もしもかぐやにママがいたら 作:稚拙者
朝目が覚めた私は髪を整え、かぐやのお母さんが眠っている寝室に向かった。
「ご迷惑をおかけしました…。」
寝室に入ると既に起きていたらしいかぐやのお母さんから謝罪される。
「え、全然気にしないでください、それよりも体は大丈夫ですか?」
「はい、既に損傷した部分は修復されましたので。」
体に異変はなさそうで安心した
「よかったです、ここで自己紹介もなんですのでリビングに案内します。」
「ありがとうございます」
所作のひとつひとつが綺麗で、動きに余裕が感じられる、うちの悪童*1たちとは少し違うみたい?
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「ママ!」
リビングに入ると少し遅れて起きたかぐやが駆け寄ってきた。
「かぐや、心配をかけましたね。」
「大丈夫ってわかってたけどちょっと怖かった…」
「申し訳ありません」
かぐやが抱きつき、それに応えるように腕を背中に回して抱きしめ返していた。
「あれ、ヤチヨは?」
ふとここにヤチヨがいないことに気づいた。あんなに心配していたのだからてっきりここに来ているのかと思ったんだけど…
「あれ、ヤチヨ?さっきまでいたのに……あ、ここだ」
「ピッ」
かぐやが流しの引き出しを開けると中にヤチヨがすっぽり収まっていた。
「………、かぐや?」
「うっ、お母さん…、体は大丈夫?」
「…っ、ええ、体はもう大丈夫よ、それよりも…。」
お母さんはヤチヨに近づいてその体を目一杯抱きしめる
「ごめんなさい、あなたを助けてあげられなくて本当にごめんなさい。」
「8000年も、辛い思いをさせてしまいました。」
まさか、かぐやのお母さんがかぐやの8000年のことを知っていたなんて、
「お母さん、私ももう大丈夫、お母さんに責任があるだなんて少しも思ってないよ。」
「ちゃんとハッピーエンドまでたどり着いたよ。」
「ええ…、そうですね。」
かぐやの8000年をどうして知っているのか、それはこれから聞こう。
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「すみません、見苦しい姿をお見せしてしまいました。」
涙を拭き落ち着いた様なので、私たちは椅子に座って自己紹介をする。
「申し遅れました、私は月からやってまいりました姫、私自身を識別する名を持っていないためどうか『姫さん』とお呼びください。」
「やっぱり識別名がないんですね」
「はい、申し訳ありません。月では姫という名称で通ってしまうため私個人を特定する名を持っていないのです。」
「そうなんだよねぇ、月って名前がなくて個体の型で呼ばれちゃうから教えれる名前がないんだよね」
ヤチヨが姫さんの言葉に同意する
やっぱりそうだったんだ、かぐやが振ってきた時も名前がなさそうだったけど姫でつたわっちゃうんだ、
「ですが通り名でよろしければ昔地球に来たときの名がございます」
「え、姫さんはこれまでに地球に来たことがあるんですか?」
「はい、仕事の引き継ぎさえ終わらせていれば数十年は他の星に行くことができます。」
「あぁ、なるほど」
すごい、今まで可能性の域だった疑問がどんどん確定したものになっていく。
「それで、地球に来たときはなんて呼ばれていたんですか?」
「かぐや姫と呼ばれておりました。」
「「「え?」」」
かぐやとヤチヨも驚いて固まってしまっている。まって、てか今ものすごい瞬間に立ち会ってる気がする。
「かぐやと同じ?」
「ええ、通り名ではありますが同じになりますね。」
いや、多分偶然じゃないと思う。
「もしかして姫さんは竹取物語の?」
「はい、私ですね。」
あぁ、やっぱりそうだったか。
「おじいさんの名前も求婚を申し込んだ貴公子も一致しています。」
「それにおそらくこの文を書いた人物についても目星はつきます。」
すごい、日本の文学史の謎が一つ解けちゃいそう。
「竹取物語はヤチヨの話が伝わってたと思ってたけどそっか、お母さんのことだったんだ。」
「かぐやの名前はママが元だっていろは言ってた!やったぁ!ママと一緒!」
ヤチヨも納得し、かぐやは大はしゃぎしてる。
「姫さんのことは大体わかりました、次は私の番ですね。」
「私は酒寄彩葉と言います。酒寄研究所の所長をしていて、娘さんの肉体、YG型およびKG型のアバターボディーの設計開発に携わっています。」
「えぇ、よく知っています。かぐやの体を作ってくれて本当にありがとう。」
姫さんは裏表のない笑顔で私に感謝の言葉を伝えてくれた。この人がどんな人なのかはもう十分にわかった。
だから聞かなきゃならない
「それでここから本題なのですが、どうして姫さんはかぐやの8000年を知っているんですか?」
私の質問に姫さんの表情が少し曇る。
「ええ、嘘偽りなく全てお話しします」
「私が先ほど言ったことを覚えていますか?」
さっきとは竹取物語のことだろう
「はい、覚えてます昔地球に来ていて生活をしていたんでしたよね?」
「はい、その時にわたしは不死と呼ばれる者を見かけたのです」
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あれは私が地球に着いてまもない頃
私はおじいさんの竹編の商売についていきたいと駄々をこね、初めておじいさんの家を出ました。
おじいさんの商売の邪魔はしたくなかった私はおじいさんの目が届く範囲で色々と見て回りました。
その時私はその村で奇妙なものを見ました。
