アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話 作:紅乃 晴@小説アカ
ただ名前の響きがちょっとあれだったので、ダーサンから、ダザンにしてます……!俺の銀河ではパルパルの息子はダザンだから。
あとウチのパルパル、正史とは違って姿は議長時代の姿のままだから、好き勝手やってやがる……!
あと、正史に全然合流できませぇん……!!
物心がついた頃から、世界は暗かった。
空はいつも黒い雲に覆われ、大地は灰色の岩と砂ばかり。吹きつける風は冷たく、稲妻が遠くの地平線を照らすたび、巨大な黒い神殿の輪郭が浮かび上がった。ここがどこなのか、幼い頃の僕には分からなかった。
雲はまるで空そのものを覆い隠す蓋のようで、青空というものが存在するのかさえ知らなかった。地面に生える植物はほとんどなく、遠くに見えるのは黒々とした岩山と、雷光に照らされて一瞬だけ姿を現す尖塔ばかり。
風の音だけが、いつも耳に残っていた。
ただ一つだけ理解していたことがある。ここは、自分がいていい場所ではない。
それだけは、誰に教わるでもなく分かった。
白い仮面を被った人々は、僕を見るたびに顔をしかめた。
「忌まわしきものだ」
「失敗作め」
「なぜまだ処分されていない」
そんな言葉を、何度聞いたか分からない。
言葉の意味はよく分からなかった。でも、それが自分に向けられた良いものではないことだけは、幼い僕にも理解できた。
だから僕は、人が来ると自然と端へ寄るようになった。
誰とも目を合わせないようになった。
彼らは誰一人として僕の名前を呼ばなかった。
そもそも、僕には名前がなかった。
僕はただ、そこにいるだけの何かだった。
何者でもない存在。
眠って、目を覚まし、与えられた食事を口にし、また一日が終わる。
そんな毎日を繰り返していた。
時折、自分の手を見つめることがあった。
小さな手。
白い指。
他の人たちと何も変わらないように見える。
それなのに、どうして自分だけが「忌まわしいもの」なのか、僕には分からなかった。
時折、遠くから一人の老人が僕を見つめていた。
痩せ細り、死人のような顔をした男。
その黄色い瞳だけが、不気味なほど強い光を宿していた。
黒いローブを纏い、杖もつかずにゆっくりと歩いてくる姿は、幼い僕にはまるで幽霊のように見えた。
彼が誰なのか、僕は知らない。
ただ、その人が来ると、周りの大人たちは皆、頭を垂れた。
そして、その男はいつも僕を見るだけだった。
期待も、愛情も、興味すらない。
まるで壊れた機械を眺めるような目だった。
その視線を向けられるたび、なぜだか胸の奥がひどく冷たくなった。
怖かった。
それなのに、目を逸らしてはいけない気がして、僕もただ、その黄色い瞳を見返していた。
後になって知る。
あれが、僕の父だった。もっとも、あの人は僕を息子だと思っていなかっただろう。僕自身も、父と呼びたいとは思わなかった。
そんな僕にも、たった一人だけ味方がいた。
奴隷管理人のシミオン人。
名前はダザン。
彼は、年老いた男だった。灰色がかった毛並みと深い皺だらけの顔をしていたが、その目だけは優しかった。
彼だけが、僕を人間として扱い、食べ物の探し方や、凍える夜の凌ぎ方、文字の読み方も、銀河の歴史も教えてくれた。
夜になると、小さな明かりの下で古いデータパッドを開き、星々の名前を教えてくれた。
「この銀河にはな、こんなにもたくさんの世界がある」
そう言いながら映し出された光の地図は、僕にとって宝物だった。
青い海のある星。
巨大な森に覆われた星。
昼も夜も光に包まれた都市の星。
僕は何度もその地図を見つめた。
こんな場所が本当にあるのだろうか、と。
そしてある日、ダザンは僕に尋ねた。
「お前は、何になりたい?」
その質問の意味が、僕には分からなかった。
何者でもない自分が、何かになれるのだろうか。
僕はしばらく考えて、首を横に振った。
すると彼は笑った。
その笑顔は、この暗い世界では見たことがないくらい穏やかなものだった。
「なら、お前は人間になれ」
その言葉を、僕は何度も口の中で繰り返した。
人間。人間。……人間。
