アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話   作:紅乃 晴@小説アカ

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ありし日の夢の続きを

 

 

 

3ABY。

 

ホスの戦いまで……残り三ヵ月。

 

俺たちは惑星ホスの暗黒領域へと降り立っていた。

 

ホスは一年を通して極寒に包まれた氷雪惑星であり、公転速度が遅いという特異な環境を持つ。

 

そのため地域によって環境は大きく異なり、半年単位で延々と暗闇が続く地域、逆に半年もの間、陽光に照らされ続ける地域、そしてかろうじて昼と夜の周期が存在する地域の三つに大別されていた。

 

俺たちの船、サウザンド・アドベンチャー号が着地したのは、その中でも半年もの間、一切陽の差さない暗黒領域だった。

 

船のハッチが開いた瞬間、外から流れ込んできた空気は肌を刺すというより、命そのものを凍らせようとしてくるような冷気だった。

 

吐いた息は一瞬で白く凍り、静寂だけが果てしない雪原を支配している。

 

空を見上げても太陽はなく、頭上には無数の星々だけが氷の世界を淡く照らしていた。

 

どこまでも続く漆黒。

 

そして白銀。

 

世界そのものが色を失ったような景色だった。

 

反乱軍の秘密拠点、エコー基地は、昼夜の周期がかろうじて存在する地域に築かれている。

 

俺たちの現在地はそこからかなり離れているものの、スピーダーさえあれば到達すること自体は難しくない距離だった。

 

え?ホスに近づいた時点で反乱軍に捕捉されていないのかって?

 

まぁ、サウザンド・アドベンチャー号はもともと高いステルス性能を備えている。

 

とはいえ、それだけで反乱軍の警戒網を完全に抜けられるほど甘くもない。長距離センサーや通信傍受に引っ掛かる可能性は十分にある。

 

だからこそ、俺たちにはもう一つの、とても素敵な機能がある。

 

そう、フォースだ。

 

以前、オカマ魔女によって亜空間へぶっ飛ばされた時も、船全体をフォースで包み込んでいたおかげで空間圧壊を免れることができた。

 

あの時と同じ要領で船全体をフォースで覆い、周囲に流れるフォースと完全に同化させる。そうすれば船は景色の一部となり、存在そのものを希薄化できる。

 

レーダー網はもちろん、うまくやれば目視すら欺ける。もっとも、ボバ・フェット級の凄腕賞金稼ぎや、フォース感知に長けた相手には肉眼で見つけられる場合もある。

 

だが通信網程度なら、楽々と素通りできる。

 

だからこそ俺たちは帝国領内を好き放題飛び回り、散々やらかしても足取りを掴ませることなく今日まで生き延びてきたのである。

 

さて。この暗黒領域だが、ホスの中でも特に危険な場所として知られていた。

 

正確には知られていない。

 

銀河に残されているホスの地形データや生態系の記録は、ほとんどが陽光の届く地域で採取されたものばかりだった。

 

この暗黒世界に関する記録は、驚くほど少ない。いや、少ないというより、存在しないと言った方が正しい。この暗黒世界へ足を踏み入れ、生きて帰った者がほとんどいないということだった。

 

足元では氷が軋み、どこからともなく低いうなり声のような風が吹き抜ける。闇の向こうには何が潜んでいるのか、誰にもわからない。

 

「うーん、いろんなところからヤバいフォースがビンビンに伝わってくるのぅ」

 

まるで散歩でもしているかのような口調でパルパティーンが呟く。その余裕とは対照的に、隣に立つダザンは顔を真っ青にしていた。

 

肩は小刻みに震え、額には冷や汗が浮かんでいる。彼はフォースを通して、この土地に染みついた無数の気配を感じ取ってしまっていた。

 

殺意に飢えに憎悪。

太古より積み重なった死。

そして、この地に眠る得体の知れない何か。

 

「うっ……」

 

思わず膝をつきそうになるダザンを、アナキンがそっと支える。

 

「無理に全部感じ取ろうとするな。必要なものだけを拾え」

 

「は、はい……」

 

深呼吸を繰り返しながら、ダザンは何とか意識を落ち着かせていく。

 

