アナキンの親友なって色々あって旅に出た英雄の話   作:紅乃 晴@小説アカ

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後先考えないでやるからこういうことになる

 

 

 

デス・スターのトラクター・ビームの電源が遮断され、自由の身となったサウザンド・アドベンチャー号は、搭乗口であるタラップに二人の警戒士官が居たというのに船は勝手に動き出し、そしてシールドを突破してデス・スターから脱出を果たした。

 

巨大な宇宙要塞から、一隻の小型船が音もなく離脱していく。

 

その様子を見上げていた士官やストームトルーパーたちは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

警備兵いわく、誰も船には乗っておらず、警備用映像やドロイドにも探知記録が残っていなかった点から見て、外部からの遠隔操作だと技術部は断定したのだが……警備部隊にきたヴェイダー卿は頑なにそれを否定したのは後世でも有名な話であった。

 

「……違う」

 

ただその一言だけを残し、ヴェイダーはしばらくの間、何もない宇宙へ消えていく船影を見つめ続けていたという。

 

そして当の犯人たちは……。

 

「何か申し開きは?」

 

デス・スターから離脱しつつあるサウザンド・アドベンチャー号。窓の向こうでは、漆黒の宇宙に浮かぶ白い球体がゆっくりと遠ざかっていく。

 

俺は操縦席で必死に舵を取りながら、背後で隅に縮こまっている二人にそう言葉をかける。

 

なぜかなぁ?

なぜそんなに怖がってるのかなぁ?

ちょっと目が青白くなってるだけじゃん?

 

ねぇ?何か言えよ。

 

怒りのあまり漏れ出たフォースがパチパチと青白い放電のように指先を走り、船内の照明が僅かに明滅する。そのたびに、隅で正座している二人の肩がぴくっと震えた。

 

「正直、すまんかったと思ってる」

 

アナキンとパルパル二人揃っての謝罪の言葉がそれである。

 

ほんとさぁ!この二人はさぁ!

俺の言ったことをさぁ!

少しは気にするそぶりくらいさぁ!!

 

「まさか、僕自身がダース・ヴェイダーになった世界だなんて想像できないでしょ……」

 

そう言い訳のようにボソボソというアナキン。

 

その様子はパドメに隠していたドロイドや自作のポッドレース用マシンや、ナブー・スターファイターを魔改造してケッセルランの記録更新を目論んでいたのがバレた時にする言い訳とおんなじなの知ってるんだからな?

 

怒られると分かっているから視線を逸らし、声を小さくして、でも完全には悪いと思っていない絶妙な顔をするのである。

 

けどまぁ、わからんことはない。

 

アナキン的には、なりきりヴェイダーデラックスセットでやらかしている俺相手に斬りかかったら別世界線のもう一人のボクゥ!っていう展開だったようだ。

 

そりゃ混乱するし、普通の人間なら思考停止してもおかしくない。

 

問題なのは、その後、パルパルと一緒になって別世界の自分にトラウマを植え付け始めたことなんだが。

 

「ログがいなかったら……僕ああなってたのか。ある意味才能だよね」

 

窓の外を見つめながら、アナキンがぽつりと呟く。

 

どこか遠い目をしていた。先ほどまでの衝撃が、まだ整理しきれていないのだろう。

 

「逃げおおせてから宇宙キャットになるのはやめてもらえないかな?」

 

思わずツッコミが出る。アナキンの独善性と誰にも相談しない不器用さを矯正するのにどれだけ苦心したか知ってるのかな?

