アナキンの親友なって色々あって旅に出た英雄の話 作:紅乃 晴@小説アカ
「アンタを殺しても…いや、アンタがいなくなっても、共和国は近いうちに終わるからだ」
「アンタが居なくなっても、ジェダイは滅ぶ。その道は変えられない。…アンタはすでに勝負に勝っている。相手がそれを認めるのを待っているだけだ」
「なにより、アンタは死にたがっている」
「いつかは、自分が『ダース・プレイガス』になり、自分を超える弟子が自分を殺して、更なる英知に歩みを進めることを夢見ている」
「アンタはとっくに、自分の死を受け入れている。生きていることに興味なんてないのさ。ただ、その死に意味を持たせたがってるだけなんだ」
かつて、そうログに指摘されたことを、シーヴ・パルパティーンであり、ダース・シディアスでもある余は、今でも鮮明に覚えている。
それは戦いの最中でも、フォースの深奥に触れた瞬間でもない。
ただ、一人の男から投げかけられた何気ない言葉に過ぎなかった。
しかし、その言葉はライトセーバーよりも鋭く、あらゆるフォースの幻視よりも正確に、余という存在の核心へと届いていた。
薄々と自分自身で感じていたことを、ログに言葉として指摘され、ようやく余は、自分の本質を自覚したのだ。
それはとてつもなく大きなことで、そしてとてつもない衝撃を余にもたらした。
何故なら、余自身ですら、自らをそこまで正確に理解していなかったからだ。
余は自らを野心家だと思っていた。
銀河を支配し、ジェダイを滅ぼし、シスを頂点へと導く者だと。
だが、ログの指摘は、その全てを根底から覆した。
ジェダイへの怒り、憎しみ、妬み、ネガティブな感覚で滅ぼそうとしていたのも、はっきりといえばフォースの一側面に過ぎず、当人の感覚論に過ぎないと証明されたことにもなる。
何百、何千、何万年とシスの師弟で引き継がれたことは、結局のところそう言った人間くさい感情の結果に過ぎないと、余はログに指摘されて、ようやく理解し、納得できたのだ。
シスとは何か。
暗黒面とは何か。
余はずっと、それらを崇高で絶対的な理念だと思っていた。
だが実際は違う。
怒り、恐れ、嫉妬、執着……そして喪失。人間が誰しも抱く感情を極限まで増幅し、それを力へと変換しているだけに過ぎない。
神秘でも何でもない。極めて人間的な営みだったのだ。そして、その人間くささこそが、シスという存在を何千年もの間、脈々と生きながらえさせていた。
ダース・ヴェイダー。
アナキンが暗黒面に落ち、四肢を失い、愛する人を失った結果に残った暗黒面の化け物。
黒い装甲に包まれたその姿で、機械音のような呼吸。その立ち姿だけで人を恐怖させる異形。
だが、その中にあるものを余は知っている。
あれは怪物ではない。
全てを失った、一人の男の残骸だ。
デス・スターで年老いたオビ=ワンと戦う様子を目撃した余は、ログの言っていた言葉の意味を改めて理解させられた。
「アンタはとっくに、自分の死を受け入れている。生きていることに興味なんてないのさ。ただ、その死に意味を持たせたがってるだけなんだ」
アナキンの時も。
ルークの時も。
そして…その先の物語でも。
余は結局、自身を凌駕する存在への期待と、それに裏切られた落胆と、自身のフォースへの探究心を満たすことの繰り返しがあったのだろう。
アナキンに期待した。
選ばれし者という神話に期待した。
ルークに期待した。
父を超える新たな時代の到来に期待した。
そして、そのいずれもが余の思い描いた形にはならなかった。
それでも余は諦めなかったのだ。何故なら、余が求めていたものはジェダイの抹殺でも、銀河を支配する帝国でも、永遠の生命をもたらす存在でもなかったからだ。
このダース・ヴェイダーをみて、余はこの世界の余を憐れみ、同情した。
もっと高みを求めていただろう。
パルパティーンという、自分などを軽々と凌駕する暗黒面の偉大なる存在の誕生を期待しだろう。
このような全てを失って自暴自棄になった出涸らしなどではなく、その全てを手にした最高のシスの誕生を願っていだろうに。
選ばれし者。愛する妻。生まれてくる子供。ジェダイ随一の才能。それら全てを手にし、それでもなお暗黒面を極めようとする存在。
余が本当に見たかったのは、そういう理想の怪物だった。
全てを失った末に暗黒面へ縋り付く男ではない。
全てを持ちながら、それでもなお高みを目指そうとする存在。
それこそが、余が夢見ていた究極のシスだったのだ。
大いなる知識と力を持った者に討たれること。それは新たなシスの誕生であり、絶対的に揺らぐことのない最高の力を持つ者の誕生を意味する。
余は……シーヴ・パルパティーンは……シスの暗黒卿、ダース・シディアスは、その瞬間を楽しみにしている。
自らの死ですら、その者の誕生を祝福するための儀式に過ぎない。
だからこそ、余は死を恐れない。
最初から恐れてなどいなかったのだ。
支配なんて微塵も興味がない。
銀河帝国時代でも、治世や外交手段のほぼ全てをターキンやダース・ヴェイダーに任せ、フォースの根元を知るために歩みを進める探究者を優先している。
それが余の在り方である根元の証拠だ。
玉座に座っていたのは、銀河を支配したかったからではない。その立場が、フォースを探究する上で最も都合が良かったからに過ぎない。
皇帝という肩書きすら、余にとっては一つの手段でしかなかったのだ。
……もし。
ログ・ドゥーランが、余の前に現れなければ、余はこの選択を選んでいたと確信が持てる。
故に、ログという存在がいかに大きなものであるかを再認識し……そして、余が彼を取り戻す道を選んだことは間違いではないと確信したのだった。
何故なら、余という存在の本質を最初に見抜いたのは、ジェダイでもなければ、シスでもない。
フォースの預言者でも、古代の賢者でもない。
ただ一人。
余を皇帝でも暗黒卿でもなく、一人の人間として見ていた、ログ・ドゥーランその人だったのだから。
ログ「なんだろう、パルパルの視線がドロリとしてる気がする」
アナキン「自業自得だから責任持ってね」
ログ「なんの業を背負って、なんの得を得たんだろうね!?」