アナキンの親友なって色々あって旅に出た英雄の話 作:紅乃 晴@小説アカ
ジオノーシス。
アウター・リム・テリトリーのアーカニス宙域に属した砂漠の惑星であるそこは、月と彗星の衝突によってできた巨大な小惑星帯のリングに囲まれ、地表には岩石の荒野と砂漠が広がっていた。
赤褐色の大地は生命の気配に乏しく、吹き荒ぶ乾いた風が砂塵を巻き上げるたびに、まるで惑星そのものが低く唸り声を上げているようにも思えた。空を見上げれば、空を横切る巨大な岩塊の帯が鈍い光を放ち、荒涼とした景色にさらなる圧迫感を与えている。
かつて、ジオノーシスはバトル・ドロイド製造技術の高さで有名な昆虫型知覚種族ジオノージアンの母星で、他にも過酷な環境に適応したさまざまな動物が生息していた。
地中深くまで張り巡らされた巣穴都市と、巨大な工場群から絶え間なく運び出される機械兵器の数々。その工業力は銀河でも指折りであり、分離主義勢力の軍需を支える重要拠点として繁栄を極めていた。
そして避けては通れない物語として、この星で起こった「ジオノーシスの戦い」。
その苛烈な共和国と分離主義者の戦いは、共和国の勝利に終わったが、この戦いをきっかけにクローン戦争の火ぶたが切られ、戦火は銀河系各地へと広まった。
それは銀河の歴史を決定づけた戦いだった。数多のジェダイがこの地に集い、数多のクローン兵が初めて実戦の場へと投入され、数え切れない命がこの赤い砂の上で散っていった。
この星は惑星破壊超兵器デス・スターの建造地に選ばれた。
のちの銀河帝国皇帝、ダース・シディアスは、クローン戦争が終わらないうちからデス・スター建造計画を開始し、銀河帝国創設後も、最先端の技術と大量の労働力をジオノーシスへ送り込んだ。
巨大な採掘施設と造船設備が次々と建設され、空には無数の輸送船が飛び交った。惑星全体がひとつの巨大な建造現場へと姿を変え、ジオノージアンたちは自らの故郷の空に浮かぶ未完成の超兵器を見上げながら、来る日も来る日も建造作業へと駆り出された。
そして……移動可能になったデス・スターがジオノーシスを離れた後、帝国はこの惑星を浄化と称し、デス・スターの詳細な情報の隠蔽と、建造方法について知る昆虫種族の住民をほとんど皆殺しにした悲しい過去があった。
それは浄化などという生易しいものではなかった。一つの文明そのものを歴史から消し去るための徹底した虐殺であり、かつて空を埋め尽くした羽音は消え、地下都市からは生命の気配が失われた。
この地を支配していた種族は滅び去り、残ったのはわずかな原生生物と、かつて繁栄を誇った種族が作り上げたドロイド工場の残骸が広がるばかり。
かつて数百万もの生命が暮らしていた惑星とは思えないほど静かだった。その静寂は死者の眠りのように重く、吹き抜ける風の音だけが、滅びた種族の亡霊の囁きのように荒野を渡っていく。
ダース・ヴェイダーは、デス・スターから逃げ、この地に降り立った船を探し、軌道上に旗艦であるスター・デストロイヤー「デバステーター」を置き、精鋭のストームトルーパーを乗せた降下艇を先行させ、自身もこの荒れ果てた大地に降り立った。
重い着陸音とともに降下艇のランプがゆっくりと開く。赤い砂塵が吹き込み、黒い装甲の裾を撫でて通り過ぎた。漆黒の甲冑に身を包んだ暗黒卿は、その荒涼とした光景を無言のまま見つめる。
赤色の地表と荒野には砂塵が舞っていて、管理者がいなくなったドロイド生産工場も風化し、鉄と錆の匂いが漂う。機械化された呼吸器のフィルターで浄化されていると言っても、その鉄臭い空気はヴェイダーを不快にさせるには充分だった。
ゴォ……ゴォ……。
規則的な機械呼吸だけが静寂に響く。視界の先には、かつて巨大なドロイド工場として稼働していた建造物の残骸がいくつも転がり、その無残な姿は滅びた文明の墓標にも見えた。
船を降り、護衛を分散させて自身も船の捜索に歩き出す。朽ちた鉄の残骸は、浄化したジオノージアンの墓標のように佇んでいて、風で巻き上げられた砂粒が鉄を叩く音があちこちから響いていた。
乾いた音が鳴るたびに、墓標を打ち鳴らす鐘の音のようにも聞こえる。この惑星に積み重なった死の記憶そのものが、訪れた侵入者を見つめているかのようだった。
