アストラルパーティのキャラに人格を被せる 作:|2:<|<‘/
「……今回も酷い有様だな」
整理業務として列車の内部に乗り込む度に、こうして深い溜め息が出る。
切り開かれた体内から放たれる異臭と、何百年も前に流れ出したのであろう鮮血の匂い。
これが翼であるW社の実態だ。列車に乗れば10秒で目的地に着くという売り文句があるが……その裏側では何千年と言う時間が幾度となく
その途方もない時を一等席という選択肢によって避けられるはずが、乗客からすればその理由も知らない上、いつしか起きた乗客の失踪事件によって益々信用を失っていると来た。
その結果、こうした閉塞空間にて長く取り残され、そこに何の変化も
「本当に二人だけで人手が足りるのかしらねぇ。最近入って来たあの子も中々に覚えるのが早かったし、頼りにはなると思うのだけれど」
その新入りとは恐らく姪のことを言っているのだろう。蒼鯉の発した言葉は内容こそ懸念を示しているようだが、力の抜けた話し方をするのは相変わらずだった。私よりも大柄で頼りがいがありそうに見えても、こうした印象や酒癖の悪さだけは昔から変わらない。飲んだ酒を吐き戻すのには懲りたのか、最近は控えめになった方ではあるのだが。
それさえどうにかなれば、もっと上の階級にも行けるだろうに……いや、行ったところで更なる地獄を見るだけだから、こうした姿もまた正解なのかもしれないな。
「新入りに来させるには荷が重い事態のようでな。一人は重傷を負ってしばらくは動けない状態だから、仕方がない。奇襲に備えて、充電力場は維持し続けるようにする」
そうして辺りを見渡すと、武器を手に取り互いに争ったような形跡が見られた。
精神的不安から属す勢力を作る。マニュアルから言うと、これは勢力タイプと呼ばれる状況だ。そして、この惨状から察するに、血の気の増した連中が辺りにいてもおかしくはない。新入りが来られない理由はすぐに理解できた。
「蒼鯉はとにかく落ち着いている乗客の整理に集中してくれ。そして充電が終わり次第、空間切断を遂行する。私は道を作りながら、暴れる乗客を制圧する」
「分かったわぁ……はあ、この装備重たいのよねぇ。肩に優しくないんだもの」
「冗談を言っている暇はないぞ。一人分足りないから、いつも以上に迅速に終えないと」
整理用の武器を手に、こちらに向けて武器を振りかざす乗客を制圧する。ボロボロの腕で満足に戦うことなどできないだろうに、それでも戦う意思をその乗客は見せていた。
W社から支給された、私の刀を模した武器が私にはある。満足に扱える武器と肉体に敵うわけがなく、簡単に乗客は制圧される。それ以降も似たような状況がしばらく続いた。
チーフとして私はもちろんのこと、蒼鯉もまた手慣れた様子で業務を遂行していく。人手不足であるのにも関わらず、マニュアルに記された時間通りに作業は進められた。
その中で一人の乗客が座らせられていた座席から一枚、広告が冷たい床にこぼれ落ちた。
『どこでもたったの10秒で』。この言葉は……この場で働き始めてから、チーフまで成り上がった私から言わせてもらうと、ただの皮肉でしかない。それなら、私は一体いつになれば帰ることができるのだろう。10秒どころか、この先何十年経ったとしても……。
「……全く、人使いが荒いものだな」
今に始まったことではないのに、今更、噛み締めるように私は呟いていた。