男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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41話 飯ごう炊さん

 水辺の調査を終えて施設へ戻る頃には、午後もだいぶ進んでいた。

 

 昼食を済ませてから出発したとはいえ、午前中のオリエンテーリングに続いて水辺を歩き回ったせいで、さすがに体は重い。

 

「午前中からずっと動きっぱなしだったな……」

 

 大輔が宿泊棟へ向かいながら、少し疲れたように肩を回した。

 

「途中から妙にはしゃいでたからだろ」

 

「せっかく水着を着ていったんだから、少しくらい水に入りたくなるだろ」

 

「調査が目的だったんだけどね」

 

 木下君が苦笑する。

 

 結局、水辺の調査で川へ入ったのは、基本的には足首から膝下までだった。

 

 ただ、大輔だけは浅瀬の少し深い場所まで進み、膝上あたりまで水に浸かっていた。

 

 下は水着、上はジャージという格好だったため、濡れても平気だと本人は得意げだったが、調査でそこまで深く入る必要はなかったと思う。

 

「まあ、濡れても平気だったから正解だろ」

 

「正解だったかどうかは分からないな」

 

 黒瀬君が淡々と言う。

 

「でも、楽しそうだったのは伝わったわ」

 

 本田さんがそう言うと、大輔は少しだけ胸を張った。

 

「だろ?」

 

「褒めたつもりじゃないと思うぞ」

 

 そんな会話をしながら、一度宿泊棟へ戻って着替えと休憩を済ませる。

 

 そして休憩を挟んだあと、俺たちは次の活動である飯ごう炊さんのため、屋外の炊事場へ向かった。

 

 炊事場には、班ごとに使う作業台とかまどが並んでいる。

 

 近くには水道もあり、野菜を洗う場所や調理道具を置く棚も用意されていた。

 

 空は相変わらず曇っていたが、雨が降る様子はない。

 

 昨日からずっと曇り空が続いているせいで、日差しは弱い。その分、火を使うには少し楽かもしれない。

 

 職員から説明があり、今日のメニューはカレーとご飯だと告げられた。

 

 班ごとに米、野菜、肉、カレールーが配られる。

 

 道具は包丁、まな板、鍋、飯ごう、ざる、ボウルなど、必要なものは一通りそろっているらしい。

 

「では、各班で役割を決めてください。火を扱う人、食材を切る人、米を研ぐ人で分かれると進めやすいです。ただし、包丁や火の扱いには十分注意してください」

 

 説明を聞き終えたあと、俺たちは班の作業台へ集まった。

 

 班の顔ぶれは、昨日のハイキングと変わらない。

 

 俺、大輔、木下君、黒瀬君、本田さん、姫岡さんの六人だ。

 

「よし。役割を決めようぜ」

 

 大輔がやる気ありげに言う。

 

「大輔は何をやるつもりなんだ?」

 

「火起こしだな。こういうのは任せろ」

 

「大丈夫か?」

 

「火を扱うんだから、さすがにふざけないって」

 

「それなら頼む」

 

 大輔はそう言うと、薪の置かれた場所へ向かった。

 

「火起こしは説明どおりにやった方がいいね。僕はしおりを見ながら手順を確認するよ」

 

 木下君がしおりを開く。

 

「なら、俺は薪と水を用意する」

 

 黒瀬君が静かに続いた。

 

「足りなくなってから取りに行くより、先にそろえておいた方がいいだろ」

 

「助かる」

 

 木下君が頷く。

 

「お米は私が研ぐわ。飯ごうの準備もやっておくわね」

 

 本田さんが米の入った袋を手に取った。

 

「お願いします」

 

「任せて。こういうのは丁寧にやらないと、あとで困るもの」

 

 本田さんはそう言うと、飯ごうとざるを持って水道の方へ向かった。

 

 残ったのは、野菜と肉の下処理だ。

 

「姫岡さん、野菜を洗うのを手伝ってもらっていいか?」

 

「う、うん」

 

「洗い終わったら、皮むきもお願いしたい。急がなくていいから、手を切らないようにゆっくりで大丈夫だ」

 

「分かった」

 

 姫岡さんは小さく頷き、じゃがいもとにんじんをボウルへ移した。

 

 配られた食材は、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、鶏肉。

 

 カレーとしては定番の組み合わせだが、班で作るとなると、切り方や火の通し方で仕上がりは変わる。

 

 俺はまな板と包丁を準備し、まずは玉ねぎの皮をむいた。

 

 姫岡さんが野菜を洗っている間に、玉ねぎを食べやすい大きさに切っていく。

 

「叶多君、手つきが慣れてるね」

 

 木下君がかまどの方から感心したように言った。

 

「将来は、料理の道に進みたいと思ってるからな。家でもよく作ってるんだ」

 

「なるほど。それでそんなに慣れてるんだ」

 

