アストラルパーティのキャラに人格を被せる 作:|2:<|<‘/
参考は薬指ウーティス。
「この作品は……いや、作品と呼べるかも分からないな。何の象徴かも分かりやしない」
翡翠色の瞳から放たれる冷たい視線が、怯えた様子の住民の一人を突き刺した。
住民の目の前には赤黒く染め上げられたキャンパス。右手には筆が握られている。
住民は今、住民なりの芸術を提示している。その課題の評価を受けている最中なのだ。
生徒でもあり、講師でもある彼の酷評を皮切りに、住民の顔色がさらに青ざめる。
一瞬にして増幅した焦燥感ゆえか、評価が言い渡される直前に弁明を始めた。
「違います! こ、ここを、ここをよく見てください。どうか今からでも……!」
「今更評価を改めるわけないだろ。落第点……これで三度目みたいだな」
半狂乱で泣き叫び始める住民の目の前に、筆のような形状の槍が向けられる。
……次に住民がどうなったのかは、説明するまでもないだろう。
その血潮を、もう一つのキャンバスに。槍から滴る赤い雫で点を描いていく。
命を奪い、命を吹き込む。その動作の間も、彼は淡々とした事務的な表情をしていた。
「……これも違うな。いや、後で考えるべきか。次」
ひとしきり描き終えたところで、彼はやれやれ、とでも言うように溜め息を吐いた。
そして次の作品をしばらく吟味するように見つめて、彼は感心したように頷いた。
「君は……うん、以前よりは少し改善されたかな。今回はC+だ」
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます……!」
次の住民はすぐに頭を下げる。まるで神への祈りが通じた信者のように。
「さて、採点はこれで最後か」
課題採点を終えたところで、まだ自由時間とはいかなかった。
生徒である彼自身もまた、課題を課せられている身であるからだ。
アトリエに向かってみると、いつものように何人もの生徒たちが意見を交わしている。
だが、意見交換と言うよりも互いに自己主張をしていると言う方が正しいだろうか。
これも薬指では頻繁に見る世界だ。彼もまた、当たり前のようにその状況を見守る。
「いいや、譲れないっす。ここの表現はあたしら立体派が最も適してるっすよ? そもそも、野獣派のやり方だと、どう見たって作品全体のバランスが偏るじゃないっすか」
立体派を名乗る者の一人が、実際に作品の一部を想定した部分を描き出す。
確かにそれは住民たちの見せた課題に比べても卓越していると見える。
それでも、生徒たちにとっては当たり前のラインに過ぎないようだった。
野獣派の中の一人はすかさず反論し、さらに場の雰囲気は冷たくなっていく。
「偏る? これが強調効果を持つ変数だって分からないのは、全てをスパゲティコードみたいに煩雑な表現にしようとする立体派らしい考えなの」
「いや、違うね。ここは点で表現するべきだろ?」
先ほどの立体派の生徒が特に敵意をむき出しにして、嫌味を含んだ言い方で否定する。
「機械的で単純な技法で訴える点描派の芸術が、この場で適しているとは思わないっすけど」
「浅はかだね。色や線に頼ることなく、極限まで限られた状態で正確な陰影を描くことによる深みこそが至高の芸術であり、美しさを生むのさ」
元々は皆、団体で作り出す課題の内容の改善案について語っていたはずだった。
しかし今は、各々の派閥がいかにより優れているかと言ったように議題は逸れていた。
その中でも一人は冷静なままだった。
「いつまでそうやって、何の意味もない話に時間を浪費している暇があるのか疑問だわ。締め切りに間に合わなくなったらどうするつもり? 最後の一人がやっと戻って来たのに、やることがそれで良いのかしら」
威勢よく派閥の主張をしていた全員が一斉に静まり返る。
脳裏に想像したくもない光景が嫌でも横切ったのか、彼は自身の位置へ戻っていった。
「……担当位置に戻ろう。下絵から、早く完成させないと」
彼の言葉に呼応するように、他の派閥の皆も全員が真剣な面持ちで戻っていく。
先ほど言われたように、時間は限られている。その中で完成すらさせられなければ……
どうなるのかは、全員が分かり切っていることだ。