アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話   作:紅乃 晴@小説アカ

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ジェダイの賢人とズッコケ三人組

 

 

 

カフリーンの環。そのダイナーには帝国兵が踏み荒らしていて、店主は見えざる力で宙に浮かされ首を絞められていた。

 

もともとは労働者や運び屋たちで賑わっていた小さな店だった。壁には油汚れが染みつき、安酒と焼いた肉の匂いが漂っている。しかし今、その空気は恐怖によって塗り潰されていた。

 

白い装甲を纏ったストームトルーパーたちが店内の各所に立ち、ブラスターを構えながら客を壁際へ追いやっている。椅子は乱雑に倒され、食べかけの皿やグラスが床に散乱していた。

 

そして、その中心。

 

漆黒の装甲に身を包んだ巨人が、ただ一人、静かに立っていた。

 

規則正しく響く機械呼吸音だけが、異様な静けさの中で不気味に鳴り響いている。

 

「三人組の男を見たか」

 

ダイナーの店主をフォースグリップで尋問するのはダース・ヴェイダー。

 

店主の身体は床から一メートルほど宙へ浮かび上がり、両足が空を蹴るようにもがいていた。首に絡みつく見えない力から逃れようと必死に手を伸ばすが、何も掴めない。

 

この地から三人の男が船で寄り、そして脱しているのは確認済み。登録されるはずの生体データは莫大な賄賂で誤魔化されており正確な情報でもなく、離脱時も莫大な出立費用の支払いで追跡ログも消されている。

 

あまりにも不自然だった。

 

単なる逃亡者の手際ではない。

 

港湾管理局、出入国管理、船舶管制。複数の部署に同時に金がばら撒かれ、情報が意図的に歪められている。まるで最初から存在しなかったかのように、三人の足取りは銀河の記録から消されていた。

 

「わ、私は何も……しらな……」

 

掠れた声を絞り出す店主に、グッと力を込めてフォースを強める。店主の顔がさらに苦痛に歪み、目が大きく見開かれた。

 

ヴェイダーは苛立っていた。

 

金も調べたが、その金の出所は複数の銀河バンクを経由しロンダリングされており、どこからもたらされた金なのかも足取りがつかめなくなっている。船の痕跡も、このカフリーンで途絶えている。

 

規則的な呼吸音がわずかに重くなる。

 

完全に消えている。

 

生体データも、金の流れも、船の記録も。

 

何者かが意図的に、自分の追跡を見越して証拠を消し去っている。その事実が、ヴェイダーの内に静かな怒りを燃え上がらせていた。

 

そして脳裏には、ジオノーシスで相対したあの男の姿が焼き付いている。

 

黄色い光刃に、見覚えのないはずの剣技……だが、なぜか拭い切れない奇妙な既視感。考えれば考えるほど、得体の知れない違和感だけが胸の奥に沈殿していく。

 

「ヴェ……ヴェイダー卿」

 

ダイナーの店主を尋問するヴェイダーに、1人の士官が恐る恐ると言う様子で話しかけた。

 

士官の声は震えていた。彼もまた、この場に漂う怒りを肌で感じ取っている。機嫌の悪いヴェイダーに声をかけることが、どれほど危険なことか理解していた。

 

ヴェイダーは情報を持たないダイナーの店主を乱雑に離してから低い声で答える。

 

店主の身体が床へ落ちる。鈍い音と共に倒れ込んだ店主は、激しく咳き込みながら空気を貪るように吸い込んだ。

 

「なんだ」

 

「ご連絡がきております」

 

簡潔に言う士官。

ヴェイダーは振り返らずに答える。

 

「あとにしろ」

 

低い機械音声には、明らかな苛立ちが滲んでいた。

 

士官は一瞬だけ言葉に詰まり、それでも意を決したように口を開く。

 

「それが……皇帝陛下からでして……」

 

その言葉にヴェイダーは沈黙した。

 

