第七王子の護衛は胃が痛い   作:波止場鐸樹

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第3話 オリジナル魔術を創ります

ノヴァが家に帰るとすでに晩ご飯ができていて、父と母が帰りを待っていた。

母は自分の顔を見た途端抱き着いてきた。

 

「おかえりなさいのぎゅ~♡」

 

「母さん離れて、暑い」

 

「いいじゃない。3時間も離れてたんだから」

 

「3時間しか離れてないよ」

 

そんなやり取りを続けた後に全員でご飯を食べる。

その日あったことを話し合い笑う。そんな平和な時間がノヴァは好きだった。

前世ではあまり出来なかった家族団欒ができるから。

そのあとはお風呂に入り、自分の部屋で過ごす。

 

「さてと……始めるか」

 

そう呟きながら祖父の家からもらってきた魔術書の一冊「空間系統魔術」を机の上に置き開く。

そして祖父の家での出来事を思い出す。

 

魔術の勉強はノヴァにとってとても楽しいものだった。

もともと物覚えがいいのもあるが、前世では漫画オタクだったノヴァにとっては、魔術書は漫画の裏設定やガイドブックを読んでいるのと同じような感覚で読むことができたので、魔術の基礎をはやく覚えることができた。

 

そんなノヴァが今やろうとしているのは、完全なオリジナル魔術をつくることだ。

なぜそんなことをしようとしているのか、それはノヴァの前世が関係している。

 

前世のノヴァは漫画オタクだった。アクションにファンタジーやラブコメ、ミステリーまでたくさんのジャンルのものを読んでいた。

その中でも特にアクション漫画は大好きだった。

 

キャラクターたちのダイナミックな作画で描かれるバトルや、仲間との熱い絆、そして何よりバトルをさらに面白くする特殊能力。

そんな漫画大好きなノヴァが特に夢中になったキャラクターがいた。

 

そのキャラクターは重力を自由自在に操り、敵を圧倒しながら戦い、その漫画では常に圧倒的な実力を誇っていた。その姿に当時のノヴァは夢中になっていた。

そして魔法があると知ったとき真っ先に考えたのは、自分もあんな風に重力を操ることができるかもしれない、だった。

しかし、ここで一つの問題が出てきてしまった。

 

「まさか重力を操る魔術が無いとは……」

 

そう、この世界には、火、水、風、土、樹、治癒、空間など様々な魔術が存在するが重力を操る魔術は存在しない。

これを知ったときノヴァは夢が一つ消えたと落ち込んだ。

しかし空間系統魔術の魔術書を見たときある考えが浮かんだ。

 

―――じゃあ自分で創ればいいんじゃないかと。

 

この世界にないなら、自分が創ればいい。

誰も思いつかないなら、自分が形にすればいい。

そんな結論に至った。

 

そんな無謀なことをするには空間系統魔術は必要だった。

重力を操るということは、空間を歪めて操ることでもある。

つまり空間系統魔術を覚えることは重力を操る魔術をつくるうえで基礎になるとノヴァは考えた。

 

「よし、やるぞ」

 

再度、気合を入れてノヴァは魔術書を読んでいく。

気になるところには線を引いたり、使えそうなところはノートに書いていく。

 

「ここの術式は使えるかな?」

「いや、やっぱりここのほうが……」

 

そんなことを呟きながらノートに書いては消しを繰り返す。

その日、ノヴァは寝るのも忘れて研究をつづけた。

 

◆◆◆◆

 

 

その日からノヴァの魔術の研究が始まった。

 

「kukanyonejirero……ここの術式は使えそうだな」

 

ある時は魔術書を読んで魔術の理解を深めて

 

「hinoseireiyowarenitikarawokasitamae」

「できた‼炎烈火球‼」

 

ある時は実際に魔術を放ち自身の実力を高め

 

「じいちゃーん、相談があるんだけど……」

 

「おう、なんだ?」

 

「ここがよくわかんないんだけど」

 

「あぁ、ここはなぁ……」

 

ある時は、祖父に相談してアドバイスをもらい

 

「あのーすいません。あなたって冒険者ですか?」

 

「ん?そうだけど……何かようかい?」

 

「魔術書を持ってたら譲ってくれませんか?もちろん、お金は払います」

 

「別にいいけど……君が使うのかい?」

 

「はい、魔術が好きなんです」

 

「そっか、頑張ってね。はいコレ、水系統の魔術書だよ」

 

「ありがとうございます‼」

 

ある時は町に訪れる冒険者から魔術書をもらったり*1

魔術を創るために毎日、いろいろなことをした。

 

仮説を立てて、検証して、失敗して、改良して、それを繰り返す。

何度も失敗してもノヴァは諦めなかった。むしろ楽しんでいた。

夢を叶えたいという純粋な思いのままノヴァは魔術の研究を続けていった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

―――5年後

 

「できた……、やっと完成した」

 

そう呟くのは10歳になったノヴァ。

身長は伸びて、幼さの中にも成長が見えた。

 

ノヴァの目の前には大量に積みあがった魔術書と、術式で埋め尽くされた紙やノートが机の上に埋め尽くされていた。

この机の上にあるのはノヴァが5年間で魔術を創るために築き上げた努力の結晶。

大変ではあったがそれでもこの5年間は楽しかった。

そして今、その5年の成果が実を結ぼうとしていた。

 

「計算ではうまくいくはずだ。頼む、うまくいってくれ」

 

そう言いながら机の上に置いてあった一つの魔術書に右手を前に突き出す。

そして静かに詠唱を唱え始める。

 

「JUURYOKUYOWARENISITAGAITAMAE」

 

そう唱えると周囲の空気が震え始める。

見えない何かに干渉しているようなそんな不思議な感覚がする。

 

瞬間

魔術書が宙に浮かび上がる。

 

「…………ッ‼」

 

嬉しすぎて声が出そうになるが、なんとか抑える。

まだ成功したとは限らない。

 

右手を右に動かす。

魔術書も右に動く。

次は左に動かす。

魔術書も左に動く。

最後に右手を下に叩き付けるように動かす。

すると、魔術書の重力が増加して落下、床にめり込む。

 

「………成功だ」

 

ノヴァは笑みを浮かべながら呟いた。

 

魔術の研究を始めて5年。長かった。

しかし、その歳月は無駄ではなかった。

この瞬間、ノヴァは夢を叶えたのだ。それも前世からの夢を。

 

それを改めて実感したノヴァは徐々に喜びが湧いてくる。

そして、ガッツポーズをして思いっきり叫んだ。

 

「よっしゃーーーーー!」

 

数分の間、飛び跳ねながら喜んでいたが、ふと我に返る。

 

「……いや、ちゃんと記録しないと」

 

いつまでもこうしてられないと興奮を抑えて机の上にあるノートを開いてこのことを記録する。

今使った術式やその効果、課題点などを書いていく。

 

「そうだ、この魔術の名前を考えないと」

 

この魔術はノヴァが開発した完全オリジナル魔術なので、ノヴァに命名権がある。

どのような名前にしようかとノヴァは悩む。

 

「まぁ、シンプルに”重力系統魔術”でいっか」

 

そう呟きながらノートにその名を書きこんでいく。

重力を操る新しい魔術

重力系統魔術

その第一歩が、今この瞬間に刻まれた。

 

*1:
魔術書は貴重なもので、ノヴァの街には売っていない

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