アナキンの親友なって色々あって旅に出た英雄の話   作:紅乃 晴@小説アカ

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ここに救世主を作るための材料があります

 

 

ジオノーシスでヴェイダー率いる死の小艦隊(デス・スコードロン)による追手を撒き、霊体となっていた俺たちは低出力状態でジオノーシスを離脱。船体の各機能を最低限まで絞り込み、エンジンの排熱すら抑えながら、巨大な赤茶けた惑星がゆっくりと後方へ遠ざかっていく。

 

背後では、ヴェイダーの旗艦を中心としたスター・デストロイヤー群がなおもこちらを探知しようとセンサーを展開していた。だが、霊体化した俺たちの存在はフォースの海に溶け込むように曖昧になっている上、船そのものもほとんど漂流物に近い出力しか出していない。

 

やがて計器に表示されていた危険域が消える。

 

スター・デストロイヤーの検知範囲から抜けたと同時にハイパースペースへとジャンプし、完全にその追跡から逃れることができた。

 

星々が青白い光の筋へと変わり、船内に低い駆動音だけが響く。緊張の糸がようやく切れた俺は、ゆっくりと操縦桿から手を離した。

 

そして操縦を自動モードに切り替えたのち、俺はアナキンとパルパティーン相手に正座をしていた。

 

「なにか申し開きは?」

 

船内には重い沈黙が満ちていた。

 

正座する俺を、二人がじっと見つめている。

 

ジオノーシスでヴェイダー相手にやらかした俺の一部始終を見ていたアナキンとパルパティーン。

 

霊体化して戻ってきたらアナキンは泡を吹いてぶっ倒れていて、それを介抱するパルパティーンという謎の状況すぎて笑ってしまったが、アナキンからするとかなりダメージがある戦いだったようだ。

 

ちなみにその時の光景はなかなかに酷かった。

 

床に横たわるアナキン。「しっかりせい!まだ死ぬでない!」と、どこから持ち出してきたのか分からないうちわで必死に扇ぐパルパティーン。

 

元銀河皇帝が元選ばれし者を介抱しているという、銀河の歴史書に載せてはいけない絵面である。

 

「こう……自分のダメなところを根こそぎ取り出して煮詰めたような相手を説教するログというのが解釈違いすぎて無理」とうわ言のように言っていたのだとか。

 

本人としては、過去の自分の黒歴史を巨大スクリーンで上映され、その上で友人に徹底的に駄目出しされるような感覚だったらしい。

 

「正直やりすぎたと思った」

 

いやね?ほんとはこう、撒くためのまやかし程度で済ますつもりだったんですよ。言い出しっぺの法則でこれ以上歴史への干渉は控えるべきって。

 

ただフォースの意思さんが「今更罪悪感とか抱えてんじゃねーぞ、最後まで突き進め」って暴君みたいなことを言ってきたのと、ヴェイダーくんが割とダメすぎたのと、あれをカッコよく見せるのは個人的に解釈違いすぎるから釘を打ったというか何というか。

 

自分で説明していても、なかなか酷いことをした自覚はある。

 

だが、あの黒い装甲の中に閉じこもり、自分を「亡霊」と呼びながら現実から目を背け続けている男を見ていると、どうしても一発くらい叩き込まないと駄目だと思ってしまったのだ。

 

そんな言い訳を正座しながらいうと、パルパティーンは「こいつやべぇな」って顔をしながら唸る。

 

「やってることがエグすぎる……あれはヴェイダー卿もトラウマものでは?」

 

頬をひくつかせながら、パルパティーンが低く呟く。別世界とはいえ、アナキンを唆そうとした実績があるパルパルなので、その上で死体に助走をつけてシャイニングウィザードかますくらいのことをしでかした俺の行為を見て、この世界のアナキンの成れの果てを少し心配している様子だ。

 

さすがのシスの暗黒卿もドン引きである。

 

「ちなみにアナキン、もしヴェイダーの立場なら?」

 

「僕なら立ち上がって殴りかかるけど、ここのヴェイダーはパドメも失ってるし……ルークやレイアがいるのがわかって、二人からパパ認定されたら立ち上がれるんじゃない?」

 

パルパティーンからの言葉にアナキンはほぼ投げやりみたいな感じで答えた。

 

どこか疲れ切った目をしている。それはぐうの音も出ませんね。俺たちの世界のアナキンからすれば、ルークもレイアも可愛い息子と娘であり、たとえパドメが亡くなっても二人を置き去りにしてダークサイドに走るのは考えられないほど解釈違いであった。

 

実際、この世界のヴェイダーは二人の誕生を知らないとはいえ、子供がいたのならそれを確認するのが夫であり父のやることだろ!とアナキンはブチギレてたりするし。

 

「いや、なんで探さないの!?パドメが亡くなったならなおさら子供を探すよね!?まず生存確認するよね!?」

 

毎回同じところでキレ始める。

 

完全に親バカである。

 

しかもこの話題になると、さっきまでぐったりしていたはずなのに急に復活するのだ。

 

