アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話 作:紅乃 晴@小説アカ
気絶したアナキンと、元老院議長時代の姿のままでいるパルパティーンを見たアソーカは、見事なまでに発狂した。
青色の瞳が大きく見開かれ、呼吸が荒くなる。
「……は?」
かすれた声が漏れたかと思えば、次の瞬間には信じられないものを目にしたようにふらつく。
目の前には、今まさに銀河全てを手中に収めていて何人たりとも近づくことすらできない皇帝、シーヴ・パルパティーン。そして、その足元には暗黒面に落ち、二度と戻ることはないと思えるほど変わってしまった……自分の師匠が白目を剥いて伸びている。
情報量が多すぎる。
しかもパルパティーンは何度か目にしたことのある元老院議長時代のままで、顔は爛れていない。表情だけ見るから近所で気持ちよく散歩しているお爺さんと言ってもいい顔つきである。
どう考えても悪夢だった。
「待って……待って……何これ……。私、はざまの世界から変なものを持ち込んだ……?」
額を押さえながらふらふらと後ずさりするアソーカだったが、すぐに表情が一変した。
「……違う。これ、本物……!」
腰のライトセーバーへ手が伸びる。
あ、これはまずい。ライトセーバーを取り出しそうな勢いの彼女を、俺は慌ててヒーリングフォースで包み込む。淡い光がアソーカの身体を優しく覆い、暴走しかけていた感情をゆっくりと鎮めていく。
「落ち着け、アソーカ! 深呼吸! 深呼吸!」
「アンタは誰よ!?それに落ち着けるわけないでしょ!? 銀河皇帝がこんな銀河の辺境にいるわけないし!?私の師匠が綺麗に伸びてるなんてあり得ないでしょ!?」
うーんっ!ごもっともである。
だが、事態を把握できていないことに変わりはない。
俺は小さくため息をついた。口で説明しても絶対に信じない。
なので荷出し作業を一度止めることにした。
そして俺たちは、すっかり伸びているアナキンの両腕を掴み、ずるずると船内へ引きずっていく。アナキンの身体が床に引っかかるたび、ゴン、ゴンと鈍い音が響く。
その様子をアソーカは呆然と見つめていた。
自分の師匠が荷物みたいに運ばれている。もはやどこからツッコめばいいのかわからないらしい。
そのまま俺たちは、船内の一室……床一面に瞑想のための陣が描かれている部屋へと移動した。
幾何学模様と古代ジェダイ文字によって構成された陣は、薄暗い室内の中で淡く輝いている。
俺は部屋の中央を指差した。
「何をするつもり?」
警戒したように尋ねてくるアソーカ。
「まぁ、言葉を並べても信用しないだろうからね」
俺が肩を竦めると、隣にいたパルパルが頷いた。
「ここは一つ、フォースに仲介人になってもらおうと思ってな」
「……フォースに?」
アソーカが怪訝そうに首を傾げる。
俺は警戒心を露わにしている彼女を陣の真ん中へ座らせ、自分も向かいに腰を下ろした。パルパルもゆっくりと足を組み、静かに目を閉じる。
室内から音が消える。
船の振動さえ遠のき、静寂だけが支配した。
そして俺たちは瞑想に入った。
▼
俺たちは、別の宇宙から来た。
そして、俺がいた世界でも、アソーカとの交流があった。
まず初めはジェダイ・ナイト、アナキン・スカイウォーカーのパダワンとして紹介された時。
クローン戦争真っ只中ではあったものの、アナキンの弟子となったアソーカとはどこか気があって、よく三人でトラブルやヴェントレスとの戦いに巻き込まれたものだ……まぁ、その裏でダークサイドの手先となってたヴェントレスやサヴァージをあの手この手でノーバディに勧誘もしてたけど。
クリストフシスでの戦いの後も、救援任務、輸送船の護衛、惑星の偵察……行く先々で何かしらの面倒事に遭遇した。アナキンが無茶を言い出し、アソーカがそれに乗っかり、最後に俺が頭を抱え、そして俺も全てを投げ出して突撃して二人に止められるという。
そんな流れが、いつの間にかお決まりになっていた。
そして気づけば、俺にとってもアソーカは、弟子のようであり、妹のようでもある不思議な距離感の存在になっていた。
そして二回目は、アソーカがジェダイ・テンプルの爆破とレッタ・ダーモンドの殺害の疑いをかけられたときだ。