しばらく、かつてのクローン戦争で歩んだ戦場跡地を進むと、先行させたストームトルーパーたちが倒れているのが見えた。それも数多く。倒れたストームトルーパーたちが道標のようにヴェイダーの行先に広がっていた。
まるで何者かが意図的に道を作り、自分をある場所へ誘導しているようだった。
トルーパーたちは絶命しておらず、意識を失って倒れている様子だ。ヴェイダーはその倒れたストームトルーパーたちの痕跡を辿る。
装甲には大きな損傷もなく、ブラスターの焼痕も見当たらない。だが、兵士たちは皆一様に眠るように倒れている。その不自然さに、ヴェイダーの警戒心はさらに高まった。
行き着いたのは、円状の闘技場、ペトラナキ・アリーナだった。
機械の呼吸音だけが静寂に吸い込まれていく。
ここは、ジオノージアンにとっての娯楽の場で、猛獣と知覚種族の戦い“ペトラナキ”が繰り広げられた。
ナブー侵略の10年後……このアリーナでオビ=ワンとアナキン、パドメの処刑が行われることになった。
彼らを救出するためジェダイ・マスターであるメイス・ウィンドゥ指揮下の200名からなる攻撃部隊が駆け付け、独立星系連合のバトル・ドロイドがアリーナになだれ込み、激しい戦いが始まった。
若きアナキン・スカイウォーカーが、死を覚悟しながらもなお愛する者を守ろうと剣を握り、ジェダイとして戦いに身を投じた場所でもある。
数少ないジェダイの生存者は共和国グランド・アーミーによって救出され……この戦いをきっかけにクローン戦争が始まった。
銀河を焼き尽くす戦争も、ジェダイの滅亡も、そしてダース・ヴェイダーという存在に至る長い悲劇も。
すべてはこの場所から始まった。
共和国が数千年にわたり守り続けた平和は、この赤い大地で音を立てて崩れ始めた。ジェダイは守護者から将軍となり、クローン兵は生まれながらにして戦場へ送られ、銀河全土が終わりの見えない戦火へと呑み込まれていく。
その果てに共和国は滅び、銀河帝国が誕生した。
かつて理想と希望を胸に抱いていた一人の青年もまた、この長い戦争の果てに死んだ。
ここは、血みどろのクローン戦争の出発点であった。闘技場もかなり風化していて、観客席があった高い壁は崩落し、闘技場のあちこちに瓦礫が残っている。
数万の歓声と怒号に満ちていたその場所には、今や風の音しかない。赤い砂が瓦礫の上を静かに流れ、崩れた闘技場は、まるで遠い昔に終わった戦争の墓場のように静まり返っていた。
ジェダイに切り飛ばされたドロイドも、ドロイドによって屠られたジェダイも、この風化した大地に静かに眠っているばかりだ。
もはや誰が正義で、誰が悪であったのかを語る者もいない。
死者にとって、その違いは何の意味も持たない。
ただ、この地だけが、あの日流れた無数の血と命を忘れることなく抱き続けていた。
「貴様は誰だ……アナキン・スカイウォーカーではないな?」
その闘技場で、ローブを羽織っている人影がヴェイダーを待っていた。フードをかぶっていて顔は見えない。だが、確信的に言えるのは、この人物はヴェイダーが探しているアナキン・スカイウォーカーではないと言うことだ。
人影はまるで最初からそこにいたかのように、崩れた観客席を背に静かに立っていた。
逃げる様子も、身構える様子もない。
ただ、ヴェイダーが来ることを知っていたかのように。
「ヴェイダー卿」
フードをかぶった男は振り返りながらそう呟く。顔は影に隠れていて、その素顔はよく見えない。得体の知れないフォースが辺りに漂っている。まるで歴戦のジェダイと相対したような危機感がヴェイダーの感覚をなじった。
フォースの流れは穏やかでありながら、その奥に底知れない深みを感じさせた。
ジェダイとも違う。
シスとも違う。
それでいて、長い戦いの果てに辿り着いた老練なフォースの使い手だけが持つ、静かな圧力だけが確かに存在していた。
「アナキン・スカイウォーカーはどこだ。あの忌々しい存在を今度こそ、我が手で亡き者にしなければならない」
暗黒面の力をたぎらせ、ヴェイダーは目の前にいる存在に脅しをかけるように言葉を発する。
その声は低く、重く、機械を介して発せられる無機質な響きを伴っていた。
だが、その名を口にした瞬間だけ、ヴェイダー自身も気づかぬほど僅かに、フォースが揺らいだ。
