口悪男子ノ魔女裁判   作:しがなくない

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ヤンキーとナノちゃん

昼食後、俺は佐伯と蓮見と別れて湖の方に来ていた

 

(へぇ、来たこと無かったが案外いいとこだな…落ち着きたい時にここに来るのもいいかもしれん)

 

「…あ」

 

声のした方を向くと、黒いフードを被った少女『紫藤アリサ』が木陰で座っていた

 

「…確か、紫藤か」

 

「…チッ」

 

紫藤は立ち上がってその場を離れようとする

 

「まぁ待てよ」

 

「…なんだよ」

 

俺が声をかけると、紫藤はその場で立ち止まった

 

「…ウチに何か用かよ」

 

「悪かったな、一人でいるところを邪魔して」

 

「…別に邪魔だとは思ってねぇよ」

 

「そうなのか?」

 

「そうだよ…チッ」

 

紫藤は再び木を背もたれにして座った

俺も適当な場所で座り、湖を眺めた

 

「…ここ、結構落ち着くな」

 

「あん?…そうだな」

 

「俺も落ち着きたい時はここに来てもいいか?」

 

「…別にここはウチ専用のとこじゃねぇから、好きにすればいいんじゃねぇの」

 

「そうか。なら好きにさせてもらうわ」

 

「…そうかよ」

 

そのまましばらく水辺を見てぼーっとしていた

 

「…なぁ、一つ聞いてもいいか」

 

すると、ふと紫藤が声をかけてきた

 

「ん?なんだ」

 

「お前は…」

 

紫藤は何かを言おうとしたが、そっぽむいた

 

「…いや、なんでもない」

 

「なんだよ、何か聞きたいことでもあんのか?」

 

「ねぇよ」

 

「無いわけないだろ、じゃなきゃ質問して来ないだろ」

 

「…チッ。わかったよ…お前は、その…ウチが怖くないのかって聞きたかったんだよ」

 

「お前が怖いか?いや全然」

 

「はぁ?…じゃあ、これでもか?」

 

そう言って紫藤は手から炎をだした

 

「…それがお前の魔法か?」

 

「ああ、『発火』の魔法だ。ウチの魔法ならいつでもお前を焼くことができる…これを見てでも怖くないって言えるか?」

 

「おう、怖くないぞ」

 

「っ…!」

 

紫藤は目を見開いて俺を見た

その後すぐに警戒するような眼をむけてきた

 

「…嘘だろ、それ」

 

「いんや、嘘じゃないね。むしろ俺は黒部が怖い」

 

「あん?…なんでだよ」

 

「銃持ってるからな。ちょっとトラウマなんだよ」

 

「銃が?」

 

紫藤が意外なものを見る眼でみてきた

 

「おう。その点ただの火ならそんなに怖くはないな、焚き火見てるみたいで逆に安心する」

 

「…そうかよ」

 

舌打ちしながら紫藤は炎を消した

 

「…はぁ。お前、私を見ても怖くないって…変わってるな」

 

「変わってる?そうか?」

 

「そりゃそうだろ…最初に二階堂の奴抑えるために膝裏叩くなんて…あの状況で出来ねぇだろ普通」

 

「あの殺伐とした状況はある意味慣れてるからな」

 

「慣れてるって…どんな修羅場潜り抜けてきたんだよ…」

 

「まぁそれはおいおいな」

 

俺は立ち上がった

 

「…俺はそろそろ戻る、邪魔したな」

 

「…ああ、気にすんな。…その」

 

「ん?」

 

「…なんでもねぇ」

 

「そうか。んじゃな」

 

俺は湖を後にした

 

〜〜〜

 

…ガサガサッ

 

「ん?」

 

湖から牢屋敷に戻る途中、草むらから物音がした

 

「…なんだ?」

 

様子を伺っていると、草むらの中から何かが飛び込んできた

 

「…!?」

 

そのままその何かに俺は押し倒された。

その何かの正体は、黒をモチーフとした服を着たツインテールの少女『黒部ナノカ』だった

黒部は俺を押し倒した後、すぐに体を起こして離れた

 

「…違うわね」

 

「…なーにが違うって?」

 

俺は体を起こしながら黒部に尋ねた

 

「…急に押し倒したことは謝るわ。ごめんなさい」

 

