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この度、☆9評価100件&お気に入り登録3000件突破&UA100,000件突破しました。
これもいつも読んでくれている皆さんのおかげです。本当にありがとうございます‼
更新が遅れてしまい申し訳ありません。次はもっと早く上げたいですが、リアルが忙しくてまた長くなってしまいそうです。ですがなんとかしますので、どうかよろしくお願いします。
前回の感想で、「ロイドは仲間を大切にするからこんなことしない」的なコメントを頂きました。
ロイドは部下を大事にするのと同時に、結構な信頼していると思います。
ロイドはノヴァと過ごした4日間で、ノヴァが自分の魔術トークについていけることや、重力系統魔術を開発したというので、ノヴァを自分の魔術をくらっても大丈夫だと考えるぐらいには信頼しています。
なので魔術の実験に誘いました。
これは僕の解釈ですので、気に入らなかった方はブラウザバックをお願いします。
(やべー。完全にミスったー)
サルーム王国第七王子、ロイド=ディ=サルームは焦っていた。
久しぶりに魔術が試し撃ちできたこと、初めて魔術で遊べる相手ができたこと。それによりテンションが上がりすぎて、焦熱炎牙の威力調整に失敗した。
(これはマズい……)
焦熱炎牙は火系統の最上位魔術だ。
その威力は数ある魔術の中でもトップクラスに高い。
ロイドが加減せずに撃てばそれは常識の範囲外の威力になる。
そんなものをノヴァに当ててしまった。
ノヴァはレベルの高い魔術師だ。死にはしないだろう。
だが瀕死の重傷を負っていてもおかしくない。
(人に大けがを負わせたなんて洒落にならないぞ)
急いでノヴァの様子を確認しようと飛翔で爆発地点へと近寄る。
魔力探知でノヴァがどこにいるのかはすぐにわかる。
煙幕の中を迷いなく進んでいく。
「ノヴァ、大丈夫か……⁉」
その光景を見てロイドは驚いた。
そこにいたのは、肩で息をしながら大量の汗を流しているノヴァがいた。
しかしロイドが驚いたのはそこではなかった。
ノヴァはかすり傷一つも負っていなかったのだ。
それどころか、服にも汚れ一つない。
(俺の手加減なしの焦熱炎牙を防いだのか?)
これにはロイドも驚きを隠せなかった。
自分の放つ魔術がとんでもないことはロイド自身が一番理解していた。
先ほどの実験でノヴァの魔力障壁は自分の焦熱炎牙に耐えられるほどの強度がないのはわかっている。
どうやって防いだのか見当もつかない。
一方でノヴァ自身も驚いていた。
(危なかった………。マジで三途の川が見えた)
ノヴァがやったのはいたって単純、重力を撃ち出したのだ。
名前は《
重力を集めて球状にして放つ、新しい重力系統魔術。
しかし言うは易く行うは難し。
これはミリ単位での魔力出力の調整と繊細な魔力操作、さらに大量の消費魔力が求められる。
しかも、これはノヴァが頭の中で考えていただけの想像上の技術で一度も実験もされておらず、術式も作られていなかった。
それを土壇場の数秒で術式を一から構築し、一切の誤差もなく撃ってみせた。
(運がよかった。もし何か一つでも違ったら死んでいた)
奇跡の二文字がノヴァの頭に浮かんだ。
しかしこれは奇跡などではない。
人間は普段80%程度の力しか出ないようにリミッターがかけられている。
100%の力を出すとその力に耐えることができずに自壊してしまうからだ。
しかし、人間はごくまれにそのリミッターが外れてしまうことがある。
それは危機的状況に陥った時。
いわゆる火事場の馬鹿力というものである。
先程のノヴァがまさにそれだ。
ノヴァは目の前に焦熱炎牙が見えたとき自分の死を悟った。
そのとき脳のリミッターは外れ本来ならありえないほどの脳の処理速度を実行し、あの短い時間で術式化と発動を行うことができた。
だが重い代償もある。
(クッソ、頭痛が尋常じゃないくらいひどい。疲労感も半端じゃない)
今まで感じたことがないような頭痛や全身を襲う強烈な疲労感、さらには耳鳴りまでしてきた。
リミッターを外したことによる反動はノヴァの体を限界以上に追い込んだ。
(まぁ、死ぬよりはマシか……)
とりあえず今は、自分が生きていることに安堵する。
だがそんなノヴァの事情などお構いなしにロイドは話かけてくる。
「なぁなぁ、俺の焦熱炎牙どうやって防いだんだ!!」
「……すいま……せんが………答える…元気が………ないです……」
「あぁ、それもそうか。待ってろ、今治すからな」
「………?」