そう呼ばれていた小さなウミウシという生物、どうやら寝ていた様で動くところは見れなかったものの私にはその正体がわかりました。
私以外の月から離れている姫、型やコードが姫を識別するためのものの法則と一致していたのです。
その時は
「月はつまらないからここに遊びに来たのでしょうか」
「休暇中に同僚に会うのは避けたいでしょう」
なんて思って目が覚めない内にその場から立ち去り、そのまま竹取物語の結末へと進んでいきました。
月に戻り千年は経った頃、今から約二十年前私の下に一人の姫、後のかぐやが連れてこられました。
私はかぐやの教育係兼育ての親としての責務を与えられ、かぐやに月や仕事について教えました。
わからないこと、知りたいことを次々と聞き吸収していくかぐやと接する内に、次第に私には母性が芽生えました。
そして私はかぐやと私だけの呼び名をつけようと許可を取り、かぐやのデータの奥底に書かれたコードに目を向け。
あの日の記憶を思い出しました。
過去、千年以上前に地球で出会ったあの不死と呼ばれた姫
今まで姫と呼んできた者の識別コード
その2つが完全に繋がった。
私はその日何も手につかなかった。
ペンを持つはずの手は震え、体を構成する電子回路にエラーが何度も発生しました。
どうしてかぐやがあんな姿で、月人でもそう行わない、輪廻で縛られている私たちが早々できるものでない時間跳躍を。
「まさか、そういう運命なのだと?」
輪廻に縛られている私たちはその輪から外れることはできない。
過去を変えるということは未来を変えるということ。
かぐやはいつしか過去に跳ぶことが決定づけられているということ。
目的はわからない、でも私は親として知る権利がある。
だから私はそれを知るため、もと光る竹に乗り込み過去1000年前の地球に飛びました。
私たち姫はもと光る竹に個人のすべてのデータが収納されています。かぐやがいるならもと光る竹もあることは明白。
1000年前の地球に飛んだ私はかぐやのもと光る竹を探しました。
でも、それは難航を極めました。
先も言った通り私たちは輪廻に干渉できない。
それは過去の事象に干渉するための肉体を持てないということ。
人に姿を見せることもできない、何か書く手もない、声を出す声帯もない。
私は一人でなににも頼ることができません。
ですが、知らなくては。親として、あの子の母親として。
その想いだけで私は何十年とかけ日本中を探し回りました。
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「ようやく見つけました。」
かぐやのもと光る竹は正倉院と呼ばれる日本の天皇の宝物庫に厳重に保管されていました。
「やはりそうでしたか」
もと光る竹はそれは酷い有様で、表面は傷だらけ、内部の損傷も激しい、今使える機能を全て自身の体の維持に使っている状態でした。
月にも帰れず、体の維持に手一杯、運命とは、輪廻とはこうも残酷なのですか。
だがこうもしてられない、私はかぐやの真意を知るためもと光る竹に私自身を接続し情報の転送を行いました。
流れてくるかぐやの記憶、
私と出会ったあの日のこと。
仕事に嫌気がさし、月から逃げ出したこと。
地球で彩葉という少女と出会い、いろんなこと学び経験したことでの成長
月への強制送還
彩葉の月への歌
引き継ぎ資料の作成
地球への帰還に、その道中での隕石衝突
もと光る竹跳躍中のエラーによる8000年前への時間跳躍
一人なってしまった孤独に絶望
私はその全てをもと光る竹から受け取りました。
助けなくては
私の頭の中はその言葉で埋め尽くされ、もと光る竹の遠隔修復技術をその場で構築。インプットしようとしました。
でもそれは叶いませんでした。
いつの間に後ろにいたボサツ型の月人によって阻止され、そのまま元いた時代に強制的に戻されたのです。
運命を変えようとしたことによる強制送還の措置だと
私は我慢ならずボサツにかぐやの運命について問いただしました。
「私たちも心苦しいですがそれも運命なのです」
「ですが、そんなことを言ってもあなたは止まらないのでしょう」
ボサツの纏う空気が変わった
「これを見れば後には戻れません、それでも見ますか?」
私の覚悟を問うた。その答えはもちろん決まってる
「望むところです」
私はかぐやの母親なのだから
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かぐやの運命は確かにハッピーエンドとして終わるものだった。彩葉と再会することもでき、かぐや復活ライブも成功を収めることもできた。
私のかぐやへの不安も全てなくなる………、なんてことはなかった。
かぐやと彩葉そしてヤチヨの3人で掴んだこのお話のエンドは確かに美しく、あれからの結末として、皆はこれ以上ないものと言うのであろう。だが、私からはまだそうは見えなかった。
かぐやは、彩葉のいないところで無意識に彩葉を探していた。彩葉も、自身の研究所で無意識にかぐやの姿を探している。
8000年の長旅を経験した後の至福の時間、それはかぐやに夢を見せていた。
夢は覚めるもの、現実に引き戻されるものだとあのツクヨミへの月人侵攻で、強く心に刻み込まれた。
そしてかぐやはこれが夢ではないのだと、引き戻されることのない現実の証拠である彩葉を探すことがあった。
かぐやは彩葉と過ごしたい、一緒に楽しいことをしたい、共有したいと願っていた。
だがこの依存ではかぐやは彩葉との時間を本当の意味でハッピーに過ごすことができない。
失うことへの恐怖が、得た幸せを少しずつ蝕んでしまうからだ。