「当たり前だ、正体不明の奴に急に押し倒されたこっちの身にもなってみろ」

 

「…ごめんなさい」

 

「おう、反省してるならいい。…それで?」

 

「え?」

 

「どうして俺を押し倒したんだ?…さっき『違う』って言ってたけど、そのことか?」

 

「…信じてもらえるかわからないけど、私の魔法は『幻視』。触れたものの過去や未来を視ることができるの」

 

「へぇ、そりゃまた随分と便利な魔法だな」

 

「…でも、私はこの魔法を使いこなせていなくて…過去と未来を自由に見られるわけじゃないし、触れたとしても視れないこともあるわ」

 

「ほーん…んで?俺を押し倒した理由になってないんだが?」

 

「…あなたを押し倒した理由は、この牢屋敷の黒幕だと思ったからよ」

 

「黒幕?」

 

「ええ、私たち13人の少女の中に、男性はあなた一人…ここの黒幕としか思えないわ」

 

「…まぁ、否定はしねぇよ。確かに男は俺一人だからな」

 

「ええ、そうね。…でも、その…」

 

「…なにか視たのか?」

 

「ええ。…その、あなたの…両親のこと…」

 

「…ああ、事故か?」

 

「…あれは事故とは呼べないわ。あれは…うっ」

 

黒部は口を押さえた

 

「いや、いい。これ以上思い出すな」

 

「…ごめん、なさい…お詫びと、して。一つ、あなたに…情報を教えるわね」

 

「…なんだ?」

 

「…佐伯ミリアには、気をつけなさい」

 

「佐伯に?どうして?」

 

黒部は息を整えて、俺に向き直った

 

「…一度、彼女に触れて過去を視たのよ」

 

「おう、それで?」

 

「…あなた、彼女の魔法に何か心当たりはあるかしら?」

 

「いや全く」

 

「そう…彼女の魔法は『入れ替わり』、他人に触れると互いの人格を入れ替えることができる魔法よ」

 

「へぇ。…んで?どうしてそれが佐伯を気をつける理由になんだ?」

 

「…私が視た記憶は、彼女と何者かが入れ替わる直前の場面だったわ。何者かが彼女に魔法を使わせて、体が入れ替わった時に見えなくなったわ」

 

「・・・んで?あいつの体にはいま何者かの人格が入ってるから怪しいから気をつけろって?」

 

「そうよ」

 

「アホじゃねぇの?」

 

「…どういうことかしら」

 

「…確かにお前の魔法で佐伯が怪しいのは認める。だが、お前が視たのはその部分だけなんだろ?しかも一番怪しいところだけ視えてる…何回かやってみた上で判断するならわかるが、たった一度だけ視ただけで怪しいって思うのは判断が早すぎねぇか?」

 

「・・・確かにそうね」

 

「だろ?」

 

「ええ」

 

「…まぁ佐伯に実害が出る前に誤解が解けて良かったが…確認だが、何もしてないな?」

 

「…銃で一回脅したわ」

 

「アホぅ」

 

俺は思わず黒部にチョップした

 

「…痛いわ」

 

「当たり前だ。…あとで佐伯に謝っとけよ」

 

「…ええ」

 

「ったく…」

 

「…その、私からも一ついいかしら」

 

「なんだ?」

 

「…どうして、そこまで佐伯ミリアに肩入れしているのかしら。あなたたちはここに来てから知り合った存在のはず。なのにどうして…」

 

「あん?…友達を心配するのはそんなに変なことかよ」

 

「…友達?」

 

「おう。一緒に映画見たり、好きなもの共有したり…これだけしといて友達じゃないってんならなんだ?」

 

「…そう」

 

黒部は考える素振りを見せた

 

「…どうしたら、彼女に許してもらえるかしら」

 

「…さぁな。…まぁ、一緒に映画観ればいいんじゃないか?」

 

「仮に脅された相手に1対1になる状況を作るかしら」

 

「なら俺を呼べ、一緒に映画を観るくらいはしてやる」

 

「…そう」

 

黒部は俺に背を向けた

 

「…それじゃあ、また」

 

「…おう」

 

そう言って黒部はまた茂みの中に潜り込み、やがて姿が見えなくなった

 

「…俺ももどるかね」

 

俺も牢屋敷に戻った

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