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また遅くなりました。
リアルがマジで忙しい……。しんどいです。
ですが更新を待っている皆さんのためにも頑張ります!!
魔術の試し撃ちをした次の日からもロイドの魔術トークは弱まることはなかった。
何なら以前にも増してさらに話すようになってしまった。
おそらく魔術を撃てたことによって、魔術好きにさらに拍車がかかったのだろう。
ロイドの「次はどの魔術を撃とうかなー」というセリフは聞かないことにした。
もし次があっても絶対に参加はしない。そう絶対に。
しかし魔術トークだけならまだよかった。
問題はロイドの日頃の行動だった。
ロイドは魔術バカだ。
どんなことよりも魔術を優先する。
風呂に入ろうとしない。
一日中図書館に入り浸る。
などなど、数え出したらきりがない。
いつもロイドには世話を焼いてばかりだ。
そんな日々はとても大変で楽しくて――――
(楽しい?)
そこまで思考をめぐらせていたノヴァは驚いた。
ロイドと過ごした日々を楽しいと感じている自分に。
確かにロイドと魔術の話をするのは嫌いじゃない。
魔術について語り合える相手なんて今までは祖父以外におらず、一人で寂しく魔術の研究をする方が多かったので、話せる相手ができたのは良かった。ロイドの発想もおもしろくて楽しんでいる自分もいる。
それは本当だ。
しかし、それ以上にロイドの世話は疲れる。
魔術以外に興味のないロイドはたまにぶっ飛んだ行動をしようとするし、慣れない身の回りのお世話というのも大変だ。
なによりノヴァには「自由に生きる」という大切な信念がある。
今のこの生活は自由とは遠くかけ離れたものだ。
だから楽しいなんて考えは出てこないはずだ。
しかし、心のどこかでこの生活を楽しんでいる自分がいる。
一度そのことに気づいてしまうと、その気持ちは決して消えることはなかった。
(いや、俺にとっての幸せは自由に生きること。それ以外にはない)
―――本当に?
自分の考えを無理やり納得しようとすると、頭の中から問いかけるような声が聞こえてくる。
まるで自分の信念そのものを疑うようなその声は何度も頭の中に響いてくる。
(そう、俺の幸せはそれだけだ………。それだけの……はずだ………)
考えれば考えるほどわからなくなっていく。
自分の幸せは何なのか。
もしかすると今の生活の方が楽しいのではないか。
そんなことが頭から離れない。
その日、ノヴァは初めて、自分の信念が揺らいだ。
◆◆◆◆
そして2日後の朝
鳥のさえずりが聞こえてくる。
目を開けると最近すっかり見慣れた天井が見える。
「……起きるか」
ぼやける目をこすって体を起こす。
そこらの宿とは比べものにならないほど高級なベッドは睡眠の質を上げてくれた気がする。
最初は高価すぎて寝るのに少し緊張したのも今ではいい思い出だ。
「このベッドで寝るのも今日で最後になるかもしれないのか……」
ロイドの護衛(仮)になって一週間が経った。
つまり、お試し期間の終了日である。
しかし、ノヴァはまだ悩んでいた。
旅人に戻るのか、このままロイドの部下になるのか。
考えたが答えはまだ出なかった。
そこでロイドとの生活を振り返ることにした。
そうすればきっと考えがまとまると思ったから。
思い返せばこの一週間は、前世を含めても一番濃くて長い一週間だった。
朝から晩までずっと魔術漬け。
魔術のことについてロイドとずっと話していた。
よくもまぁ、あんなに話して飽きないものだと感心すらした。
数日前には死にかけた。
ロイドの魔術の試し撃ちの的にされて、改めてロイドは化け物だと気づいたのだ。
あのときの焦熱炎牙は今でもトラウマだ。
思い出しただけで震えてしまう。
そんなふうにロイドとの日々を振り返っていくうちに、ノヴァはある一つのことに気がついた。
「………あれ?もしかして、ロイド様との日々で楽しいのって魔術だけか?………」
いや、そんなはずはないとまた思い返してみる。
しかし、いくら思い返してみても思いつくのは世話のかかるロイドとの日々だけ。
もしかしたら本当に魔術を除いたらロイドにいいところはないかもしれない。
しかも、魔術を含めたとしても到底いい主人とは言えない。
これにはノヴァも言葉を失った。
まさかここまでひどいとは思わなかったから。
だが、これで考えは決まった。
やはりロイドの誘いは断ろう。
―――いいの?もう会えなくなるよ?
