ベイブレードNEO Season1   作:マツザキ蓮

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神世学園の闇編
ベイブレードNEO 第9話 咆哮の狼


獣界中学校との合同合宿を通じてチーム同士の絆を深めたソウタ達。

 

しかし彼らは気づいていなかった。

 

想像を絶するような闇が迫っているということに(ナレーション) 

 

__神世学園__

 

廊下に誰かの靴の音が響き渡り、暫くしてドアが開く音に変わる。

 

「ボルトドラゴの調子は如何でしょうか?

龍様」

 

「……征二狼か」

 

専用の部屋で過ごしていた龍に話しかけていたのは神世学園学園長にして彼の側近・神世征二狼だった。

 

辺りには教科書が散らばっていたが気にも留めなかった。

 

「ヤツはもっと膨大なエネルギーを欲している。

見つけ次第、すぐに知らせろ」

 

「かしこまりました……」

 

彼は龍の言葉を聞いた瞬間、口角を上げ、その場を後にする。

 

「……」 

 

「(征二狼……、お前は隠しているつもりかもしれんが俺達を利用しようとしているのはすぐに分かるぞ)」

 

「(尤も孤児であった俺達を拾い上げ、ドラゴ達を与えたこともその一環なんだろう……)」

 

彼の独白は神世学園の知られざる闇を表していた。

 

神世学園の紅一点、華炎リン。

 

彼女の両親は火事によって死亡。

 

後に施設に預けられた所を征二狼によって拾われた。

 

白牙ダイ、水城コウ。

 

ダイはピクニック中に地震に巻き込まれ、両親は彼を庇い死亡。

 

コウは家族旅行へ海へ行った中両親を水難事故で亡くした。

 

失意の中、彼らを拾ったのも征二狼であった。

 

そして……皇龍。

 

彼の両親は共働きであった。

 

しかし、通勤中に事故に遭い死別。

 

後に母方の叔父に預けられ、育っていった。

 

そんなある日、征二狼が叔父の家を訪問し彼に神世学園を紹介する。 

 

叔父から神世学園への進学を勧められたことにより、入学。 

 

側近として征二狼がその座に就いたのだった。 

 

「(……龍が興味を示していた蒼龍ソウタ。

先ずは彼がいるあの場所へ行きますかね……)」

 

町内地図を広げながら、根尾中学校をマークする。

 

__根尾中ベイブレード部部室__

 

「Ready……Set!」

 

「3・2・1 ゴーシュート!」

 

迎えた放課後、いつも通り部室で練習をしていた。

 

獣界中学校との合同合宿を通じて力を身につけたソウタとバン、2人の実力は拮抗していた。

 

「また引き分けか〜……」

 

「バンも強くなったな!」

 

「お前もだ、ソウタ」

 

__ドヨッ

 

「お……、おい! 何だあれは……!?」

 

部室の外が何やら騒がしくなった。

 

生徒達が廊下に集まり、行列をつくる。

 

「…? 一体どうしたんだ?」

 

「!?」

 

窓からは黒色の高級そうなセダンが校庭に停まっていた。

 

「な……、何だ? あの車は」

 

車のドアが僅かに開き、何かが落ちる。

 

「これは……!」

 

ヒカルが車の主からの紙切れをキャッチする。

 

__根尾中ベイブレード部の皆さん、校庭に来てください__

 

紙切れにはソウタ達を呼び出す趣旨の内容が書かれていた。

 

「……どうやら行くしかないようだな」 

 

校庭に向かい、ついに車の主と相対する。

 

「ごきげんよう、根尾中ベイブレード部の皆さん」

 

慇懃無礼な口調で眼鏡をかけた赤スーツの男が挨拶する。

 

「お前がこの紙切れの送り主か」

「何者だ、そして何が目的だ」

 

「これは失礼」

「私の名前は神世征二狼。神世学園の学園長を務めているいる者です。以後お見知りおきを」

 

ヒカルに問い詰められた車の主。

 

その正体は神世征二狼だった。 

 

彼は胸の下に手を当て、浅く一礼する。

 

「神世学園の学園長だって!?」

 

「…その学園長とやらが俺達に何のようだ?」

 

__パチン

 

「これからあなた達には『ある物』を賭けて私とバトルをしてもらいます」

 