店内から物音が消える。ストームトルーパーたちですら身じろぎ一つしない。

 

やがて、ゆっくりと漆黒のマントが翻る。

 

何も言わぬまま踵を返し、ダース・ヴェイダーはダイナーを後にした。

 

規則正しい機械呼吸音だけが遠ざかっていき、その姿が入口の向こうへ消える。

 

しばらくしてから、誰かがようやく息を吐いた。

 

床に倒れ込んだ店主は咳き込みながら震える手で首を押さえ、生きていることを確かめるように荒い呼吸を繰り返していた。

 

店内には重苦しい沈黙が流れている。

 

誰もが言葉を失っていた。

 

つい先ほどまで、目の前で人が見えない力によって宙へ吊り上げられていたのだ。ストームトルーパーたちの足音と共に遠ざかっていく機械呼吸音を聞きながら、客たちはようやく自分たちも助かったのだと理解し始めていた。

 

だが、誰一人として口を開こうとはしない。

 

ただ、暗黒卿が去った扉を恐れるように見つめていた。

 

 

 

 

自身専用の揚陸艇内にある通信装置を起動させると、フードで目元までを隠したシスの暗黒卿がそのホログラム映像に映し出された。

 

青白い光が薄暗い船内を照らし、重々しい静寂が辺りを支配する。

 

「……」

 

「陛下、お待たせして申し訳ありません」

 

無言でこちらを見る相手……銀河皇帝であり、ヴェイダーのマスターでもあるダース・シディアスへこうべを垂れる。

 

ホログラム越しだというのに、その存在感は圧倒的だった。まるで通信機を介しているのではなく、本人がその場に立っているかのような錯覚すら覚える。

 

「フォースが乱れておるな、我が友よ」

 

通信越しだというのにシディアスはヴェイダーの揺らぎを見抜いていた。

 

ヴェイダーは沈黙した。

 

仮面に覆われた表情に変化はない。しかし、ジオノーシスでの戦いが脳裏に蘇る。怒りとも困惑とも違う、得体の知れない感情が胸の奥底で燻っていた。

 

「……無粋な反逆者と相対しましたので」

 

「報告は聞いておる。ジオノーシスでその者と戦い……其方は敗れたと」

 

静かな口調だったが、その事実だけで十分だった。

 

ヴェイダーが敗北した。

 

帝国内でそれを知る者は極めて少ないだろう。

 

「……はい、陛下。なんなりと罰をお与えください」

 

機械音声が静かに響く。

 

そこに言い訳はない。

 

敗北は敗北。シスにとって失敗とは、自らの力不足以外の何ものでもない。

 

しばし沈黙が流れ、青白いホログラムだけが揺らめく。

 

「否、それは必要ではないぞ、我が友よ。其奴が生者なら其方へ相応の試練を与えるつもりであったが……」

 

「生者であれば……?どういうことです、陛下」

 

「其方が追う三人。少なくともこの世の生者ではあるまい。暗黒面のフォースにゆらめきを感じておる」

 

その言葉に、ヴェイダーの呼吸音がわずかに重くなる。

 

生者ではない?

 

それは到底受け入れがたい言葉だった。あの男たちは確かに存在していた。声を交わし、剣を交え、フォースをぶつけ合った。

 

幻でも亡霊でもない。だが同時に、彼らが普通の存在ではないこともまた理解していた。

 

感じたことのないフォースに、見たこともない技。そして何より、フードの男から感じた奇妙な既視感。

 

「カフリーンの環で三人の痕跡は見つけました。そして……もうひとつ。認識番号、DA285が行方をくらましています」

 

ヴェイダーの報告に、ホログラムの向こうにいるシディアスは微動だにしなかった。

 

フードの奥に隠れた表情は窺えない。

 

だが、少なくとも驚きや怒りといった感情は微塵も感じられなかった。

 

認識番号DA285。

 

帝国の記録上はただの失敗作。

 