言葉にするたび、胸の奥が少しだけ温かくなる気がした。それがどんなものなのか、僕には分からない。けれど、なぜかその響きだけは、とても温かいもののように思えた。
だから僕は、初めて願った。
この暗い世界ではないどこかへ行ってみたい。
誰にも忌まわしいものと呼ばれず、名前を持ち、誰かと笑い合いながら生きてみたい。
青い空を見てみたい。
冷たい水や、生き生きとした木々、暖かな風に触れてみたい。
本の中でしか知らない海を見てみたい。
そしていつか……僕のことを名前で呼んでくれる誰かに出会ってみたい、と。
その時の僕はまだ知らなかった。
僕が銀河帝国の皇帝シーヴ・パルパティーンの血から生み出された存在であることも。
その時の僕は、ただ暗い空を見上げながら、遠い星々へ憧れていた。黒雲の切れ間から、ほんの一瞬だけ小さな光が見えた。それが星なのか、稲妻の残光なのか、僕には分からなかった。
それでも、その小さな光は、幼い僕にはどこか別の世界へ続く道のように見えた。
それだけだった。
▼
3ABY頃に、奴隷管理人ダザンの協力を受け、僕は密航船でエクセゴルから脱出することに成功する。
その日のことは今でも鮮明に覚えている。
エクセゴルには珍しく、雷鳴が少しだけ遠かった夜だった。
吹き荒れる風の音に紛れるように、僕たちは神殿の裏手にある荷積み場へ向かった。貨物コンテナの隙間を縫うように進み、警備の目を避けながら歩く。
幼かった僕には、それがどれほど危険なことなのか理解できていなかった。
ただ、手を引いてくれるダザンの手だけは温かく、そして強く握っていた。
彼の手は年老いていて、皺だらけで、少し冷たかったが、それ以上に暖かさがあって、不思議な安心感があった。
旅立ちの際、ダザンは僕へソングスチール製のお守りを贈ってくれた。
それは小さな金属片だった。銀色にも青色にも見える、不思議な輝きを放つ金属。紐を通せるよう加工されており、首から下げられるようになっている。
「これら歌う鋼だ」
ダザンは静かに僕へ言った。
「本当に歌うの?」
僕がそう尋ねると、ダザンは少しだけ笑った。
「人の心が折れそうな時にな。少しだけ、勇気をくれる」
その答えが本当なのか、冗談なのか、僕には分からなかった。けれど、僕はその小さなお守りを両手で包み込んだ。生まれて初めて、自分だけの物を手にした気がした。
そして僕は、自分を唯一人間として扱ってくれた恩人に敬意を込め、自らを「ダザン」と名乗るようになった。
本当の名前などいらない。
それに……最初から存在しなかった。
だからこそ、自分で選びたかった。
人間になれ、と言ってくれた人の名前。それを名乗ることで、いつか自分も彼のような人間になれるかもしれないと思った。
エクセゴル脱出後、僕はさまざまな星々をめぐり、今はこのカフリーンの環で日雇い労働者としての日々を過ごしていた。
最初に見た青空のことは忘れられない。
ただ空が青い。
それだけのことなのに、僕はしばらく立ち尽くしていた。
暖かな風も、雨の匂いも、色鮮やかな植物も、本の中だけのものだと思っていた。
銀河は、思っていたよりずっと広く……そして、思っていたよりずっと残酷でもあった。
名前も戸籍もなく、身元を保証してくれる者もいない人間が生きるには、この銀河はあまりにも厳しい。
だから僕は働いた。
貨物の積み下ろしや、採掘機材の整備、危険区域での廃棄物処理。金になるなら何でもやった。
今の僕は、このカフリーンの環の片隅で、かろうじて生きているだけの男だった。
ダイナーで1番安いスープとパンを口にして、住む場所と寝床を守るために危険な労働に従事する日々。一つの場所に止まるのも危険だったので、すぐに行方をくらませるための資金は必要だった。
温かいスープが胃に落ちていく。
味は薄く、パンも硬いが、それでも腹を満たしてくれる。それだけで十分だった。
いつ皇帝の追手が現れるか分からない。
なぜ自分が生かされていたのか。
なぜ自分だけが外へ出ることを許されたのか。
その理由は今も分からない。
けれど、本能が告げていた。
自分は見つかってはいけない。
だから金は必要だった。いつでも荷物をまとめ、別の星へ逃げ出せるだけの金が。