「……………」
また聞こえてくる心の声。
それはまるで自分の本心が問いかけてくるような、そんな声。
その瞬間、心がもやもやしてくる。
頭では理解していた。
ロイドの部下になるということは自分の信念を曲げることだと。
もう二度と前の旅人生活をすることはできないんだと。
しかし、それでもロイドの部下のほうが幸せだと思っている自分がいる。
なぜだろう。どう考えても辛いはずなのに。
矛盾したこの二つの思いはずっと残ったままだ。
一体どっちが自分の本音なのかわからない。
(………俺はどうしたいんだ?どっちが本音なんだ?)
寝起きで働かない頭で必死に考えるが、やはり答えは出ない。
そうやって悩み続けていると、コンコンコンと扉をノックする音が響いた。
「どうぞ」
返事をすると、入ってきたのはメイドだった。
「朝早くから失礼いたします」
「いや、大丈夫です。それでご用件は?」
「チャールズ国王様とロイド様がお呼びです。至急、王座の間に来てほしいとのことです」
「……………」
どうやら考える時間はもうないようだ。
ノヴァは何となく感じていた。
もうすぐ自分の人生を決める大事な決断をしなければならないと。
◆◆◆◆
王座の間には一週間前と同じようにチャールズが王座に座っており、その隣にはロイドが立っていた。
だが、前とは違い緊張はしていなかった。
その代わり、言葉では言い表せない謎の感情がノヴァの心をずっと渦巻いていた。
「朝早くに申し訳ないな、ノヴァ殿。ロイドが早くおぬしの返事を聞きたいそうだ」
「いえ、俺もちょうど起きたところですので大丈夫です」
「さて、ノヴァ殿。お試し期間が終わったが、おぬしの答えを聞きたい」
「はい」
「ロイドの部下になるか。旅人を続けるのか。お主はどちらを選ぶ?」
「……………」
ロイドは何も言わずにノヴァをじっと見つめている。
さすがにロイドも無理やり部下にするつもりはないらしく、ノヴァの意志を尊重するようだ。
一方、ノヴァはまだ悩んでいた。
この選択は自分の人生を決める大事な選択だとわかっているからこそ、簡単には決められなかった。
自由か ロイドか
「……………」
ノヴァはチャールズ国王の隣に立つロイドを見た。
目が合ったがロイドは何も言わずに、ただノヴァを見つめ返す。
その目はまるで自分の返答をわかっているようだった。
魔術のこととなれば周りが見えなくなるほど夢中になり、こちらの事情もお構いなしに行動する。
そんな少年。
その生き方は危なっかしいがとても自由で―――
(………あぁ、そういうことだったのか)
そこまで考えていたノヴァは理解した。
自分が抱いていた感情の正体を。
それはロイドに対する『憧れ』だった。
ロイドはめちゃくちゃだ。
魔術のためなら自分の命も厭わない。
倫理観も道徳心もかけらも持っていない。
とてもじゃないが、いい生き方とは言えない。
だが、誰よりも自由だった。
ただ自分のやりたいことのために純粋に生きている。
魔術を極めるというたった一つの信念のために人生を謳歌している。
王族という地位にすら縛られることなく生きている。
それはノヴァがしたかった生き方だった。
何にも縛られることなく、自分がしたいことのために自由に生きる。
自分が思い描いた生き方をロイドはしていた。
ノヴァはそれがどうしようもなく羨ましく、同時にロイドに憧れたのだ。
だが、ロイドはとても危ない。
このままこの生き方をしてしまえばいつか無茶をして死んでしまうだろう。
さらに最悪なのは、そんないかれた生き方をしている少年が世界を壊せるであろう力を持っていることだ。
この世のものとは思えない恐ろしい魔力を持っているこの少年を止めることができる人間が、この世界にいるだろうか?