そしてシディアスにとっても、その程度の認識でしかない。

 

己が肉体から生み出された存在であろうと、そこに親愛や情といった感情は存在しなかった。彼にとって生命とは利用するための駒であり、価値は役立つか否かだけで決まる。

 

役立たない駒が盤上から消えた。

 

それだけのことだった。

 

「……そうか。あの失敗作は興味はない。しかし、その三人のことは心に留めろ、我が友よ」

 

その声色には、実の息子が姿を消したという事実への感慨は一切なかった。

 

まるで壊れた実験器具の廃棄報告でも受けたかのような、あまりにも淡々とした返答だった。

 

「捜索は打ち切れと?」

 

「デス・スターが破壊された以上、其方にはやるべきことがあるのではないか?」

 

デス・スターは帝国最大の威光。銀河に恐怖をもたらすはずだった究極兵器。

 

それが一夜にして失われた。

 

その余波は計り知れない。反乱同盟軍は勢いづき、帝国各地では動揺が広がっている。ヴェイダーには対処すべき問題が山ほどあった。

 

「……畏まりました」

 

「フォースの力は増しておる。あらゆるものに目を配るのだ、ヴェイダー卿よ」

 

そうして通信は切れる。ホログラムが消え、揚陸艇の中に静寂が戻った。立ち上がったヴェイダーは誰もいなくなった通信機の向こうを見据えながら独白した。

 

(奴らは生者じゃない?どういうことだ……奴らは一体、何者だ……)

 

規則的な機械呼吸だけが船内へ響く。

 

答えはない。

 

だが、仮面の奥で彼の思考はなおもあの三人へ向けられていた。

 

 

 

 

 

そしてコルサント。皇帝の住まいで通信を終えたシディアスは、煌めくコルサントの街並みを一人で見つめていた。

 

窓の外には無数の光が果てしなく広がっている。昼も夜も存在しない銀河の中心。何兆もの生命が活動する巨大惑星都市。

 

その全てが今や自らの支配下にあった。

 

「陛下」

 

側近が声をかけてくるが、下がるように伝える。今は一人で銀河に無数とあるフォースを感じていたかった。

 

玉座の間には静寂だけが満ちる。

 

シディアスはゆっくりと目を閉じた。

 

銀河全土へ意識を広げる。

 

そこには無数の生命が放つ微かな光と闇があった。

 

そして、そのさらに奥。

 

今まで感じたことのない巨大なうねりがあった。

 

「フォースが乱れておる。強大なフォースがこの銀河を揺らしているようだ」

 

これまでなかった強大なフォースの流れ。

 

それはかつてのクローン戦争や、アナキンの時に感じたものとは全く異なっている。

 

もっと深く。もっと大きい。

 

まるで銀河そのものがゆっくりと鼓動を始めているかのような、底知れぬ脈動だった。

 

それは暗黒面とも光明面とも断じられない。

 

ただ、圧倒的な力だけが存在していた。

 

だが、シディアスはそれを探しに行こうとは考えなかった。

 

彼はすでに銀河皇帝だ。

 

共和国を滅ぼし、ジェダイを滅ぼし、銀河の頂点へ立った。

 

今や自分こそが銀河の中心。

 

銀河を一変させるような出来事があるなら、必ず自分の前に現れる。

 

そう確信していた。

 

故に動かず、待つことにした。

 

「いずれ、余のもとに現れよう。その強大なフォースの源も……」

 

窓の外で無数の光が瞬いている。

 

銀河皇帝は静かにそれを見つめていた。

 

それがシディアスが犯した致命的な過ちと知らずに……。

 

 

 

 

砂漠のど真ん中。

 

サウザンド・アドベンチャー号は過酷な環境でも問題なく運用できるようアナキンが手を入れた船だ。もちろんキャンプ用の機材も搭載されていて、スイッチ一つで屋根付きのテントや調理器具一式、焚き火を炊ける落ち着いた空間を提供できる。

