アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話 作:紅乃 晴@小説アカ
それはそうとオカマ魔女の存在が濃すぎる。下手するとこっちの世界に出てくるぞ……
気が向いたらヘンダーランド編、ダイジェストになるけど描きますか
惑星ホス。
そこはアウター・リム・テリトリーのアノート宙域、ホス星系に存在した氷の惑星である。
恒星を巡る六番目の軌道を公転し、地表には果てしなく不毛な雪原が広がっていた。吹き荒れるブリザードと氷点下の気温、そして乏しい資源環境のため、古くから居住には向いていない惑星として知られている。
白銀の大地には命の気配すら希薄で、時折、強風が巻き上げた雪煙が氷の平原を横切っていくだけだった。
しかし、だからこそ隠れ家としては理想的だった。
ヤヴィンの戦いの後、共和国再建のために立ち上がった反乱同盟は、帝国軍の追跡を避けるため、新たな秘密基地の移転先を探していた。そして、人の寄りつかないこの氷の惑星ホスこそが、その条件に最も適していると判断され、エコー基地が建設されたのである。
氷河をくり抜いて作られた地下基地では、昼夜を問わず作業員たちが忙しなく働いていた。
分厚い氷壁には配線やパイプが張り巡らされ、雪まみれになった輸送車両が絶えず出入りしている。基地はまだ建設の途上でありながらも、すでに反乱同盟にとって欠かせない新たな拠点となりつつあった。
その基地の一角。地下洞窟を利用して作られた簡素な鍛錬室で、ルーク・スカイウォーカーはライトセーバーを握っていた。
基地が建設される中、オビ=ワンから教えを受けるルークは、ライトセーバーの鍛錬とフォースの瞑想を律儀にこなしていた。
薄暗い室内に、青い光刃が低い駆動音とともに煌めく。
額に汗を浮かべながら、ルークは教わった型を一つひとつ確認するように剣を振るっていた。まだ動きに荒さは残るものの、その一撃一撃には以前にはなかった芯の強さが宿り始めている。
「ルーク」
同じく自身のライトセーバーを持ち、ルークに教えていたオビ=ワンは、少し疲れた様子で地下洞窟内に用意された鍛錬室の椅子に腰を下ろした。
ライトセーバーを止め、青い刃を消す。その動作はゆっくりとしていた。
年老いた身体を休めるためというより、どこか意識が遠くへ引き寄せられているような、そんな雰囲気だった。
ヤヴィンの戦いでオビ=ワンも戦いに参加しており、飛ぶことは苦手でありながらもジェダイ・マスターとして鮮烈な活躍をした。
帝国軍のパイロットたちを翻弄し、窮地に陥った味方を幾度もフォースで救ったその姿は、同盟兵士たちの間で半ば伝説のように語られている。
フォースの力に目覚め、鍛錬を重ねるルークもまた、次世代のジェダイとして反乱同盟の中では必要不可欠な存在となりつつあった。
もちろん、オビ=ワンも将軍として同盟内にとどまるよう、レイアや同盟の幹部から何度もお願いされている。彼らにとってオビ=ワン・ケノービは、優れた戦略家であり、ジェダイという希望の象徴でもあった。
しかし、それはオビ=ワンにとっては苦痛に等しかった。
帝国との戦いに身を置けば置くほど、過去の記憶が蘇る。銀河共和国、クローン戦争、失われたジェダイ・オーダー……そして、かつて誰よりも愛した弟子のことを。
「すこし、休息としよう」
疲れたように座るオビ=ワンに、ルークが心配そうに声をかけた。室内に静寂が戻り、遠くで基地建設の機械音だけが微かに響いていた。
「また何かを感じたのですか? オビ=ワン」
「あぁ、とても不思議な感覚だ。懐かしさと悲しさ……そして強大なフォースを感じる」
そう答えるオビ=ワンの眼差しは、氷壁ではなく遥か彼方を見つめていた。
この数年……デス・スターでの出来事や、ヤヴィンの戦い以降、オビ=ワンは何度も力強いフォースを感じていた。
遠く離れているはずなのに、そのフォースははっきりと知覚できて、まるでオビ=ワンへ語りかけてくるようだった。
