男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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24話 生徒会役員の先輩たち

 生徒会役員の募集が締め切られた翌日。

 

 朝のホームルームが終わると、花城先生に呼び止められた。

 

「槻山君、生徒会から預かってるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 渡されたのは、俺の名前が記された白い封筒だった。

 

 席へ戻ると、大輔がすぐに身を乗り出してくる。

 

「それ、選考結果だろ。早く開けろよ」

 

「急かすなって」

 

 封を切り、中に入っていた通知へ目を通す。

 

『先般実施いたしました生徒会役員公募の選考の結果、貴殿の適性および資質を鑑み、下記の通り生徒会役員として任用することを決定いたしましたので、通知いたします』

 

 その下には、任用役職として生徒会書記と記されていた。

 

「どうだった?」

 

「採用されたよ。書記だ」

 

「本当に通ったのか!」

 

「声が大きい」

 

 大輔の声に、近くの生徒たちがこちらを振り返る。

 

 本人は気にした様子もなく、嬉しそうに俺の肩を叩いた。

 

「おめでとう、叶多」

 

「ありがとう」

 

「おめでとう、叶多君」

 

 右隣の席から、直樹も穏やかに笑う。

 

「直樹もありがとう」

 

 通知には、今日の放課後、生徒会室へ集合するよう記されていた。

 

「今日から生徒会か」

 

 大輔は感心したように呟く。

 

「あの美人ぞろいの中へ入っていくんだな」

 

「仕事をしに行くんだよ」

 

「分かってるって。でも、女子の先輩が四人もいるんだろ? 俺なら緊張して何もできないぞ」

 

「それは生徒会に限らないんじゃないか?」

 

「失礼だな。少しくらいは話せる」

 

「少しくらいなのかよ」

 

 俺と大輔のやり取りに直樹が小さく笑った。

 

「書記なら、上級生の書記から仕事を教わることになるのかな」

 

「たぶんそうだと思う」

 

「確か、榊先輩って人だったよな」

 

 大輔が口を挟む。

 

「知ってるのか?」

 

「名前だけな。超絶美人らしいぞ」

 

「情報が雑すぎるだろ」

 

「見れば分かるって話だった」

 

「誰から聞いたんだよ」

 

「そこは企業秘密だ」

 

 得意げに言っているが、本人も詳しいことは知らないらしい。

 

「何にしても、採用された以上は頑張らないとね」

 

 直樹の言葉に頷く。

 

「ああ。任された仕事はきちんとやるよ」

 

 予鈴が鳴り、大輔と直樹が前を向く。

 

 俺は通知を封筒へ戻し、机の中へしまった。

 

 ☆

 

 放課後。

 

 採用通知に記されていた集合時刻より少し早く、俺は生徒会室へ向かった。

 

 特別棟の二階まで上がり、廊下の奥にある扉の前で足を止める。

 

 一度だけ呼吸を整えてから、扉をノックした。

 

「失礼します。本日から生徒会へ加わる、槻山叶多です」

 

「入れ」

 

 中から天ヶ瀬先輩の声が返ってくる。

 

 扉を開け、生徒会室へ足を踏み入れた。

 

 室内には長机が置かれ、その周囲に五人の上級生が座っている。

 

 顔を知っているのは、入学式と新入生歓迎会で見た天ヶ瀬先輩と如月先輩だけだ。

 

 ほかには二人の女子生徒と、体格のいい男子生徒が一人いた。

 

「予定より早いな」

 

「遅れるよりはいいと思いまして」

 

「その判断は正しい。空いている席へ座って待て」

 

「はい」

 

 指定された椅子へ向かおうとしたところで、背後から再び扉を叩く音がした。

 

「失礼します。一年B組の鷹取慧吾です」

 

「一年D組の石倉航平です」

 

 ほどなくして、残る二人の一年生も生徒会室へ入ってきた。

 

 一人は黒髪を後ろへ流して額を出し、制服も隙なく着こなしている。

 