「まだ勉強中だけどな」

 

 その間に、姫岡さんが洗い終えた野菜を持って戻ってくる。

 

「叶多君、洗えた」

 

「ありがとう。じゃがいもの皮むき、できそうか?」

 

「うん。たぶん」

 

「無理に急がなくていい。形が少しくらい残っても、あとで整えるから」

 

「分かった」

 

 姫岡さんはピーラーを手に取り、慎重にじゃがいもの皮をむき始めた。

 

 本田さんは水道のそばで米を研いでいる。

 

 力任せにこするのではなく、水を替えながら丁寧に研いでいた。

 

「本田さん、慣れてますね」

 

「家で少しやるからね。お米は雑に扱うと、あとで分かるのよ」

 

 本田さんは研ぎ終えた米を飯ごうへ移し、水を注いだ。

 

「飯ごうだと炊飯器と勝手が違うけど……このくらいね」

 

 飯ごうの内側の目盛りと水面を見比べてから、本田さんは小さく頷く。

 

「少し吸わせてから火にかけましょう」

 

 本田さんは飯ごうを作業台の端へ置いた。

 

 米に水を吸わせている間に、こちらも野菜の準備を進める。

 

 姫岡さんがむいてくれたじゃがいもを受け取り、一口大に切っていく。

 

 切ったじゃがいもは、そのままボウルの水へ入れた。

 

「水に入れるの?」

 

 姫岡さんが不思議そうに尋ねる。

 

「ああ。切ったまま置いておくと色が変わりやすいし、表面のでんぷんも少し落ちるからな」

 

「そうなんだ」

 

「長くつけすぎる必要はないけど、少しさらしておく」

 

 続けて、にんじんを切る。

 

 火の通りがそろうように、じゃがいもより少し小さめにする。

 

 角は軽く落とし、切り落とした端は捨てずに小皿へ分けた。

 

「叶多、それ何してるんだ?」

 

「にんじんとじゃがいもの角を少し落としてる」

 

「角?」

 

「そのまま煮ると崩れやすいからな。軽く面取りしておくと、形が残りやすい」

 

「カレーでそこまでやるのか」

 

「こういうひと手間で、仕上がりが少し変わるからな」

 

 そう答えると、大輔は小皿に分けた野菜の端を見る。

 

「その端は捨てるんじゃないのか?」

 

「あとで炒める」

 

「端っこも使うのか」

 

「食べられる部分だからな」

 

 特別なことをしているつもりはない。

 

 普段からやっていることを、そのまましているだけだ。

 

 けれど、班のみんなは少し意外そうにこちらを見ていた。

 

 野菜の下処理をすべて終えてボウルへ移すと、俺はまな板と包丁を水道へ持っていった。

 

 洗剤を使ってきれいに洗い、手も改めて洗ってから作業台へ戻る。

 

 それから鶏肉の包みを開いた。

 

「叶多、今度は肉か?」

 

 薪を運んでいた大輔が、こちらを覗き込んでくる。

 

「ああ。余分な脂と筋を取っておく」

 

「そんなことまでするのか?」

 

「硬い筋は取った方が食べやすいからな。脂は少しだけ使う」

 

「使うのか?」

 

「炒めるときに香りを出して、あとで取り出す。残すと食感が悪くなるから」

 

 包丁の刃先を使い、白く残った脂や硬そうな筋を軽く外していく。

 

 硬い筋は取り除き、使えそうな脂だけを小皿へ分けた。

 

 飯ごう炊さんでそこまでやる必要があるかと言われれば、必須ではない。

 

 それでも、気づいたところをそのままにしておくのは落ち着かなかった。

 

 職業病みたいなものだろう。

 

 料理として出す以上、できる範囲で少しでもおいしくしたいと思ってしまう。

 

 下処理を終えた鶏肉を食べやすい大きさに切り、塩を少しだけ振ってなじませる。

 

「肉に何かかけたのか?」

 

「塩で軽く下味をつけただけだ。煮込む前に少し味を入れておくと、肉だけ浮きにくい」

 

「カレーってルーを入れれば全部同じ味になるんじゃないのか?」

 

「だいたいはそうだけど、少し違う」

 

「少し違うのか」

 

 大輔は分かったような、分かっていないような顔で頷いた。

 

 やがて大輔が、かまどの前から声を上げる。

 

「叶多、火はこんな感じでいいか?」

 

 見ると、薪に火が移り始めていた。

 

 まだ勢いは弱いが、鍋をかける前なら十分だろう。

 

「ああ。最初はそれくらいでいいと思う。強すぎると焦げやすいから、少しずつ安定させよう」

 

「了解」

 

「鍋を置く準備をするよ」

 

 木下君が鍋を持ち、黒瀬君が横から支える。

 

 俺は鍋に油を薄く引き、取っておいた鶏の脂を少し入れた。

 

