アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話   作:紅乃 晴@小説アカ

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ダークサイドの戦い(1)

 

 

 

とある惑星。

 

帝国軍の星図にも、かつて銀河共和国が編纂した航路図にも記されていない、小さく名もなき星。

 

既知宇宙の航路からも外れ、強力な磁気嵐と重力異常によって長年その存在は覆い隠されてきた。だが、その星には古代シスの寺院が、数千年という時を超えて静かに存在していた。

 

そそり立つ切り立った山肌をくり抜く形で築かれたその寺院は、天然の赤い水晶鉱石をそのまま削り出して造られており、壁面や柱には精巧な彫刻が幾重にも刻まれている。

 

灯火一つない暗闇でありながら、水晶はフォースの気配に呼応するかのように淡く赤い光を放ち、静寂の中に妖しく揺らめいていた。

 

その美しさは、数ある古代シス寺院の中でも群を抜いており、単なる修練の場ではない。

 

己の欲望、怒り、憎悪を見つめ直し、自らの存在意義を問い直す地として、歴代のシス卿たちから神聖視されてきた場所であった。

 

永い年月を経た今もなお、その空気には濃密なダークサイドが染み込み、呼吸をするだけで胸の奥を重く圧迫するような感覚を与えてくる。

 

そんな中、ダース・シディアスはフォースの導きに従うように、一人、その寺院の最奥へとやってきた。

 

地面を引きずるほど長い黒いマントはほとんど音を立てず、その歩みはまるで亡霊が漂うかのようだった。

 

しかし、その肉体からみなぎる暗黒面の力は少しも衰えておらず、むしろ寺院全体に満ちるダークサイドと共鳴し合いながら、シディアスをさらに奥深くへと誘っていく。

 

誰もいないはずの回廊には、彼の足音だけが低く反響する。その音さえも次第に消え失せ、やがて寺院は不気味な静寂に包まれた。

 

「シス・マスター、ダース・シディアス」

 

寺院の最奥にある祭壇。その祭壇は歴代の中で最も優れたシス・マスターが座る玉座を中心に、幾つもの席が円を描くように並べられていた。

 

現在の「二人の掟」が定められる以前、シスが一つの帝国として銀河に君臨し、多くのダークロードたちが一堂に会していた時代の名残である。

 

その壮麗さは、シスという組織がかつてジェダイ・オーダーに匹敵する巨大な勢力であったことを、今なお物語っていた。

 

長い年月の中で誰も座ることのなくなった席には薄く埃が積もっていたが、中央の玉座だけは、まるで今なお主を待ち続けていたかのように一切の汚れがなかった。

 

その玉座に腰をかけている男。

 

それこそが、ダース・シディアスの心を乱し、そして探していた尋人であることを、シディアスはその姿を見た瞬間に理解した。

 

相手の存在はフォースの中で異様だった。

 

暗黒面に深く根差しているにもかかわらず、その気配は怒りや憎悪だけでは語れない。

 

まるで深い海の底に沈むような静けさを秘め、シディアスですら容易には測れない底知れぬ深淵を感じさせていた。

 

「思ったよりも早く現れたな?」

 

「ダース・プレイガスと名乗っているのは貴様か?」

 

玉座に座る影に、シディアスはそう尋ねる。

 

「この場に余を誘ったということか。貴様もシスを知る者なのだろう。だが、誤りであったな」

 

そう続けるダース・シディアスには強力なフォースが溢れ出していて、それは寺院全体を揺るがすほどであった。

 

柱に刻まれた古代文字が赤く輝き、天井から細かな砂塵が降り注ぐ。祭壇を囲む水晶は共鳴するように低く唸り、寺院全体がシディアスの怒りへ応えるかのように震え始める。

 

銀河皇帝として無数の命を支配し、シスの頂点へと立った男。

 

その威圧感は、常人であれば視線を向けられただけで膝をつき、気絶してもおかしくないほど圧倒的だった。

 

「ダース・プレイガスが余の師であったことを知っていようが知るまいが、貴様はその名を語った時点で、余は貴様を殺さねばなるまい」

 

そうダークサイドの力を迸らせるシディアスに、玉座に座る相手は小さくため息をつく。

 

その様子には焦りも恐れもない。

 

銀河皇帝を前にしてなお、まるで聞き分けのない弟子を諭す老人のような落ち着きすら漂わせていた。

 

