、お前の相手はこの俺だ」
「君が相手か〜」
「果たして僕とホエールに勝てるかな?」
エルは飄々としつつも、静かに威圧感を放つ。
「『勝てる』じゃない『勝つ』。それだけだ」
ヒカルは冷静に「勝つ」と言い切った。
「いいね〜、その心意気……」
「益々君に興味が湧いてきたよ……♪」
(……さっきまで陽気そうな雰囲気だったが、今は俺を叩き潰さんとばかりの圧だ……)
陽気さを保ちつつも、冷徹さを感じる雰囲気へと変化した。
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
ギガントホエールは高い遠心力で、勢いよく回転する。
それに対し、フラッシュユニコーンは果敢に攻撃を仕掛ける。
しかし、ギガントホエールは全く動じない。
「どうしたのかなー…? ホエールはびくともしてないよ?」
「……」
「これはどうしたことでしょうか!? 一角ヒカル選手、沈黙しています!」
「一方、代長エル選手は余裕の表情ですッ!! 根尾中学校、この状況をどう乗り越えるのでしょうか!?」
実況の古面をはじめ、会場内が騒然とする。
「ヒカル……」
ソウタも不安な表情を見せる。
「君には期待してたんだけどなぁ……」
「……」
エルは髪をかき上げながら、落胆の言葉をヒカルにかける。
それでもヒカルは沈黙を貫く。
「君にはこの舞台は早かったみたいだね」
「というわけで、この場からご退場願おうか」
「ギガントホエール!!」
手のひらを下に広げ、ベイの名を呼ぶ。
「ギガントダイビング!!」
その後、ワイドボールギアを利用した加速でフラッシュユニコーンに襲いかかる。
その時……
「待っていた、この時を!!」
ギガントホエールが技を発動させたのと同時にヒカルが遂に沈黙を破る。
__ガァァンッッ
「一角ヒカル選手! フラッシュユニコーンでギガントホエールの技を受け止めました!!」
重厚な金属音から、ユニコーンがホエールの技を受けきったことが伝わった。
「受け止めたか〜……けど、もうすぐ決着……」
「!?」
エルが完全なるトドメを刺そうとした瞬間、驚き始めた。
__グラグラ……
「なんと! ギガントホエール、回転の軸がぶれ始めています! 一体どうしたのでしょうか!?」
そう、ギガントホエールがフラッシュユニコーンに技を受け止められてから不安定な動きを見せていたのだ。
「これは……」
エルは軽く戸惑った。
「待っていたんだ」
「お前の技が来るのをな」
「確かにお前のベイはスタミナは申し分ない。タイプ相性でいうなら尚更だ」
「だから利用させてもらった、お前の『武器』を」
「…そうか! 」
「ヒカルは純粋な持久戦じゃなくて、あいつに技を出すよう誘導したんだ!」
ソウタはさっきまでのヒカルの戦い方は心理戦であるということを見抜いた。
「……御名答だ。ソウタ」
「そして、エル」
「お前のベイだが、ディスクフレームを見るに重い部分がブレードと重なっている時が一番安定する」
「ユニコーンはホエールとぶつかる瞬間に傾かせた。ブレードがディスクフレームと直撃してズレたことによって重心が不安定になった」
「……!」
「崩れた重心バランスかつ幅が広いボール軸…この場合どうなるかな?」
(一角ヒカル、君は……最高のブレーダーだ……♪)
エルはヒカルのことを戦法を含めて、称賛した。
「…!」
「や…やりました! 一角ヒカル選手! 代長エル選手のギガントホエールから見事スピンフィニッシュを勝ち取りました!!」
(最高だぜ…ヒカル)
ソウタも心のなかでヒカルのことを称賛した。
「これで4点目、後は任せたぞソウタ」
「あぁ!」
「今度は俺の番か…けど、やることは変わらねぇ」
「行こうぜ!ドラグニル!」
ソウタは持ち前の明るさで1回戦最後の戦いに臨む。
「さぁ〜1回戦もいよいよラスト! 根尾中学校からは蒼龍ソウタ選手、爽海学園からは鮫島ナギ選手です!」
「蒼龍ソウタ……」
「おぅ!」
「さっきまでの試合、楽しめたか?」
「あぁ! バンもツバサもヒカルもみんな成長しているなぁって実感したぜ!」
「それなら良かったぜ……だが、今は大会の真っ最中だ。真っ向勝負といこうじゃねぇか……」
「勿論だぜ、ナギ!」
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
スラッシュドラグニルとアビスシャーク、2機はスタジアムを駆け回る。
その時……
走行音とともにアビスシャークがドラグニルに追いついた。
「!」
(は…速い…!!)