__ギギギ……

 

「!?」

 

征二狼が指を鳴らした途端、地面が歪な音を立てる。

 

間もなくして、トゲの鉄球が付いた重機が校庭に入り込んで来た。 

 

「なッ……なんだ!?」

「お前、これで何をする気だ!?」

 

学校中が一層ざわつき始めた。

 

「これから賭けてもらうもの……それは『根尾中学校の校舎』でございます」

 

「何だってッ!?」

 

「説明を始めます。あなた達が私とのベイバトル勝てば大人しく引き下がりましょう。……ですが私が勝ったらこの校舎は『破壊』させていただきます」

 

指で眼鏡を軽く押さえながら、恐ろしくも理不尽なルールを交えた説明をする。

 

「ふざけんじゃねぇ!! いきなり現れて納得できるわけねぇだろ!」

 

「ここは皆が通う場所だ、神世学園の学園長だろうと

この場所は壊させはしない!」

 

「おやおや…これはじっくり現実を教え込む必要があるようですね」 

 

当然、ソウタ達は反対するが征二狼も聞く耳を持たない。

 

「この『ロアウルフ』でね」  

 

「ロアウルフ!?」

 

征二狼は狼のベイ・ロアウルフを取り出す。 

 

攻撃的な形状のブレードにソウタ達は驚きを隠せなかった。

 

「さぁ……誰から来ますか?」

 

「俺が行く……」

 

「バン!?」

 

「俺のケルベロスはバランスタイプ…先ずは俺が出て小手調べをする」

 

「……ッ」

 

「そこまで辿り着けますかね?」

 

3・2・1 ゴーシュート! 

 

スタジアム中央にロアウルフが構える。 

 

それに対し、デスケルベロスはスタジアム外周を旋回している。

 

「スタジアム中央で回っているということはスタミナタイプかディフェンスタイプか?」

 

「だがこの場所を守るためだ、

直ぐにカタをつけるッ!」 

 

__ジャリッ

 

「何ッ……!?」

 

「おや……? カタをつけるのではなかったのですか?」

 

「ケルベロスの攻撃はお前のベイに入った筈……!」

 

「なのに逆にスタミナを削られている……!?」

 

ケルベロスの攻撃は通るどころか受け流される。

 

それに加えて、何故か逆にスタミナが削り取られてしまう。

 

「これがロアウルフの真髄です」

 

「『エターナルボール』ギアが衝撃を逃がし、ロアウルフのブレードの4枚刃が反撃する……

まさに『狼』のような隙のない持久です…!」

 

「喰らいなさい。ロアウルフ……!」 

 

ロアウルフから狼のオーラが現れる。しかしそれはどす黒いオーラも纏っていた。

 

「ダークネス・ロア!!」

 

「……ッ!?」

 

ロアウルフの必殺技をくらいバーストフィニッシュ負けに終わった。

 

パーツがスタジアム外にまで弾け飛んだ。

 

「バカなっ……!」 

 

「これで理解できましたか? あなたの実力は所詮この程度……よくそれで私に勝つと妄言を言えましたね」

 

「あ……ぁぁぁ……!」 

 

心無い言葉がバンの心を深く抉り取る。  

 

彼は項垂れたまま、その場で固まる。

 

「バン!!」 

「テメェ…!! 次は俺と勝負しやがれ!!」

 

仲間を傷つけられて黙っていられるはずもなかった。

 

「まぁ、待ってください。

あなたはメインディッシュです。

ロアウルフにとってのね」

 

「……!!」

 

征二狼に勝負を申し込むが、逆に突っぱねられてしまった。

 

「次は同時にかかってきなさい」

 

「やるしかない……こいつからは逃げられない」

 

「せめて僕達がバンの敵を……」

 

ヒカルとツバサは意気込むが……

 

「!!」

 

2人がかりで挑むも瞬殺される。

 

2VS1という形式でも歯が立たなかった。

 

「さて……、これであなただけです。蒼龍ソウタ」

 

「許さねぇ…! 許さねぇ…!!」

 

ソウタは完全に怒りに飲み込まれる。

 

「お前を倒し、この場所を絶対に守る!!」

 

「叶うといいですねぇ……」 

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

「行けッ、ドラグニル!」

 