「貴様も、皇帝の威を借りた狂信者も、すべてを亡き者にしなければならない」
アナキン・スカイウォーカーはもちろん、あのデス・スターで感じた違和感を持つ存在。それらはヴェイダーにとっては未知であり、脅威とも捉えられた。故に葬り去る必要がある。ずっとそうやってきた。邪魔者は消し、憎むべきジェダイの教えを絶やし、連綿と続く怨嗟を断ち切ることを。
それがダース・ヴェイダーの生き方だった。
恐れは力で押し潰し、理解できぬものは排除する。
そうしなければならない。
そうし続けなければ、自分自身の中に沈めたものまで浮かび上がってしまう気がした。
「ヴェイダー卿、今感じているのは怒りか?それとも……戸惑いか?」
フードを被る相手は、そんな殺意と憎しみに満ちたダークサイドの力を発するダース・ヴェイダーへ、まるで世間話をするような声の軽さで言葉を投げかけてきた。
「……なに?」
警戒心のかけらもないような声だった。まるで古くからの友人に声をかけるような気やすさに、ヴェイダーもわずかに殺意を抜けさせられた。意味がないと自覚させられるような感覚だった。
この男は、自分を恐れていない。
銀河中の誰もが畏怖する暗黒卿を前にしてなお、一片の動揺すら見せない。
それどころか、どこか哀れむような響きさえ、その声音には含まれていた。
「なぜそうも動揺する、ヴェイダー卿。貴方は弱かったアナキン・スカイウォーカーを葬ったはずだ」
フードの男は距離を一定に保ちながら、円を描くように歩く。まるでこちらを見定めているような……実に不快であった。
その歩みはゆっくりとしていて、まるで獲物を追い詰めるためのものではなく、傷ついた獣を観察するかのような静けさがあった。
「ダークサイドに身を委ねた貴方は、愛する人を失い疲弊したアナキンという存在をなかったものにした」
この男は、間違いなく知っている。ダース・ヴェイダーが生まれる前のことを。かつて、まだアナキン・スカイウォーカーが生きていて、弱いまま選べず、ジェダイというまやかしに囚われていたころの存在を。
だからこそ不快だった。
その名前は、もう存在しない。
自らの手で葬り去ったはずのものだ。
それなのに、この男はまるで、その青年が今もなお目の前に立っていると言わんばかりに言葉を投げかけてくる。
「そうやって、強く、邪悪で……自分が葬るべきだった黒いドラゴンに自ら変質させた」
「その通りだ。だから私は最強の力を手にし、ジェダイを滅ぼした」
ジェダイは滅ぶべきだ。それは今も変わらない。クローン戦争を引き起こし、分離主義者との戦いに明け暮れ、そして未来を閉ざす真似をするばかりの思考停止者のあつまり。ジェダイこそ邪悪の権化だとヴェイダーは今もそう確信している。
その確信だけが、自分の歩んできた道に意味を与えていた。
それを否定すれば、残るのは焼け落ちた銀河と、取り返しのつかない喪失だけだった。
「あぁ、ジェダイは滅んでいたよ。共和国で貴方がパルパティーンに忠誠を誓ったその前から予兆はあった」
それはきっと、ナブーの戦い以前から。
ジェダイは文明に仕え、そして平和と秩序を重んじていたが、その文明が限界を超えていたのだ。たった数年の戦いで長らく続いた平和はあっけなく崩れ落ちるほどに、そのシステムは劣化し、老朽化し、そして機能不全に陥っていた。
痛みを伴わない改革ではもはや手の施しようがないほど弱り、そして崩れかけていた。クローン戦争も、ダース・シディアスによる策謀も、単なるきっかけに過ぎなかったほどに、共和国は瓦解していたのだ。
砂塵が舞う。
ヴェイダーの漆黒のマントを揺らし、フードの男のローブを揺らす。
そして二人の間には、はるか昔、この場所から始まった長い悲劇だけが、静かに横たわっていた。
「皆が皆、大事な前提を忘れたからだよ、ヴェイダー卿」
男はいう。
共和国、ジェダイ、クローン戦争。そう言った目先の出来事に囚われているから視野が狭くなると。それは手段や過程でしかあらず、視野狭窄といっても差し支えないものだ。
崩壊した共和国も、堕落したジェダイも、銀河を焼いた戦争も、すべては結果でしかない。
人は起きてしまった出来事に意味を求める。
誰が悪かったのか。何が間違っていたのか。どこで道を違えたのか。