 

クローン戦争時代にパドメとの時間を作ったり、スカイウォーカー家との団欒の時間を作ったり、オビ=ワンに根回ししたり、レックスにそれとなくフォローを頼んだり、色々陰で根回しするの大変やったんやぞ。

 

その結果が今のパーフェクトアナキンである。

 

……そして、その副産物として誕生したのが、なりきりヴェイダーデラックスセットでやらかす俺だ。

 

ほんと人生ってわからない。

 

「しかしあれだの。この世界にはログはおらんのか?」

 

そういうのはすっかり船内でリラックスモードのパルパティーンである。フォースで手慰みのように遺跡で拾ったパズルを空中でバラしては組み立てたりしてる。カチリ、カチリと音を立てながら、立方体のパズルが空中で分解され、また元の形へ戻っていく。

 

この人も反省してねぇ。

 

この世界のダース・ヴェイダーの心をズタズタに踏み躙ったというのに。というか、さっきから妙に楽しそうだなこの元銀河皇帝。

 

「いないと思います、議長。というかいないです」

 

そう断言するアナキンにパルパティーンは首を傾げる。

 

「なぜそう言い切れるのだ? アナキン」

 

「ログがいるなら僕がやらかす前にぶん殴って止めますから」

 

まっすぐと曇りなき目でそう言ってくるが、親友からの信頼が重すぎる……!

 

まぁ実際やらかす前にあれこれやったからパーフェクトアナキンが爆誕して、なりきりセットでやらかす俺も爆誕したんだけどさぁ!

 

「……となると、あのルークやオビ=ワンも別人と捉えたほうがよいか」

 

ふむ、と少し思考をしてから納得するようにいうパルパティーン。

 

事実、ファルコンもあの騒動に乗じて離脱をしているようで、こちらの船とは別方向に飛び去っていっていた。ひときわ小さな光点となったミレニアム・ファルコンが星々の海へ溶け込むように遠ざかっていく。

 

「で?俺たちの方にはスター・デストロイヤーが追手に来てるわけだが?」

 

俺が前方モニターを指差す。

 

デス・スター付近に駐留していたヴェイダー卿の旗艦が、まっすぐとこちらを追跡しているのだ。

 

漆黒の宇宙を背景に浮かぶ、巨大な楔形の艦影。

 

それはまるで獲物を逃がすまいとする捕食者のように、静かに、しかし確実に距離を詰めてきていた。

 

アナキンとパルパティーンは二人で顔を見合わせてから肩をすくめた。

 

「なんでやろうなぁ」

 

お前お前お前!!!

 

思わず操縦桿を握る手に力が入る。

 

なんでやろうなぁ、じゃねぇんだよ!

 

誰のせいだと思ってんだ!

 

俺は必死に追跡を振り切ろうと船を加速させると、船体が低い唸り声を上げ、座席が僅かに震えた。

 

このサウザンド・アドベンチャー号、エンジンがアナキンの魔改造を受けてるのでめちゃくちゃジャジャ馬になってる。

 

もともとポッドレース用に廃材や中古品を使い、初めて組んだマシンがレースで一位を狙えるポテンシャル持ってる時点で、アナキンのマシンへの造詣は凄まじかった。

 

普通なら真っ直ぐ走ることすら怪しい寄せ集めのスクラップを、平然と優勝候補のマシンへと仕立て上げる。機械に愛されているのか、機械を狂わせる才能があるのかよくわからない。

 

そしてハン・ソロの乗るミレニアム・ファルコンを魔改造したことでタガが外れたのか、一気にスピードの虜になってる。

 

晩年、グランドマスターとなり、暇を持て余すようになったアナキンは秘密裏にマシンを組んでは、タトゥイーンでポッドレースに出たり、ハンにお願いして銀河の違法レースに参戦したりとやりたい放題。

 

そしてレースの賞金で部品を買い込み、トロフィーを居間に飾ろうとしてパドメに見つかり、見かねたオーウェンの告げ口や、違法レースでトロフィーを掲げるアナキンの写真を孫であるベンがレイアに提出するなどして、パドメやレイアに説教されるまでがワンセットになるほどであった。

 

なお本人は毎回、『もう出ないよ』と言うが、二週間後には、『今度のコースは面白そうなんだ』とか言いながらエンジンを整備している。

 

もはや病気である。

 

そんなアナキンが意気揚々と組んだエンジンが、このサウザンド・アドベンチャー号に収まっている。

 

スピードは申し分ないし、出力も桁違い。

 

偏向シールド出力に関してはスター・デストロイヤー級のものを遥かに上回り、デス・スターの惑星破壊光線すら数秒は持ち堪えるという化け物みたいなスペックになっている。

 