それは闇ではない。だが、光だけでもない。懐かしく、優しく、それでいて胸を締めつけるような悲しみを伴った、不思議な力の流れだった。
何度耳を澄ませても、その正体だけは掴めない。
しかし、その気配に触れるたび、オビ=ワンの心にはある人物の面影が浮かび上がってくるのだった。
「オビ=ワンが見た……父の幻影もですか?」
ルークの言葉に、オビ=ワンへ沈黙が降りた。
デス・スターで、かつての弟子であり……弟のように愛していた存在、ダース・ヴェイダーと戦っていた時。
あの瞬間だけは今でも鮮明に思い出せる。
赤い光刃に、黒い仮面。そして、自分を守るように飛び出してきたありし日の姿。
それらは紛れもなく、かつて愛した弟子……アナキン・スカイウォーカーだった。若き日の面影を残したその姿は、怒りでも憎しみでもなく、 あの日のままで自分に語りかけてくる。
あり得ない光景だ。死者の幻覚だったのか、フォースが見せた幻なのか、それとも本当に彼の魂がそこにいたのか……答えは未だに分からない。
だが、あの時からだ。遠い銀河のどこかから、自分を呼ぶような強大なフォースを感じるようになったのは。
「わからない……お前の父……アナキンは確かにダース・ヴェイダーに殺された。だが、あのデス・スターで感じたアナキンは、紛れもなくお前の父であり、誇り高いジェダイの騎士だった」
オビ=ワンは静かに言葉を紡いだ。
幻影だと最初は信じたかった。
長い戦いの果てに生まれた、自分の願望が見せた幻なのだと。だが、感じ取ったフォースは紛れもなくアナキンのものだった。
自分を「マスター」と呼び、隣に立って共に戦っていた頃のもの。時には任務の最中だというのにくだらない冗談を口にし、二人で笑い合っていた、あの青年のものだった。
血気盛んで、真っ直ぐで、少し無鉄砲で。それでいて誰よりも人を想い、温かな光を宿していた頃のアナキン・スカイウォーカー。
その穏やかなフォースそのものを纏っていた。
だからこそ、オビ=ワンは困惑していた。自らの手でムスタファーに置き去りにした愛弟子と、デス・スターで感じた存在が、どうしても繋がってしまうのだ。
「父は……どこかで生きてるのでしょうか」
ルークが静かに言う。青い瞳には、希望とも願望ともつかない光が宿っていた。オビ=ワンが見たアナキンが確かにそこに存在していた。
だから、あのアナキンはこの銀河のどこかにいる。
そして同時に、暗黒面に堕ちたダース・ヴェイダーもまた存在している。
二人が同時に存在しているなど、理屈では説明がつかなかった。
しかし、フォースは時として理を超える。
だからこそ、オビ=ワンにも答えを出せずにいた。
「少なくとも、彼のジェダイとしての良心はまだ生きておる。幸いにも、ヴェイダーの関心はこちらには向いていない」
オビ=ワンはゆっくりと答えた。
ヴェイダーは今のルークに目を向けていない。まるで何かを探し求めるように、かつての幻影を追うように、フォースを銀河中へ彷徨わせている。その執念は、デス・スターで感じた時よりもさらに強くなっているようにも思えた。
オビ=ワンから見ても、そのヴェイダーの迷走は好都合であった。もし彼が本気でルークを探し始めれば、まだ未熟なこの若者に勝ち目はない。
わずかな猶予。それが今の状況だった。
「ルーク、お前も充分に力をつけた。だが、ヴェイダーと戦うにはまだ己と向き合う時間が必要だ」
ルークは少しだけ視線を落とした。ライトセーバーの柄を握る手に、自然と力が入る。
自分が未熟であることは分かっている。だが、父のことを知り、ヴェイダーの存在を知れば知るほど、焦りのような感情が胸の内に生まれていた。
「オビ=ワンは、その鍛錬をしてくれないのですか?」
その問いに、オビ=ワンはしばらく何も答えなかった。
やがて、小さく息を吐く。
「私は過ちを犯した。道を誤った者と言葉を交わさず、そして見て見ぬ振りをした。そしてヴェイダーが生まれた」
静かな声だった。しかし、その一言には長い歳月の後悔が滲んでいた。
オビ=ワンの脳裏には、ムスタファーで殺意を向けてくるアナキンの姿があった。