食事を済ませて人通りの多い道から路地に入る。あたりには違法薬物や怪しげな商売をする人がいたが、目的地である住居の付近までになると、人の通りは全くなくなっていた。
ネオンの光が濡れた地面にぼんやりと反射している。
遠くから怒鳴り声が聞こえた。誰かが笑い、誰かが喧嘩をしている。どこにでもある無法地帯の夜。
だが、路地を進むにつれ、その喧騒が少しずつ遠ざかっていく。
静かだ。いや……静かすぎた。
その時だった。
背後に、わずかな気配を感じた。
足音はない。
だが、いる。誰かが自分を見ている。何日も危険な現場で働き、生き延びてきた経験が警鐘を鳴らしていた。
「こそこそとついて回るのはやめてくれないか」
歩みを止め、ふと声に出す。
ただ、静かに前を向いたまま言った。
ストームトルーパーや、皇帝の追手ならこんなコソコソとした真似はしない。もっと堂々と殺しにくるはずだ。
だからこそ分からなかった。
賞金稼ぎか。
ただの追剥ぎか。
あるいは……。最悪な未来を想像しないよう、ゆっくりと息を吐いた。
肺の奥に溜まっていた重い空気を吐き出しながら、じわりと滲み出る嫌な汗を感じる。冷たい空気が肌を撫でていくというのに、背筋だけは妙に熱かった。
そして、暗い路地の先を見つめたまま、背後の気配が返事をするのを静かに待った。
夜のカフリーンの環は、遠くから貨物船のエンジン音と、どこかで誰かが怒鳴り合う声がかすかに聞こえてくる。だが、この路地だけは切り取られたように静かだった。その静寂の中で、背後にいる何者かの気配だけが妙にはっきりと存在を主張している。
「私に気がつくか。さすがは
そう言葉を吐く相手。彼の者の息子。それが何を意味するか、彼がいう相手が何なのかなんて全くわからなかったが、息子という言葉は僕の神経を激しく掻き立てた。
その二文字が、まるで錆びついた傷口を抉るように胸を刺す。思い出したくもない暗い回廊、赤い灯り、冷たい石造りの廊下。忘れたくても忘れられない記憶が、一瞬だけ脳裏を掠めた。
A180ブラスター・ピストルを抜き、背後に向けた。
腰のホルスターから抜き放つ動作は、もはや反射だった。指は迷うことなくグリップを握り、銃口は一直線に背後の人物へ向けられる。
ブラスター・ピストルはコンパクトで持ち運びやすい反面、パワーや充填量ではブラスター・ライフルやブラスター砲に劣った。しかし腰に下げたホルスターに収まるブラスター・ピストルは便利な護身具となった。
少なくとも、この銀河の片隅で日雇い労働者として生き延びるには十分すぎる武器だった。脅しにも使えるし、最悪の場合、自分の命を守る最後の手段にもなる。
「あぁっ と、そんな物騒なものを向けてくるんじゃない」
ブラスターの銃口の先にいたのは、向けられた凶器から顔を背けるように立つ初老の男性だった。白というより銀に近い髪の毛。穏やかな顔つき。そこに敵意や、悪意は感じない。だが、僕は警戒心を解かずにブラスターを構える。
薄暗い照明に照らされたその男は、妙に落ち着き払っていた。普通ならブラスターを向けられれば多少は取り乱すものだ。しかし彼は、まるで子供に危険物を向けられた大人のような困った顔を浮かべているだけだった。
「僕のことを息子と言ったな?僕が何者かを……知っているな?」
「あぁ、その通りだ。だが、それを理由に君を殺しにきたり傷つけにきたわけじゃない」
そういう男は、ゆったりとしたローブを着こなしていて、どこか気品があった。こんな場末の労働者が住むエリアには似つかわしくない。
その立ち姿には妙な品がある。背筋が自然と伸び、余裕を纏った振る舞いは、長年権力や責任ある立場にいた人間を思わせた。少なくとも、汗と油にまみれたこの場所の住人ではない。
「連れ戻しにきたのか?エクセゴルに……」
言葉を口にしただけで、喉の奥がひどく乾くのを感じた。
「まさか。そんな真似をするならもっと手荒な真似をしておるよ」
彼はなんてこともないように言う。たしかに銀河帝国の権力があるなら、このカフリーンの環をひっくり返して調べるなんて造作もないだろう。
帝国が本気になれば、この狭い居住区など数時間で封鎖される。逃げ場などどこにもなくなるだろう。だからこそ、こうして一人で現れた男の存在が逆に不気味だった。
