【キャラ募集中】英雄(ヒーロー)戦記 ジェット・ウォッシャー! 作:カレーうどん赤星
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「明日は11時に美容室を予約してたんだった。怪人が出なければ良いなぁ」
数学の課題も無事に終わり、クラスメイトの由美子と一緒に、金曜日の帰路に着く私…ジェットウォッシャーこと、川藤閃は、信号待ちの間にスマホのカレンダーを眺めていた。
「もしかしてオータム!?良いなぁ、噂のイケメン美容師さんに切ってもらうの?」
「私も気になるけど…腕が良いかはまだ未知数だし、いつもの柿田さんにしといた」
商店街の美容室…ヘアサロン・オータム
最近、
由美子が言うには、凄いイケメンというウワサ。
「そっかぁ でも柿田さんもイケメンだよね!なんというか塩顔〜な感じで。」
「柿田さんは学生時代、バンドやってたらしいよ。カットしてもらってる時に教えてもらった」
「なんか、由美子興味あるかも〜柿田さんが歌ってるとこ めっちゃ映えると思わない?」
「うん…」
「ん?何か複雑だね」
由美子と一緒にオータムに関する雑談を交わし、期待を何倍にも膨らませながら、家路に着く。
昔の柿田さんの動画を見たら、ピエロみたいな衣装で、小学生男子のような下ネタまみれの曲を歌ってたことは黙っておいた。
由美子、下ネタきらいだし…
そして、土曜日…
「あら、閃ちゃん出かけるの?気をつけて行ってらっしゃい」
「どういう髪型にするのか、決めたのかー?閃は別嬪さんだから、何でも似合うと思うが…」
「あんまり弄らずに、前髪をちょっとふんわりさせる感じかなぁ、それじゃ、行ってきまーす!」
念の為、予約の1時間前に家を出て、ゆっくりと歩いてオータムに向かっていると…見知った顔が見えた。
綺麗なブロンドの長い髪と、あの眠たそうな表情をしている、小学生くらいの女の子は…結ちゃんだ
今日は、白くて清楚なワンピースを着ている。
この子はおととい、ぬいぐるみを操るパペットナースって魔法少女に変身して、鉄板怪人に苦戦した私を助けてくれた。
「あっ、結ちゃん、結ちゃんもこの美容室?」
「ほわぁ…閃さま、ご機嫌麗しゅうございます
はい。少しイメチェン?をしてみたく思い…」
「もしかして、近所だった?」
「はい、私もこの水菜町に住んでおりますわ。」
すごい偶然にも、そんな彼女と出会って、私は美容室の待合室に座った。
予約の時間まで、まだ時間があるな…私はここで、結ちゃんと話をすることにした。
「結ちゃん、結ちゃんはいつから魔法少女をやってるの?」
「ふわ…今から…2ヶ月ほど前ですわね。
人間界に迷い込み、力を失っていた妖精さんを見つけ、わたしの家で手当てをして…
そのお礼で、ぬいぐるみを操る魔法を授かったのですわ。」
「あの妖精さんは、今どこにいらっしゃるのでしょうか…」
そう語る結ちゃんの顔は、少し切なく見えた。
そんなこんなで、あっという間に時間は過ぎ、自分の予約時間になった。
「ほわぁ……もう少し話したかったですのに……」
「うーん……もし結ちゃんが良かったら、終わった後みかづきって名前の喫茶店で続きを話さない?そこでケーキ食べようよ。美味しいよ!」
私は、まだ話し足りなそうな結ちゃんを喫茶店に誘う。
「パフェも、ございますか…?」
「勿論あるよ!」
「ぜひ、行きましょう…」
そう言って、私は部屋の中に入っていった…
「では、今日はどうしましょうか?」
「前髪をふんわりした感じにカールさせて…この雑誌に載ってる、アイドルのユーナさん、みたいな感じで…」
私は、柿田さんに見えるよう雑誌を開き、載ってある髪型例を指差す。
その時、ふと鏡越しにもう一人の美容師…新人の利羽さんの視線が気になった。
彼は、何故か私のロッカーを見つめていたのだ。
短めの濃い緑色の髪、同じく緑の目、そして、身長は195くらいで、その割にかなり細くて、顔は整っている。
なるほど、由美子がイケメンと言うだけはある。
そう見つめていると、彼はぶつぶつと何かを話し始めた。
不審な行動に注意して聞き耳を立てると、かすかに「ヒーロー……が……」と言う言葉だけが、耳に入った。
まさか……私は、最悪の可能性を考え、平凡な頭脳を回転させる。
「柿田さん、ちょっと待ってください スマホを確認したくて……ロッカーの鍵を……」
「……ククク……こうなれば仕方ない!変身する前に倒してやる!チェンジ・モンスフォーム!」
私が椅子を立って、ロッカーを見た瞬間
利羽さんの身体が巨大化していき…肌が真っ青に染まり、牙が飛び出て、両腕が、ナイフのような金属の塊…いや、鋏!に、服が燃え、スーツのような黒い服にそれぞれ変わり、私に襲いかかってきた!
「デモンズ・シザー!」
彼は、ハサミをむき出しにして私を狙ってくる!
まずい!この速度じゃ、避ける事も変身する事もできない!
…その時だった。
ガシャーン!
美容室の窓が雷鳴のように割れて、白い何かが入ってきた。
いや…これは、ヒーローだ!
白いウサギの耳と尻尾を生やした、少年のヒーロー。
両目が赤く、髪は白いミディアムヘア、服はパーカーとズボン。
細身で華奢だが、その動作は洗練されていて迅速!
手に持った短剣で、利羽さんを突き刺した!