ジェダイの行く末を案じたバリス・オフィーが、ジェダイのあり方を示すために引き起こしたテロ事件は、友人であり、自身を助けてくれたアソーカに濡れ衣を着せたのだ。
あの時のアソーカの顔を、今でも覚えている。
信じていた仲間たちから疑われ、次々と向けられる冷たい視線に、必死に気丈であろうとしていた顔を。
当時、俺はアナキンと共にアソーカが無実であることを示すために奔走しつつ、状況証拠や裏取引の履歴から黒幕の可能性が高いバリスと面談。半ばジェダイの情報屋染みた扱いをされていた俺がバリスに辿り着いたことで彼女は観念し、ジェダイの行く末を憂いて引き起こしたことを知る。
静かな瞑想室の中で、バリスはまるで懺悔をするように語った。ジェダイはすでに道を踏み外している。平和の守護者であるはずの自分たちは、いつしか戦争を指揮する将軍になってしまったのだと。
そこで俺は、自身が第三勢力であるノーバディの創設者であることを話し、ジェダイやシスも関係なくフォースの夜明けを目指していることを打ち明け、その上でバリスをノーバディに誘った。
もちろん、アソーカに濡れ衣を着せた上で逃れようとしたことをしっかりと認めて謝罪をすることが条件とした。
バリスは長い沈黙の末に、その条件を受け入れてアナキンの元に自首し、アナキンに本心を打ち明ける。最初は愛弟子を陥れたバリスに怒り狂ってたアナキンだが、正直に話をしたバリスと反省の念を受け止め、アナキンも温和に彼女へ対応した。
そしてアソーカとも直接会い、バリスは心から謝罪を示した。バリスからの謝罪を受けたアソーカだが、全てを許したわけではなかった。
ただ、その瞳には怒りだけではない、深い悲しみがあった。親友に裏切られた悲しみと、それでもなお親友が苦しんでいたことを理解してしまう優しさが、そこにはあった。
その後、バリスはオーダーの裁判にかけられることになり、アソーカはオーダーを信用できずにジェダイを去ることを決めた。
そして驚いたことに、ジェダイを信用できなくなったアソーカが頼ってきたのが俺であった。
ジェダイ・テンプルを去った彼女は、行く当てもなく、ただ一人で考え続けていたらしい。
自分はジェダイなのか。
それとも違う何かなのか。
何を信じ、何を選べばいいのか。
答えの出ない問いを抱えた末に、彼女が最後に会いに来たのが俺だった。
容疑者であるバリスは、護送時にジェダイ・テンプル・ガードに紛れ込んだノーバディのメンバーによって救出していたが、そのことにアソーカは驚いてなかった。
どうやらアソーカは、バリスから俺がノーバディであることを聞かされていて、ジェダイ・オーダーに失望したが、フォースとの繋がりを断てないことを認め、そして俺に今後どうするべきかを求めにきたのだ。
そして紆余曲折ありつつもアソーカはノーバディに加わり、クローン戦争末期は陰ながらアナキンをサポートし、彼が暗黒面に落ちないよう一役を担った。
それは決して派手な役目ではない。
だが、アソーカは誰よりもアナキンを理解していた。
無茶をすることも、全部一人で背負い込もうとすることも、大切なものを失うことを誰よりも恐れていることも。
そして、オーダー66。
銀河が炎に包まれ、ジェダイという存在そのものが滅びようとしていた日。
アソーカはバリスや他のノーバディと共に殲滅されるジェダイを救出した。
アナキンとも再会したが、俺がコルサントでマスター・ウィンドゥと袂を分かったことや、ダース・シディアスの思惑とは別に、道を誤ったジェダイに終止符を打つために粛清の道を歩んだことを知ったアナキンは、フォースとの絆を絶って、タトゥイーンに向かった。
あの日のアソーカは、何も言えなかった。
ジェダイとしての自分なら、止めるべきだった。
だが、ジェダイは、彼を救えなかった。ノーバディとしての自分なら、彼の選択を尊重すべきだった。だが、同時に、アソーカは師を失いたくはなかった。
アソーカはジェダイと、そしてノーバディの二つの道を歩んだゆえに、アナキンを引き止めることも、そしてフォースの意思に身を委ねる俺を止めることはできなかった。
ただ立ち尽くし、遠ざかっていく二人の背中を見送ることしかできなかった。
▼
「なるほどね……」