ドラグニルはロアウルフに連続攻撃をしかけるが、バン達と同じく受け流しと反撃をくらいまくってしまう。

 

「ド……ドラグニル!」

 

「いけませんねぇ……

感情に任せてのシュートと攻撃は」

 

両手を広げ、首を横に振りながら呆れる素振りをする。

 

「総仕上げです……」

「ダークネス・ロア!」

 

凄まじい衝撃音を立て、ドラグニルがバーストされた。

 

「あぁっ……」

 

ソウタはただ膝から崩れ落ちて眼の前の敗北を見つめることしか出来なかった。

 

「全て私の勝利ですね」

「では……この校舎は」

 

バトルの結果は全て征二狼の勝利に終わった。

 

観戦していた生徒達は目の前の状況に震え上がっていた。

 

彼が早速、校舎の破壊を実行しようとしたその時……

 

「征二狼」

 

「!」

 

「龍様」 

 

「龍!」

 

彼の背後から聞こえてきた声……その主は皇龍だった。

 

突然の王者の乱入に思わず周囲がギョッとする。

 

「征二狼、俺はその根尾中ベイブレード部に興味がある」

「ドラゴもそいつらを喰らいたくて仕方がないと語りかけている」

「全ては事が終わってからにしろ」

 

「(予定外ですが……さらなる計画のためにここは飲み込んでおきますかね。所詮、龍も利用するだけですから……)」

「かしこまりました」

「それを撤去しておきなさい」

 

「龍……」 

 

「……」

 

征二狼は重機の撤去を命令し、龍は無言で立ち去る。

 

敵であるはずの彼がなぜ助け舟を出すような行動をしたのか……そんなことを聞く暇も与えなかった。

 

「根尾中ベイブレード部の皆さん……

リベンジならいつでも受け付けますよ」

「ま、あなた達と私では天と地…いや銀河と地ぐらいの差がありますがね……!」

 

征二狼もその場を後にする。 

 

去り際にソウタ達のことを嘲笑した。

 

「クッソぉぉぉ……!!」

 

ソウタは悔しさを抑えきれず、校庭の地面を叩く。

 

無意識に何度も何度も……

 

泣くことはなかったが、少しでも下を向けばそうなるぐらいに悔しかった。

 

__根尾中ベイブレード部部室__

 

「完敗だ……」

 

「全然及ばなかった……」

 

「俺は……

成長していなかったのか……?」

 

部室の空気は只々暗かった。

 

「ゴー……シュート!」

「まだだ……ゴー……シュート!」

「シュート!」

 

ソウタは悔しさをドラグニルのシュートにぶつけてしまう。

 

「ソウタ……気持ちは分かるが……」

 

「ヒカル……俺だって分かってるさ」

「けど、悔しいよ……!」

「あと一回だけ……」

「ゴーシュート!」

 

__ギャ……ギャギャ、ギャギャギャ……!!

 

「!!」

 

最後のシュートの途端、ドラグニルは轟音を響かせながらスタジアムを1周、2周……数え切れないくらいに旋回する動きを見せた。

 

「な、何だ!?」

「ドラグニルがスタジアムを……」

「速すぎて見えなかった……」

 

「……」 

(今のは……! ソウタの怒りのパワーがドラグニルの限界を超えつつあるという証なのか……!? もしそうだとしたら……)

「ひょっとしたらこれを習得出来ればあのロアウルフに対抗できるかもしれない……」

 

「……!!」

 

「すげぇよ…! ツバサ!」

 

「よし、そうとなれば早速さっきの技を完全に習得だ!!」

 

見たことのないドラグニルの挙動、それは一筋の希望となるのか……僅かに照らされた光のもとへいざ行かん。(ナレーション)

 




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ-小林千晃

門守バン-梶裕貴

一角ヒカル-小野賢章

焔ツバサ-榎木淳弥

神世学園学園長(本作における「黒幕」)

神世征二狼-遊佐浩二
(髪:黒色のウルフカット/目の色:銀色/その他:メガネ)

皇龍-諏訪部順一

ナレーション-森川智之

ベイブレード

ロアウルフ.G4.EB
(グライドフォー.エターナルボール)
(狼モチーフのスタミナタイプ、爆転シュートベイブレードのウルボーグのオマージュ。)
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