「だって子供だよ!?パドメのお腹の中にいて、生まれるってわかってたんだよ!?普通は探すでしょ!?何があっても探すでしょ!?」

 

力説するアナキンに、俺とパルパティーンは何とも言えない顔で視線を合わせる。

 

言っていること自体は至極真っ当だ。

 

むしろ親として百点満点の回答ですらある。

 

だからこそ、目の前で熱弁している男と、あの黒い生命維持装置に身を包んだシス卿が同一人物だという事実がひたすらややこしい。

 

暗黒面で現実逃避してるヴェイダーに、パドメが残してくれた二人の子供をぶつければ、いっぱつでライトサイドに戻ってくるのでは?というのがアナキンの談だが、残念。ルークが息子と知っても年単位で拗らせてるのがやらかしたアナキンなんよ。

 

「ひとまず、今後はどうする? ヴェイダー卿がフルボッコにされた以上、銀河のバランスがどうなるか誰にもわからないからな」

 

パルパティーンが思考を巡らせるような表情をしながら呟く。腕を組み、珍しく真面目な顔をしている。船内に流れていた緩い空気が少しだけ引き締まった。

 

この世界でデス・スター破壊のところでヴェイダーがおらず、肝心の本人はジオノーシスでボッコボコにされてるから、エピソード5とかに順当に進むか怪しいんだよなぁ。

 

ヴェイダーは帝国の象徴であり、皇帝の右腕であり、ルークを導くための重要人物でもある。

 

その男が今頃、ジオノーシスで人生を五周分くらい否定されて精神的に瀕死になっている。まぁ被疑者は俺だけど。

 

そんな中で歴史がどう転ぶかなんて、フォースの意思でもない限り予測できるわけがない。

 

「だからフォースの意思からは『おめーがやらかしたからおめーが何とかするんだよ』ってずっとガンガン言われてる気はする」

 

俺が遠い目をしながらそう告げる。

 

やった本人だからな。アナキンとパルパティーンからの視線はとても冷めたものであった。ごめんて。

 

「器とログを反復横跳びできるようになった弊害だのぅ」

 

パルパティーンが呆れたように肩をすくめ、アナキンが引いた目を向けてくる。もうぐうの音も出ない。

 

「とりあえず、デス・スターは反乱軍がどうにかするだろ。ジン・アーソが残した弱点を突ければ水風船みたいに爆発するわけだし」

 

俺がそう言うと、パルパティーンが何とも言えない顔になる。

 

「余、そこらへんを丸投げにしてたからアレじゃが、あのわかりやす過ぎる弱点を放置してたこの世界の余はひょっとしたらアホでは?」

 

さらっとこの世界の自分自身をディスるパルパティーン。銀河帝国を築き上げた張本人とは思えない台詞である。

 

「しかも、排熱口に魚雷を撃ち込まれたら超兵器が誘爆して消し飛ぶって、今考えるとだいぶ酷いですよね」

 

「うむ」

 

「うむじゃないですよ」

 

「余が設計したわけではないから……」

 

「でも最終承認者ですよね?」

 

「うむ」

 

少しだけしょんぼりする元銀河皇帝。

 

「まあ破壊されても仕方ねぃくらいにしか考えてないと思いますよ。ライブ感で生きてるのは間違いないでしょうし」

 

今頃は反乱軍とかそっちのけでフォースの探究に明け暮れてるから、正直どうでも良かったのでは?とは思う。

 

正史でもアグレッシブに物語に介入してくるの、ルークがヴェイダーの息子って判明してからだし。

 

本人的には「え?ルークが選ばれし者の息子? なら弟子にしたら余の叡智をさらに進歩させ、シスの本懐を遂げてくれるんじゃね?」とハッスルしたからだろうけど。

 

というか、この男は本当にフォースが絡むと行動力が異常になる。銀河征服すらそのための手段になっている節があるので、反乱軍と帝国の戦争ですら優先順位が微妙に低い。

 

「このやりとりをオビ=ワンやマスター・ヨーダに見せたら卒倒しそうだな」

 

ぽつりとアナキンが呟く。

 

確かにそう。パルパティーンとこんな感じでラフに会話するとは、当時の本人たちからすると予想外もいいところだったろう。

 

ジェダイ・テンプルでこの光景を見せたら、オビ=ワンは頭を抱え、ヨーダは耳をぴくぴくさせながら長い沈黙に入り、メイス・ウィンドゥに至っては無言でライトセーバーを抜きかねない。

 

まぁパルパティーンにヨーダやウィンドウは「ジェダイでやらかしたやつ」って思われてるからあんまり話したくもないし興味もなさそう。むしろ、「会えば面倒だ」くらいにしか考えていない。

 

晩年はアソーカとか、ジェダイを辞めて中道を志すようになった者や、霊体となったクワイ・ガンや、オビ=ワンとはコア・ワールドに帰還するタイミングでお茶をしばいたりする仲にはなったあたりする。

 

その事実を昔のオビ=ワンに伝えたら、『私が?あの男と?お茶を?』と、今度こそ本当に卒倒するかもしれない。ジェダイ評議会に見せたら集団幻覚を疑われる光景である。

 