この暗黒世界の生態系は、陽光の届く地域とは比較にならないほど異質だった。人間ですら餌にする獰猛なワンパですら、この地では食物連鎖の中位程度に過ぎない。

 

永久凍土を巨大な掘削機のように砕きながら地中を進むアイスワーム。

 

一息で周囲すべてを氷像へと変える凍気のドラゴン。

 

フォースそのものを核として活動する氷のゴーレム。

 

姿を持たず、精神だけを喰らう氷霊。

 

暗闇の中には、銀河の図鑑にも載っていない怪物たちが、静かに息づいていて、まさに化け物たちの楽園。この世界では、人間こそが最も弱い生き物だった。

 

そんな魔境のさらに奥深く、吹雪さえ届かない永久凍土の底。何万年もの時をかけて積み重なった氷の深淵に、人知れず静かに眠る建造物があった。

 

自然にできた氷ではなく、誰かの意思によって築かれた、古代の建築物。フォースの流れが、まるでそこへ吸い寄せられるように集まっている。

 

巨大な氷壁の向こう。永遠の眠りについたように佇むその場所こそ、フォースの霊廟だった。

 

「エコー基地の情報収集が二割、残り八割はこの遺跡の探索じゃな」

 

「逆です、マスター」

 

即座にダザンがツッコミを入れる。最近では、このやり取りがすっかり様式美になりつつあった。

 

フォースの遺跡を見つけるたびに目を輝かせるパルパティーンと、それを常識人代表としてダザンが止めるところまでが一連の流れである。

 

もっとも、今回は本当にエコー基地へ用があってホスまで来ている。

 

ボバ・フェットに反乱軍基地の情報を流し、帝国軍が基地の建設や防衛体制を整え切る前に奇襲をかけてもらう。

 

そんな計画だったが、当のボバ本人からは、

 

「確固たる証拠がないと無理」

 

と、実に真っ当な理由で断られてしまった。

 

賞金稼ぎは依頼で動くし、帝国軍も推測や憶測ではなく、確実な情報で動く。そのため俺たちはこうしてホスへ潜入し、エコー基地の写真や地形、施設配置などを直接調査することになったのである。

 

時期的には、帝国軍が銀河中へ探索用プローブ・ドロイドをばら撒き始めている頃だ。正史なら、ホス近辺も捜索網に組み込まれていているのだが……不思議なことにこの宙域はまだ比較的静かだった。

 

理由は簡単である。

 

運び屋をしながら俺たちが各地を転々とする傍ら。

 

ある時は、悪政で住民を苦しめる帝国軍基地を吹き飛ばし。

 

またある時は、奴隷を使役する犯罪組織を壊滅させ。

 

またある時は、違法採掘を行っている採掘基地を爆破し。

 

そしてブラック・サンの拠点までまとめて木っ端微塵にし、「成敗っ!!」などと叫びながら好き放題暴れ回った結果、いつの間にか帝国軍から「反乱軍よりやべぇ武装勢力」という、とてもありがたくない認識をされてしまっていた。

 

そのため探索ドロイドも、反乱軍ではなく俺たちの足取りを追うために大量投入されているらしい。

 

俺たちが通った航路や立ち寄った惑星、補給した宇宙港と、そういった場所を重点的に捜索しているようで、結果としてホス近辺は後回しになっていた。

 

「ったく、この世界のヴェイダーはよぉ。仕事しろよ、マジで」

 

本来ならホスを探しているはずなのに、俺たちばかり追い回しているのである。完全に私怨である。いや、気持ちはわからなくもないけど。

 

「自業自得では?」

「ぐぅの音も出ない」

 

マスター・クワイ=ガンの正論が胸に刺さった。

 

ともあれ、反乱軍基地全体の写真撮影と詳細データ収集という簡単なお使いの前に、着陸地点からそう遠くない場所にあるフォースの霊廟を先に探索することになったのは、もはや説明するまでもない。

 

もし前後を逆にしようものなら

 

「いやじゃあああああ!!」

「先に遺跡じゃああああ!!」

「余は帰る!!」

 

元銀河皇帝が雪の上へ寝転がり、手足をばたつかせながら全力で駄々をこねるのである。しかも妙に強いし、フォースで踏ん張るので引きずれない。この様でフォースの深淵に最も近い男。

 

勝てるわけがないぉ……!

