男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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51話 誕生日の寿司

 母さんとの電話を終え、自分の部屋へ戻った。

 

 ベッドへ腰を下ろしたところで、スマホに新しいメッセージが届く。

 

 送り主は千夏だった。

 

『今日のお昼、みんなでご飯食べに行かない?』

 

 時計を見ると、10時を少し過ぎたところだった。

 

『いいよ。どこに行くんだ?』

 

『それは集合してからのお楽しみ! 11時半に駅前ね』

 

『分かった』

 

 それだけ返すと、千夏からすぐにスタンプが送られてきた。

 

 みんなということは、いつものメンバーだろう。

 

 昼食の予定もなかったため、俺は出かける準備を始めた。

 

 ☆

 

 待ち合わせ時刻の10分ほど前に駅前へ着くと、時計台の下にはすでに見慣れた顔が集まっていた。

 

「叶多、こっち!」

 

 俺を見つけた千夏が、大きく手を振る。

 

 隣には瑞葉と七瀬さん、神崎さんが並び、少し離れたところでは大輔と直樹が話していた。

 

 どうやら予想どおり、いつもの昼食メンバーらしい。

 

「全員そろってるのか」

 

「おう。あとは叶多だけだったぞ」

 

「まだ集合時間前だろ」

 

「早く着く分にはいいだろ?」

 

 大輔が笑って答える。

 

 俺がみんなの前まで来ると、千夏が一歩前へ出た。

 

「それじゃあ、改めて――叶多、誕生日おめでとう」

 

 千夏に続いて、みんなから順番に祝いの言葉をかけられる。

 

 今日が俺の誕生日だと知っている千夏から昼食に誘われた時点で、多少は予想していた。

 

 それでも、こうしてそろって祝われると、少し照れくさい。

 

「ありがとう。みんなで集まってくれたのか」

 

「うん。せっかくだから、みんなでお祝いしようって話してたの」

 

 千夏が笑って答える。

 

「急に呼び出してごめんね。本当はもう少し早く連絡するつもりだったんだけど」

 

「昼の予定はなかったから大丈夫だよ」

 

「よかった。じゃあ、今日はみんなで楽しもう」

 

「ああ」

 

「それで、今日はどこへ行くんだ?」

 

「お寿司」

 

 七瀬さんが即答した。

 

「ここあ、私が言おうと思ってたのに」

 

「もう集まったからいいでしょぉ」

 

「まあ、そうだけど」

 

 千夏は苦笑しながら、駅の向こう側を指さした。

 

「向こうにある回転寿司。駅から近いし、値段も手頃だから、みんなで行くにはちょうどいいかなって」

 

「あそこか。休日は混んでるんじゃないか?」

 

「ちゃんと予約してあるよ」

 

 神崎さんがスマホの画面を見せてくる。

 

 正午から7人で予約が入っていた。

 

「昨日のうちに取っておいたの」

 

「昨日から決めてたのか」

 

「そりゃ、当日に7人で入れる店を探すのは大変だからね」

 

 千夏は当然のように答えた。

 

 朝になって急に思いついたのではなく、前もって全員の予定を確認してくれていたらしい。

 

「それと、今日は叶多の分は俺たちが出すからな」

 

 大輔が口を挟む。

 

「自分の分くらい払うよ」

 

「駄目。誕生日祝いなんだから」

 

 千夏がすぐに却下した。

 

「6人で分ければ、大した金額にはならないよ」

 

 直樹も穏やかに続ける。

 

「でも、高校生同士で奢ってもらうのも悪いだろ」

 

「そう言うと思ったから、もうみんなで決めてあるの」

 

 瑞葉が笑いながら言った。

 

「今日は遠慮しないで食べていいんだよ」

 

「高いお皿も食べていい」

 

 七瀬さんが付け加える。

 

「七瀬さんがそれを言うと、自分が高い皿を食べたいだけに聞こえるんだけど」

 

「私は自分のお金で食べるからぁ」

 

「それはそうだけどさ」

 

 千夏が笑い、周りからも笑い声が上がる。

 

 ここまで全員に言われて断り続けるのも、それはそれで失礼だろう。

 