三人での瞑想を終えた後、アソーカは俺やパルパティーン、そしてアナキンが別の世界から来た存在であることを、驚くほどすんなりと受け入れた。
瞑想の最中、彼女は別世界の自分を客観視しながら、その人生を追体験していた。幼い頃の出会いも、ジェダイを離れたことも、そして師の転落も。そのどれもが、自分ではないのに確かに自分だった。
フォースの奥深さについては、ジェダイを辞めてから嫌というほど経験している。
はざまの世界……あの不思議な場所に足を踏み入れ、生きて戻ってきた自分だからこそ、常識では測れない出来事を頭から否定することはできなかった。
静かな部屋の中で、アソーカは長く息を吐く。
「信じてくれたようだの」
パルパティーンの声音は穏やかだったが、アソーカ自身にはまだ拭い切れないしこりが残っているようだった。
もっとも、パルパティーンとアナキンが辿った道を目の当たりにした今、彼が銀河を支配しようとしたかつてのシスの皇帝と同一人物だとは、とても思えなかったのも事実だった。
「アソーカ……僕は……」
アソーカのいい一発をまともに食らって気絶していたアナキンも、いつの間にか合流していた。まだ少し頬が赤くなっている。しかし、アソーカは何かを言おうとする彼の言葉を遮るように、静かに首を横へ振った。
「貴方は……私の知っているアナキンではないわ」
その言葉に、アナキンの口が止まる。アソーカは目を細め、言葉を探している彼を真っ直ぐ見つめながら続けた。
「貴方の世界でも、私は貴方のもとから離れた。それは私にとって変わらない後悔だわ」
ジェダイを抜け、アナキンと別れた。
それは、彼を一人にすることに等しかった。
わかっていた。自分が去れば、師はまたすべてを一人で背負い込むのだと。それでも、あの時の自分には他に道が見えなかった。
たとえそれが別世界の出来事であったとしても、その事実だけは変わらない。
アソーカの青い瞳に、かすかな陰りが落ちる。
「私がいて、アナキンがあんなことになるのを防げたとも思ってない。きっと……これも運命だったのよ」
「アソーカ……」
諦めたように笑うかつての弟子を前に、アナキンはかける言葉を見つけられなかった。
慰めも違う。彼女の後悔の根底に、自分の存在があると知っているからこそ、何も言えなかった。
重い沈黙が部屋を満たす。
そんな中、口を開いたのはパルパティーンだった。
「アナキンの弟子が、そんな不明瞭な言葉で諦めるものではないぞ?」
静かな声だった。
だが、その一言は妙な重みを持って部屋に響いた。
アソーカがゆっくりと顔を上げる。
「諦めるのもよかろう。これ以上追いかけても無駄だと切り捨てるのも容易だ」
そこでパルパティーンは言葉を切る。澄んだ瞳が、真っ直ぐアソーカを見据えていた。
「だが、それでその先を胸を張って歩んでゆけるのか?」
その瞳には、純粋な思いが宿っていた。
フォースの器と化したかつての弟子。
フォースの深淵を覗き込み、果てのない流れの一部となってしまった存在。
その姿を見るたびに、パルパティーンの心はひどく摩耗した。
もう、かつての姿は二度と戻らない。何度も何度も、その現実を突きつけられてきた。
それでも。
「余は諦めなかった」
静かな声音だったが、その言葉には不思議な熱が宿っていた。
「何度も絶望を味わい、もう二度と会うことはできないと見せつけられたが……それでも、諦めはせんかった」
何度も何度も、絶望と失望と失敗を与えられた。砕けた希望を拾い集めては、また打ち砕かれた。それでもパルパティーンは歩みを止めなかった。
フォースの深淵を覗き込み、砕け散ったものを一つずつかき集め、か細く頼りない道を、それでも前へ前へと歩き続けてきた。
その言葉には、長い歳月の重みがあった。
そして何より、一切揺らぐことのない芯があった。
「運命というつまらない言葉で諦めるな、若きフォースの使い手よ」
静かな、しかし力強い声音だった。その言葉を受け、アソーカはしばらくパルパティーンを見つめていたが、やがて小さく笑みを浮かべた。
「アタシをジェダイとは言わないのね」
どこか試すような口調だった。すると、パルパティーンはきょとんとした顔をしてみせる。
「はて、ここにはジェダイなどおらんがな?余も含めて」