 

もはや小型宇宙船というより、移動式の秘密基地か高級キャンピングカーに近い。

 

アナキンらしく無駄に凝った改造が施されており、長期間の野営ですら快適に過ごせるよう細部まで手が入っていた。

 

灼熱の昼が終わり、夜。

 

昼間は焼けつくような熱気に支配されていた砂漠も、太陽が沈むと一変していた。遮蔽物がない砂漠には冷たい風が流れていたが、火をくべる薪の火はその冷たさを打ち消し、そしてじゅうじゅうと香ばしい香りを立ち上らせていた。

 

ぱちり、ぱちり、と薪が爆ぜる音が静かな夜へ溶けていく。

 

見上げれば、頭上には満天の星々が広がっていた。

 

「なにをやっているのだ。お前たちは」

 

そんな光景を見てため息をついたのは、昼間に砂漠でフォースを使い、オールドマスター……ログとともにシス・ジャイアント・ワームの動きを止めた歴戦のジェダイ……クワイ=ガン・ジンであった。

 

焚き火を囲む一同と、網の上で焼かれている巨大な肉塊を見比べ、彼は呆れ半分、感心半分といった表情を浮かべている。

 

彼はナブーの戦いでシスとの戦いに敗れ命を落としたが、その後、フォースの霊体として現世に留まり、偉大なるマスターであるヨーダと交信し、そして弟子であるオビ=ワンにも霊体化の術を教えるという、死してなおも研鑽と知識を深める道を進む賢人でもあった。

 

生前ですら独自の道を歩み続けた男だったが、死後はさらにその境地を深めている。

 

普通なら伝説として語られるような偉業を、本人はまるで当たり前のことのように成し遂げていた。

 

「まぁ結果オーライということでここはひとつ。ほれ、食料も何とかなったじゃろう」

 

「この爺め、まったく反省してやがらねぇ」

 

そうあっけらかんというのは、パルパティーン……ダザンの前では堂々と自身が暗殺したかつてのマスターの名前を使う人物であった。

 

パルパティーン的には、シスの教義に則った自然的な結末、寝てる奴が悪い、罠に嵌められたなら嵌めた相手を称賛すべきという思想があるので、あの世にいるプレイガスも咽び泣いて弟子の成長を喜んでくれているだろう。

 

もちろん、本人だけがそう思っている。

 

少なくとも周囲の人間から見れば、とんでもない理論武装である。

 

まぁ、そのパルパティーンの弟子や、選ばれし者と言われたアナキンはドン引きしていたけど。

 

そんなログは焚き火の上に設置された網の上でぶつ切りにした肉を焼いていた。

 

この肉?

 

さっきパルパティーンがフォース・ライトニングでこんがり焼いたシス・ジャイアント・ワームの肉である。

 

豪快に切り分けられた肉からは脂が滴り落ち、そのたびに火がぼっと勢いよく燃え上がる。香ばしい匂いが辺りへ広がり、否応なく食欲を刺激していた。

 

内臓や柔らかな腹肉は毒素があり食べられたものではないが、尾やヒレなどの筋肉部分は可食と地下文献に残っていたので、シス古代の歴史書を紐解きみんなで解体作業を実施。現地住民にも肉をお裾分けして和平を結び、残った食材をログが調理する流れとなった。

 

巨大な魔物を倒し、解体し、食材として利用し、ついでに現地住民との友好まで結んでしまう。

 

振り返ってみれば、なんとも行動力に満ちた一日である。

 

「ログ、諦めろ。いつものことだ」

 

そういうアナキンの隣では、逆立ちしてフォースを研ぎ澄ませているダザンがいた。

 

足をぴんと天へ向け、顔を真っ赤にしながらも集中している姿は、修行というより何かの曲芸に見えなくもない。

 

「マ、マスター・ラーズ!」

 