 

結果、今回も遺跡探索が優先された。

 

俺たちはライトセーバーを懐中電灯代わりにしながら、暗闇に包まれたホスの永久凍土を進んでいく。足元では雪がきしみ、冷たい風が氷壁の間を吹き抜けるたび、不気味な唸り声のような音が響く。

 

先頭を歩くのは、赤いライトセーバーを掲げたパルパティーン。

 

その後ろに俺、さらにアナキン、クワイ=ガン。

 

そして最後尾には七色に光る!鳴る!唸る!DXゲーミングライトセーバーを携えたダザンが続いていた。

 

「……いや、本当に目立つな」

 

暗闇の中、最後尾だけがお祭り会場みたいになっている。

 

ちなみに、このゲーミングライトセーバーだが、しばらく観察しているうちに妙な法則が見つかっていて、ダザンの感情に応じて、光の色がある程度固定されるのである。

 

俺と手合わせをしている時は冷静なので青。

 

アナキンやパルパティーンとの実戦形式では必死になるので赤。

 

クワイ=ガンからフォームを教わっている時は、不思議と緑。

 

その他にも、感情の変化によって微妙に色合いが変わることがある。

 

もっともその理屈は誰にもわからない。パルパティーンですら、「うんうん、それもまたフォースだね」と言って匙をぶん投げてる。

 

そして気を抜くとピカッ。

ピカピカピカ。ohレインボー。

 

結局、通常時は七色に色が変わるゲーミングカラーへ戻ってしまう。とても目に悪い。最後尾で極彩色の光がチカチカと明滅している……暗闇だから余計に眩しい。

 

「予備のカイバークリスタルならこんなことにならないのに……何でぇ……」

 

百均で売っているパチモンの光るおもちゃみたいなライトセーバーを掲げながら、ダザンは今にも泣きそうな顔をしていた。

 

……うん。強く生きろ。

 

そんな中、フォースの霊廟を目指して歩みを進めているのだが、どこか違和感があった。暗黒領域に棲むはずの凶悪な原生生物が、まったく姿を現さないのだ。

 

気配はある。フォースを通して、こちらを窺う無数の視線も感じる。だが、それらは襲ってくるどころか、まるで何かを恐れるように身を潜めている。

 

俺たちを警戒しているというより……もっと別の、得体の知れない何かから隠れているようにも感じられた。

 

「……静かすぎるな」

 

俺が小さく呟くと、アナキンも無言で頷く。パルパティーンも普段のような軽口は叩かず、周囲へ意識を巡らせていた。

 

ホスを吹き抜ける風だけが、低いうなり声のような音を立てている。

 

しばらく進むと、巨大な氷壁に半ば埋もれるように古代遺跡が姿を現した。入口には長い年月によって風化しながらも、なお読み取れる古代ジェダイ文字とシス文字が刻まれている。

 

相反する二つの文字が同じ場所へ刻まれている光景は、それだけでこの場所の異質さを物語っていた。氷柱が天井から幾本も垂れ下がり、永い時の流れを静かに刻んでいる。

 

「感じるか?強いフォースだ」

 

入口で足を止めたパルパティーンが、珍しく真剣な眼差しで言う。その声音には、いつもの好奇心だけではない、確信にも似た響きがあった。

 

俺も静かに目を閉じる。胸の奥へ直接響いてくるようなフォース。それは荒々しくもなく、穏やかでもない。ただ静かに、しかし確かに「そこにいる」と告げてくる。

 

ダザンを除いた全員には、その感覚に覚えがあった。

 

「……ああ」

 

アナキンが短く答える。

 

この先にいるのが誰なのか。もう、全員が察していた。

 

「明らかにお主を待っておる。先に行くが良い」

 

普段なら「余が一番乗りじゃ!」とばかりに真っ先へ突撃していくパルパティーンが、自ら一歩下がってアナキンへ道を譲る。

 