あまりにも自然に、そして惚けたようにそう言うものだから、一瞬の静寂の後、アソーカの口元からくすりと笑いが漏れた。
それにつられるように、アナキンも思わず笑みを浮かべる。先ほどまで部屋を覆っていた重苦しい空気が、少しだけ和らいだ。
「そうね。ただのアナキン・スカイウォーカーと、ただのシーヴ・パルパティーンだものね」
アソーカの声音にも、先ほどまでの硬さはなかった。その言葉にパルパティーンは満足そうに頷き、アナキンはどこか照れくさそうに頭を掻いた。
そして話を終えた全員は、瞑想室を後にする。
船内の通路には静かな空気が流れていた。遠くで駆動音が低く唸り、船体を循環する空調の音だけが耳に届く。
アナキンとパルパティーンが荷物運びを再開しようとした、その時だった。
「……ログ・ドゥーラン」
不意に後ろから呼び止められ、俺は足を止めて振り返った。そこには、どこか決意したような顔をしたアソーカが立っていた。
「貴方にもお礼を言うわ……私は貴方とは会ったことはないけど」
そう言いながら、アソーカは言葉を探すように視線を落とした。
彼女の中にある感情は、きっと感謝だけではない。驚きも、戸惑いも、羨望も、いろいろなものが混ざり合っているのだろう。
「でも、貴方がアナキンを救ってくれたのは……別世界であったとしても嬉しかった」
そう言って顔を上げた彼女の瞳は、わずかに揺れていた。
だが、それは彼女の本心のすべてではなかった。アソーカはそれ以上の言葉を続けられず、しばらく黙り込む。
静かな沈黙が流れる。その時、どこかの換気口から流れてきた穏やかな風が、彼女の身につけている灰色のローブの裾をふわりと揺らした。
長いレクが微かに揺れ、伏せられた瞳に影を落とす。
「……なぜ、この世界では貴方はいてくれなかったの?」
ぽつり、と。それは誰を責めるでもない、本当に心から零れ落ちた言葉だった。
アナキンがああならずに生きていける世界。
師が笑い、穏やかな顔で誰かと冗談を言い合い、過去を受け入れて歩いている世界。
そんな可能性を見てしまったからこそ、思わずにはいられなかった。
なぜ、この世界にはいなかったのだろう。
なぜ、アナキンのためにすべてを投げ出し、彼を信じ続け、そして愛することを教えられる人がいなかったのだろう。
もし、そんな存在がいたなら……。
そこまで考えて、アソーカは小さく首を振った。
そんなことを考えても仕方がない。
それは、どうしようもないことなのだから。
「ごめんなさい」
消え入りそうな声だった。
そこには、羨ましいと思ってしまった自分への戸惑いも、どうにもできなかった過去への悔しさも、そして自分でも整理しきれない感情が込められていた。
そう言って踵を返し、去ろうとするアソーカ。
俺はその背中を見つめ、静かに口を開いた。
「アナキンは帰ってくるよ」
その一言に、アソーカの足が止まる。
ゆっくりと振り返った彼女の顔には、驚きが浮かんでいた。俺は真っ直ぐ彼女を見据え、迷いなく、力強く言い切った。
「必ず帰ってくる。俺が約束する」
しばしの沈黙。アソーカは俺の顔をじっと見つめていた。何かを見極めるように、あるいは、その言葉の真偽を測るように。
やがて、彼女の口元がわずかに緩む。
「……不思議ね。会ったことはないのに、不思議と信用できるわ」
その声音には、先ほどまであった陰りが少しだけ薄れていた。
俺も思わず笑みを浮かべる。
「そりゃそうさ。アソーカと俺はマブダチだったんだぜ? あいつに息子ができた時は真っ先に相談を……」
そこまで言って、俺の口が止まった。
あ、しまった。
空気が固まる。
アソーカの表情も固まる。通路の向こうで荷物を抱えていたアナキンもぴたりと動きを止めた。
「……待って待って待って?」
アソーカがゆっくりと聞き返す。その笑顔は張り付いたように引きつっていた。
「息子?アタシに?」
「……」
「あ、やべっみたいな顔をするのやめて欲しいんだけど?」
声が一段低くなる。
まずい。ものすごくまずい。
俺が必死に言い訳を考えていると……。
「あぁ、アソーカ。こちらの其方には息子がおったぞ?モールとの間の子だ」
パルパティーンが実に平然と、とんでもない爆弾を投下した。俺とアナキンは同時に顔を覆った。
なんで言う。しかも、その雑な説明の仕方……っ!