ロイドの悪いところを咎め、間違いを指摘し、めちゃくちゃな行動を止められるストッパーになれる、そんな人間が。
もしなれるなら自分がしたい。
ロイドの前に立って導き、悪意から守る。
守る必要はないかもしれない。
それでも、少しでもロイドの人生を豊かにできるのならしたい。
信念さえ、今はどうでもよかった。
それ以上にロイドの人生を見たいという気持ちの方が強かった。
それほどまでに、ノヴァにとってロイドの存在は大きくなっていたのだ。
とてもじゃないが賢い選択とは言えないだろう。
それでも、ノヴァはこの気持ちを否定したくなかった。
この先の人生が最悪だとしても、ノヴァはロイドを選びたかった。
「俺はロイド様の部下になりたいです」
「!!」
「………理由を聞いてもいいか?」
ノヴァの返事を聞いたロイドは満面の笑みを浮かべ、チャールズは少しだけ驚いた表情をした後、やわらかい笑みをした。
「はい。ロイド様と過ごしたこの一週間で心境が変化しました。この人になら従いたいと思い、この決断をしました」
「その変化はおぬしにとって良い変化だったか?」
「はい。心からそう思います」
「それは良かった。ではもう一つ問おう。おぬしは一生ロイドに仕えると誓えるか?」
「はい。俺はロイド様に一生仕えるとここに誓います」
即答だった。
一瞬の間もなく、ノヴァは答えた。
チャールズは少しだけ驚いたが、ノヴァの覚悟をより感じることができて微笑んだ。
これなら自分の息子を心置きなく任せることができる。
「ではノヴァ・レイヴン。今からおぬしをロイドの護衛兼魔術講師に任命する」
「はっ!!」
「さて、任命も済んだことだ。後は二人でゆっくり話すとよい」
「わかりました!!それじゃ、ノヴァ、早く俺の部屋に行こう!!」
「ちょ、ロイド様、あんまり引っ張んないでください」
ノヴァの返事も聞かずにロイドはノヴァの手を掴み、ぐいぐい引っ張って王座の間を出ていった。
引っ張られていったノヴァの顔には、どこか嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
◆◆◆◆
ロイドがノヴァを連れていった場所はもちろんロイドの部屋だ。
というかノヴァはお試し期間中はここか、城の図書館に居るのがほとんどだった。
「では改めまして。今日からあなたの護衛兼魔術講師になりました。ノヴァ・レイヴンです」
ロイドの前に跪き、目線を合わせてそう言うと、ロイドは嬉しそうに頷くとスッと手を差し出してきた。
「あぁ、これからよろしくなノヴァ‼︎」
「はい」
差し出された手を握るとロイドは少しだけ握る力を強くした。
自分よりずっと小さいその手からは考えられないほど恐ろしい魔力が感じ取れる。
だが恐怖はもうなかった。
逆に守らなければとより強く思った。
握手を終えると、ロイドがニマニマと笑みを浮かべる。
「それじゃ、魔術についての議論だ!!」
「またですか?」
「当たり前だろ。昨日の風系統の2章の話がまだ途中だ」
ロイドはそう言うと、本棚から風系統魔術の魔術書を取り出して椅子に座る。
昨日から何も変わらないその姿にノヴァは苦笑いを浮かべた。
しかし、この決してぶれることがない姿にノヴァは憧れたのだ。
「ほら、早く早く!!」
「そう急がなくても魔術書は逃げませんよ」
そう言ってロイドの隣に腰を下ろし、魔術書を覗き込んだ。
そこからマシンガンのように言葉を出すロイドの魔術トークが始まった。
ノヴァはそれを聞きながら、楽しそうにしゃべるロイドを見て思う。
これから先の人生、何が起こるかわからない。
ただ、一つわかることがあるとするなら。
ロイドがいるので退屈な人生を送ることはないだろう。
補足
ノヴァは人の頼みを断れない性格をしています。
そのせいで、前世では同僚や上司からいいように仕事を押し付けられていました。
その結果、過労死をしてしまいました。
転生してからは前よりも断るようになりましたが、それでも簡単に治せるようなものではなく、今でも頼まれるとしぶしぶ引き受けてしまいます。
良く言うと優しい。悪く言うと都合のいい奴。
今回で前日譚はおしまいです。
次回は筆休めでちょっとした小話を載せます。
そのあとに原作開始です。
どうでもいいかもしれませんが、なぜか9月19日のアクセスが多かったんですよね。
投稿してないのになんでだろう?
わかる方いたら感想で教えてくれると嬉しいです。