設計図を初めて見せられた時、俺は真顔で聞いた。

 

『これ、本当に船?』

 

するとアナキンは満面の笑みで答えた。

 

『うん!』

 

その笑顔が眩しかった。

 

今思えば、その時に全力で止めるべきだった。

 

しかし、一度オーバーヒートするとエンジンを休ませる必要があったり、本調子になるまで時間が掛かるスロースターター仕様になってしまっている。

 

そして現在、そのエンジンちゃんはまだあったまっておらず、ハイパードライブに入るためのエネルギーも足りないという絶望的な状況。

 

……なんでこんな仕様にした。

 

「だって全力を出すまでのロマンがあるでしょ?」

 

ざけんな。追われている時にロマンを求めている余裕はない。

 

そして、サウザンド・アドベンチャー号を追うように、黒い宇宙空間を背景に、巨大な三角形の艦影がゆっくりと姿を現す。

 

一隻、二隻、三隻。

 

「増えてない?」

 

「増えておるな。」

 

「なんでそんな他人事なんだよ!」

 

ガチじゃん!お前らのせいでヴェイダー卿だけ単騎で俺らを追っかけてきてるじゃん!しかもスター・デストロイヤーで艦隊編成すらしてるじゃん!!

 

前方モニターいっぱいに広がる灰色の巨艦群。その威圧感たるや、小型船に乗っている側からすれば悪夢でしかない。

 

「まぁ、これで反乱軍がデス・スター攻略する作戦の難易度はさがったな」

 

「そういう問題じゃねんだよバカァ」

 

悠々というパルパティーンに、飛んでくるレーザーを右へ左へ躱しながら叫ぶ。

 

緑色の閃光が窓の横を掠めていく。

 

船体が振動し、警告音が鳴り響く。ちなみにシールドもまだ展開できていない。ログならシールド無しでも躱せるだろうとアナキンは言っていたけど、それとこれとは話が違うんだわ!安心を俺は求めたいんだわ!

 

「ログ」

 

「なんだ!?」

 

そう考えている張本人であるアナキンが声をかけてきた。

 

「君は僕が手を入れたこのサウザンド・アドベンチャー号の性能を信用してないのかい?」

 

「そういう問題でもねえんだよ、はっ倒すぞ」

 

そうこうしているうちに、えげつない量の追撃TIE・ファイターが飛来してくるのが見える。

 

黒い宇宙を埋め尽くすような無数の機影と、あの独特なエンジン音が船内にまで響いてくる気がした。

 

拗らせたアナキンめ。確実にこちらを亡き者にするつもりだ。

 

「どうする?操縦変わろうか?」

 

そうドヤ顔で「苦手なら助けを求めてもいいんだよ?」と顔に書いているふうにアナキンはいう。

 

なんだその余裕の笑み。

 

「できらぁ!」

 

売り言葉に買い言葉である。

 

俺はすぐに船首を捻り、進路を変更。モニターに映るのは、進路上に浮かぶ無数の隕石群だ。巨大な岩塊が複雑に入り乱れ、天然の迷路を形成している。

 

エンジンはお眠だが、加速性はTIE・ファイターなど目じゃない。

 

スロットルを押し込むと、船体が唸りを上げ、一気に前へと弾けた。

 

密集した隕石群、縦横無尽に飛び交う岩塊の中へサウザンド・アドベンチャー号は、一筋の流星のように突っ込んでいった。

 

船体が激しく揺れる。前方を横切る巨大な岩塊。その隙間を縫うように船首を切り、さらに右へロール。直後、先ほどまで船がいた空間を、数十メートルはあろうかという隕石が轟音と共に通り過ぎていく。

 

普通なら悲鳴の一つでも上がりそうな状況である。

 

「楽しくなってきた」

 

しかし副操縦席でにこやかにいうアナキン。

 

この状況でテンションが上がり、目がキラキラしてるじゃねぇか。あっ、ダメだこれ。完全にポッドレースやってる時の顔だ。

 