 火が入ると、脂がじわりと溶けて、鶏の香りが立ち始める。

 

「それ、さっき取ってた脂か?」

 

「ああ。少し香りを出す」

 

「そのまま入れるのか?」

 

「いや、脂が出たら取り出す。残すと食感が悪くなるからな」

 

 箸で軽く転がしながら火を入れ、脂が出たところで小皿へ取り出す。

 

 鍋には、薄く油と鶏の香りだけが残った。

 

 そこへ野菜の切れ端と玉ねぎを加える。

 

 じゅう、と小さな音がして、玉ねぎの香りが広がった。

 

「端っこから入れるんだな」

 

「香りを出したいからな。焦がさないように軽く炒める」

 

「本当に端っこが仕事してる」

 

 大輔が妙に感心したように言った。

 

 玉ねぎが少し透き通ってきたところで、下味をつけておいた鶏肉を入れる。

 

 表面の色が変わるまで炒めてから、にんじんを加えた。

 

「じゃがいもはまだ入れないの?」

 

 姫岡さんがボウルを見ながら尋ねる。

 

「先ににんじんだな。じゃがいもは崩れやすいから、少しあとで入れる」

 

「順番もあるんだ」

 

「全部一緒に入れてもカレーにはなるけど、火の通り方が変わるからな」

 

 にんじんに油が回ったところで、水を加える。

 

 鍋の中で具材が揺れ、湯気が少しずつ上がり始めた。

 

「じゃがいも、入れてもいい?」

 

「ああ。そっと入れてくれるか?」

 

「うん」

 

 姫岡さんはボウルを持ち、じゃがいもを鍋へ入れた。

 

 慌てず、跳ねないようにゆっくりと。

 

「そんな感じで大丈夫だ」

 

「……よかった」

 

 小さく返事をして、姫岡さんは鍋の中をじっと見つめる。

 

「叶多君、料理してるとき、落ち着いてるね」

 

「そうか?」

 

「うん。見てると、少し安心する」

 

「包丁や火を使うからな。慌てない方がいい」

 

「そういう意味じゃ、ないんだけど……」

 

 姫岡さんは小さく呟いたが、最後の方は火の音に紛れてよく聞こえなかった。

 

「何か言ったか?」

 

「ううん。何でもない」

 

 姫岡さんは少しだけ顔を伏せた。

 

 鍋を煮込んでいる間に、飯ごうの方も火にかけられる。

 

 本田さんが飯ごうを見守り、木下君がしおりと時間を確認していた。

 

「火加減、少し強くないか?」

 

 黒瀬君がかまどを見ながら言う。

 

「そうだな。少し薪をずらした方がいい」

 

 俺が答えると、大輔がすぐに火ばさみを手に取った。

 

「任せろ。火担当だからな」

 

「急に頼もしくなったな」

 

「最初から頼もしかっただろ」

 

「薪を動かしすぎなければな」

 

 黒瀬君が淡々と付け加える。

 

「そこは今から直す」

 

 大輔はそう言いながら、薪の位置を少し調整した。

 

 鍋の中の具材が柔らかくなってきたところで、カレールーを入れる準備をする。

 

 その前に、俺は一度鍋の中を確認した。

 

 にんじんはまだ形を保っている。

 

 じゃがいもも崩れていない。

 

 鶏肉にも火は通っているようだった。

 

「そろそろルーを入れるか。大輔、鍋を火から少しずらしてくれ」

 

「分かった」

 

 大輔が火ばさみで薪の位置を調整し、木下君と黒瀬君が鍋をかまどの端へ移す。

 

 沸騰が収まったところで、カレールーを割り入れた。

 

 鍋底へ沈んだルーを、溶け残りがなくなるまでゆっくりと混ぜていく。

 

「火から外して入れるのか?」

 

 大輔が不思議そうに尋ねる。

 

「ああ。煮立ったまま入れるより、ルーが溶けやすいからな。焦げつきにくくもなる」

 

「なるほどな」

 

 ルーが完全に溶けたのを確認してから、鍋を弱い火の上へ戻す。

 

 少しずつ鍋の中にとろみが出て、見慣れたカレーの色へ変わっていった。

 

 香りが広がると、大輔だけでなく、ほかの班の生徒たちもこちらをちらりと見ている。

 

「いい匂いだな」

 

 大輔が鍋を見ながら言った。

 

「ルーを入れたあとは焦げつきやすいから、火は強くしすぎないでくれ」

 

「了解。火担当だからな」

 

 大輔は火ばさみで薪の位置を少し調整した。

 

「ご飯もそろそろだと思うわ」

 

 本田さんが飯ごうの様子を見ながら言った。

 

「じゃあ、少し蒸らしたらちょうどいいですね」

 

 木下君が時間を確認する。

 