「分かった。今日はごちそうになるよ」

 

「最初からそう言えばいいんだよ」

 

 大輔が満足そうに頷いた。

 

「そろそろ行きましょ。予約の時間に遅れるわよ」

 

 神崎さんに促され、俺たちは駅の反対側へ向かって歩き始める。

 

 休日の駅前は人が多く、自然と何人かずつに分かれて歩く形になった。

 

 先頭を歩く大輔と直樹の後ろを、七瀬さんと神崎さんが続く。

 

 俺の隣には千夏がいて、その反対側を瑞葉が歩いていた。

 

「叶多君は、寿司だと何が好き?」

 

 瑞葉に尋ねられ、少し考える。

 

「マグロとサーモンかな」

 

「意外と王道なんだね」

 

 千夏が少し驚いたように言う。

 

「まあ、嫌いなネタはほとんどないけどね」

 

「じゃあ、今日はいろいろ食べられるね」

 

「ああ、楽しみだ」

 

「誘った甲斐があった」

 

 千夏が満足そうに笑った。

 

 駅から数分ほど歩いたところで、目的の回転寿司店が見えてくる。

 

 入口の前には何組もの客が待っていた。

 

「予約しておいて正解だったね」

 

「私に感謝してもいいわよ」

 

 神崎さんが冗談めかして胸を張る。

 

「ありがとう、神崎さん」

 

「素直に言われると、ちょっと困るのだけれど」

 

 受付を済ませると、ほとんど待たずに番号が呼ばれた。

 

「7名様ですね。こちらへどうぞ」

 

 店員に案内され、俺たちは店の奥へ進んでいく。

 

 通されたのは、向かい合わせになった広めのボックス席だった。

 

 一番奥に座ると、隣に千夏が座り、七瀬さん、大輔が続く。

 

 向かい側には、瑞葉、直樹、神崎さんの順に座った。

 

「ちょっと狭いけど、全員座れたね」

 

 千夏が隣との間隔を確かめるように座り直す。

 

「このくらいなら問題ないよ」

 

「叶多は奥だから、出るときが大変そうだけど」

 

「途中で席を立つこともないだろ」

 

「そう? まあ、出たくなったら言ってね」

 

「ああ、分かった」

 

「まずはお茶を用意しましょう。食事を始める前に、それくらいは済ませておくものよ」

 

 向かい側から神崎さんが湯呑みへ手を伸ばす。

 

「里穂、私も手伝うよ」

 

 瑞葉が人数分の湯呑みを並べ、直樹が粉末茶を入れていく。

 

「叶多君もお茶でいい?」

 

「ああ。ありがとう」

 

「はい」

 

 瑞葉から渡された湯呑みを受け取っている間に、大輔は注文用のタブレットを手に取っていた。

 

「お茶もできたし、もう頼んでいいよな?」

 

「ええ。待たせたわね」

 

「叶多から決めるか。何にする?」

 

 大輔がタブレットをこちらへ回そうとしたが、間にいる七瀬さんと千夏を越えるには少し遠い。

 

「私が聞くよ」

 

 千夏がタブレットを受け取り、こちらへ画面を傾けた。

 

「叶多は何にする?」

 

「じゃあ、サーモンかな」

 

 画面を見ようと少し顔を寄せると、千夏も確認するようにこちらを向いた。

 

 近い距離で目が合った途端、千夏が小さく息を止める。

 

「どうした?」

 

「な、何でもない。サーモンだね」

 

「ああ」

 

 千夏はすぐに画面へ視線を戻し、注文を追加した。

 

「次、ここあね」

 

「エビと甘エビ」

 

「どっちもエビじゃん」

 

「違う味だからぁ」

 

「それはそうだけど」

 

 千夏は笑いながら、七瀬さんの分も注文へ加えていく。

 

「大輔君は?」

 

「ハマチとマグロ。それから、エビフライの巻いてあるやつ」

 

「最初から結構いくね」

 

「朝から何も食ってないからな」

 

「楽しみにしすぎじゃない?」

 

「寿司なんて、なかなか食べに行かないからな」

 