かぐやと彩葉の世界だけでは世界の喜びを知り尽くせない。人との繋がりが人の生を豊かにするものだと私はかぐやに出会ってから気付かされた。
だからこそ私は地球に行かなくてはならない。
私はこの日をもって月の姫をやめる。
私は月の姫として生を受けた。
けれども先ほどようやくわかりました。
私はかぐやを、娘を幸せにするために、そのために生まれてきたのだろう、いやそうに違いない。
運命はかくも私たちの想像を超える、私たちは運命に左右される一つの生命だが、それをどう受け取るかは私たち次第。
私はこの結末に異議を唱えない。その向こうに道を作っていく。
決意は固めた。ならば向かう先はこれから長い旅が待ち受けるかぐやの下。私はかぐやにとびきりいっぱいの愛を注ぎ、想いで8000年を耐えられるようにしなければならない。
かぐやのハッピーエンドのために
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「これが私のかぐやの8000年を知った経緯と、ここへ来た目的です。」
私達は姫さんの話を聞き、何も言うことができなかった。かぐやのため、娘のために尽くしてきた姫さんの覚悟に、愛情に心を打たれた。
「すみませんでした。」
私は頭を下げた。
かぐやとの再会と悲願の達成に目を奪われていた。
かぐやは私と一緒にいたいといったし、私もそれを望んだ。だが姫さんの言う通り私の考えが至っていなかった。
「今の私たちでは私たちの人生を十分には楽しめない、姫さんの指摘がなければ気づくことに遅れていました」
「私達はもっと人生を謳歌して、人生の大団円を迎えることが私たちのハッピーエンドです。」
「姫さん、どうか私たちのハッピーエンドまで付いてきてもらえませんか?私たちのハッピーエンドにはあなたが必要です。どうかお願いします。」
私は頭を下げ、姫さんに願い出た。
「ええ、もちろん協力させていただきます。私はそのために来たのですから。」
「ありがとうございます。」
「はい、受け取りました。」
姫さんは私の言葉を受け取りかぐやたちの方へと視線を向けた
「かぐや」
その言葉に二人が姫さんに目を合わせた。
「今言った通り、あなたは少し浮かれてしまっています。これも仕方のないことですが、そのままいけば依存となり、視野を狭めてしまいます。だからこそ私はあなたと共に生き、その行為を防ぐ一助となります。」
「私があなたのそばにいることをどうか許してください」
かぐやとヤチヨは目を合わせて同時に答えた。
「「いいに決まってる!これからもよろしくね!」」
「ママ!」「お母さん!」
その言葉を聞いた姫さんは目に涙を滲ませ、こう言った。
「こちらこそよろしくお願いします。」
かくして私たちの日常に姫さんが加わった。
これからの私達の人生はもっと忙しく、そして楽しいものになるはずだ。
これでお母さんについての話は終了で、次回から日常回に移行します。
時系列がこんがらがってしまった人用に小説での超かぐや姫!の時系列を置いておきます
かぐやが事故により8000年前の地球に跳ばされる
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姫さんが1000年ほど前の地球に休暇を取り竹取物語開始
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休暇中に眠ったままのかぐやに出会う
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姫さん月に帰還、竹取物語終了
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かぐやの誕生
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かぐやの育ての親として親睦を深める
↓
かぐやの識別コードの発見、1000年前のウミウシと同じで驚愕
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真相を知るためにかぐやのもと光る竹を見つけにまた1000年前に時間跳躍
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数十年かけもと光る竹を正倉院にて発見
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遠隔修復プログラムを起動させようとするがボサツにより阻止
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ボサツにより輪廻の内容の開示
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覚悟ガンギマリ姫さんになりかぐやに親として愛を注ぐ
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かぐやが月から逃走、超かぐや姫!本編開始
↓
10年後超かぐや姫本編終了後のマンションに姫さん墜落
↓
一緒にもっと人と関わって人生を豊かにしちゃおう!
イマココ
ちょっと長いですがこんな感じです。
書いてて思いましたこれ時系列じゃなくて出来事表じゃね?私にはちょっとわからないですがまぁいいでしょう
これからはもっともっと楽しいことを共有して、お母さんと、彩葉と、ヤチヨと笑い合うかぐやの話を色々書いては投稿していきます
駄文ですが読んでもらえると幸いです。