術ク呪ウ名探偵   作:けるべろん

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初投稿です。よろしくお願いいたします。


破壊探偵(クラッシャー)

「虎杖。お前監督役として選任されてたぞ」

「え?マジ?」

 

任務を終え帰還した虎杖に対して、伏黒恵はそう告げた。

彼の言葉に、虎杖は困ったように頭を掻く。

 

「監督官ってあの新入生を受け持つって奴だろ?俺あんま向いてなくね?」

「むしろお前が一番適任だと思うが……」

「そういうことじゃなくてさ」

 

虎杖は伏黒の言いたいことをなんとなく察していた。

虎杖は、彼が自分のことを善人だと思っていることを知っている。虎杖自身にその自覚は全くないが、友人から信頼されているのは嬉しくも感じている。が、それとこれとは話が別だ。

 

「俺、正直術式の使い方とか呪術の使い方あんま上手くないしさ。新入生ってみんな呪術師の卵だろ?伏黒のが教えるの向いてんじゃねって思うんだけど」

「否定はしないが、今回は事情が違う。俺は俺で担当がいるしな」

「どうせなら否定してほしかったナ~」

 

伏黒の足元から数枚の紙束が飛び出す。

術式による物体の保管。戦闘時には武器庫として使われるそれだが、高専忌庫が解放され、偶発的な戦闘も減った現在、それはさながら四次元ポケットとして活用されている。

 

「そもそもこの件はもともと禪い……真希さんが担当する予定だったんだ。だけどあの人の立ち位置って今微妙だろ」

「まあそうね」

 

──新宿での決戦の後、呪術界は大きく揺れることになった。

 

その最も大きな要因は言うまでもなく五条悟の死亡である。

天上天下唯我独尊。史上最強の術師と名高い彼の死亡は、世界のバランスを変えてしまうに余りある。彼の庇護になっていた人間は多く、虎杖や真希はその筆頭だったといえよう。

 

五条悟により総監部は壊滅したが、加茂家の人間や各地の地方術師など、「五条悟派閥」を不安視する勢力は依然存在する。両面宿儺の器から解放された虎杖はともかく、旧御三家こと禪院家を崩壊させた真希を受け入れがたく考えるものは少なくなかった。

 

「真希先輩が"そういう"派閥を作っていると思われるリスクは避けたい。だからオマエに白羽の矢が立ったんだ」

「なるほどね。てか真希先輩が担当予定だったって、その新入生もしかして……」

「ああそうだ」

 

伏黒が資料を手渡す。

 

「おそらく天与呪縛、それも先輩と同じフィジカルギフテッドだ」

 

---

 

人外魔境の決戦から4か月が過ぎた。

 

前年に発生した様々な事象は呪術界、ひいては日本という国の在り方を根本的に変えてしまったといえる。

 

まず一つ目は呪霊の存在の公表。

この世界には目に見えない脅威が存在する……。渋谷と新宿にて現実に発生した巨大な惨劇は、都市伝説の実在を拡散するのに十分な効力を発揮した。アイヌ呪術連を含む多くの術師の尽力により「呪霊は東京にしか発生しない」というカバーストーリーの流布には成功したものの、その陰には無数の例外、取りこぼしが発生しているのもまた事実。呪霊は東京に集まり続けているが、その効果が完全に成るまでには十年単位の時間がかかる見込みだ。

 

二つ目に死滅回遊サバイバーの存在。

宿儺戦の立役者でもある日車寛見は例外だが、死滅回遊にて覚醒型として分類された術師達の中には術式を十分に扱うこともできないものも多い。これらを最低限日常生活で暴走しない程度まで訓練することも復興の一環とされているのだが、このような術師のなりそこないの数がここ数か月で急激に増加していた。死滅回遊の進行により、半ば強制的に術式がたたき起こされた人間が増えた影響と推察されてはいるものの、真相を知る羂索がいない今それを知る術は存在しない。

 

三つ目に純粋な教育者の不足。

渋谷事変、死滅回遊を経て、五条悟、夜蛾正道など教育者が多数殉職。御三家の半分以上が壊滅したこともあり、教えなければいけない人数に対して教育を行える人間が圧倒的に足りていなかった。

 

これら三つの原因によって今、かつてないほどの人手不足が呪術界を襲っている。

 

「だからって学生まで動員するのかよって話だよなぁ」

 

廊下で愚痴ったところでだれも返事はしない。

 

──人手不足を解決するため、高専は一部術師に教育を委託することにする。

いわば外部講師である。もともとOBや地方の人間を監督官にすることはそこまで珍しくない。しかし、今回行われるのは現役学生から学生への教育である。

 

つまり、現2年の虎杖達で新入生の面倒を見ろということだ。

学徒動員に他ならないが、生憎呪術師に定時という概念は無いし、虎杖は既に術師としての等級は1級。それどころか事実上の呪術界最高戦力の1人でもある。単なる学生の一人として遊ばせておくのはもったいないという判断なのだろう。

 

「っとこの部屋だな」

 

そう言うわけで、現在虎杖はその監督対象……もとい後輩となる新入生の元へやってきていた。

高専に入学が決まった生徒は基本的には高専内の寮にて寝泊りをすることになる。学費は安いし、術師として働けば学生の時点で給料が出るということで、金銭的な問題でここに来るものもいるという。

 

ただ、今回虎杖が受け持ったその"少女"はそのような理由ではないらしい。

なんでも、呪術が一般に公開されたのを見て志願してここにやって来たのだとか。一般家庭出身で高専にやってくる例は多いが、あくまでそれらはスカウトされてのもの。それは前提として呪術が都市伝説扱いされていたことが原因だったが、その存在が明るみになった以上、今後はこうして志願してやってくる子も増えるのかもしれない。

 

そんなことを考えながら、虎杖は部屋の扉をノックした。

 

「すみませーん」

「はいはーい!」

「うおっ!?」

 

元気な声とともに、扉が勢いよく開かれる。

その速度が思っていた何倍も速かったため虎杖は咄嗟に背後へしりもちをついた。もし判断が遅れていれば扉に頭をぶつけていただろう。扉の弁償は嫌だったので、虎杖は自身の尻を犠牲にすることを選んだ。

 

「あ、すみません!大丈夫でしたか?」

「あ、うん、問題ないよ。俺頑丈だし」

 

少女もそれに気づいたのか、虎杖のことを心配げに見つめる。

 

某ドーナツの様に結んだ水色の髪と、オレンジ色の瞳。

高専の制服に身を包んだ少女は、虎杖へと手を差し出したかと思うと、何かを思い出したようにハッとする。

 

「あ!もしかして監督官の方ですか!?」

「そうそう。2年の虎杖悠仁。よろしくね」

「新入生の橘シェリーっていいます!よろしくお願いしますね!ユージさん!」

 

そう言って少女……橘シェリーはパッと笑顔を浮かべた。

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