いったい何をしようとしているのか分からず、聞こうとするがそれより早くロイドはノヴァに触り魔術を発動した。
その瞬間、今まで感じていた頭痛や疲労感、そのすべてが一瞬で消えた。
「これでよし」
「ロイド様……今のはまさか治癒系統魔術ですか?」
「うん」
治癒系統魔術
文字通り傷を治し癒すことに特化した魔術だ。
とても便利な魔術だが、そのすべての術はかなりの上位魔術で気軽に習得できるようなものではない。
(まぁ、ロイド様だからな。別におかしくない)
だが、この4日でロイドが自分の常識の上を行く相手だということは理解している。
このくらいのことではもうノヴァは驚かなくなっていた。
(慣れって怖いな………)
「ほら、治ったならどうやって防いだのか教えてよ」
「………はい」
相変わらず魔術バカだなと思いつつ説明を始める。
「まず、ロイド様の焦熱炎牙を防いだのは新しい重力魔術の《天穹・烈》です」
「それはどんな効果なんだ?」
「簡単に言うと、重力を球状に圧縮してそれを撃つ魔術です」
「それはすごく興味深いな!!」
鼻息を荒くして興奮するロイド。
やはり魔術のことになると、どこかおかしくなってしまうらしい。
「詠唱はどんなの?」
「あー……これ詠唱がいらないんですよね」
「え」
魔術とは通常、詠唱を行い発動する。
一部の例外はあるものの、ほぼすべての魔術には詠唱が必要だ。
魔術の詠唱というものは魔術師にとって最大の弱点だ。
詠唱により隙ができてしまったり、喋れなくされるだけで魔術が撃てなくなってしまう。
だがこの魔術はそのデメリットがない。
無詠唱というのはそれだけで魔術師にとって大きな意味を持つ。
「どうやってそんなこと……もしかして制約術式か?」
「はい、そうです」
制約術式とは、何かを縛ることで魔術を強化したり簡易化するものである。
天穹・烈はこの制約術式を使うことで、無詠唱を成立することができた。
「まぁその分、消費魔力量が多くなったり、出力調整と操作精度が上がるので、使い勝手はあんまりよくないです」
「制約術式にそんな使い方が……すごいなノヴァ!!」
話を聞いたロイドは目を輝かせた。
制約術式は知っていたが、このような使い方は思いつかなかったらしい。
さらに新しい重力魔術も見ることができてロイドのテンションは限界突破していた。
そのせいか今日、何度目かわからない頭のおかしいお願いをされた。
「なぁ!!その魔術、俺に向かって撃ってくれ」
「………わかりました」
「やったー!!」
ロイドは飛び跳ねながら喜ぶ。
そんなロイドを見てノヴァはため息をついた。
ロイドのお願いは異常だ。
魔術を自分にぶつけてくれ、なんていうのは傍から見たれば自殺志願者と同じだからだ。
しかし、こんなおかしなお願いにもノヴァは驚かなくなっていた。
いや、驚く元気がなかった。
今さっきまで死ぬかもしれないという状況に置かれていたり、魔術の使い過ぎでノヴァは精神的に疲れていた。
いつもなら何か小言を言うが、今はそんな元気もなかった。
「じゃあ俺が合図したら撃ってくれ」
そう言ってロイドが少し距離をとって、魔術を受けれるようにする。
それを見たノヴァも魔力を高めて天穹・烈を発動できるようにする。
「ノヴァー、撃っていいぞー」
「了解です」
ロイドの返事を聞いて右手を前に出して天穹・烈を発動する。
すると掌の部分が球状に歪み始める。
天穹・烈は重力を圧縮することによって空間が歪んでしまうのだ。
出力を調整してロイドに向かって撃つ。
天穹・烈は真っ直ぐロイドに向かって飛んでいく。
そしてロイドはそれを障壁で防ぐことなく身体で受けた。
「…………は?」
それを見たノヴァは少しの間、呆然とする。
ノヴァはロイドが魔術を撃ってくれと言ったのは魔力障壁の強度を確認するために頼んだと思っていたのだ。
まさか障壁を張らないとは思ってもいなかった。
「ろ、ロイド様‼︎大丈夫ですか⁉」
気を取り直すと慌ててロイドに駆け寄る。
見たところ大きな怪我はない。
しかし口から出血をしている。
内臓が傷ついてるかもしれないと慌てる。
だが当の本人は目を輝かせながら早口でしゃべり始める。
「すごいな!!まるで見えない岩をぶつけられたようだ‼しかも重力だから目で見ることができない!!これを無詠唱で発動できるなんて……。一体どんな術式なんだ!!」
「ロイド様、お怪我の方は………」
「大丈夫だ。後で治すよ」
「そういう問題じゃありません」
「問題ないって、別に死ぬわけじゃないんだし」
「だからそういことじゃ……」
「それよりどんな術式化教えて―――」
「ロイド様」
いつものテンションでロイドが話すとノヴァから聞いたことがない鋭い声がとんできた。