数秒の沈黙。
船内の駆動音だけが妙に大きく聞こえた。
アソーカは微動だにしない。
その顔から、すっと表情が消えていた。
ゆっくりと……本当にゆっくりと、彼女は俺たちの方へ向き直る。その口元には、にっこりとした笑みが浮かんでいた。
しかし、目だけはまったく笑っていない。
「……くわしく、説明してもらえるかしら?」
静かな声だった。
静かすぎて逆に怖い。
俺は助けを求めるようにアナキンを見る。
アナキンは全力で目を逸らした。
裏切ったな、この親友め。
「アタシはいま、冷静さを失おうとしてるんだけど?」
額に青筋が浮かぶ。背後で、なぜかパルパティーンだけが「ほう」と感心したような顔をしていた。
「これはなかなか見事な暗黒面だの」
「感心してる場合じゃないですからね!?」
思わず俺は叫んだ。
その瞬間、アソーカの視線がゆっくりと俺へ向く。
背筋に冷たいものが走った。
あ、これ、完全に逃げられないやつだ。
小話 アソーカとモールの馴れ初め
アナキンが自らフォースの絆を断ち、さらにログが「なりきりヴェイダーデラックスセット」で盛大にやらかした結果、組織《ノーバディ》は事実上の機能停止状態に陥る。
そんな中、組織を支え続けたのがモールとアソーカだった。
ログの弟子であるモールと、アナキンの弟子であるアソーカ。
二人は肩を並べ、組織運営と《フォースの夜明け》という理想の実現のために奔走する。共に悩み、共に戦い、幾多の困難を乗り越えていくうちに、互いはかけがえのない存在になっていった。
もちろん、何も起こらないはずがなかった。
二人は大々的に交際を宣言していたわけではない。しかし、組織内では「そういう関係」であることは周知の事実だった。特にアサージ・ヴェントレスは妙に乗り気で、アソーカを相手に恋愛談義やガールズトークを繰り広げていたという。
だが、その幸せは長くは続かなかった。
エピソード6にて、モールは「なりきりヴェイダーデラックスセット」で暴走していたログとの戦いに赴き、その命を落とす。
そしてエンドアの戦いの後――アソーカはモールとの間に授かった子を出産した。
彼女はテンプルシードに設立されたフォース・アカデミーの講師として働きながら、一人で息子を育てていくことになる。もっとも、完全な一人ではなかった。ヴェントレスやサヴァージも何だかんだで親代わりのように世話を焼いており、少年は多くの人々に見守られながら成長していった。
やがて息子は立派な青年へと成長する。
フォース・アカデミーではレン騎士団に名を連ねるほどの実力者となり、その才能は誰もが認めるものだった。
アソーカは父親であるモールについて多くを語らなかった。
それでも、血は不思議なものなのだろう。
彼が自ら選んだライトセーバーは、誰に教えられたわけでもなく、父と同じく二つの光刃を持つダブルブレードのデザインだった。
――そして、別世界とはいえ、この一連の未来を聞かされた当のアソーカはその場で静かに気を失ったという。