「じゃあ、何で僕を見つけた。僕は……もうあそこには関わりたくない。シスなんてうんざりだ。僕は……!」
胸の奥から吐き出された言葉は、気づけば震えていた。
「ただ人として生きたい。そうなのであろう?」
そう男性は言う。はっとした顔をしてしまい、初老の男は優しく笑みを浮かべて言葉をかけてくる。
「君の思いはわかっておる。あの星からその思いを持って出てきたのだろう?それを踏み躙ってでもどうにかしようなどと、私は思わんよ」
「……」
言葉が出なかった。
ただ人として生きたい。
それは誰にも話したことのない願いだった。誰にも言わず、胸の奥へ押し込めていた、みっともないほどささやかな望み。それを、この男は当然のように言い当ててみせた。
彼の言うことを頭で整理し、顔と目を見つめてから構えていたブラスターを下す。エクセゴルでさまざまな目に遭ってきたが、あそこで得れたもので便利なのは、言っている言葉が真実か、嘘かを判別できる……直感めいた感覚だけだった。
相手の表情、声色、視線の揺れ。理屈では説明できないが、それらが一つの感覚として頭に流れ込んでくる。そして今、この男からは偽りの匂いがしなかった。
こんな世界で生きていく上で、相手が僕を騙そうとしているのかを判断する上で、それは充分に役に立つものだった。それがなければ、幼い頃に僕は死んでいただろう。
「話を聞いてくれるようになったかな?」
初老の男性はそういうが、僕はそんなつもりはなかった。
「ここを出ていく」
「ほう?それはなぜかね?」
「アンタに見つかったんだ。他の誰かに見つかってる可能性もある」
口にしながら、自然と視線が路地の出口へ向く。闇の向こうには無数の住居と通路が広がっている。しかし今は、その全てが急に危険な場所に思えた。
「私は告げ口などはせんよ」
「誰の目があるかわかった者じゃない」
「待ちなさい、君はここから脱する金はあるのかね?」
その言葉に、足が止まった。
カフリーンの環は非正規労働者にとっては天国ではあるが、出るのは容易ではない。
入る時にはしっかりと生体データが登録されているし、それの抹消と出立費用として莫大なクレジットを要求される。
そして今の僕にはそのクレジットを支払うほどの貯蓄はなかった。
思わず奥歯を噛む。
今日の食費を引けば残るのはわずかなクレジットだけ。船のチケットどころか、生体登録の抹消費用にすら到底届かない。
結局のところ、僕は自由を手に入れたつもりでいて、この巨大な宇宙港の片隅に繋ぎ止められたままなのだ。
見上げれば、カフリーンの環の天井には無数の配管と補強材が走り、ところどころで赤や青の警告灯が明滅している。その向こうには、本来なら無限に広がるはずの宇宙がある。
なのに、僕にはそれがひどく遠いものに思えた。
「行商人の船に密航でもして脱出するよ」
口にしたのは半ばやけくそのような考えだった。しかし、それ以外に方法を思いつかなかったのも事実だった。
「危険が伴うぞ?密航が判明すれば即死罪だ」
「そうなれば、僕の運命はそこまでだったと言うことだよ」
自分でも驚くほど淡々とした声だった。
死ぬことが怖くないわけじゃない。
ただ、エクセゴルへ連れ戻されるくらいなら、その方がまだましだと思っていた。
そう言って身支度をしようと踵を返す僕へ、初老の男は言葉を続けた。
「運命なんていう不明瞭なものに全てを委ねるではない」
その声音は穏やかなままだったが、不思議と胸の奥へ響く重みがあった。
その言葉を背に受けて、僕はうんざりしたように振り返る。
「じゃあ何? シスでも信じろって?」
皮肉を込めた言い方だった。
エクセゴルで散々聞かされたのだ。運命だの、選ばれし者だの、ダークサイドだの、失敗作だの。
そんなものを信じた人間がどうなるのか、僕は嫌というほど見てきた。
「フォースを感じるのだ」
男の目は吸い込まれそうな魔力のようなものがあった。さっきまでとは全くちがう。その言葉にたじろいでいると男はさらに続ける。
まるで夜空そのものを閉じ込めたかのような、不思議な深みを宿した瞳だった。
ただ見つめられているだけなのに、自分の内側まで見透かされているような錯覚を覚える。