そうして目の前の現象へ答えを求めるが、銀河というあまりにも巨大な生命の流れの前では、それらはあまりにも近視眼的な問いだった。
「貴方が恨んでいるジェダイの在り方も、いま貴方が感じている感覚も、フォースのひとつの側面にしかすぎないと言うことだ」
フォースは常に多面的だ。
あらゆる方向で存在している。
フォースは普遍であり、柔軟だ。在り方は様々あり、明確な答えなどない。数年もの間、肉体を委ねていたからこそわかる。あれは集団的な意識と言ってもいい。様々な思想や言語、文化、文明、解釈があり、そのすべてに通じて存在しているもの。
歓喜も悲嘆も、愛も憎悪も、平和も戦争も、無数の生命の想いが折り重なり、大河のように流れ続けている。
だからこそ、フォースをひとつの教義だけで縛ることはできない。
ジェダイも、シスも、その一側面を切り取って理解しようとしているに過ぎないのだから。
だからこそ、ダース・ヴェイダーの行動や、思考、なぜ暗黒面の力を行使するのか。その本質を見失ってはならない。
「そんな姿になっても、貴方は自身の信じた愛を捨てられないでいる」
その言葉でヴェイダーの歩みは止まり、呼吸もわずかに止まった。
それはほんの一瞬だった。しかし、確かに止まった。荒廃したペトラナキ・アリーナを吹き抜ける風だけが、二人の間を静かに通り過ぎていく。
「……なに?」
「貴方は自身の命になんら価値を見出していない。死ぬに死ねないから今の状況を維持しているだけだ」
パルパティーンとは別の意味で「自分の生」に興味がない。
あるのは怒りと憎しみ……途方もない後悔だ。
いまだにこんなはずじゃなかったと、訪れた結果を受け入れられず、ダース・ヴェイダーという殻に閉じこもって、押し寄せる真実から目を逸らしている。
銀河帝国を築こうが、ジェダイを滅ぼそうが、強大な暗黒面の力を手にしようが、その喪失だけは埋まらない。
死ぬこともできない。
かといって、生き直すこともできない。
ただ怒りと憎しみだけを燃料として、機械仕掛けの身体を動かし続けている。
「貴方が本当に憎んでいるのはジェダイじゃない。皇帝でもない。あの日、力が足りず……何も救えなかったアナキン・スカイウォーカーだ」
パドメを死なせ、オビ=ワンを落胆させ、守るべきだったものは手から滑り落ちた。
それはアナキンの弱さであり、その全てを打ち砕いたのはヴェイダーという身の内に巣食う邪悪の権化だと決めつけた。
わかっている。その二人は自分自身なんてことは。けど、それを認められないから、都合の悪い部分、見たくない部分をヴェイダーという化け物に背負わせた。
アナキン・スカイウォーカーという男では、とても耐えられなかったのだ。
愛する人を救えなかったことも。最も尊敬した師を裏切ったことも。自らの手で多くを壊してしまったことも。
そのすべてを受け止めるには、アナキンという人間はあまりにも脆かった。
だからこそ、全部を押し付けるための怪物が必要だった。
「黙れ……」
その声には怒りだけではないものが混じっていた。
全てを救えると信じ、突き進んだ道で全てを失っても、その救いたかった心は本物だから。
その心が耐えきれないから、ヴェイダーという化け物が必要で、それに縋っている。
まるで癒えることのない古傷を無理やり抉られた者が漏らすような、苦痛にも似た響きだった。
「アナキン・スカイウォーカーは私が殺した。私はその残骸だ」
「そう言い聞かせているだけだろう?」
「……何?」
「殺せたのなら、なぜオビ=ワンに怒る? なぜジェダイを滅ぼすことに執着する? なぜその名前に、今なお、これほど動揺する?」
葬り去ったと豪語するなら、今更固執する必要もない。過去のことだ。どうでもいい。アナキンも、オビ=ワンも。目の前で邪魔をするなら排除するだけで済む話だ。他のジェダイも一緒だ。わざわざ探し出して殺して回る必要なんかもない。だって過去のことだ。どうでもいいはずだ。
死んだ人間に怒り続ける理由はない。
失われたものに執着し続ける必要もない。
墓を暴き、その亡骸へ何度も剣を突き立てるような真似をするのは、それがまだ終わっていないからだ。
本当に終わった過去なら、人はそこまで振り返らない。
