しかしてサクラコも、ただ自室にこもっているだけでは駄目であることを分かっていた。
故に心に余裕ができて来た時、行動をしようと決意を抱いた。
(初めてパーカーを、それもネットショッピングで買ってしまいました…)
誰とも分かりづらい姿を作るための衣服が届き、支度を整えている。
普段では履かないパンツスタイル、顔を見られづらくするフード付きパーカーに黒色マスク、一目では誰の私服姿かは分からない。
(こうでもしなければ、誰が歌住サクラコだと口を出してくるか分かりませんから………どうしてこうなったのでしょう)
つい余計な思索が溢れるが、こらえて一歩を踏み出した。
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D.U.まで、あてもなく遠出しに来るなんて初めてのことだ。
そもそもここまで来るのは先生のお手伝い以来だし、なんだか不思議と心が躍っている感覚がある。
そんなのいつ以来だろうか。
そう思える自分がまだいたのかと、少し微笑みが浮かぶ。
「ゲームセンター…ここが…」
初めて来たゲームセンター。
全てが初めて見るものばかりで、良い刺激がある…のだが…。
「どうして…」
不良たちのカツアゲに遭ってしまい、人の少ないエリアまで連れ込まれてしまう。
「アァ?なんか言ったか?」
「んな気にすることねーって。というわけでオネーサン、ちょっと金貸してくんね?金欠でやべーんだわ」
普段なら貧困に喘ぎ非行に走る不良生徒を、シスターフッドとして放っておくことはできないだろう。
しかし今は私服で出掛けてきた休みの日の生徒そのもの。言葉を尽くすより、下手から出て暗に見逃してほしいと言う方が賢明かもしれない。
「そ、その…私のような者の財布では、ご納得いただけるものはお出しできないかと…」
「ハハ、そうは言ってもトリニティの方から来てるのは確認済みでね」
「そそ。あっちから来た財布ならハズレはないっしょ」
なんとも賢い小悪党たちだ。
…トリニティもシスターフッドも関係ない、一生徒でいたいだけなのに。
それさえも望んではいけないのか。
怨嗟と自己嫌悪の奔流が再び襲い来る。
「伏せてな!」
「!?」
閃光のように快活な声がして、それに従い伏せる。
音だけで分かる俊敏な動作で不良生徒たちを圧倒している。
「ぎゃんっ!?」
「うひっ!?」
体術だけで制圧せしめたようだ。
その姿は、どこかで一度見たかも定かではない小柄で気の強そうな生徒だ。
サクラコの本来の姿を知らない人で、まずは一安心か。
「大丈夫か?」
「あ、は、はい…!」
「意外とチンピラが寄りつくゲーセンだから、気ぃつけな」
そう言いながらスタスタとこちらに向かって歩いてきて、手を差し伸べてくれる。
どうやらこの人は、助けた人が無事か分かればそれで終わりではないみたいで。
「ほら、立てるか?」
「ぇ…」
そうしてパーカーのフードで狭くなった視界へ手を差し伸べられる。
戸惑いつつも、その差し伸べられた手を逃してはいけない気がして…美甘ネルの手をとった。
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「なあ、どうせなら一緒に遊んでいこうぜ?」
そんな提案をされて、サクラコは自己紹介もないままにネルとゲームセンターで遊ぶことになった。
クレーンゲーム、体を動かすようなゲーム、格闘ゲーム、少しづつ楽しんで、新たな刺激を得ていく。
「は、初めてゲームセンターに来たんですけど…どれも新鮮で…」
「おぉ、そうなのか!どれが良かったよ?」
「このぬいぐるみを取れた、クレーンゲームでしょうか…」
Mr.ニコライのぬいぐるみを抱えて、少々和らいだ表情になった。
「じゃ、そろそろあたしも帰るかな。気を付けろよ?」
「はっはい!あ、ありがとう、ございました…!」
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「どうやら、色々と快気に向かわせてくれる出来事があったようだね。良い兆候だと思うよ」
「はい、私も…そう思います」
後日、セイアと会話する機会があり、あのことを語った。
(もしかしてだが…ネルと邂逅したのだろうか。まあ、彼女ならそうなるのも頷ける。違ったらすまないが、もしそうなら心ばかりながら感謝しきりだね)
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「ぅえっくしっ」
「あらら?誰かリーダーの噂でもしてるかな?」