その剣幕に思わずビクッとするロイド。
顔をみると恐ろしいほどの無表情だ。
「な、なに?」
恐る恐る声をかける。
ノヴァは表情を一切変えずに口を開いた。
「正座」
「え?」
「正座してください」
「なんで?」
「いいからしてください」
「だからなんで」
「はやく」
「でも下は岩だらけ………」
「正座」
「…………はい」
ノヴァの圧力に負けておとなしく正座をする。
砂利が少し食い込んで痛いが我慢する。
ロイドはノヴァを見るとやはり無表情で、目にハイライトがなく少し怖い。
これから何をされるのかと不思議に思っているとノヴァ喋り始めた。
「ロイド様」
「はい……」
「なんで魔力障壁を張らずに天穹・烈を受けたんですか」
「そ、それは………」
「それは?」
「効果を自分の体で知りたかったから」
「…………は?」
「魔術の効果を知るのは生身で体験するのが一番だから」
「…………………」
ノヴァは言葉が出なかった。
ロイドが魔術バカなのは知っていたが、ここまで重症とは思っていなかった。
魔術はとても危険なものだ。
使い方を少しでも間違えた人を殺してしまう。
それを嬉々として受けにいくなど頭がおかしいだろう。
今回も威力が少しでも高かったらとんでもない傷を負っていたかもしれない。
「いいですかロイド様。魔術はとっても危険なものなんです」
「わ、わかってるよ」
「いいえ、わかってません。わかっていたら、あんな危険なことしません」
ノヴァの声がさらに低くなる。
「俺は治癒系統魔術が使えるから傷がすぐ治せる。あのくらいならへっちゃらだ」
「そういう問題じゃありません」
より厳しい声を出してロイドをしかる。
こんな生き方をしていたらロイドはいずれ死んでしまうだろう。
そうならないためにもロイドの秘密を知っている自分が叱るしかない。
「確かにあなたは人知を超えた力を持っています。その力があれば死ぬことなんてないでしょう」
「だったら………」
「ですが、それでもあなたは人間なんです。首を切られたり、頭をつぶされたりしたら死んでしまいます」
「…………」
「ロイド様の魔術を愛する気持ちは理解しています」
ノヴァの声が少しだけ柔らかくなる。
「ですが、自分をもっと大切にしてください。あなたが傷つくことで悲しむ人がいるんです」
「…………」
「わかったら、もうこんなことしないでくださいよ」
「……………はい」
「よし」
ものすごく不満そうな顔をしながらもロイドは頷いた。
それを見てノヴァも安心する。
とりあえずは納得してくれたらしい。
「やっと終わった………」
正座の体制から立ち上がったロイドは足をプルプルさせていた。
その姿を見たノヴァは思わず笑いそうになるが必死にこらえる。
そんなときだった。
「ふぁ………」
ロイドが大きなあくびをする。
それを見て胸ポケットの時計を取り出して確認すると深夜の3時を示している。
ロイドに声をかける。
「ロイド様、これ以上は明日に響きます。帰りましょう」
「えぇ~~もうちょっと遊ぼうよ~」
ロイドはそう言ってねだるが、すでにうとうとし始めている。
「そんなこと言って、ロイド様も限界じゃないですか」
「だいじょうぶだ………。まだ……できる………」
「はいはい。帰りますよ」
「まだ………」
そう言ったのを最後にロイドはその場で寝てしまった。
「えっ………ロイド様?」
慌てて受け止めると、スース―と寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ている。
その顔は年相応の5歳の少年のかわいらしさが浮かんでいた。
それを見ると思わず頬を緩めた。
「黙ってるとかわいいんだけどな………」
そんなことを呟きながら、ノヴァはロイドをおんぶする。
背中からほんのりと温かさが伝わってくる。
そういえば、前世も含めて子供をおんぶするのは初めてだ。
そんなことを考えてロイドを支え治す。
安定したのを確認すると、落とさないように気を付けながら歩き出す。
月明かりに照らされた荒野を一人の少年を背負って歩く。
その姿はまるで、年の離れた弟の世話をする兄のようだった。
補足・説明
皆さお気づきですしょうが一応言っておくと、ノヴァは銀世界を発動しました。
しかも少し特殊な銀世界です。
ただ、とても不安定で任意につかるようなものではありません。
重力を圧縮して、それを相手にぶつける魔術。
見えなくはないが、ほとんど透明なので目視するのはとても困難。
威力は込めた魔力量によって変わるが、今のノヴァが撃てる最高威力はロイドの障壁を4枚割ることができる。