アナキンという過去を殺したのなら、無視ができるはずなのに、いまだに自分と深く繋がった相手を前にすると動揺し、苛立ち、憎しみを増長させ、そして殺すと言葉にする。
オビ=ワンという名は、いまだに胸の奥に沈めた記憶を呼び起こす。
ジェダイという存在は、かつて自分が信じていた理想と、その理想を裏切った自分自身を思い出させる。
そしてアナキン・スカイウォーカーという名前は、自分が救えなかったもの、守れなかったもの、失ってしまったもの、その全てへと繋がっている。
だから怒る。
だから憎む。
だから何度でも否定しようとする。
それは殺しきれていない証だった。
いくら棺へ閉じ込めたつもりでも、いくら墓標へ「ダース・ヴェイダー」と刻み込んだつもりでも、その亡霊は今なお胸の奥で息づいている。
忘れたいから否定する。
認めたくないから怒る。
切り捨てたいから憎む。
そのどれもが、アナキン・スカイウォーカーという存在が、完全には死んでいないことを示していた。
むしろ、最もその亡霊に囚われているのは、他の誰でもないダース・ヴェイダー自身なのだった。
「貴方はアナキンを棺に閉じ込め、その上にダース・ヴェイダーという墓標を立てただけだ」
いくら邪悪の権化であっても。暗黒面の実力者であっても。その過去を引きずり、逃れることができてない。切なさや悲しみはあっても、結果的に言えば……自分の理想と現実との差がはっきりと違っていて、それを認められずに現実から逃げているだけだ。
アナキン・スカイウォーカーは弱かった。
愛する者を救えず、理想を貫くこともできず、最後には全てを失った。
だから、その弱い自分を棺へ押し込み、二度と出てこないよう蓋を閉じた。
そして、その上へ「ダース・ヴェイダー」という名を刻み、強く、冷酷で、何ものにも揺らがない怪物であることを自らに強いた。
だが、棺へ押し込めたからといって、過去は消えない。墓標を建てたからといって、人は別人にはなれない。棺の中から聞こえてくる声を無視し続けているだけだ。
だからオビ=ワンに怒る。
だからジェダイを憎む。
だから、アナキン・スカイウォーカーという名前へこれほどまでに反応する。
「前にも、後ろにも進めなくなって、ただそこで停滞しているだけだ」
アナキン・スカイウォーカーとして死ぬことも、ダース・ヴェイダーとして生きることも、どちらも半端なまま。
だから十数年もの間、怒りと憎しみだけを燃料にして、その場へ立ち尽くしている。
その言葉を遮るように、真っ赤な光の剣が立ち上る。真っ黒なマントが靡く。
そこには純粋で明確な殺意と憎しみがあった。
荒れ果てたペトラナキ・アリーナに赤い閃光が反射し、まるで遠い昔、この地で流された血を映し出しているかのようだった。
その殺意は目の前の男だけへ向けられたものではない。
自分の内側にいる、認めたくない何かへ向けられたものでもあった。
棺の中で今なお息づいている、アナキン・スカイウォーカーという亡霊。
弱く、愚かで、それでも愛するものを救いたいと願い続けた男。
その存在を再び突きつけられたからこそ、ヴェイダーは剣を抜かずにはいられなかった。
「あの日、ムスタファーで燃え尽きたんだ。今ここにいるのは、生きてもいないし、死んでもいない……亡霊だ」
ヴェイダーはライトセーバーを構え、目の前のフードの男を必ず殺すと誓う。
それは敵を葬るための構えであると同時に、自分自身へ向けられた告発を断ち切ろうとするような姿にも見えた。
「不気味で不快で愚かな男め。私がここで葬り去ってくれる」
そうマスク越しの合成音声で告げる。もう会話をする必要はない。不快な男を殺すだけだ。
その殺意を前に、フードの男は袖からライトセーバーを取り出しスイッチを入れる。青でも緑でも紫でもない。黄色の閃光が立ち上がり、ジジッとジオノーシスの大気を焼く。
そこでヴェイダーはようやく気づいた。
「やれるものならやってみろ」
フードの闇の向こうに見えるのが、青白く輝く二つの眼光であるということを。
アナキン・パルパティーン「おめえが1番えぐい」
パルパティーン
コルサントで自分の本質を突かれた時のことを思い出してるけど、それはそれでやってることえっぐいなぁとニコニコしながら見てる
アナキン
急所を突かれて泡吹いてる(デス・スターのやらかしの罰)