物資機材をフォースで持ち上げ、積み木のように積み上げていく。

 

箱がひとつ、またひとつとゆっくり浮かび上がり、不安定に揺れながらも積み重なっていく。

 

だいぶフォースの流れを掴めるようになったようだ。

 

アナキンは自身の名が銀河に轟きすぎているので、タトゥイーンで修理工をしていたときや、タトゥイーンで違法レースに出た時にこっそり使っていたラーズ姓と、義理兄弟であるオーウェンの名を借りた偽名を使っていたりする。

 

ちなみに違法レースで覇者になったことで、オーウェンからブチギレられてパドメとレイアが謝りに行くのも日常茶飯事であったが、義兄弟の仲は良好で、アナキンが亡くなった時はオーウェンは咽び泣いたということだけは確かであった。

 

ちなみにダザンはフォース感応者ではなく、体内にミディ=クロリアンもない。才能というのはこの世界のパルパティーンがいうように全くなかった。

 

フォースを支配し、屈服させるような使い方をするシスの流れには合わなかったのだろう。

 

ただ、それはあくまでフォースの一つの側面でしかない。アプローチの仕方など星の数のようにある。それをログもパルパティーンも、銀河を放浪してさまざまな世界で見聞きした知見として有している。

 

銀河の辺境にはフォースを生命の流れとして崇める者たちもいた。自然現象のように受け入れる者、歌や踊りを通じて感じる者、祈りとして捉える者、あるいは全く別の概念として扱う者もいる。

 

ジェダイやシスの教義ですら、広大な宇宙から見れば数ある解釈の一つに過ぎない。

 

ダザンにログが過剰なフォースを与え、その肉体いっぱいにフォースを満たせば、彼は否応なくフォースを感じることができる。そんな力業で、この問題を乗り越えていたりする。

 

これはある世界で実際に行われている方法であり、ログたちはその理論をフォースへ応用していた。

 

通常、人間のフォースを感じ取る感覚は閉じていて、頭から微弱なフォースしか出ていない上に垂れ流しになっている。

 

当然フォースは感じられず、ジェダイやシスの放つ強力なフォースも、殺気や不気味な気配程度にしか意識できない。

 

だからこそ、一般人にとってフォースは「存在するらしい何か」でしかない。

 

空気のように確かにそこにありながら、その存在を知覚する術を持たないのである。

 

その感覚を知覚するには、修行をしてフォースを体感しながら「ゆっくりと自覚する」場合と、強大なフォースを肉体にぶつけて「無理やり自覚する」場合の二つの方法がある。

 

「ゆっくりと自覚する」というのは一般的な修行であり、瞑想を繰り返し、自然や生命との繋がりを感じながら、少しずつその感覚を育てていく方法だ。

 

時間はかかるが、危険性は低く、時間をかければそれなりの成果は得られる。

 

で、「無理やり自覚する」場合。

 

非感応者に、強力なフォースを付与することで強制的に感覚器官を自覚させるが、この方法はフォースユーザーではない者に無理やりフォースを満たし、与える行為なので非常に危険であり、場合によっては死もありえる。

 

例えるなら、小川に流れる程度の水量しか想定されていない水路へ、一気にダムの放流を叩き込むようなものだ。

 

肉体も精神も、その奔流に耐えきれなければ壊れてしまう。

 

実際、ダザンもフォースを自覚できたが、事前説明なくプレイガス(パルパティーン)がやらかし、生死の狭間を彷徨うというアクシデントがあった。

 

混濁状態のダザンはログの蘇生術でなんとか蘇った。

 

ちなみに当のパルパティーンは「余は成功すると思っておった」と悪びれもせずに言い放ったため、その場にいた全員から本気で怒られた。

 

「あと5分だ、ダザン。大まかなフォースの感覚だけじゃなく、繊細なフォースの感覚も必要不可欠だ」

 

そんなダザンへの教育を誰がするのか。

 