 背筋を伸ばした立ち姿と落ち着いた表情から、強い自信が伝わってきた。

 

 もう一人は少し緊張した様子で、室内へ入るなり上級生たちへ深く頭を下げている。

 

「これで全員そろったな」

 

 天ヶ瀬先輩が手元の資料へ目を落とす。

 

「三人とも、空いている席へ座れ。初回の顔合わせを始める」

 

 俺たちは並んで用意されていた椅子へ腰を下ろした。

 

 左端が俺、その隣が鷹取君、さらに隣が石倉君だ。

 

「まずは、新しく加わる一年生から自己紹介を頼む」

 

「はい」

 

 席の端に座っていた俺が立ち上がる。

 

「一年A組、書記として採用された槻山叶多(つきやまかなた)です。まだ分からないことばかりですが、任された仕事には責任を持って取り組みます。よろしくお願いします」

 

 上級生たちへ頭を下げ、席へ戻る。

 

 続いて、隣の鷹取君が立ち上がった。

 

「一年B組、会計の鷹取慧吾(たかとりけいご)です。数字の扱いには自信があります。早く仕事を覚え、生徒会の役に立てるよう努めます。よろしくお願いします」

 

 言葉遣いは丁寧だが、声には迷いがない。

 

 自分の能力に相当な自信を持っているらしい。

 

 最後に石倉君が立ち上がる。

 

「一年D組、庶務の石倉航平(いしくらこうへい)です。まだ自分に何ができるかは分かりませんが、頼まれた仕事にはできる限り取り組みたいと思っています。よろしくお願いします」

 

 少し緊張しているようだったが、最後まできちんと言い終えて頭を下げた。

 

 三人の自己紹介が終わると、天ヶ瀬先輩が小さく頷く。

 

「分かった。次は二年生だ」

 

 天ヶ瀬先輩は背筋を伸ばしたまま、俺たち三人へ視線を向けた。

 

「二年A組、生徒会長の天ヶ瀬美紘(あまがせみひろ)だ。生徒会では個人の都合より全体の利益を優先してもらう。任された役割には責任を持って取り組め」

 

「はい」

 

 三人で返事をする。

 

 続いて、その隣に座っていた如月先輩が柔らかく笑った。

 

「同じく二年A組、副会長の如月佳乃(きさらぎかの)。困ったことがあったら、遠慮なく相談してね」

 

 如月先輩は隣の天ヶ瀬先輩へ視線を向ける。

 

「がっせーは少し近寄りがたく見えるかもしれないけど、別に怖い人じゃないから。気軽に話しかけてあげて」

 

「……余計な説明はいい」

 

「新しく入った子たちは緊張してるんだから、このくらい教えてあげてもいいだろ?」

 

「話を進めろ」

 

「はいはい」

 

 天ヶ瀬先輩は「がっせー」という呼び方を気にした様子もなかった。

 

 二人の間では、普段から使われている呼び名なのだろう。

 

 如月先輩が座ると、黒髪を低い位置で横へ結んだ女子生徒が、ゆっくりと口を開いた。

 

「二年A組、会計を担当している桜庭文香(さくらばふみか)ですぅ。よろしくお願いしますねぇ」

 

 柔らかな紫がかった瞳は目尻が下がっており、穏やかで親しみやすい印象を受ける。

 

 話し方も見た目と同じく、ゆったりとしていた。

 

「鷹取君にはぁ、私から会計のお仕事を教えることになりますぅ」

 

「分かりました。早く仕事を覚えます。よろしくお願いします」

 

 鷹取君が丁寧に頭を下げる。

 

 桜庭先輩は満足そうに目を細めた。

 

「頼もしいですねぇ。分からないことは、遠慮なく聞いてくださいねぇ」

 

「はい」

 

「次は私ね」

 

 もう一人の女子生徒が立ち上がる。

 