「グゥゥゥゥ!……いきなり、何者ですか!」
「白兎。…何?文句があるならさっさと言いなよ。
悪魔帝国所属の、秘密工作員『リッパー』さん?」
チャンスだ、隙が生まれた!
私は、怯える柿田さんに冷静に避難を促しながら、ロッカーに手をかけ、鞄を手に入れた。
鞄越しでも、変身装置『ジェットギア』の音声コマンドは作動する!
「装着!変身!ジェーット・ウォッシャー!!」
そう大きく叫ぶと、青と白を基調とした冷たい機械の装甲と、シンプルなデザインの高圧洗浄機2機が、私の身体に自動的に装着されていき、私はヒーロー・ジェットウォッシャーへと変身した。
そして、鏡が割れる音で異変を知ったのか、待合室の結ちゃんも鞄から金色の縫い針を取り出し、変身を始める。
「秘められし妖精の魔術よ、私に縫合の力を!変身、パペットナース!」
金の針が動き出し、彼女の白いワンピースが縫い変えられ…ナース服をベースに、可愛らしいフリルとポケットを追加した、薄桃色のふわふわしたファンシーなコスチュームが作り出され、結ちゃんは魔法少女パペットナースに変身した。
結ちゃんが変身した事を確認した私は、高速で逃げ続けるリッパーの場所を追う。
敵は…洗面台の近くか!
「ウォーター・バレット!」
ズバッ
私は、高圧洗浄機から水の弾を発射した。
しかし、簡単に避けられてしまう。
「キキキ……直線的な攻撃は避けやす……」
ズシャッ…!
「めんどくせぇ。」
白兎は、少し不満げな顔をして、私の攻撃を避けたリッパーに、ナイフを突き刺した。
す、凄い……
その移動速度と足音の小ささは、まるでウサギだった。
「では、これで…緊急縫合『鹿さん』!」
すかさず、パペットナースが金の針を取り出し、それを振るうと、どこからともなく布と綿が現れ、茶色の鹿の形になっていく。
ぬいぐるみの鹿は、リッパーに体当たりをした!
しかし…
「ふぅっ。」
バク宙で、これをかわされ着地される。
「……じゃあ、終わらせるか…」
ジャラッ
それを見た白兎は、片手に8本ずつ、先ほどより小さい短剣を装備し、ウサギのような跳躍力で飛ぶ!!
ザザザザッ、ズシャッ…
そして……16本のナイフを、空中から着地したリッパーに向かって投げ下ろし、リッパーは……
「うぅ……私の……野望がっ……」
少し喋った後、倒れて動かなくなった。
白兎は、倒れて動かなくなった敵を見て、少し重い表情を浮かべる。
「……」
ーーー
白兎さんの連続攻撃によってリッパーは撃破された。
けれど、私達の間には何故か、重い空気が漂っていた。
「あ、あの…白兎さん、危ない所を助けていただき、ありがとうございます。」
私がそう言うと、彼は目を細めこう言った。
「誰も守れない弱いヒーローなんている意味ある?」
……彼の言葉は、突き刺すように冷たく、それでいて本当に正しかった。
実際私は、なす術もなくリッパーにやられていただけで、何の役にも立っていなかった。
全部の戦法が後手で、直線的で、単純で、悪手だった。
だから、苦い感情が湧いてきても、何も言葉は出せなかった。
「弱さを言い訳にする奴は、本当に大切な者1人すら守れやしない。」
白兎さんは、悲しさと怒り、悲哀が混じったような顔でそう言った。
……経験が、あるのだろうか。
その言葉には、強い説得力があった。
この言葉で私の脳裏に浮かんだのは…両親や知り合い達が、とても強力な怪人の軍団に蹂躙される姿だった。
幾ら、助けてと言われても、手が伸びない、伸ばせない
…にげるしかない。
まさに悪夢のような光景だった。
そして、彼が言う通り、今の私の強さでは……
「……お前らが戦場に出ることで、守りたい人間が逆に危険に晒される。分かってるか?」
……彼の言う通り、私は弱い人間だ。
その証拠に、私は感情を抑えきれず……逆ギレをしてしまいそうだった。
「行こう、結ちゃん……」
「……待ってくださいまし!もう少し彼と話を……」
私は、そんな結ちゃんを連れてその場から立ち去った。
やっぱり結ちゃんは、私よりも大人だ…白兎さんの言葉と、ちゃんと、向き合おうとしている。
私は何から逃げたのだろうか。白兎さん?弱さと向き合う事?それとも、ぶつかり合う、事なのかな……
この胸の奥にあるのは、怒りなのか、悔しさなのか……それとも、図星を突かれた痛みなのか……
『お前らが戦場に出ることで、守りたい人間が逆に危険に晒される。分かってるか?』
彼から言われた言葉が、反響する。
白兎さんは、広域で活動しているらしい。
……だから、私が辞めたら、水菜町のヒーローは小学生の結ちゃんしか居なくなってしまう。
辞めてしまえれば簡単だけど…ただでさえ授業と被った場合の厳しさがあるのに…後輩一人に、全ての責任を押し付けて辞めることはできない。
強く、ならなくちゃ。
もっと強い力を手に入れて、彼みたいにどんなに強い怪人も一人で倒せるようになって…
それで初めて、水菜町を守る事ができるんだ。
強くなれるかどうかなんて、やってみないと分からないけれど…
強くならなくちゃ、いけないんだ。
私は強い決意を胸に…まずは、結ちゃんと一緒に喫茶みかづきに向かった。
「……行こう。まずは特訓の作戦会議もしなくちゃ、だしさ!」
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