「とりあえず、ログ。これからどうするのだ?」

 

これからの方針についてパルパティーンが改めて聞いてくる。さっきまでの雑談めいた空気から一転、元銀河皇帝の顔になる。組んだ手の上に顎を乗せ、瞳を細めて俺を見つめる。

 

銀河の歴史は大きく歪み始めている。

 

その原因が目の前で正座を崩しながら「うーん」と唸っている俺なのだから、何とも言えない話だった。

 

「銀河のバランスが絶妙に必要というならこちらからも救世主を出さねば無作法というもの」

 

俺はそう言って、人差し指を立てた。

 

アナキンとパルパティーンが嫌な予感しかしないという顔をする。

 

しかし、このままいけばシスの暗黒卿がナーバスになって原作みたいに恐怖の対象にならない可能性もあるし、ルークが息子ってわかるシーンもくるか微妙なのだ。フォースのバランスを保つには英雄が必要なのよ。

 

ならば、今から作るしかない!

 

そんな感覚で銀河の命運を左右されるとは思っていまい。

 

しばしの沈黙。

 

「……いや待て」

 

アナキンが口を開く。

 

「救世主って今から作るものなの?」

 

「必要なら作る」

 

「パンケーキみたいに言わないで」

 

至極もっともなツッコミである。

 

「その救世主に充てはあるのか?」

 

パルパティーンが半ば呆れたような顔で尋ねる。どうせまた突拍子もないことを言い出すのだろう、とでも思っているのだろう。

 

だが今回は違う。

俺にはちゃんと考えがあった。

 

「いるじゃないの、バッチリな素養をもった救世主」

 

そう言って、俺はパルパティーンを指差した。

 

「余?」

 

「あなた」

 

「余?」

 

「あなた」

 

何故か二回確認された。

 

そして俺は満面の笑みで告げる。

 

「ダース・シディアスの息子。レイの父親だ」

 

船内が静まり返っていた。ハイパードライブの低い駆動音だけが響く。

 

パルパティーンは固まった。

 

「……え、余はこっちでもやらかしてるの?」

 

数秒後、絞り出すような声でそう言った。

 

今は元気に放浪しているパルパティーンだが、皇帝時代は本当に色々とやらかしていて、「ログの器に相応しいものを作る!」とか言って、クローン技術を使って生体実験をやってたりしている。

 

銀河帝国が持つありとあらゆる技術と資金、そしてシスの秘術まで総動員して行われた一大プロジェクトである。

 

本人としては至って真面目だった。

 

むしろ、「より強く、より優れた器を用意するのは師として当然の務めであろう?」くらいの認識だった。

 

なお、周囲からすると完全にアウトである。

 

その過程で皇帝が自ら選定した女性の卵子を使って作り上げたデザインベイビーが、彼の息子であり、こちらの世界ではレン騎士団を率いる「カイロ・レン」と名乗り、後世ではルークと共にフォース・アカデミーの発展に尽力してくれた聖人みたいな人になっている。ちなみに、本人はその出生を知った時に盛大に頭を抱えたらしい。

 

それでも最終的には自分の出自を受け入れ、ルークと共に次代のジェダイとフォースの探究者を育て上げたのだから、人間できすぎである。

 

そして、正史のパルパティーン。同じくやらかしています。

 

「息子がおるの?」

 

「いる」

 

「余に?」

 

「余に」

 

「……」

 

パルパティーンが無言になった。

 

視線が宙を泳ぎ、瞳からすっと光が消える。頭の中で何かを必死に整理しているのだろう。

 

だが、整理しようにも前提条件がない。

 

恋愛経験らしい恋愛経験もなく、銀河帝国の皇帝として生涯を過ごし、死後はフォースの霊体として放浪生活を送っていた男に、突然「別世界でも貴方には息子がいます」と告げたのである。

 

混乱しないほうがおかしい。

 

「いや待て。余、ログがいないとしてもまともな恋愛と子育てなんてできる自信はないが?」

 

珍しく弱々しい声だった。

なんなら少し怯えている。

シスの暗黒卿が。

 

「まぁ、その辺はいろいろ濁らせてるっぽい」

 

「濁らせていい話か?」

 

「ちなみに厳密には息子本人もだいぶ被害者側」

 

「余の血筋なのに?」

 

「余の血筋だからこそ」

 

「……」

 

再び沈黙。

パルパティーンが完全に固まった。

 

そのまま数秒。

いや、十秒近く。

 

「……余の血筋だからこそ?」

 

小さな声で復唱する。

 

「うん」

 

「被害者?」

 

「被害者」

 

「余の息子なのに?」

 

「余の息子だから」

 

「……」

 

元銀河皇帝が、とても小さな声でそう呟き、そっと天井を見上げた。

 

そして、「余、結構なろくでなしでは?」と、今さら過ぎる自己評価を口にした。

 

俺とアナキンは、何とも言えない顔で静かに目を逸らす。その言葉を否定できなかったからである。

 

 

 

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