「シスもジェダイも、フォースの一つの側面にすぎんよ。それがフォースの全てと断じるにはいささか傲慢が過ぎる」
「シスがひとつの側面……?」
思わず聞き返していた。
僕の知る世界では、シスとは絶対だった。恐怖と力、支配と従属。それこそが宇宙の真理なのだと教えられてきた。
だから、その言葉はあまりにも奇妙だった。
「左様。ダークサイドもライトサイドも、その教義や感じ取った者の主観を、ひとつの体形にまとめあげたものにすぎんよ」
男は静かに語る。
まるで昔話でも聞かせる老人のように、押しつけるでもなく、諭すでもなく。
「フォースなんて、アンタは信じてぃるのか?」
「信じるもの何も、今ここにもあろう。私の周りにも、そして君の周りにも」
そう話をしながら男は僕の前まで歩いてきて、とんと胸に指を押し当てる。
その指先は驚くほど軽かった。
しかし、その感触だけが妙に鮮明に残る。
「それをどう感じ、どう受け止め、どう向き合うかは、それぞれの個人に委ねられているに過ぎない。究極的に言えば、感じ取った物の主観次第と言ったわけだ」
あとは、お前次第だ。そう言わんばかりの言葉だった。不思議なことに、その言葉には今まで聞いてきたシスの教えのような圧迫感も、服従を求める響きもなかった。
ただ、そこに選択肢があるのだと告げているだけだった。
さっとその飲み込まれそうな魅力を飛散させた彼は、声色をガラッと変えて話を切り替える。
「さて、君はここから出ると言ったな? 都合よく私もここにきた目的を達した。私たちは自分たちの船で出る。もちろん、出立費用をしっかりと支払ってあるから、何ら疑われることはない」
「……目的地は?」
自然と問いが口をついて出ていた。気づけば、さっきまで抱いていた警戒心は少しだけ薄れていた。
「さてのぅ、銀河は広い。私はこう見えても探究家でな。さまざまな星々で遺跡や文明の痕跡を調べて回ってるのだよ」
そう穏やかにいう彼は、試すように僕を見つめていう。
「さまざまな世界を見にいく興味はあるかな?」
まるでそれは、一緒に来いと言わんばかりの言葉。
僕は息を呑む。
頭の中に、今まで本や古びたデータパッドで見た景色が浮かんだ。
緑に覆われた星。海しかない世界。巨大な都市が地平線まで続く惑星。遠い昔の文明が眠る遺跡。
幼い頃、誰もいない部屋でこっそり眺めては想像した世界。
自分には決して縁のない、夢のような場所。
幼い頃に憧れたさまざまな世界を見るチャンスが、こんな都合よく湧いてくるなんて思わない。
ただ……ただ……それでも、目の前にあるこの優しげな男性を、僕は、僕は自分の名として記憶した彼と同じく、信じてみたくなっていた。
胸の奥が少しだけ熱くなる。
それは希望というにはまだ頼りなく、けれど消えてしまいそうなほど弱くもない、小さな灯火のような感覚だった。
「貴方の名前は……?」
「私の名は〝プレイガス〟。マスター・プレイガスと呼ぶといい」
そう言って背を向けて歩いていく男……プレイガス。
その背中は決して大きくない。
だが、不思議と迷いなく前へ進んでいく背中だった。
僕は無意識に足を向け、その男の背を追う。
薄暗い路地を一歩、また一歩と進む。
背後には、狭く汚れた自分の居場所。
前には、何が待っているのかもわからない未知。
それでも、足は止まらなかった。
それは伝説的な旅の始まりでも、誰かに祝福された出発でもなかった。けれど、たしかに僕の心は好奇心と、ワクワクする感覚に満ちていた。
胸が高鳴っている。
自分でも信じられないくらいに。
この先に一体どんな冒険が待っているのか。
そんな期待に似た感覚をもって、僕は冒険の旅へとその足を踏み出した。
そしてその時の僕はまだ知らない。
この何気なく追いかけた一人の老人との出会いが、自分の人生だけではなく、遠い未来の銀河にまで大きな波紋を広げていくことになるなどとは、夢にも思っていなかった。
アナキン「あの人、平然と自分が殺した師の名前を偽名に使ったけどログはどう思う?」
ログ「まぁシスは裏切りと嘘が常套句ですしおすし」
アナキン「あと動きがまんまマスター・ヨーダと同じなのは皮肉だよね」
ログ「それ本人に言ったらへそ曲げるからやめような?」