「シスの教義に従う。シスは二人……それ以外のシスは不要、と言ったところか」

 

そう言って男は続ける。

 

「怒り、妬み、憎しみ。人間の負のエネルギーを糧とするシスは、その同族嫌悪の中で内乱を起こし、絶滅の淵に立った」

 

シス内乱。

 

裏切りと暗躍を是とし、力ある者だけが生き残ることを至上としたシスの思想。その教えは弟子が師を殺し、同胞同士が権力を奪い合うことさえ肯定した。

 

結果として、ジェダイに滅ぼされる以前に、シスは自らの刃で自らを滅ぼしかけたのである。

 

だからこそ、その内乱を終えた生き残りは姿を消し、少数で力を受け継ぐ道を選んだ。

 

それが後に「二人の掟」として完成し、長い年月をかけてダース・ベインからダース・プレイガス、そしてダース・シディアスへと受け継がれていくことになる。

 

「それゆえの一師一弟という形が合理だと考えられた。だが、その合理によってシスの本来あるべきものは失われた」

 

シスのあるべき姿。

 

その言葉を聞き、シディアスはフードの奥にある黄金の瞳をぎらりと光らせる。その眼差しには警戒と苛立ち、そして僅かな興味が入り混じっていた。

 

だが、玉座の男は押し寄せるシディアスのフォースをものともせず、静かに話を続けた。

 

周囲を満たす濃密なダークサイドの奔流すら、まるで心地よい風でも受けているかのような落ち着きを見せている。

 

「それを其方は知っておるだろう?シディアス卿」

 

そう言う男に、シディアスは興味もなさそうに鼻で笑う。

 

「余はシスの待望であったジェダイへの復讐を果たした。銀河に帝国を打ち立て、そしてその頂点に君臨している。シスの本来あるべき姿を取り戻したのだ」

 

その声には揺るぎない自負があった。

 

ジェダイ聖堂は炎に包まれ、共和国は崩壊し、銀河は皇帝の支配下にある。千年にわたり暗躍を続けてきたシスの悲願は、まさしく自らの手で成し遂げられた。

 

シディアスにとって、それは紛れもない事実だった。

 

こんな問答をするためだけに自分をこの地へ誘ったというのなら、時間の無駄である……そう思おうとした、その時だった。

 

「それは本心ではあるまい。ならなぜ、その地位を盤石なものにせぬか」

 

玉座の男に、シディアスは視線を鋭く向ける。

 

その一言は、相対する相手の心の奥底へと静かに刃を差し込んでいた。だが男は、シディアスの膨大なエネルギーを前にしても怯まずに言う。

 

「余が簡単に帝国軍の中枢へアクセスできたのは、ある理由はあるものの、帝国のあり方が歪であったことも事実だ」

 

その言葉と同時に、寺院の空気がさらに重くなる。

 

帝国軍。銀河史上最大の軍事組織。数万隻のスター・デストロイヤー、数え切れぬほどのストームトルーパー、モフやグランド・モフによる広大な統治網。

 

表向きは絶対的な支配体制。

 

しかし、その実態は権力争いと派閥抗争に満ちていた。軍、帝国保安局、各モフたちは互いを牽制し合い、皇帝の恐怖によって辛うじて均衡を保っているだけの、不安定な構造でもあった。

 

「シスのあるべき姿が支配と権力、圧政と弾圧にあるというのなら、其方はより効率よく、残忍で、残虐で、そして独善的に支配するべきであった」

 

その言葉は皮肉でも挑発でもない。まるで歴史を淡々と分析する学者のような口調だった。

 

「銀河全土は恐怖に支配され、反乱の芽など生まれる前に摘み取られ、帝国は未来永劫揺らぐことはなかっただろう」

 

そう言ってから男は、誰の目にもわかるように笑みを浮かべる。

 

「わかっておるのだろう?シスの本懐は支配ではないということを」

 

その言葉が寺院に響いた瞬間、静寂は終わった。

 

シディアスの瞳が怒りに染まり、ダークサイドが爆発する。

 

その刹那、シディアスの手から立ち上った青白い稲妻が轟音とともに放たれ、玉座の一部を吹き飛ばした。

 

古代の石材は粉々に砕け、水晶の破片が四方へ飛び散る。雷光が祭壇を照らし、赤い水晶が一瞬だけ白く輝いた。

 

だが、当の本人はまったく怯えも慌てる様子すら見せない。

 

