男女比100対1で男が多いとかマジ終わってる   作:ののじん

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7話 学園生活の始まり

「はい、お疲れさまでした」

 

 花城先生が名簿を閉じる。

 

「一度に全員を覚えるのは難しいと思いますが、これから毎日顔を合わせます。少しずつ話していってください」

 

「それでは、続けてクラスの委員を決めます」

 

 花城先生が黒板へ向き直り、新たに文字を書き始めた。

 

『学級委員長』

 

『体育委員』

 

『図書委員』

 

『保健委員』

 

『美化委員』

 

「今決めるのは、この五つです。それぞれ一人ずつ。文化祭などの実行委員は、必要になったときに改めて決めます」

 

 教室が少しざわつく。

 

 男子たちは周囲の様子を窺い、女子たちも黒板へ視線を向けていた。

 

「まずは学級委員長。希望者はいますか?」

 

「はい」

 

 花城先生が言い終えた直後、迷いのない声が上がった。

 

 手を挙げたのは神崎里穂だった。

 

 背筋を伸ばし、周囲から視線を向けられても動じていない。

 

「私がやります」

 

 堂々としたものだ。

 

 自己紹介のときにも感じたが、人前に立つことには慣れているらしい。

 

「ほかに希望者はいますか?」

 

 花城先生が教室を見回す。

 

 新たに手を挙げる者はいなかった。

 

 俺も立候補するつもりはない。

 

 生徒会に入るつもりなら、クラスの委員まで引き受けるのは避けた方がいいだろう。

 

「では、学級委員長は神崎さんにお願いします」

 

「分かりました」

 

 里穂は当然のように頷いた。

 

 自信はあるが、嫌々引き受けたようには見えない。

 

 責任のある立場を進んで引き受けられるのは、素直にすごいと思う。

 

「次は体育委員です。希望する人――」

 

「はい!」

 

 今度は花城先生が言い終えるより早く、勢いよく手が上がった。

 

 高瀬明日香だ。

 

「私がやります!」

 

「ですよね」

 

 花城先生は最初から予想していたように頷いた。

 

 趣味は筋トレ。

 

 中学生の頃からボディビルに取り組み、高校ではジュニア大会優勝を目指している。

 

 明日香以外に適任者がいるとは思えない。

 

「ほかに希望者は?」

 

 誰も手を挙げない。

 

 というより、明日香と争う理由がないのだろう。

 

「では、体育委員は高瀬さんで」

 

「はい! 頑張ります!」

 

 明日香は嬉しそうに拳を握った。

 

 委員の仕事というより、これから運動できることを喜んでいるようにも見える。

 

 その後、図書委員には田村悠人、保健委員には坂井蒼真、美化委員には石川湊が立候補した。

 

 特に揉めることもなく、委員はあっさりと決まった。

 

「決まるのが早くて助かりました」

 

 花城先生は満足そうに黒板を見上げた。

 

「委員になった皆さんは、今日の放課後に一度だけ職員室へ来てください。詳しい仕事について説明します」

 

「はい」

 

 委員に決まった五人から返事が上がる。

 

「ほかの皆さんも、全部を委員に任せきりにしないように。クラスの仕事は全員で協力してくださいね」

 

 普段は少し気の抜けた雰囲気の花城先生だが、こういうところはきちんとしている。

 

「以上です。ちょうどいい時間ですね」

 

 その言葉とほとんど同時に、ホームルームの終了を告げるチャイムが鳴った。

 

「それでは、次の授業の準備をしてください」

 

 花城先生が教室を出ていく。

 

 張り詰めていた空気が緩み、教室が再び騒がしくなった。

 

「里穂ならやると思った」

 

 隣で千夏が何気なく呟いた。

 

「向いてそうだな」

 

「うん。仕切るの得意だし、仕事もちゃんとやるから」

 

 千夏の口調には、里穂への信頼が感じられた。

 

 見た目や第一印象だけでは分からないものが、これから少しずつ見えてくるのだろう。

 

 俺は机の中から教科書を取り出した。

 

 ほどなくして1時間目の教師が教室へ入ってくる。

 

 最初の授業は数学だった。

 

「それでは、教科書の6ページを開いてください」

 

 教師の声とともに、教室中で一斉にページをめくる音が響く。

 

 入学して最初の授業だ。

 

 中学の内容を軽く復習するところから始まるのかと思っていたが、その考えはすぐに改めることになった。

 

 教師は基礎を簡単に確認すると、そのまま高校の範囲へ入っていく。

 

 説明も板書も速い。

 

 さすがは聖凰学園。

 

 油断していれば、あっという間に置いていかれそうだ。

 

 もっとも、今日扱う範囲には事前に目を通してある。

 

 教師の説明を聞きながら、要点をノートへまとめていく。

 

 俺は天才ではない。

 

 一度聞いただけで、すべてを理解できるような頭は持っていない。

 

 だからこそ、予習と復習は欠かさない。

 

 授業中は余計なことを考えず、教師の説明へ集中した。

 

 やがて、1時間目の終了を告げるチャイムが鳴る。

 

「今日はここまで。次の授業までに、例題をもう一度確認しておくように」

 

 教師が教室を出ると、張り詰めていた空気が緩んだ。

 

 教科書を入れ替えたり、席を立って身体を伸ばしたりと、クラスメイトたちが慌ただしく動き始める。

 

「叶多、字綺麗だね」

 

 隣から声がした。

 

 千夏が俺の開いたままのノートを覗いている。

 

「そう?」

 

「うん。すごく見やすい」

 

「ありがとう」

 

 そう答えながら、千夏のノートへ目を向ける。

 

 黒板の内容だけでなく、教師が口頭で補足した部分まで短くまとめられていた。

 

「千夏も、ノートをまとめるの上手いな」

 

「授業速かったからね。後で分からなくならないように書いといただけ」

 

「それでも見やすいよ」

 

「じゃあ、お互いノートには困らなそうだね」

 

「休んだときは頼らせてもらうよ」

 

「いいけど、叶多も見せてね」

 

「もちろん」

 

 そんな話をしているうちに、廊下から次の教師がやって来るのが見えた。

 

 俺たちは会話を切り上げ、それぞれ次の授業の準備を始めた。

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