「お腹を空かせすぎると、かえって食べられなくなるよ」

 

 直樹に言われ、大輔がわずかに顔をしかめた。

 

「それ、もっと早く言ってくれよ」

 

「今初めて聞いたからね」

 

「瑞葉は?」

 

「私は甘エビとイカにしようかな」

 

「直樹は?」

 

「僕は鯛と鉄火巻きで」

 

 千夏が順番に注文を入れ、最後に神崎さんへ尋ねる。

 

「里穂は?」

 

「穴子と茶碗蒸しをお願い」

 

「茶碗蒸しも最初に頼むんだ」

 

「冷めるまで時間がかかるもの。先に頼んでおく方がいいでしょう」

 

「そういえば、里穂は猫舌だったね」

 

「熱いものを無理に食べる趣味はないわ」

 

 神崎さんは当然のように言い切った。

 

「千夏は何を頼むんだ?」

 

「私はサーモンとエビ。あとは食べながら決めるよ」

 

「千夏もエビなんだぁ」

 

 七瀬さんが嬉しそうに反応する。

 

「うん。ここあほどエビばかり食べないけどね」

 

「おいしいから、何皿でも食べられるよぉ」

 

「ほかのネタもちゃんと食べなよ」

 

 全員分を入力し終え、千夏が注文を確定する。

 

 ほどなくして、タブレットから注文品の到着を知らせる音声が流れた。

 

『ご注文の商品が到着します』

 

 音声とともに、注文した皿が専用のレーンに乗って運ばれてくる。

 

「来たぁ」

 

 七瀬さんがすぐに身を乗り出した。

 

「ここあ、袖が醤油につきそうだよ」

 

 瑞葉に注意され、七瀬さんは慌てて腕を引く。

 

「危なかったぁ」

 

 レーンに近い席から皿が取られ、注文した相手へ順番に回されていく。

 

「叶多、サーモン」

 

「ありがとう」

 

 千夏から皿を受け取り、手元に置く。

 

 全員の注文がそろったところで箸を手に取ろうとすると、千夏がこちらを止めた。

 

「ちょっと待って」

 

「まだ何かあるのか?」

 

「せっかくだから、食べる前に乾杯しようよ」

 

「お茶で?」

 

「高校生なんだから、お茶でいいでしょ」

 

 千夏が湯呑みを持ち上げると、みんなもそれに続いた。

 

「それじゃあ、叶多の16歳の誕生日を祝って――乾杯!」

 

「乾杯」

 

 俺も湯呑みを持ち、隣にいる千夏のものと軽く触れ合わせる。

 

「ありがとう」

 

 改めて全員に礼を伝えてから、サーモンを一貫口へ運んだ。

 

 脂の甘みと酢飯の酸味がよく合っている。素直にうまい。

 

「どう?」

 

 千夏がエビを箸でつまんだまま、こちらの反応をうかがっている。

 

「うまいよ」

 

「よかった。店を選んだ甲斐があった」

 

「予約した甲斐もあったわね」

 

 向かい側から神崎さんが付け加える。

 

「ああ。みんな、ありがとう」

 

「それならいいの」

 

 神崎さんは満足そうに頷くと、届いたばかりの茶碗蒸しの蓋を開けた。

 

 立ち上った湯気を見て、すぐに蓋を戻す。

 

「まだ熱そうだね」

 

「だから先に頼んだのよ」

 

「食べられるようになる頃には、みんな2皿目にいってそうだな」

 

 大輔が鉄火巻きを口へ入れながら言う。

 

「別に競争をしているわけではないでしょう」

 

「分かってるって」

 

 大輔は気にした様子もなく、ハマチへ手を伸ばした。

 

「もう次を見てるじゃん」

 

 千夏が大輔の持つタブレットをのぞき込む。

 

「せっかく来たんだから、食べたいものは全部食べないとな」

 

「ずいぶん気合い入ってるね」

 

「たまには贅沢しないとな。今日はそのつもりで5000円持ってきた」

 

「準備いいじゃん」

 

「寿司なんて、そう何度も食べに来ないからな」

 

 大輔は次に食べるものを迷いながら、楽しそうにタブレットを操作していた。

 