崩れ落ちる石片すら避けようとはせず、その表情には静かな余裕だけが浮かんでいた。

 

まるで全てが予定調和であると言わんばかりの落ち着きを払っている。

 

それがシディアスには気に食わなかった。

 

フォース・ライトニングが再び飛ぶ。

 

怒涛のような電撃は空気を焦がし、寺院そのものを焼き尽くさんとする勢いで玉座へ襲いかかった。

 

だが、それは玉座へ届く寸前で、見えない壁に触れたかのように静かに弾かれ、そのまま霧散するように打ち消された。

 

寺院には再び静寂だけが残る。

 

砕け散った玉座の破片が床へ転がる音だけが、広大な空間に乾いた余韻を響かせていた。

 

ただ、シディアスの怒りだけが、なおも際限なく膨れ上がっていた。

 

「わかったような口を聞くな、愚か者が」

 

シディアスの暗黒面の力がさらに増す。

 

足元から立ち上るダークサイドは黒い霧のように揺らめき、寺院に満ちていた古の闇すら飲み込もうとしていた。壁面に刻まれたシス文字はその力に呼応するように妖しく赤く輝き、空気そのものが震える。

 

「余は銀河を手にした皇帝。その程度の矮小な見聞に揺るがされるほどではない」

 

その声には絶対的な自信があった。

 

共和国を滅ぼし、ジェダイ・オーダーを壊滅させ、銀河帝国を築き上げた男。千年続いたシスの大計画を成し遂げたのは、他ならぬ自分である。

 

その誇りだけは、誰にも否定させるつもりはなかった。

 

負のエネルギーを糧とする暗黒面を立ち上らせるシディアスに、玉座へ座る男は打って変わって穏やかな声で言う。

 

「其方の焦りはわかるぞ、シディアス卿」

 

その声は静かだった。

 

だが、その一言はフォース・ライトニングよりも鋭く、真っ直ぐにシディアスの胸中へと突き刺さる。

 

「焦り?」

 

「其方は焦っておる。自分の残したものが、得たものが、知ったこと、聞いたこと、経験し、学んだこと。その全てが無に帰することを」

 

玉座に座る男は言う。その声音には嘲笑はなく、ただ事実を口にしているだけだった。

 

「シスは、その性質ゆえに選択肢がない」

 

それは今のシスの限界であり、欠点だった。

 

ダース・ベインが築き上げた「二人の掟」。

 

師は弟子を育て、やがて弟子は師を超え、殺し、その知識と力を継承する。

 

理屈だけを見れば、それはシスをより強くするための合理的な制度だった。しかし、その制度は同時に、シスという存在そのものへ決定的な制約を課していた。

 

「自分の理想のために弟子へ託す。だが、裏切りと策謀を旨とする教義を貫く以上、その理想すら糧にされて踏み潰される」

 

シディアスは何も言わない。

男はなおも続ける。

 

「弟子は師の思想を継ぐのではない。利用するのだ。師の知識も、財産も、理想も、全て己が頂へ至るための踏み台に変える」

 

それはシスにとって当然のこと。師弟の情すら最後には欲望へ飲み込まれる。ゆえに、シスは継承するようでいて、何一つ継承できてはいなかった。

 

シスという本質が裏切りと欲望、そういったものと結び付けられているがゆえの誤り。

 

「シスが細々と生きながらえてきたのは耐えていたからではない。そのあり方ゆえ、復讐やジェダイと戦う余力すらなかったのだ」

 

その言葉とともに、祭壇へ並ぶ無数の席へ男はゆっくりと視線を向ける。

 

かつては多くのシスが座り、議論し、争い、そして互いを殺し合った場所。

 

今は誰もいない。残されたのは朽ちた石と、ダークサイドだけだった。

 

「結局は、そんな矮小で小さな共同体でしか生きられなかったから。それだけのことだ」

 

男は静かに言葉を紡ぐ。

 

「機会は幾度となくあった。共和国が弱体化した時代も、ジェダイが慢心した時代も、銀河が混乱した時代もあった。だが、その全てを棒に振った」

 

その声には怒りも失望もない。ただ歴史を見続けてきた者だけが持つ、静かな重みがあった。

 

「その原因は紛れもなく、歴代のシスに名を連ねた者たち自身なのだ」

 

男は一拍置き、静かにシディアスを見据える。

 