これが問題だった。

 

今はアナキンが野菜の皮を剥きつつ教えているが、ここでイカれたメンバーを紹介するぜ。

 

これまで数多くのシスを輩出したパルパティーンは「は? 修行? そんなことより探究だ!」と言い、フォースの器となったログは「俺が教えたら第二のフォースの器が爆誕しかねない」と正史世界で核弾頭を作るつもりはないと辞退、そしてアナキンは師であるオビ=ワンに散々迷惑をかけたし、アソーカの件もあったり、ちゃんと弟子を取った経験がないので一人の弟子を育てる自信はない。

 

どう見ても反面教師筆頭、絶対に人に教えてはならない三人組。

 

一人は教育を放棄し、一人は危険物を作りかねず、最後の一人は自分に教育者としての適性がないと思い込んでいる。

 

人材は豪華なのに、教育陣としては壊滅的であった。

 

というわけで、三人でどう育てるか押し付けあ……ゲフンゲフン、教育方針について頭を悩ましつつ、フォースの遺跡探索をして強制レベリングを実施していたところ。

 

ジェダイの霊廟経由で、フォースの冥界にいたクワイ=ガン・ジンが強大なフォースを感じ、現世に顔を出したのが運の尽きだった。

 

「マスターにしよ……マスターにしようぜ!かなりマスターだよこの人!」

 

そう興奮気味にプレイガス(パルパティーン)が指差しながらいうのを見たクワイ=ガンからすると、銀河を手中におさめた皇帝と、絶賛暗黒面に落ちている自分が見つけた英雄と、そして膨大なフォースを持つ一人という謎の三人、さらにパルパティーンの息子という謎すぎるパーティー構成に、宇宙猫と化したのであった。

 

死後、フォースの冥界で数多の不可思議を目にしてきたクワイ=ガンですら、目の前の状況だけは理解が追いつかなかったのである。

 

フォースの冥界には、生者には窺い知れない無数の可能性が流れている。遠い過去の残響も、まだ訪れていない未来の欠片も、時として垣間見えることがある。

 

それでも、この面子だけは想定外だった。

 

銀河皇帝シディアス。フォースの器と呼ばれる男。別世界で英雄として生きたアナキン・スカイウォーカー。

 

そして、その全員が当たり前のように焚き火を囲み、巨大な芋虫の肉を焼いている。

 

どこから突っ込めばいいのか、賢人であるクワイ=ガン・ジンにも見当がつかなかった。

 

「……かつて銀河の全てを手にした男から出る言葉とは思えなかったぞ」

 

思わず漏れた呆れ混じりの言葉に、パルパティーンはむしろ誇らしげに胸を張った。

 

「そう言うな。マスター・クワイ=ガン。かつてのジェダイで其方ほどの賢人を余は知らぬ」

 

焚き火の向こうで肉をひっくり返していたログが、「そこは普通に敬意を払うんだな」とでも言いたげな顔をしている。

 

ただこの三人、クワイ=ガンに対して敬意がないわけではない。

 

むしろかなり高く評価している。

 

評価しているのだが、それと行動が伴っているかはまた別問題だった。

 

霊体のクワイ=ガンを見つけた時も、「フォースの霊体から実体化もできるよ!」と、それはもう名案を思いついた子供のような勢いで盛り上がり、その方法を半ば強制的にクワイ=ガンへ叩き込んだのである。

 

結果。クワイ=ガンは生死の境を彷徨った。

 

死んでいるのに……生死の境を……。

 

賢人である彼も、長い人生……いや、死後も含めた長い存在の中で、死んでいる自分がもう一度死にかけるなどという状況は想定したことがなかった。

 

というか、想定できる者などいない。

 

圧倒的なフォースの中で意識が薄れていく中、彼は本気で考えた。

 

私は今、一体どういう状態なのだろう。

 