それほどまでに、この場所へ満ちるフォースは特別だった。アナキンは静かに頷き、遺跡の奥へと足を踏み入れる。

 

霊廟は永久凍土に閉ざされてはいなかった。

 

入口の先には、氷だけで削り出された巨大な階段が、果てしなく地下深くまで続いている。

 

一歩、また一歩と、足音だけが静寂の中へ吸い込まれていく。誰一人として口を開かず、まるで、この場所そのものが沈黙を求めているようだった。

 

やがて階段を降りきると、そこには高い天井を持つ広大な霊安室が広がっていた。壁一面には古代のフォースの使い手たちが眠る石棺が整然と並び、その数は数え切れない。

 

ジェダイにシス。

 

あるいは、そのどちらでもなかった者たち。

 

数千年という時を超え、この地下で永遠の眠りについている。

 

どこかで氷が溶け、一滴の水が落ちる。

 

……ぽたりと、その小さな音さえ霊安室全体へ響き渡るほど静まり返っていた。

 

白銀の世界。地下にまで吹き込む冷たい風がローブを揺らし、凍てついた空気が肌を刺す。

 

その最奥。歴代の眠る者たちへ背を向けるように、一人の男が静かに瞑想へ耽っていた。

 

まるで、この場所を何十年、何百年と守り続けてきた番人のように。

 

「探したぞ、アナキン」

 

静かな声だった。しかし、その一言だけで霊安室全体の空気が震えたように感じた。

 

その人物はゆっくりと瞑想を終え、静かに立ち上がる。

 

白く染まった髪に、歳月を刻んだ髭、年老いた身体。それでも、その存在から放たれるフォースは、全盛期と何一つ変わらぬほど強大だった。

 

穏やかでありながら揺るがず、まるで大地そのもののような安定感を持っている。

 

アナキンは静かに俺たちの前へ歩み出る。そして、ずっと待ち続けていた相手と向かい合った。

 

「オビ=ワン・ケノービ……」

 

その名を呼ぶ声には、懐かしさも、後悔も、尊敬も、数え切れないほどの感情が滲んでいた。

 

オビ=ワンは何も答えない。ただ静かに身につけていたローブを脱ぎ、丁寧に脇へ置く。

 

そして腰へ下げていたライトセーバーを握った。

その動作には一切の迷いがない。

 

「さぁ、はじめようか」

 

その言葉とともに、ヴンと鉄を焼くような澄んだ起動音が霊安室へ響く。青白い光刃が静かに伸び、氷の壁を照らした。

 

アナキンは何かを言おうとして口を開くが、言葉を飲み込む。今ここで交わすべきなのは、言葉ではない。

 

静かに自らもライトセーバーを抜き、起動する。二本の青い光が、白銀の霊安室を照らした。

 

「準備はできているか?」

 

ヴン、と光刃がわずかに揺れる。アナキンは基本に忠実なフォームでライトセーバーを構える。

 

対するオビ=ワンもまた、得意とするソレス特有の構えではなく、正眼の構えで静かに向き合っていた。

 

まるで師と弟子ではなく、一人の剣士として。

 

一人のフォースの使い手として。

 

互いを認め合うための構えだった。

 

その張り詰めた空気の中で、パルパティーンも、クワイ=ガンも、そして弟子であるダザンも息を呑む。

 

誰一人として余計な言葉を発しない。この一戦が、二人にとってどれほど大切な意味を持つのか。

 

誰もが理解していた。

 

「はじめ!」

 

張り詰めた空気を断ち切るように、俺が発した一声。

 

その瞬間。

 

二人は同時に地を蹴った。

 

澄み切った氷の床へ映る二つの影が重なり合い、次の瞬間、青き光刃同士が鋭い火花を散らして激しくぶつかり合った。

 

甲高い金属音が霊廟全体へ反響する。互いに青い光の軌跡だけを残しながら、二人は寸分の狂いもない剣技を繰り広げていく。

 

セイバースピンを駆使し、息継ぎを許さぬ連撃を放つアナキン。鋭く、速く、攻撃の勢いを殺さないその剣筋は、クローン戦争時代を知る者なら誰もが恐れた”英雄の剣”そのものだった。