「喰らい尽くせ……」
「アビスシャーク!!」
アビスシャークからサメのオーラが現れ、ドラグニルに襲いかかる。
「レイジングアビス!!」
「……!!」
__バァァンッ……!
「ここで鮫島ナギ選手、バーストフィニッシュで3ポイント!! 一気に同点に追いつきました!!」
アビスシャークのアッパー刃とディスクフレーム「アンダー」の低重心がかみ合った攻撃で一気にバーストフィニッシュを取られ、全てのパーツがスタジアム外にまで弾け飛んだ。
「やっぱりナギは強え……」
(けど……ヒカルが言ったようにあいつにも『武器』があるはずだ)
(あいつの武器は『ブレードとディスクフレームによる潜り込み』……そこを突けば……!)
「ナギ!」
「続き、やろうぜ!」
「そうこなくちゃ面白くねぇ……」
ソウタの気持ちの切り替えの早さに心無しかナギも嬉しげだった。
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
猛スピードでドラグニルの後をアビスシャークが追いはじめた。
「すぐにカタをつけてやるぜ……」
すぐに追いつかれ、ドラグニルは大きく弾かれる。
しかし……
「待っていたぜ、この時をよォ!」
ソウタの表情は明るかった。
意味深長な言葉を言いながら……
「!!」
「あれは……!」
「まさか……!」
__ギャギャギャ……!!
弾かれた瞬間、ドラグニルは爆音を轟かせながら大きく加速してスタジアムを旋回する。
見覚えのある動きにバン、ヒカル、ツバサの3人は驚く。
「ナギ、お前のアビスシャークは潜り込みによる攻撃が得意だ。だから、あえて受けさせてもらったぜ。」
「そしてこれが……」
__ブォンッ
「!!」
「と…飛んだぁぁぁーーーッ! ドラグニル!
スタジアムを飛び越えたーーーッ!!」
スタジアムを駆け上がったドラグニルが真上から急降下する。
「エクスプロージョンプレス!!」
「!!」
(俺の技を自分のものに繋げるために、敢えて受けたってことか……フッ……)
(蒼龍ソウタ、すげぇ奴だ。お前は)
__バガァァンッ
凄まじい衝撃音とともにアビスシャークが派手にバーストした。
「……!!」
「スラッシュドラグニル、バーストフィニッシュ!
蒼龍ソウタの勝利!!」
「決まったァァーーッ!! 根尾中学校、強敵・爽海学園を見事打ち破りました!!」
会場内に歓声が響き渡った。
爽海学園が敗れたという衝撃、根尾中学校の大躍進への驚き……様々な感情が入り混じった瞬間だった。
「!!」
「……」
「龍……」
龍が遠くから様子を見ていたが、ソウタが気づいた瞬間、すぐに後ろを振り向いてしまった。
「おい」
「やるじゃねぇか 、蒼龍ソウタ。そして根尾中学校」
「いい試合だったよー♪」
「あんたらほんと強いなー」
「いいものを見させてもらった………」
爽海学園がソウタをはじめとする根尾中学校の面々に声をかける。
「ありがとな!」
「……」
「頑張れよ……」
ナギがほんの僅かに笑みを浮かべた。
「今、笑った?」
「!!」
「わ……、笑ってねぇよ!」
ソウタに聞かれた瞬間、顔を真っ赤にしながら慌てて否定した。
しかし 、彼の言葉とその思いには嘘偽りはない。
ベイブレードカップ1回戦を突破した根尾中学校。
だが、先は長い。
約束を交わした王者たちの道のりはまだまだ続く。(ナレーション)
__イメージCAST __
蒼龍ソウタ-小林千晃
一角ヒカル-小野賢章
門守バン-梶裕貴
焔ツバサ-榎木淳弥
鮫島ナギ-岡本信彦
代長エル-宮野真守
磯部南太郎-阿座上洋平
紗千保ギアン-前野智昭
古面定太-小野坂昌也
ナレーション-森川智之