なお、当の三人は「いやぁ、成功してよかった」と笑顔で言っていたため、クワイ=ガンは賢人らしからぬ表情でしばらく天を仰ぐことになったのだった。

 

「それにしても……いまだに信じられませんな。貴方やアナキン……そしてオールドマスターという彼が別世界からやって来た存在とは」

 

クワイ=ガンはゆっくりと星空を見上げた。

 

砂漠の夜空には無数の星々が広がっている。それぞれの星に、それぞれの生命があり、それぞれの歴史がある。だが、そこにさらに別の世界の歴史まで加わるとなれば、話は全く別だ。

 

ジェダイとして長い年月をフォースの探究に捧げてきた彼でさえ、その可能性には考えが及んでいなかった。

 

「まぁそれもまたフォースだろう」

 

パルパティーンは焚き火でマシュマロを焼きながら実に気楽そうに言った。その横顔には、もはや驚きや困惑といった感情はない。

 

本人自身が別世界の存在である以上、受け入れるしかないのだろう。

 

「時間軸はさまざまな繋がりがありますが、パラレルワールドについてはフォースの知見から見てもまだまだ未開の知識ですからね」

 

ログが串で肉をひっくり返しながら続ける。肉から滴った脂が火へ落ち、ぱちり、と小さく火花が弾けた。

 

「この広い銀河じゃ、はざまの世界のようにあらゆるパラレルワールドにアクセスできるフォースの秘術があるやもしれん」

 

「少なくとも、あのオカマ魔女はその秘術を知っていましたからね」

 

「ふざけたビジュアルだったが、腕は一級だったからのう」

 

クワイ=ガン・ジンの眉がぴくりと動く。先ほどから聞こえてくる単語の一つひとつが理解の範疇を飛び越えている。

 

「……ちょっと待ってください。オカマ魔女とは?」

 

「オカマ魔女はオカマ魔女です」

 

「あれは深く考えたら負けなやつじゃ」

 

二人とも即答だった。しかも、どちらも説明になっていない。クワイ=ガンは静かに頭を抱えたくなった。

 

「一体どんな相手だったんですか」

 

「世界の命運をかけた運命の戦いがダンスとババ抜きとポーカー、そして悪あがきに奴らの根城のてっぺんを目指す追いかけっこじゃった」

 

「……」

 

クワイ=ガンは沈黙した。

 

今、何か聞き間違えただろうか。

 

世界の命運に運命の戦い。

 

そこまでは分かる。

 

だが、その後に続く単語がおかしい。

 

ダンスに、ババ抜きに、ポーカー……追いかけっこ。どう頑張っても銀河規模の危機と結びつかない。

 

「あの追いかけっこの時だけフォースが封じられて純粋な体力だけでやる羽目になりましたからね」

 

「ヒロシの名刺が無ければ余はあそこで終わっておった」

 

「……」

 

クワイ=ガンは再び沈黙した。

 

今度は新しい疑問が生まれている。

 

ヒロシとは誰だ。

 

なぜ名刺が生死を分ける。

 

そもそも名刺とは何だ。

 

問いが次々と浮かんでは消えていく。

 

そして彼は気づいた。

 

おそらくこの話は、真面目に考えてはいけない類のものだ。

 

「……深く聞かないでおこう」

 

そう結論づけるしかなかった。

 

焚き火がぱちり、と小さく爆ぜる。

 

その向こうで、パルパティーンはどこか満足そうに頷き、ログは「賢明な判断です」と言わんばかりに肉へ香辛料を振りかけていた。

 

 

 

 

 




前半に入れたお労しヴェイダー卿とシディアスの会話が吹き飛ぶほど後半が濃いのは何なん?(ブチギレ)

ちなみにハンター✖️ハンターの世界で水見式を試すパルパルとログ

パルパル「念能力……余はどんな系統だろうか」
持った途端にグラスが粉々に割れる

ログ「なんか嫌な予感がする」
持った途端にグラスが中身ごと消える

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