 艶のある黒髪が、背中へ向かって滑らかに流れていた。

 

 額を覗かせるように分けられた髪と、頬に沿って垂れる細い後れ毛が、透き通るような白い肌を際立たせている。

 

 切れ長の赤い瞳と薄く微笑んだ唇も相まって、その姿には高校生とは思えないほど妖艶で、大人びた雰囲気があった。

 

 白いシャツの胸元は大胆に開けられ、白色のレースのついたインナーが覗いていた。

 

 目のやり場に困るな……。

 

 制服の上からでも分かるほど発育がいい。

 

 すぐに視線を顔へ戻す。

 

「二年A組、書記の榊琴姫(さかきことひめ)よ」

 

 榊先輩は柔らかな笑みを浮かべ、俺へ視線を向ける。

 

 大輔が言っていた通り、目を引くほど綺麗な人だった。

 

「新しい書記は、叶多君だったわね?」

 

「はい。槻山叶多です」

 

「これから私が仕事を教えることになるわ。分からないことがあったら、何でも聞いてちょうだい」

 

 榊先輩は、意味ありげに目を細めた。

 

「手取り足取り、教えてあげるから」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします、榊先輩」

 

「あら。随分落ち着いているのね」

 

「そうでしょうか」

 

「ええ。もう少しくらい、緊張してくれてもいいのに」

 

 榊先輩が楽しそうに目を細める。

 

 綺麗な人ではある。

 

 ただ、その視線には、俺がどんな反応をするのか確かめているようなものがあった。

 

 この人の事、少し苦手かもしれない。

 

「お嬢、新入りを揶揄うのはその辺にしてやってください」

 

 そう注意してくれた男子生徒は口に白い棒を咥えていた。

 

 え? タバコ? タバコ吸ってる?

 

 短く刈った黒髪に、太い眉と鋭い目つき。いかつい顔立ちも相まって、タバコを吸っているようにしか見えない。

 

 男子生徒が、口に咥えていた白い棒を外した。

 

 先端についていたのは、丸い飴だった。

 

 棒付きキャンディかよ。

 

 タバコかと思った。紛らわしいな。

 

「あら。揶揄ってなんていないわ。少しお話ししていただけよ」

 

「お嬢の『少し』は信用できません」

 

「ひどい言われようね」

 

「日頃の行いです」

 

 体格もよく、目つきも鋭いが、話し方は落ち着いていた。

 

「二年B組、庶務の真壁宗介(まかべそうすけ)だ」

 

 真壁先輩は石倉君へ視線を向ける。

 

「石倉には俺が仕事を教える。分からないことがあったら聞け」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「それと、頼まれたことを全部引き受けようとするな」

 

「え?」

 

「自分が今、何を抱えているのか確認してから返事をしろ。無理に引き受けても、結局誰かに迷惑をかける」

 

「分かりました」

 

「最初からできるとは思ってない。少しずつ覚えればいい」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 強面ではあるが、随分と優しい先輩のようだ。

 

 庶務の指導役として、最初からきちんと見ているようだった。

 

「以上です、ボス」

 

「ああ」

 

 天ヶ瀬先輩はその呼び方を気にした様子もなく、手元の資料へ視線を落とした。

 

「これで全員の自己紹介は終わりだ。続いて、今後の活動について説明する」

 

 天ヶ瀬先輩が資料を手に取り、隣へ回す。

 

 如月先輩から桜庭先輩へ。

 

 桜庭先輩から鷹取君へ。

 

 順番に資料が渡され、最後に榊先輩が俺の前へ一部を置いた。

 

「これからよろしくね、叶多君」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 榊先輩はすぐには手を離さず、こちらの反応を確かめるように微笑んでいる。

 

 やはり、この人は少し苦手だ。

 

 天ヶ瀬先輩へ近づくために入った生徒会だったが、まずはこの先輩の下で書記の仕事を覚えなければならないらしい。

 

 思っていたより、気を抜けそうになかった。

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