 

だがオビ=ワンは、その猛攻を受け止めようとはしなかった。

 

紙一重。ほんの数センチ。最小限の体捌きだけで、光刃をすり抜けるように躱していく。

 

まるで、攻撃が来る未来を最初から知っているかのようだった。

 

それでも、アナキンの表情に焦りはない。

 

躱されることまで織り込み済み。相手へ圧力をかけ続け、僅かな綻びを待つ。それが今のアナキンの戦い方だった。

 

背面でライトセーバーを滑らかに回転させ、その勢いのまま一歩踏み込み、斜め下から鋭く斬り上げる。かつてのアナキンが最も得意としていた変則的な一撃。

 

オビ=ワンは、その軌道すら見切っていた。身をわずかに捻りながら掻い潜り、避けると同時に反撃を重ねる。

 

攻防が完全に一体化している。

攻撃と防御の境界が存在しない。

 

それこそがオビ=ワン・ケノービだった。

 

「攻撃に意識を向けすぎですよ、マスター」

 

だが、そう言ってアナキンは、あえてライトセーバー同士を滑らせるように逸らした。予想外の力の逃がし方に、一瞬だけオビ=ワンの体勢が前へ流れる。

 

その隙を逃さず。アナキンは肩からぶつかるように体当たりを放った。

 

「っ!」

 

意表を突かれたオビ=ワンの身体が半歩よろめく。

 

しかしそれだけ。直後には手首を返し、ライトセーバーを美しくスピンさせる。乱れた構えを、一回転だけで完全にリセットする。

 

無駄がない。まさに長年積み重ねた熟練の技だった。その様子はどこか懐かしく、アナキンの口元がわずかに緩む。

 

「強くなったな、アナキン」

 

オビ=ワンの声は穏やかだった。そして、どこか嬉しそうで……少しだけ寂しそうでもあった。

 

再び二本のライトセーバーが激しくぶつかり合う。バチバチッ、と火花が散るたび、青い光が白銀の霊廟を照らし出す。

 

その光が氷の床へ映し出した二人の姿は年老いた老人ではなかった。

 

そこに映っていたのは、共和国の黄金時代を駆け抜けた若きジェダイ・マスター。そして、その背中を追い続けた若きパダワン。

 

ありし日のオビ=ワン。

ありし日のアナキン。

 

二人の姿が、まるで過去そのものを映し出す幻のように揺らめいていた。

 

「勝つことへの執着が目を曇らせる。貴方はいつもそう言ってましたからね、マスター」

 

アナキンは静かに微笑む。その笑みは、かつての血気盛んな青年のものではなく、多くを失い、多くを学んだ者だけが浮かべられる穏やかな笑みだった。

 

ブォン、と光刃を横へ流す。鍔迫り合っていたオビ=ワンのライトセーバーへ、自分の刃を滑らせるように当て、その構えを大きく外側へ崩す。

 

ほんの僅かなズレ。しかし達人同士の戦いでは、それだけで十分だった。

 

オビ=ワンは反射的にライトセーバーをスピンさせ、ソレス特有の流れるような防御へ移ろうとする。

 

だが、その動作よりほんの一瞬だけ早く。

 

アナキンは踏み込んでいた。

 

迷いのない一歩は、全身を連動させ真正面からの一閃を放つ。

 

次の瞬間、青白い光刃がオビ=ワンの眼前で静かに止まる。

 

それだけで勝負は決していた。

 

霊廟は再び静寂に包まれる。

 

響いていたライトセーバーのぶつかり合う音も消え、聞こえるのは氷から滴る水音だけだった。オビ=ワンは目の前の光刃を静かに見つめる。

 

そして、その青白い光に照らされながら、小さく息を吐いた。その表情には敗北への悔しさではなく、どこか切なげな、懐かしさすら滲んでいた。

 

「やはり、お前は私の知るアナキンではないんだな」

 

その言葉は責めるものではなかった。

 

ただ、長い年月を経てようやく辿り着いた一つの答えを、静かに受け入れるような響きを帯びていた。

 

 

 

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