隣を見ると、アナキンは窓の向こうを流れていく隕石群を食い入るように眺めていた。

 

そして時折、

 

「あの隙間、行ける」

「その岩、利用して左へ抜けた方が速いよ」

 

などと恐ろしいアドバイスをしてくる。

行けるね、じゃないんだわ、ぶっとばすぞ。

 

え?パルパティーン?やらかした罰としてガンナー役として2連重レーザー砲でTIE・ファイターを迎撃してもらってる。

 

銀河皇帝が銃座について敵機を撃墜してるとか絵面がヤバすぎるけど、本人は「一機落としたぞ!」と歓声を上げてるので割と楽しんでる様子だ。

 

船内通信越しに元気な声が響く。

 

なんなんだこの船。片やポッドレーサーの顔になっている元ジェダイ。片やTIE・ファイターを撃ち落としてはしゃぐ元銀河皇帝。

 

そしてその真ん中で必死に操縦している俺。

 

誰か一人くらい危機感を持ってくれ。

 

巨大隕石の二つが衝突する寸前を潜り抜けて、大小様々な隕石が入り乱れる空間を進む。すぐ背後で岩塊同士が激突し、無数の破片が四方へ飛び散った。その破片の雨の中を、サウザンド・アドベンチャー号は紙一重で駆け抜けていく。

 

後方では追跡してきたTIE・ファイターが何機も回避しきれずに衝突したが、それでもなお、後続の機体は数を武器に追ってくる。

 

「しつこいな!」

 

「彼らも仕事だからね」

 

「お前が言うな!」

 

アナキンはどこか感心したように頷いているけどさあ!

 

「ひとまず、ここまで来れば十分だろう。すこし驚かせてやるか」

 

そう呟き、俺はスロット3に割り当てられている武装を後方へと撒く。

 

カシュン、と規則的に放出されるそれは、暗い宇宙空間の中で淡い発光信号を放っていた。

 

TIE・ファイター隊のパイロットたちも最初はそれを気に留めなかった。

 

デコイか。あるいは機雷か。そんな認識だったのだろう。

 

だが放出されてからしばらく経つと、その信号は早くなり、そして眩い青白い光を放った。

 

サイズミック・チャージ。

 

青色の光と音とともに周囲の物体を波状に破壊する爆弾兵器だ。

 

青い衝撃波がリング状に広がっていく。その波は巨大隕石へと到達し、まるでガラス細工のように粉砕した。

 

砕けた岩塊がさらに周囲へ飛び散り、逃げる間もなく、その後ろを飛んでいたTIE・ファイターが巻き込まれた。

 

一機、二機、三機と爆発の閃光が次々と咲いていく。

 

激しい音と共に波状に広がったそれは、隕石ごとTIE・ファイターを粉砕し、そして砕かれた隕石はさらに後続のTIE・ファイターを巻き込んでいく。

 

まるで雪崩……いや、岩崩れか。ともかく、逃げ場のない隕石群の中では最悪の一撃だった。

 

複数のサイズミック・チャージの波に巻き込まれたTIE・ファイターの追撃部隊はほぼ壊滅。後方でいくつもの火球が咲き、やがて静寂が戻る。

 

サウザンド・アドベンチャー号は、粉砕される隕石を背に、その密集した隕石群を抜ける。

 

前方に赤褐色の惑星が姿を現した。

 

荒涼とした大地に、無数の峡谷、そして地平線の向こうに見える巨大な建造物の残骸。

 

見覚えがある……ありすぎる。

 

隣でアナキンが首を傾げる。銃座から戻ってきたパルパティーンも、窓の向こうを見つめていた。

 

そして。

 

「あっ」

 

三人同時に声が漏れた。

 

そこはかつて、クローン戦争の幕開けとなった星……ジオノーシスであった

 

 

 

 




その頃のミレニアム・ファルコン

ハン・ソロ「ぜんぜん追手がこないな」
ルーク「うまく流れたのかな?」
レイア「はやく反乱軍の基地へ向かいましょう!」
オビ=ワン(アナキン……お前なのか?※困惑)
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