男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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6話 自己紹介・後編

 次に前へ出たのは、制服の上からでも肩や腕の筋肉が分かる、高瀬明日香(たかせあすか)だった。

 

「高瀬明日香です!」

 

 教室の後ろまで届く、張りのある声だった。

 

「趣味は筋トレです。中学生の頃からボディビルをやっていて、放課後はだいたいジムにいます!」

 

 制服の袖越しでも、しっかり鍛えられているのが分かった。

 

 全体的に筋肉は凄いが、女性らしいしなやかさがあり、そこまでごつい印象は受けない。

 

「高校ではジュニア大会で優勝するのが目標です。筋トレに興味がある人は、いつでも声をかけてください!」

 

 屈託のない笑顔で頭を下げる。

 

 見た目どおり、身体を鍛えることが心から好きらしい。

 

 その後、2人の男子が自己紹介を終える。

 

「次、槻山くん」

 

「はい」

 

 名前を呼ばれ、俺は席を立った。

 

 教卓の横へ向かうと、クラス全員の視線が集まる。

 

 昨日の出席確認とは違い、今度は俺がどんな人間なのかを確かめるような視線だった。

 

 少し緊張はする。

 でもまぁ高校生の自己紹介くらいなら、問題ない。

 

槻山叶多(つきやまかなた)です。市立楠木中学校から来ました」

 

 教室を見渡しながら、落ち着いて言葉を続ける。

 

「趣味と特技は料理です。和食は一通り作れますが、一番得意なのはイタリアンです」

 

 何人かが興味を引かれたように、こちらへ視線を向けた。

 

「高校進学を機に一人暮らしを始めたので、最近は献立を考えるのも楽しみの一つです」

 

 一人暮らしという言葉に、教室がわずかにざわつく。

 

「高校では勉強だけでなく、学校行事や新しいことにも積極的に挑戦したいと思っています。1年間、よろしくお願いします」

 

 軽く頭を下げると、教室から拍手が返ってきた。

 

 席へ戻ると、隣の千夏が小声で話しかけてきた。

 

「イタリアンが一番得意って、なんか本格的だね」

 

「そうかもね」

 

「高校生の得意料理って言ったら、普通はカレーとか炒飯とかじゃない?」

 

「それも作るけど、パスタやリゾットの方が得意かな」

 

「へえ。ちょっと食べてみたいかも」

 

「機会があれば、ご馳走するよ」

 

「本当? じゃあ期待してる」

 

 千夏は軽く笑うと、前へ向き直った。

 

 自己紹介はそのまま続いていった。

 

七瀬(ななせ)ここあさん」

 

「はぁーい」

 

 もう一人のギャルだ。

 

 メイクや制服の着こなしは華やかだが、目元は眠たげで、どこか気の抜けた表情を浮かべている。

 

「七瀬ここあでーす。趣味はカラオケとぉ、服とかアクセ見ること。あと、寝ることかなぁ」

 

 一拍置いて、小さな欠伸を噛み殺す。

 

「高校ではぁ……まあ、楽しく過ごせたらいいなって思ってまーす。よろしくぅ」

 

 最後まで間延びした調子だった。

 

 派手な見た目に反して、かなり気だるげでマイペースな性格らしい。

 

 さらに一人の男子を挟み、次の女子が前へ出る。

 

雛森瑞葉(ひなもりみずは)です」

 

 柔らかな声だった。

 

 瑞葉は穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと教室を見渡す。

 

「趣味は水族館へ行くことと、家にある小さな水槽の世話です」

 

「水の中をゆっくり泳いでいる魚を見ていると、落ち着くので好きです」

 

 話し方にも、どこか落ち着いた雰囲気がある。

 

「高校ではいろいろな人と話して、楽しい思い出を作れたらと思っています。これからよろしくお願いします」

 

 丁寧に頭を下げる。

 

 派手な自己紹介ではない。

 

 それでも、柔らかな声と穏やかな笑顔が、不思議と印象に残った。

 

「次、火野さん」

 

「はい」

 

 隣に座っていた千夏が立ち上がる。

 

 教卓の横へ立つと、緊張した様子もなく、明るい笑顔を浮かべた。

 

火野千夏(ひのちなつ)です。趣味は写真を撮って、SNSに投稿することです」

 

「服とかカフェとか、可愛いと思ったものをよく載せてます」

 

 大勢から注目されても、話し方にはまったく迷いがない。

 

「高校では友達をたくさん作って、楽しい思い出をいっぱい残したいです。気軽に話しかけてね。1年間よろしく!」

 

 千夏が軽く手を振る。

 

 教室から、ひときわ大きな拍手が起こった。

 

 明るく、人前で話すことにも慣れている。

 

 クラスの中心になるタイプなのだろう。

 