赤く燃え盛る溶岩に、黒煙を噴き上げる火山。そそり立った岩山が連なる灼熱の世界。
その中で、自分へ憎悪の眼差しを向けていた青年。
『お前が敵なら、私はお前を倒す!』
今でも耳に焼き付いて離れない。
あの地で戦った時も、胸に去来したのは怒りではなかった。
虚しさに、悲しさ。そして、二度と愛弟子と会えないという絶望だった。
もっと早く気づけていれば。
もっと彼の苦悩を理解してやれていれば。
そんな「もしも」が、今なお胸の奥底で消えることはない。そんな自分がルークを導くことなどできないと、オビ=ワンは悟っていたのだ。
「ルーク。私ではお前を導くことはできん。戸口までは案内できるが、そこから先を示すことはできん」
「僕もまた、ヴェイダーと同じ道を歩む可能性があるからですか?」
ルークの顔には僅かな不安と、どこか不満もあった。自分もまた、あのダース・ヴェイダーのようになると、オビ=ワンに疑われている。
そう受け取ってしまったのだ。
その表情はどこか子供じみていて、父であるアナキンにそっくりだった。感情がそのまま顔に出るところまで、本当によく似ている。
オビ=ワンは思わず小さく微笑んだ。
「ルーク。安直な考えはしてはならない。お前には無限の可能性がある。それゆえに、私はその可能性を閉ざしてしまうかもしれないのだ」
「オビ=ワン……」
ルークは戸惑ったようにその名を呼ぶ。
無限の可能性。それは励ましのようでもあり、同時に責任を託されているようにも感じられた。
そう言ってから、オビ=ワンはゆっくりと立ち上がった。長いローブの裾が静かに揺れる。
「私は近いうちにここを出る。戦うこともできない老骨がいても、反乱軍に負担をかけるだけだ」
その声は穏やかだった。だが、すでに決意は固まっているのだとルークにも分かった。
「僕も共に……」
反射的に言葉が漏れるが、オビ=ワンは静かに首を横に振った。
「ルーク。お前にはなすべき事があるだろう。お前の戦いはまだここからも続いていく」
ルークは何も言えなかった。
自分の戦い。それが何なのか、まだ明確には分からない。だが、目の前の老人は、その答えをすでに知っているようだった。
そして、オビ=ワンは静かに続ける。
「そして戦いの先で迷ったのなら、ダゴバへ向かえ」
「ダゴバ……? そんなところに何が……」
聞き慣れない名前だった。星図にも見覚えはない。しかし、オビ=ワンの表情はどこか懐かしむようでもあり、深い敬意を抱いているようにも見えた。
「向かえばわかる。その先にお前を導くフォースがあるのだからな」
そう告げたオビ=ワンの眼差しは、まるで遠い昔を見つめているようだった。
銀河の片隅。
深い霧と湿地に覆われた、忘れ去られた星。
そこには、かつて自分を導き、そして今なおジェダイの未来を見守り続けている、小さな偉大なる師がいるのだから。
▼
それは偶然だった。
銀河中へと放たれた帝国軍の偵察ドロイド。そのうちの一機が、とある辺境の惑星で微かな反応をキャッチしたのである。
その惑星は星図にもろくに記されていない忘れ去られた世界だった。
大地のほとんどを深い森が覆い、文明の痕跡すらほとんど見当たらない。上空には厚い雲が垂れ込め、昼だというのに薄暗い。
だが、偵察ドロイドが捉えたのは熱源でも通信波でもなかった。
それは説明のつかない、奇妙な反応だった。
まるで空間そのものが歪んでいるかのような、不可解な波形。
そして、その報告を受けたダース・ヴェイダーは、即座に自ら赴くことを決めた。
シャトルが森の上空をゆっくりと降下し、タラップが開くと、湿った風が吹き込んできた。
ヴェイダーはひとり、惑星に降り立つ。
周囲を埋め尽くすのは鬱蒼とした森だった。
巨大な樹木が幾重にも空を覆い隠し、地面には根と苔が絡み合っている。生き物の気配はあるはずなのに、異様な静寂が支配していた。
そして、その森の奥。樹々に飲み込まれるようにして、一つの建造物が佇んでいた。
シスの寺院。