その視線は銀河皇帝を見るものではなく、一人のシスを見る目だった。

 

「シディアス卿。其方は耐えた。復讐をするため。ジェダイという障害をなきものにするため。そしてフォースから生まれた、選ばれし者に自分の足跡を残し、シスの教義に従い、弟子に討たれることを」

 

シディアスは何も答えない。だが、その黄金の瞳はわずかに細められていた。

 

アナキン・スカイウォーカー。

 

フォースそのものが生み出したとさえ言われる選ばれし者。その比類なき才能を暗黒面へ引き込み、自らを超える存在へと育て上げる。

 

そして、その弟子に自らが討たれることで、シスはさらに高みへ至る。

 

それこそが「二人の掟」の完成形。

 

帝国を樹立し、ジェダイを滅ぼし、銀河全土を支配した偉大なるシス卿の意思は、選ばれし者へと受け継がれ、新たな時代を築くはずだった。

 

シディアスは、その瞬間を目前にまで掴んでいたのである。

 

「だが、その千載一遇の機会を、シディアス卿、其方は逃した。ゆえに焦りがあるのだ。その得た自分の足跡を何一つ残せずに果てることを」

 

その言葉は、静かでありながら容赦がなかった。シディアスが最も触れられたくない心の奥底。

 

ダース・ヴェイダーは失敗した。肉体はムスタファーで焼かれ、選ばれし者としての完成には至らなかった。

 

そしてシディアス自身もまた、その代替となる器を探し続けている。

 

その事実を、この男はまるで見てきたかのように語っていた。

 

そう告げる男に、シディアスの怒りは限界を超えた。ダークサイドが爆発し、その右手へ真紅のライトセーバーが現れる。赤い光刃が轟音とともに起動し、寺院を血のような赤色で染め上げた。

 

地獄の悪魔のような咆哮と共に、シディアスは床を蹴る。

 

その身体は老齢とは思えぬ速度で一直線に飛翔し、ダークサイドによって強化された身体能力は、一瞬で玉座との距離を詰めていく。

 

狙うはただ一つ。玉座に座る男の首。赤い光刃が、その命を刈り取ろうと振り下ろされた、その直前だった。

 

甲高い鉄が焼けるような音と閃光が寺院全体へ響き渡る。シディアスの行く手を、一振りの赤いライトセーバーが遮っていた。

 

完璧な角度と完璧な力加減。シディアスの渾身の一撃は、その場で完全に受け止められていた。

 

シディアスはいまだ玉座に悠々と座る男を睨む。

 

「貴様は……何者だ……!」

 

「それを知るためには、まずは彼と戦ってもらわねばな」

 

そう告げると、今度はシディアスの身体がフォースによって弾き飛ばされる。

 

目には見えない衝撃波が全身を打ち据え、そのまま数十メートル後方へ吹き飛ばされる。

 

水晶の彫刻に彩られた床へ着地し、石畳を滑りながら体勢を立て直すシディアス。

 

その視線の先では、玉座の前に立つ人物がゆっくりと歩き始めていた。重々しい黒いブーツが石畳を踏み締めるたび、寺院に鈍い足音が響く。

 

全身を黒い装束で包み、その右手には赤いライトセーバー。

 

フードに隠れた顔は見えない。

 

しかし、その立ち姿だけで達人とわかる。

 

彼を見つめながら、玉座の男は言う。

 

「紹介しよう。余の弟子……ダース・ヴェイダーだ」

 

その言葉に、シディアスは吐き捨てるように言った。

 

「バカな……!余の弟子であるダース・ヴェイダーはただ一人だけだ!」

 

その叫びには怒りだけではない。明らかな動揺が混じっていた。

 

目の前から感じるフォース。その気配は、全く異なるはずなのに……なぜか、自分が知るヴェイダーと酷似している。それでいて、決定的に異なっていた。

 

荒らげるシディアスに、玉座の男は胸を張って言う。

 

「そう思うなら試すがいい。其方の無限なるダークサイドの力でな」

 

「試すだと?バカは休み休み言え。余を誰だと心得る」

 

そう言ったシディアスの両手から、相手を灰すら残さず消し去る勢いでフォース・ライトニングが轟いた。青白い稲妻は幾重にも枝分かれしながら奔流となり、寺院全体を照らし出す。

 

「偉大なるシス・マスターであり、ダース・シディアスこそが余という存在なのだ!」

 