 千夏が席へ戻ると、再び男子の自己紹介が続いた。

 

 そして、次の女子の名前が呼ばれる。

 

「次、姫岡さん」

 

「え、あ、はい」

 

 姫岡(ひめおか)みはるは一拍遅れて立ち上がった。

 

 長い前髪が目元を完全に覆っている。

 

 少し背中を丸めながら教卓の横へ向かい、クラス全員の前に立った。

 

「ひ、姫岡みはるです。趣味はアニメと漫画と、ゲームです」

 

 最初こそ言葉に詰まっていたが、好きなものの話になったからか、少しずつ声がはっきりしていく。

 

「特にロボットアニメが好きで……『紫電のレガリア』が一番好きです」

 

 紫電のレガリア。

 

 名前なら聞いたことがある。

 

 何年も続いている人気シリーズだったはずだ。

 

「機体のデザインも格好いいんですけど、戦闘シーンの演出とか、登場人物同士の関係も丁寧に描かれていて……特に第2期の最終決戦は――」

 

 そこまで勢いよく話したところで、みはるの言葉が止まった。

 

 教室中から視線を向けられていることに気づいたらしい。

 

「あ、えっと……すみません。話しすぎました」

 

 急に声が小さくなる。

 

「こ、高校では、同じ趣味の友達ができたら嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 みはるは頭を下げると、少し早足で席へ戻っていった。

 

 話し始めには詰まるようだが、会話そのものが苦手というわけではなさそうだ。

 

 好きなものについてなら、むしろ止まらなくなるタイプらしい。

 

 その後、何人かの男子が自己紹介を終える。

 

「次、本田さん」

 

「はい」

 

 明るく柔らかな返事が聞こえた。

 

 本田(ほんだ)ゆりのが席を立つ。

 

 縦にも横にも存在感のあるぽっちゃり女子。

 

 彼女が前へ出ると、自然と教室中の視線が集まった。

 

「本田ゆりのです。趣味は料理と食べ歩きです」

 

 ゆりのは緊張した様子もなく、親しみやすい笑顔を浮かべた。

 

「特にお菓子を作るのが好きで、クッキーやケーキをよく友達に配っています。美味しいお店を探すのも好きなので、おすすめがあったらぜひ教えてください」

 

 食べるだけではなく、作る方も好きらしい。

 

 料理という共通点には、少し親近感が湧いた。

 

「高校でも、いろいろな人と仲良くなれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 ゆりのが丁寧に頭を下げる。

 

 教室から返った拍手は温かかった。

 

 近くの席にいる男子たちも、自然と笑顔になっている。

 

 見た目の印象は強いが、それ以上に話し方と笑顔が柔らかい。

 

 人当たりがよく、周囲から好かれるタイプなのだろう。

 

 自己紹介はさらに続いていく。

 

「次、水瀬くん」

 

「はい」

 

 落ち着いた返事とともに、水瀬直樹(みなせなおき)が席を立った。

 

 例のイケメンだ。

 

 教卓の横へ向かうだけで、教室にいる女子たちの視線が自然と集まる。

 

「水瀬直樹です。趣味は身体を動かすことと読書です。中学ではバスケットボール部に入っていました」

 

 聞き取りやすい声だった。

 

 話し方にも余裕があり、大勢の前に立っても緊張した様子はない。

 

「高校でも勉強と部活動を両立しながら、充実した3年間にしたいと思っています。気軽に話しかけてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 直樹は爽やかな笑顔を浮かべ、軽く頭を下げた。

 

 直後、女子たちを中心に大きな拍手が起こる。

 

 顔がいい。

 

 背も高い。

 

 運動もできるのか。

 

 A組にいるという事は勉強もできる。

 

 そのうえ、話し方にも嫌みがない。

 

 女子たちの視線が集まるのも当然だろう。

 

 彼女を作るという意味では、間違いなく手強い相手になりそうだ。

 

 だが、相手が優れているからといって、俺が諦める理由にはならない。

 

 競うのなら、自分もそれ以上に努力すればいい。

 

 そう思いながら、俺も直樹へ拍手を送った。

 

 それから残った男子たちの自己紹介も終わり、最後の生徒が席へ戻る。

 

「はい、お疲れさまでした」

 

 花城先生が名簿を閉じた。

 

「一度に全員を覚えるのは難しいと思いますが、これから毎日顔を合わせます。少しずつ話していってください」

 

 教室を見渡す。

 

 名前と顔。

 

 趣味や性格。

 

 昨日の出席確認だけでは分からなかったものが、少しだけ見えてきた。

 

 個性的な人間ばかりだ。

 

 このクラスで、これから1年間を過ごすことになる。

 

 そう考えると、昨日よりも少しだけ高校生活の実感が湧いた。

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