黒ずんだ石材で組み上げられた古代の建築物は、長い年月によって半ば朽ち果てていたが、それでもなお威圧感を失っていない。寺院そのものから、暗く淀んだフォースが滲み出ている。
それはヴェイダーにとって嫌悪すべきものではなく、むしろ懐かしさすら覚える感覚だった。
ゆっくりと階段を上がる。黒いマントが石段を擦り、機械仕掛けの呼吸音だけが静寂の中へ響いた。
そして、ヴェイダーは寺院の前で立ち止まった。
カフリーンの環で消息を絶ったままの存在。
シディアス卿からも捜索を禁じられていたが、反乱軍の秘密基地を探るための偵察ドロイドが偶発的に見つけたのなら話は別だ。
これは命令違反ではない。
偶然の遭遇。
そう自らに言い聞かせながらも、ヴェイダーの胸には別の感情が渦巻いていた。
怒りと困惑、そして答えを得たいという渇望。
ジオノーシスで出会ったあの男は、自分が捨て去ったはずの「アナキン・スカイウォーカー」という存在を知っていた。
だからこそ、追わずにはいられなかった。
寺院の中へ足を踏み入れる。内部は薄暗く、天井の亀裂から差し込む僅かな光だけが石床を照らしていた。無数の石柱が並び、壁面には古代シスの紋様や文字が刻まれている。
その最奥。
一人の男が静かに立っていた。
「ようやく見つけたぞ……オールドマスター」
低い機械音声が、古びた寺院へ吸い込まれていく。
シスの古文書が眠る場所で、ヴェイダーはかつて二年前にジオノーシスで戦ったオールドマスターと再会した。
「言ったはずだぞ、ヴェイダー卿。貴方が本当の愛を取り戻した時、その決着をつけようとな」
男の声が静寂を破る。
その瞬間だった。
ヴォン、と背後から閃光が走った。怒りと暗黒面のパワーを漲らせていたヴェイダーだが、突如として背後からの攻撃を受ける。
咄嗟に赤いライトセーバーを起動させる。鉄が灼熱で焼かれるような音ともに紅い刃が伸び、振り向きざまにその一撃を受け止めた。
火花が散る。凄まじい衝撃が両者の足元へ伝わり、石床に細かな亀裂が走った。
その先にいたのは、クロスガード・ライトセーバーを持つ一人の若者だった。
主要ブレードの左右から短い光刃が伸び、十字架のような形を成している。
クロスガード・ライトセーバーは古代のデザインのライトセーバーであり、古代のジェダイが使っていたとされ、主要ブレードに加えてクロスガード・ブレード……あるいは鍔と呼ばれる二本の小さな刃が放出される外見をしていた。
柄の左右にはエミッター・シュラウドがあり、使用者の手を鍔から保護する構造となっていた。
その武器を握る若者の顔を見て、ヴェイダーの瞳が僅かに見開かれる。
「貴様は……認識番号、DA285」
ヴェイダーは、シスの寺院で戦いを挑んできた相手の顔を見てすぐに誰かを思い出す。
パルパティーンの息子。
出来損ないと呼ばれ、失敗作と呼ばれ、そしてカフリーンの環で消息を絶った存在。
なぜここにいる。
なぜオールドマスターと行動を共にしている。
なぜ、クロスガード・ライトセーバーを持っている。
そんなことはわからない。
だが、ただ一つだけわかっていることがあった。
出来損ないと、失敗作と呼ばれた彼が、今や強大なフォースをその身に漲らせ、自分へ襲いかかってきているということだけだった。
そして何より、その瞳には恐怖も迷いもなかった。そこにあるのは、明確な敵意と、燃えるような決意だけだった。
光刃同士がせめぎ合う。赤い刃と十字の光がぶつかり合い、周囲へ火花を散らしていた。
若者の腕は震えず、呼吸も乱れていない。その姿を見て、ヴェイダーは僅かに眉をひそめた。
フォースの扱いも、ライトセーバーの構えも、かつてパルパティーンと共に見た、怯え、逃げ、自己の存在に戸惑っていた弱者の姿とはまるで別人だった。
「小癪な真似を……!私を倒すための弟子でも作ったつもりか」
オールドマスターは肩をすくめるように、小さく息を吐いた。
「まさか。貴方を倒すためだけになんて育てるわけないだろ。……あまり思い上がるなよ?」
その言葉に、ヴェイダーの内側で怒りが膨れ上がる。自分を侮辱したからではない。まるで、自分が既に答えを見失っている愚かな男であると断じられたように感じたからだ。