「叶多君、次はマグロにする?」

 

 向かい側の瑞葉が尋ねてくる。

 

「そうしようかな」

 

「私もマグロを頼みたいから、一緒に入れておくね」

 

「ああ、頼むよ」

 

 瑞葉がタブレットを操作している横で、直樹は鯛をゆっくりと味わっている。

 

「直樹は鯛が好きなのか?」

 

「うん。淡泊で食べやすいからね。叶多君は白身も食べる?」

 

「ああ。あとで何か頼もうかな」

 

「叶多、食べたいものがあったら遠慮しないでね」

 

 隣から千夏が声をかけてくる。

 

「分かってるよ。今日は素直にごちそうになるって決めたからな」

 

「ならよかった」

 

 千夏はそれ以上口を出さず、自分のエビを口へ運んだ。

 

「おいしい」

 

 千夏は満足そうに頬を緩めた。

 

 俺の誕生日祝いのはずだが、千夏たちも普段どおり楽しんでいるようだった。

 

 祝われることにはまだ少し慣れない。

 

 けれど、こうしていつものメンバーと食事をしていると、変に意識せずに済む。

 

『ご注文の商品が到着します』

 

 再び音声が流れ、マグロの皿が運ばれてきた。

 

「叶多君の分、来たよ」

 

 瑞葉から回ってきた皿を受け取る。

 

「ありがとう」

 

「私も同じのを頼んだんだ」

 

「瑞葉もマグロが好きなのか?」

 

「うん。お寿司に来たら必ず頼むよ」

 

 瑞葉も自分の皿を手元へ置き、さっそく箸を伸ばした。

 

 俺もマグロを一貫口へ運ぶ。

 

「どう?」

 

 隣にいた千夏が尋ねてくる。

 

「おいしいよ」

 

「そっか」

 

 千夏はそれだけ答えると、自分が次に食べるネタを探すようにタブレットへ目を向けた。

 

「千夏は次、何にするんだ?」

 

「どうしようかな。炙りサーモンも食べたいし、ホタテも気になる」

 

「楽しそうだな」

 

「そりゃ楽しいよ。みんなでお寿司を食べてるんだから」

 

 千夏はそう答えたあと、こちらを見上げる。

 

「それに、今日は叶多のお祝いだしね」

 

「ありがとう、千夏」

 

「……うん」

 

 近い距離で目が合うと、千夏の動きが一瞬だけ止まった。

 

 けれど、すぐに七瀬さんの方へ顔を向ける。

 

「ここあ、もう次を頼むの?」

 

「今度は生エビとエビ天巻き」

 

「またエビじゃん」

 

「違うエビだからぁ」

 

「さっきも同じこと言ってたよね」

 

 千夏はいつもの調子で笑いながら、七瀬さんからタブレットを受け取った。

 

「そういえば、前に話してた海の予定、そろそろ決めないか?」

 

 大輔が思い出したように言った。

 

「期末が終わったら決めようって話してたもんね」

 

 千夏がタブレットを元の位置へ戻し、代わりにスマホを取り出す。

 

「叶多は、合宿免許の日程もう決まってるんだよね?」

 

「ああ。7月20日から29日までの10日間だよ」

 

「夏休みに入って、ほとんどすぐじゃん」

 

「早めに取っておきたいからな。帰ってきたあとは、免許の交付を受けに行く予定もある」

 

「生徒会の活動もあるんだよね?」

 

 瑞葉に尋ねられ、頷く。

 

「8月3日と4日は学校へ行くよ。学校説明会の準備と当日の手伝いがあるんだ」

 

「2日間だけ?」

 

「正式な活動はな。5日は予定に入ってなかったんだけど、会長が、生徒会室に集まって宿題も進めないかって提案してくれたんだ」

 

「学校まで行って宿題するのか?」

 

 大輔が不思議そうに聞いてくる。

 

「家でやるより、分からないところを聞き合えるからな。俺も合宿中はあまり進められないだろうし、ちょうどいいよ」

 

「叶多君なら、合宿へ行く前にも進めていそうだけどね」

 

