男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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48話 今年最初の水泳授業

 期末考査最終日。

 

 終了を知らせるチャイムが鳴ると、教室のあちこちから安堵の息が漏れた。

 

「そこまで。筆記用具を置いて、後ろから答案用紙を回収してくれ」

 

 試験監督をしていた教師の指示に従い、答案用紙が前へ送られていく。

 

 俺も手元から離れていく答案を見送り、小さく息を吐いた。

 

 大きな失敗をした感覚はない。

 

 細かい部分まで正解しているかは、答案が返ってこなければ分からないが、前回から大きく順位を落とすような出来ではないと思う。

 

 教師は集められた答案用紙の枚数を確認すると、教室を出ていった。

 

 扉が閉まった直後、前の席に座っていた大輔が、力尽きたように机へ突っ伏した。

 

「終わったぁ……」

 

 教室内でも、似たような声が上がっている。

 

 試験期間中ずっと張り詰めていた空気が、一気に緩んだようだった。

 

「大輔君、お疲れさま」

 

 右隣の水瀬が声をかける。

 

「ああ……しばらく何も考えたくない」

 

「手応えはどうだった?」

 

「悪くはないと思う。数学の最後だけ、ちょっと怪しいけど」

 

 大輔は机に顔を伏せたまま答えた。

 

 何も考えたくないと言いながら、試験の内容はしっかり覚えているらしい。

 

 しばらくそのまま動かなかったが、不意に何かを思い出したように顔を上げた。

 

「よし。明日は水泳だな」

 

「期末考査が終わって、最初に出てくるのがそれなんだね」

 

 水瀬が苦笑を浮かべる。

 

「終わった試験のことを考えても仕方ないだろ。これからの楽しみを考えた方がいい」

 

「切り替えが早いね」

 

「引きずったって点数は変わらないからな」

 

 大輔はもっともらしく頷いた。

 

 試験が終わったばかりだというのに、本人の意識はすでに明日の水泳授業へ向いているようだった。

 

「叶多は泳げるのか?」

 

「授業で困らない程度には」

 

「普通ってことか」

 

「そうだな」

 

 泳ぐこと自体は嫌いではない。

 

 ただ、特別に速いわけでも、得意な泳法があるわけでもなかった。

 

「直樹は?」

 

「僕も一通りは泳げるよ」

 

「なんか直樹は速そうなんだよな」

 

「そう言われても困るけどね」

 

 水瀬はそう答えながら、机の上に出していた筆記用具を筆箱へ戻していく。

 

 教室では、明日の水泳授業について話し始める生徒も増えていた。

 

 水着を忘れないようにしろ。

 

 水泳帽をどこへしまったか分からない。

 

 久しぶりだから、きちんと泳げるか不安だ。

 

 話の内容はそれぞれだったが、期末考査が終わった直後ということもあって、どの声もどこか浮ついている。

 

「初回は2時間続きだったよな」

 

「ああ」

 

「泳力確認だけで終わるのかな」

 

「最初に説明もあると思うよ」

 

 水瀬が答える。

 

 男女合同で行われる水泳授業には、更衣室や待機場所をはじめ、いくつかの決まりが設けられている。

 

 初回は実際に泳ぐ時間より、注意事項の説明や確認に使う時間の方が長くなるかもしれない。

 

「まあ、試験よりは何でもいい」

 

 大輔はそう言うと、晴れやかな顔で大きく伸びをした。

 

 期末考査が終わったという実感は、明日になってから本格的に湧いてくるのかもしれない。

 

 ☆

 

 翌日。

 

 空には、久しぶりに青空が広がっていた。

 

 梅雨が明けたわけではないらしいが、朝から日差しが強く、教室の窓から見える校庭も明るく照らされている。

 

「絶好のプール日和だな」

 

 前の席から振り返った大輔が、上機嫌で言った。

 

「昨日まで試験だったとは思えないな」

 

「試験はもう終わった。今日は水泳。それだけ考えればいい」

 

 大輔の中では、期末考査はすでに過去の出来事になっているらしい。

 

 右隣では、水瀬が時間割を確認していた。

 

「1時間目と2時間目だから、ホームルームが終わったらすぐに移動だね」

 

「朝から泳ぐのか」

 

「午後よりは涼しくていいんじゃないかな」

 

 教室内には、水着の入った袋を机の横へ掛けている生徒が多い。

 

 女子たちも近くの席同士で、忘れ物がないか確認していた。

 

 やがて花城先生が教室へ入り、出席確認と簡単な連絡を済ませた。

 

「はいはい、1時間目と2時間目は水泳なー。体育委員を先頭に移動しろ」

 

 花城先生は教卓の上へ出席簿を置き、気だるそうに教室を見渡す。

 

「男子と女子で更衣室が違うから、間違えるなよー。間違えましたじゃ済まないからなー。ほら、さっさと行け」

 

 花城先生に追い立てられ、教室内の生徒たちが一斉に動き始める。

 

 俺も水着の入った袋を手に取り、大輔と水瀬に続いて教室を出た。

 

 男子更衣室は、校舎から渡り廊下を進んだ先にあるプール棟の1階だった。

 

 中へ入ると、すでに何人もの男子が着替えを始めている。

 

「やっぱり水泳が始まると、夏って感じがするな」

 

 大輔が制服の上着を脱ぎながら言った。

 

「確かに、昨日までとは雰囲気が違うね」

 

 水瀬がそう答えながら、手早く着替えを進めていく。

 

 俺も制服を畳み、学校指定の水着へ着替えた。

 

 男子用の水着は、紺色を基調としたシンプルなデザインだった。

 

「忘れ物はないよね?」

 

 先に着替えを終えた水瀬が、水泳帽とタオルを確認しながら尋ねた。

 

「大丈夫だって。水着も帽子もちゃんと持ってきた」

 

 大輔も自分の荷物を確認し、水泳帽を手に取った。

 

 着替えを終えた生徒から、順番に更衣室を出ていく。

 

「早く着替えて行けー。遅れるぞー」

 

 更衣室の外から、花城先生の声が聞こえてきた。

 

「今行きます」

 

 大輔が返事をし、俺たちも更衣室を出た。

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