その瞬間だ。オールドマスターのほうへ僅かに意識を向けた、その刹那、鋭い閃光が走る。
ヴェイダーは咄嗟に身を捻ったが、完全には避け切れない。黒い肩アーマーが深々と切り裂かれ、装甲の破片が石床へと落ちた。
「……!」
ヴェイダーはすぐさま距離を取る。切断面から火花が散り、肩部の機械系統に僅かな異常が生じていた。
油断をするつもりはなかった。だが、パルパティーンの息子は想像を遥かに上回る力を手にしていた。
フォースの出力だけではない。
剣技に、判断力。そして、躊躇なく自分へ刃を振るう覚悟。そのどれもが、短期間で身につけられるものではなかった。
「認識番号DA285……まさかここまでの力を秘めていたとは」
ヴェイダーの声が低く響く。それは怒りであると同時に、純粋な驚愕でもあった。
「僕をその番号で、呼ぶな!」
若者の瞳に、激しい感情が宿った。
次の瞬間、クロスガード・ライトセーバーのボンメルを引き抜く。カチリ、と小さな音がし、そこから姿を現したのは、ダガー状のセーバーだった。
本体のカイバー・クリスタルからエネルギーを備蓄したそのダガーは、短時間であれば光刃を出現させられる。
紫電のような閃光。予備武装。その存在をヴェイダーが認識した時には、すでに遅かった。ダガーから伸びた短い光刃が、下方から斜めに走る。
ヴェイダーは反射的に防御しようとしたが、ほんの一瞬だけ判断が遅れる。赤い光刃が間に合わない。
そして黒い腕甲ごと、機械仕掛けの片腕が宙を舞った。切断された腕が鈍い音を立てて石床へ落ちる。火花が激しく飛び散り、赤いセンサーライトが明滅する。
寺院の中へ、機械音だけが響いた。
「……!」
ヴェイダーは一歩後退する。その仮面の下で、黄色い瞳が大きく見開かれていた。
自分が斬られた。しかも、正面から。それも、かつて失敗作と切り捨てた少年に。
「僕の名はダザン。ダザン・プレイガスだ」
若者……ダザンは、静かにそう告げた。
その声には怒鳴るような激しさはなかった。
だが、自らの存在を否定され続けてきた者だけが持つ、確固たる意思が込められていた。
認識番号ではなく、出来損ないでもなく、失敗作でもない。
ダザン・プレイガス。
それが自分の名なのだと。
「プレイガス……だと!?」
ヴェイダーが息を呑む。
その名を知らぬはずがない。
ダース・プレイガス。
かつて師であるシディアスが語った、伝説のシス卿。死そのものを研究し、生命を操ろうとしたという存在。
そしてシディアスが自らの手で殺したと語っていた男。ヴェイダーの視線が、ゆっくりとオールドマスターへ向く。
男は、ただ穏やかに微笑んでいた。
「さて、ここまでだ。ヴェイダー卿。愛を知らないと、お前は俺たちを倒すことはできない」
その言葉に、ヴェイダーの呼吸音が大きくなる。機械的な呼吸が、寺院の空間へ不気味に響き渡った。
「愛など……とうに無くしている……!」
吐き捨てるような言葉だった。
パドメは死んだ。
ジェダイも共和国も消えた。
アナキン・スカイウォーカーもまた、ムスタファーで焼け死んだ。
だから、自分にはもう何も残っていない。
残されているのは怒りと憎しみだけだ。
そう、信じていた。
だが。
「さて、どうかな? 貴方のそのマスクが真実を遮ってるかもしれないな」
オールドマスターの言葉に、ヴェイダーの身体が僅かに硬直する。
「どういうことだ……!」
怒りに満ちた声。しかし、その奥には微かな動揺があった。まるで、自分でも気づかぬ何かを見透かされたような感覚。
オールドマスターは答えない。
ただ静かにヴェイダーを見つめていた。
「答えを求めることはいけないな、ヴェイダー卿。貴方もフォースと深く繋がる者なら探すがいい。フォースはいつもそこにある」
静かな声音だった。説教でも、挑発でもなく、ただ、当たり前の事実を告げるような口調。
ヴェイダーは何も答えなかった。ただ、切り落とされた片腕を足元に転がしたまま、目の前の二人を睨みつけていた。