 カレーの方も、最後に味を見て調整すれば完成だ。

 

 俺が小皿に少しだけ取り分け、味を確認しようとしたところで、背後から声が聞こえた。

 

「順調そうだな」

 

 振り返ると、天ヶ瀬先輩と如月先輩がこちらへ歩いてきていた。

 

 どうやら各班の様子を見て回っているらしい。

 

「天ヶ瀬先輩。如月先輩」

 

「火の扱いに問題はないか?」

 

「今のところ大丈夫です。火も安定しています」

 

「そうか」

 

 天ヶ瀬先輩は短く答え、かまどの火と鍋の様子を確認した。

 

 大輔たちは、さっきまでの軽い雰囲気が嘘のように静かになっている。

 

 生徒会長と副会長がそろって巡回に来たのだから、緊張するなという方が難しいのかもしれない。

 

「焦げてはいないようだな」

 

「はい。少し火を弱めて、今なじませているところです」

 

 天ヶ瀬先輩は鍋の中を確認し、小さく頷いた。

 

「味は確認したのか?」

 

「いえ、ちょうど今からです」

 

 俺は小皿に少しだけカレーを取り分け、味見用のスプーンですくった。

 

 天ヶ瀬先輩は片手に巡回用の記録用紙を持ち、反対の手には炊事場で使う軍手を提げている。

 

「天ヶ瀬先輩、よければ味を見てもらえますか?」

 

「私が?」

 

「はい。巡回中なら、客観的に見てもらえると思うので」

 

「……そういう理由か」

 

「はい」

 

 料理の現場では、味を確認してもらうため、味見用のスプーンをそのまま差し出すこともある。

 

 それに、天ヶ瀬先輩は両手が塞がっていた。

 

 だから、その時の俺は特に深く考えず、スプーンを口元へ差し出した。

 

 天ヶ瀬先輩は一瞬だけ、目の前のスプーンを見つめた。

 

 そして、何も言わずに顔を近づける。

 

 静かに、カレーを口にした。

 

「……」

 

 その瞬間、班の空気が止まった。

 

 大輔が目を見開く。

 

 木下君は言葉を失ったように口を閉じ、黒瀬君もわずかに目を細めていた。

 

 本田さんは口元へ手を当て、姫岡さんは前髪の奥で固まっている。

 

 俺はそこでようやく、今の行動が普通ではなかったことに気づいた。

 

「……すみません。普通にスプーンを渡せばよかったですね」

 

 天ヶ瀬先輩の動きが、そこで止まった。

 

 さっきまで平然としていた表情が、ほんの少しだけ崩れる。

 

 自分が何をしたのか、遅れて気づいたように見えた。

 

「……いや」

 

 天ヶ瀬先輩は短く答え、視線を鍋へ戻した。

 

「味は、悪くない」

 

「ありがとうございます」

 

「少し置けば、もう少しまとまる。今のままでも問題はない」

 

 隣にいた如月先輩が、楽しそうに目を細めた。

 

「がっせー」

 

「……何だ」

 

「今の、ちょっと可愛かった」

 

「如月」

 

「はいはい。黙るよ」

 

 天ヶ瀬先輩は小さく息を吐き、表情を整えた。

 

「この班は問題なさそうだな」

 

「問題はなさそうだけど、面白いものは見られたね」

 

「如月」

 

「今度こそ黙るって」

 

 如月先輩は笑いながら、次の班の方へ歩き出した。

 

 天ヶ瀬先輩もそれに続く。

 

 その背中を見送ってから、ようやく大輔が口を開いた。

 

「叶多、お前……怖いもの知らずかよ」

 

「何が?」

 

「天ヶ瀬会長に、普通に食べさせてただろ」

 

「味見を頼んだだけだ。深く考えてなかった」

 

 料理の現場なら、味を見てもらう相手にスプーンを差し出すこと自体は珍しくない。

 

 ただ、ここは林間学校の炊事場で、相手は生徒会長の天ヶ瀬先輩だ。

 

 周りから見れば、少し距離が近すぎたのかもしれない。

 

「それが怖いんだよ」

 

 大輔が呆れたように言うと、木下君も困ったように笑った。

 

「たぶん、普通はスプーンを渡す方が自然だったと思うよ」

 

「……それは今気づいた」

 

「気づくのが遅い」

 

 黒瀬君が短く言った。

 

 本田さんは苦笑しながら、鍋へ視線を戻した。

 

「でも、天ヶ瀬先輩もそのまま食べたのよね」

 

「確かに、断られませんでしたね」

 

「そこが意外なのよ」

 

 姫岡さんは何も言わず、鍋の中を見つめていた。

 

「姫岡さん?」

 

「……ううん。何でもない」

 

 そう答えた声は、いつもより少し小さい。

 

 俺は首を傾げながらも、カレーを少しなじませることにした。

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