「できるところまではやっておくつもりだよ」

 

「やっぱり」

 

 直樹が納得したように笑った。

 

「直樹は大会、いつなの?」

 

 千夏が尋ねる。

 

「7月25日と26日だよ。勝ち進んだら、そのあとも試合があるけどね」

 

「直樹、試合には出るのか?」

 

「うん。スタメンで出る予定だよ」

 

「1年なのにスタメンなのかよ」

 

 大輔が驚いたように声を上げる。

 

「春から何度か練習試合には出てるからね。でも、先輩たちについていくので精いっぱいだよ」

 

「それでも十分すごいだろ」

 

「日程と会場、あとで送ってよ。近かったら応援に行きたい」

 

 瑞葉がそう言うと、直樹が少し驚いたように目を瞬いた。

 

「うん。決まったら送るよ」

 

「里穂の旅行は?」

 

「8月12日から15日までよ。それ以外なら、今のところ空いているわ」

 

「私は11日から13日まで、家族と出かけるかも」

 

 瑞葉も自分の予定を確認しながら答える。

 

「ここあは?」

 

「だいたい空いてるぅ」

 

「カラオケの予定は?」

 

「誘われたら行く」

 

「それは予定が空いてるってことだね」

 

「うん」

 

「大輔はバイトだよね?」

 

「早めに日が決まれば休みを取れるぞ。土曜日は厳しいけどな」

 

「俺も土曜日は一日バイトだから、できればそれ以外がいい」

 

「じゃあ、海は8月10日ならどう?」

 

 千夏が全員の予定を見比べながら提案した。

 

「俺は空いてる」

 

「僕も大丈夫だよ」

 

「私も」

 

「空いてるぅ」

 

「旅行の前だから、私も問題ないわ」

 

 神崎さんも頷く。

 

「大輔は?」

 

「店長に休みを頼んでみる。まだ1か月近く先なら大丈夫だろ」

 

「じゃあ、海は8月10日で決まりだね」

 

 千夏が嬉しそうにグループへ日程を書き込んだ。

 

「夏祭りはどうする?」

 

 瑞葉が続けて尋ねる。

 

「白鴉神社の夏祭り、8月16日みたいだよ」

 

「俺は行けるぞ」

 

「僕もその日は部活がないね」

 

「私も旅行から帰ってきているわ」

 

「じゃあ、夏祭りもみんなで行けそうだね」

 

 千夏がもう一つ予定を追加する。

 

「海に夏祭りか。夏休みらしくなってきたな」

 

 大輔が満足そうに頷いた。

 

「ほかにも、予定が合えばどこか行きたいね」

 

「全部今決めなくてもいいだろ。空いてる日が合ったら、そのとき考えればいい」

 

「それもそうだね」

 

 千夏はスマホを置くと、届いたばかりの炙りサーモンへ箸を伸ばした。

 

「これで、夏休みの楽しみが2つできた」

 

「俺は叶多のバイクも楽しみだけどな」

 

 大輔が当然のように言う。

 

「それは私も見たい」

 

 千夏もすぐに同意した。

 

「まだ免許も取ってないんだけどな」

 

「先に楽しみにしておくくらいいいでしょ」

 

「ああ。納車されたら見せるよ」

 

「約束ね」

 

 千夏は満足そうに笑い、炙りサーモンを口へ運んだ。

 

 その後も寿司を追加しながら、海で何をするか、夏祭りには何時に集まるかと話は尽きなかった。

 

 食事を終えて会計へ向かうと、俺の分は宣言どおり6人が少しずつ出してくれた。

 

「今日は本当にありがとう。ごちそうさま」

 

「どういたしまして」

 

 千夏が代表するように答える。

 

「次は海だからね。忘れないでよ」

 

「分かってる。俺も楽しみにしてるよ」

 

「ならよし」

 

 店を出ると、昼を過ぎた夏の日差しが駅前を明るく照らしていた。

 

 朝までは、普段と変わらない誕生日になると思っていた。

 

 けれど、みんなに祝ってもらい、夏休みの約束まで増えた。

 

 16歳の最初の日としては、十分すぎるほど楽しい一日だった。

 

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