男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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13話 身体測定

 朝のホームルーム。

 

 花城先生は教卓へ出席簿を置くと、重ねていたプリントを前列の生徒へ渡した。

 

「今日は午前中に身体測定があります」

 

 教室のあちこちから、小さな声が上がる。

 

「測定するのは身長、体重、視力、聴力です。男子と女子では回る順番と場所が違うので、配られた予定表を確認してください」

 

 前から回ってきたプリントを一枚取り、残りを後ろへ渡す。

 

 男子は体育館で身長と体重を測ったあと、視力検査と聴力検査のために特別教室を回るらしい。

 

「測定中は騒がないこと。すべて終わった人から教室へ戻ってください」

 

 花城先生は教室を見回した。

 

「あと、他人の結果を無理に聞いたり、からかったりしないように」

 

「はーい」

 

 教室のあちこちから返事が上がる。

 

「では、男子は男子更衣室、女子は第一更衣室へ移動してください」

 

 ホームルームが終わり、生徒たちが一斉に立ち上がった。

 

 俺も体操着の入った袋を手に取り、大輔や直樹と一緒に教室を出る。

 

「身体測定かあ」

 

 廊下へ出るなり、大輔が両手を頭の後ろで組んだ。

 

「去年から身長伸びてるといいんだけどな」

 

「成長期だし、少しくらいは伸びてるんじゃない?」

 

「少しくらいじゃ困るんだよ。最低でも5センチは欲しい」

 

「1年で5センチかい?」

 

 直樹が尋ねる。

 

「願うだけなら自由だろ」

 

「それはそうだね」

 

 直樹は穏やかに笑った。

 

 そのまま男子更衣室へ入り、俺たちはそれぞれ体操着へ着替え始める。

 

 制服姿では、直樹はすらりとした印象の方が強かった。

 

 だが、半袖の体操着に着替えると、肩や腕にしっかり筋肉がついていることが分かる。

 

「直樹って、確か中学ではバスケットボール部だったんだっけ?」

 

 大輔が感心したように尋ねた。

 

「ああ。3年間やっていたよ」

 

「やっぱりな。全身引き締まってるし、普通に格好いいじゃん」

 

「ありがとう」

 

「顔がよくて、背も高くて、身体まで鍛えてるとか反則だろ」

 

 大輔の言いたいことは分かる。

 

 整った顔立ちに高い身長。体つきまで鍛えられていて、性格もいい。

 

 同性の俺から見ても、直樹は文句なしに格好よかった。

 

 女子から人気が出るのも当然だろう。

 

 恋愛では、できれば競いたくない相手だ。

 

「そこまで言われると、さすがに少し照れるな」

 

「大輔は、身だしなみをもう少しきちんとした方がいいと思うな」

 

 俺が言うと、大輔が脱いだ制服へ目を向ける。

 

「俺、そんなにだらしなく見えるか?」

 

「ネクタイは緩いし、シャツの裾も出てる。そのうえ、胸元まで結構開いてるだろ」

 

「これは着崩してるって言うんだよ」

 

「似合ってはいるけど、少し軽そうには見えるかな」

 

「モテたいなら、第一印象も大事だと思うよ」

 

 直樹も穏やかに付け加えた。

 

 大輔は少し考えたあと、肩をすくめる。

 

「でも、やっぱり堅苦しいのは苦手だな。多少は気をつけるけど、全部きっちりするのは俺らしくねえよ」

 

「まあ、大輔がそれでいいならいいんじゃないか」

 

「だろ?」

 

 大輔は満足そうに笑った。

 

 着替えを終えた俺たちは、更衣室を出て体育館へ向かう。

 

 体育館の入口付近には、別の更衣室から移動してきた女子たちの姿もあった。

 

 白を基調とした半袖シャツには、襟や袖口、脇へ翡翠色の切り替えが入っている。

 

 同じ翡翠色のショートパンツと組み合わせた、制服とはまた違う爽やかなデザインだった。

 

 大輔の視線が、分かりやすく女子たちへ向く。

 

「おお……女子の体操着って、やっぱり新鮮だな」

 

「じろじろ見るなよ」

 

 俺が小声で注意する。

 

「見てるだけだって」

 

「失礼だと思うな」

 

 直樹も穏やかな声で続けた。

 

 大輔は名残惜しそうにしながらも、すぐに前へ向き直る。

 

「分かったよ。2人して注意しなくてもいいだろ」

 

「がっつきすぎるとモテないぞ」

 

「マジでっ?」

 

 大輔が勢いよくこちらを振り向いた。

 

「今さら驚くことか?」

 

「分かってはいたけど、改めて言われると刺さるな……」

 

「少なくとも、見られている側はいい気はしないと思うよ」

 

 直樹が静かに言う。

 

「分かった。今日から紳士になる」

 

「宣言した時点で少し怪しいけどな」

 

「信用しろよ!」

 

 そう言いながらも、大輔はそれ以上女子の方を見なかった。

 

 体育館へ入ると、すでに同学年の生徒たちが集まり始めていた。

 

 測定場所は男女で分けられており、女子は体育館の反対側へ案内されている。

 

 大輔はそちらをちらりと見てから、声を潜めた。

 

「女子の測定結果って、どうにか見れないかなぁ」

 

「それは感心しないな」

 

 直樹がすぐに口を挟んだ。

 

 声を荒らげたわけではない。

 

 だが、穏やかな口調の中には、はっきりとした否定が込められていた。

 

「本人が話していないことを勝手に詮索するのは、あまり褒められたことじゃない」

 

「冗談だって」

 

「冗談でも、本人たちに聞かれたら印象はよくないと思うよ」

 

「……それは困るな」

 

 大輔は素直に引き下がった。

 

「女子と仲良くなりたいなら、嫌われそうなことはしない方がいいと思う」

 

「お前ら2人、正論で挟むのやめろよ」

 

「大輔が正論を言われるようなことを言うからだろ」

 

「ちょっと気になっただけじゃねえか」

 

「気になっても、口に出さない方がいいことはあるよ」

 

 直樹にそう言われ、大輔は肩を落とした。

 

「イケメンなやつは、言うことが違うな」

 

「それは褒め言葉として受け取っていいのかい?」

 

「褒めてるよ。ちょっと羨ましいだけだ」

 

「それなら、素直に受け取っておくよ」

 

「そうやってさらっと返すところが、また格好いいんだよなあ」

 

 大輔は呆れたように笑った。

 

「まずは身長と体重を測定します。クラスごとに2列で並んでください」

 

 担当教師の声に従い、俺たちは1年A組の列へ並んだ。

 

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