そのフォース・ライトニングは、ダース・ヴェイダーなどというふざけた名で呼ばれた相手へ一直線に伸びる。

 

しかし男は慌てることもなく、ただ片手を静かにかざした。

 

稲妻はその掌へ吸い込まれるように受け止められ、押し返される。荒れ狂う電撃は進路を失い、床や壁へ四散しながら消えていった。

 

その力に、シディアスはほくそ笑む。

 

「よく鍛えられている。余の攻撃を片手で受け止め……」

 

と、同時だった。

 

男の姿が、ふっと消えた。

 

フォースによる加速。いや、それすら認識できないほどの超高速。シディアスの知覚から完全に消え失せた次の瞬間、目の前には真っ赤な光刃が迫っていた。

 

咄嗟に袖へ収めていたライトセーバーを抜き放ち、その一撃を受け止める。

 

激しい火花が散り、二本の赤い光刃が激突する。

 

だが、その速さはシディアスですら目で追うことができなかった。

 

「小細工はなし。最初から本気で行けと……マスターから言われてるのでな」

 

低く落ち着いた声。

 

その声音には怒りも慢心もない。

 

ただ、師の命令を忠実に遂行する弟子としての覚悟だけが宿っていた。

 

「調子に乗るでない……暗黒面の力を、思い知るがいい!」

 

シディアスは笑みを浮かべ、暗黒面の力を漲らせた。

 

黄金の瞳が妖しく輝き、全身から溢れ出すダークサイドは怒涛の奔流となって寺院を包み込む。足元の石畳は軋み、壁面へ刻まれた古代シス文字は呼応するように赤黒い光を放ち始めた。

 

その笑みは狂気ではない。

 

長い歳月を経て銀河を手中に収めた絶対者の余裕。

 

そして、自らこそがシスの頂点であるという揺るぎない確信だった。

 

「良い……実に良い」

 

玉座に座る男……シーヴ・パルパティーンは、シディアスと愛弟子の戦いを見つめながら静かに呟く。

 

その声音には嘲笑も侮蔑もない。

 

あるのは、師が弟子の成長を見守るような穏やかさだけだった。

 

「さて、シディアス卿……お主はこの戦いで何を得て、何を学び……そして何に気づくのであろうな?」

 

そう言って、パルパティーンは静かに背もたれへ身を預ける。

 

まるでこの先に起こる全てを知っているかのような落ち着きだった。

 

一方、シディアスは目の前に立つ黒衣の男から視線を逸らさない。

 

先ほどの一撃。

 

フォース・ライトニングを受け止め、さらに自分の知覚を超える速度で懐へ入り込んできた技量。

 

それは歴代のジェダイ・マスターであっても容易には成し得ない領域だった。

 

だが、それでもシディアスの口元から笑みは消えない。

 

むしろ、その実力を目の当たりにしたことで、胸の奥底に眠っていた闘争心が燃え上がっていた。

 

だからこそ、シディアスの胸には久しく忘れていた高揚感が湧き上がる。シディアスの周囲へ膨大な暗黒面が渦を巻き始める。

 

寺院全体に染みついたダークサイドまでもが皇帝の呼び声へ応えるように蠢き、赤黒い霧となって祭壇を覆い尽くす。水晶の柱は低く唸り、床へ刻まれた古代シスの紋様は脈打つ心臓のように明滅を繰り返していた。

 

それに呼応するように、黒衣の男も静かにライトセーバーを構える。

 

派手な構えではない。

 

無駄を一切削ぎ落とした自然体。

 

しかし、その立ち姿には一切の隙がなく、まるで巨大な山岳がそこに立ちはだかっているかのような圧倒的な存在感を放っていた。

 

二人は動かない。

 

ただ互いを見据え、フォースだけが激しくぶつかり合う。

 

目には見えない圧力が寺院を揺らし、砕けた石片が宙へ浮かび上がる。張り詰めた空気は刃のように鋭く、常人なら立っていることすらできないほどのフォースが空間を支配していた。

 

シス同士の戦い。

 

それは剣技だけでは終わらない。

 

フォースとフォースがぶつかり合い、意志と意志が相手をねじ伏せる戦い。

 

そしてそれは、シスという存在の在り方そのものを問う戦いでもあった。

 

古代シスの聖域で、新たな歴史の一頁が、今まさに刻まれようとしていた。

 

 

 

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