そして、その胸の奥では消し去ったはずの「何か」が、まるで小さな火種のように、微かに揺らいでいた。
その沈黙を破るよう、ゴゴゴ……という重低音が寺院全体を震わせる。天井の亀裂から白い光が差し込み、舞い上がった砂埃が淡く照らされた。
外から聞こえてくるのは、船のエンジン音だった。
徐々に近づいてくるそれに、オールドマスターは小さく空を見上げる。
「迎えが来たようだ」
そう呟くと、踵を返して出口へ向かって歩き出す。ダザンもまたクロスガード・ライトセーバーを消灯した。十字の光が消え、薄暗い寺院に再び静寂が戻る。
「次に会う時までに、答えを見つけておくんだな」
そう言い残し、オールドマスターはダザンを連れて歩き出す。
ヴェイダーは無言のまま、その背中を睨みつける。答えとは何のことだ。何を探せというのだ。自分には何も残っていない。
アナキン・スカイウォーカーは死んだ。
愛も、希望も、全てを失った。
そう自分に言い聞かせてきた。
だというのに。
『貴方のそのマスクが真実を遮ってるかもしれないな』
その言葉だけが、どうしても頭から離れなかった。崩れた寺院の壁の向こうには、一隻の船がゆっくりと降下していた。吹き下ろすエンジンの風が、森の木々を大きく揺らす。枝葉がざわめき、砂埃と落ち葉が舞い上がった。
見覚えのある船だった。二年前、ジオノーシスから逃亡した際に使われていた船。船腹のタラップが静かに降りる。
「行くぞ、ダザン」
「はい、オールドマスター」
二人は並んでタラップへ向かう。
「待て……!」
ヴェイダーが一歩踏み出そうとしたが、切断された腕の断面から激しいスパークが走る。生命維持装置へ負荷がかかり、呼吸音が一際大きくなる。
思わず膝が揺らいだ。失ったのは片腕だけではなく、その損傷は全身のサイボーグ機構へ影響を及ぼしていた。
追わなければならない。ここで逃がしてはならない。頭ではそう理解している。
しかし、身体が動かなかった。
そして何より、今のヴェイダーには二人を追う以上に、確かめなければならないものが生まれていた。
自分は本当に全てを失ったのか。
なぜ、あのオールドマスターは愛などと言ったのか。
なぜ、デス・スターでアナキンの幻を見た者たちがいるのか。
なぜ、自分は未だに銀河のどこかにいる「何か」を追い求めているのか。
答えのない疑問が、暗黒面の海へ投じられた小石のように波紋を広げていく。
その間にも、二人はタラップへ乗り込んでいた。
ハッチが静かに閉じられる。
エンジンの駆動音がさらに大きくなった。
船体がゆっくりと浮上する。
吹き荒れる風が黒いマントを激しくはためかせた。
ヴェイダーはただ、その光景を見上げていた。やがて船は森の上空へと上昇し、夜空へ向かって加速し、一筋の光となって星々の彼方へと飛び去っていった。
静寂だけが残る。シスの寺院の前で、ダース・ヴェイダーはひとり立ち尽くしていた。
足元には、切り落とされた自身の片腕。
そして胸の奥には、怒りでも憎しみでもない、今まで感じたことのない得体の知れない感情だけが残されていた。
小話 ファミリーネーム
パルパル「そういえばダザン、ファミリーネームはどうするのだ?」
ダザン「パルパティーンだけは絶対いやです」
パルパル「ぐはっ……そ、それは仕方ないのぅ」
ダザン「なので今日からプレイガスと名乗ってもいいですか?」
→行動はアレだがマスターとしては信用も信頼もしてる
パルパル「おぉ……よいぞ!そう名乗るが良い!」
没プレイガス「ファッ!?」
アナキン「いいのか、あれ」
ログ「まぁパルパル、孫のレイにはゲロ甘だったから……」
クワイ=ガン(苦虫百匹を噛み潰した顔)
小話 ヴェイダー戦
ログ(うーん、ダザンも成長したなぁ)
ログ(でも片腕切り落とされて激おこプンプンヴェイダー丸になったら負けるなぁ)
ログ(そや、ルークのこと仄めかして注意を逸らすか!)
→オリチャー発動
ダザンくんの勝因、ヴェイダーがオールドマスターに気を取られてたから
後書きの温度差で風邪引かない?大丈夫?