男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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27話 一学期、中間試験前

 生徒会へ入ってから、一週間ほどが経った。

 

 最初は過去の議事録を読み、書式や言葉の使い方を覚えることが中心だったが、今では簡単な会議記録なら一人でもまとめられるようになっている。

 

 榊先輩から修正を求められることはまだある。

 

 それでも、最初に比べれば指摘される箇所は確実に減っていた。

 

「叶多君、これも確認しておいてちょうだい」

 

「分かりました」

 

 榊先輩から送られてきた会議記録を、パソコンの画面に表示する。

 

 榊先輩は相変わらず、こちらの反応を楽しむような言い方をすることがある。

 

 ただ、仕事については丁寧に教えてくれるため、以前ほど接しづらくは感じなくなっていた。

 

 少し離れた席では、鷹取君が桜庭先輩と帳簿を確認している。

 

 石倉君も、真壁先輩から仕事の優先順位を教わりながら、備品の整理を進めていた。

 

 一週間も経てば、それぞれの組み合わせにも少しずつ慣れてくる。

 

「全員、手を止めてくれ」

 

 天ヶ瀬先輩の声が、生徒会室へ響いた。

 

 俺たちは作業を中断し、正面へ顔を向ける。

 

「明日から中間試験一週間前に入る」

 

 天ヶ瀬先輩は、机の上へ一枚の予定表を置いた。

 

「規則どおり、生徒会活動は試験終了まで縮小する。急ぎでない仕事はすべて後回しだ」

 

「特に一年生」

 

 天ヶ瀬先輩の視線が、俺たち三人へ向けられた。

 

「生徒会へ入った直後に成績を落とすようなことはするな」

 

「はい」

 

 三人で返事をする。

 

 天ヶ瀬先輩らしい厳しい言い方だったが、学業を心配してくれていることは伝わってきた。

 

「今日は、今やっている作業が終わり次第解散とする。残ってまで仕事を進める必要はない」

 

「会長から早く帰れって言われると、少し変な感じがするね」

 

「勉強する時間を確保しろと言っているだけだ」

 

「分かってるよ」

 

 天ヶ瀬先輩は如月先輩へ一度だけ視線を向け、それ以上は何も言わなかった。

 

「叶多君」

 

 隣から榊先輩に呼ばれる。

 

「はい」

 

「今まとめている議事録は、今日中に終わりそう?」

 

「あと少しです」

 

「なら、それが終わったら帰っていいわ」

 

「分かりました」

 

 榊先輩は俺の手元へ視線を落とした。

 

「試験勉強は順調なの?」

 

「今のところは問題ありません」

 

「あら。随分余裕なのね」

 

「余裕があるわけではありません。勉強時間を確保しているだけです」

 

「真面目ね」

 

 榊先輩は小さく笑い、それ以上は何も言わなかった。

 

 残っていた作業を終え、完成した議事録を共有フォルダへ保存する。

 

 最初の頃は一つ作るだけでも時間がかかっていたが、最近では必要な情報を見つける速度も上がっていた。

 

「確認をお願いします」

 

「ええ」

 

 榊先輩が画面へ目を通す。

 

「問題ないわ。このままで大丈夫よ」

 

「ありがとうございます」

 

「一週間で随分慣れたわね」

 

「榊先輩が教えてくれたおかげです」

 

「あら。そう素直に言われると、悪い気はしないわね」

 

 榊先輩は満足そうに微笑んだ。

 

 最近は、最初ほどこの人の言葉に振り回されなくなってきた。

 

 相変わらず意図の分かりにくいことを言うが、すべてを真に受ける必要はない。

 

「それでは、お先に失礼します」

 

「ああ。お疲れさま」

 

 天ヶ瀬先輩の返事を受け、俺は生徒会室を出た。

 

 ☆

 

 翌日の昼休み。

 

「叶多、俺を助けてくれ」

 

 弁当を広げた直後、大輔が両手を机についた。

 

「急にどうした」

 

「中間試験だよ」

 

「まだ始まってないだろ」

 

「始まる前だから助けを求めてるんだ」

 

 大輔は深刻そうな顔をしている。

 

「どの教科が危ないんだ?」

 

「英語と数学」

 

「二教科か」

 

「赤点は心配してないけど、このままだとクラスの中でかなり下に行きそうなんだよ」

 

「苦手な範囲は?」

 

「英語は文法。数学は二次関数」

 

「それなら、まず分からないところを整理した方がいいな」

 

「だから頼む」

 

 大輔は両手を合わせた。

 

 右隣に座っていた直樹が、こちらへ顔を向ける。

 

「大輔君、自分では一度解いてみたのかい?」

 

「一応な。英語は文法問題で迷うことが多いし、数学は途中まで解けても答えが合わない」

 

「どこで間違えたかは確認した?」

 

「それが分からないから困ってるんだよ」

 

 大輔は鞄から問題集を取り出し、付箋の貼られたページをこちらへ向けた。

 

「分からなかった問題には印をつけてきた。ここを中心に見てほしい」

 

「それなら教えやすいな」

 

「だろ? 俺だって何もせずに頼んでるわけじゃないぞ」

 

「僕も一緒に見ようか」

 

 直樹が穏やかに言った。

 

「助かる。じゃあ、三人でやろうぜ」

 

 大輔は満足そうに頷いたあと、教室の反対側へ視線を向けた。

 

 千夏、ここあ、里穂の三人が、机を寄せて昼食を取っている。

 

「せっかくだし、火野さんたちも誘わないか?」

 

「女子と勉強したいだけじゃないのか?」

 

「人数が多い方が楽しいだろ」

 

「勉強会なんだけどな」

 

 大輔は俺の言葉を聞き流し、そのまま三人の方へ向かった。

 

「火野さん、七瀬さん、里穂さん。今度の土曜日に、みんなで試験勉強するんだけど、一緒にどう?」

 

「勉強会?」

 

 千夏が箸を止める。

 

「うん。参加したい人がいればと思って」

 

「いいよ。私も行く」

 

 千夏はあっさりと答えた。

 

「ここあは?」

 

 ここあは眠そうに瞬きをしてから、気の抜けた声で答える。

 

「土曜日なら空いてるし、行くー」

 

 里穂は俺たちの方へ視線を向けた。

 

「水瀬君も参加するの?」

 

「うん。僕も行くよ」

 

 直樹が答えると、里穂は少しだけ考えるような間を置いた。

 

「そう。なら、私も付き合ってあげてもいいけど」

 

「じゃあ、三人とも参加でいい?」

 

「ええ」

 

 千夏が答え、ここあと里穂も異論はないようだった。

 

 大輔は機嫌よくこちらへ戻ってくる。

 

「三人とも来るってさ」

 

「随分あっさり決まったな」

 

「俺の誘い方がよかったんだろ」

 

「勉強会って言っただけだろ」

 

「余計なことを言わないのも技術だぞ」

 

 自信満々に言うほどのことではないと思う。

 

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