皇帝(一般TS転生者) 作:ルドルフ応援隊下っ端
結局小学生の生活は告白イベントが最も印象強いまま終わった。思い返すと、記憶にはきっちぃ教育か本か走るかで埋め尽くされていた。スローライフ?いえファストライフです。
俺別に自分から突っ込んでいっているわけではないのだ。金持ちであるシンボリ家と疎遠になるのは駄目も駄目。取り付く島がなくなる。よって従うしかないのだ。すると人生は一瞬にして灰色になった。慣れてるからいいんだけども、これ本来ならピュアルドルフやってたんだよね?怖。
そうして中学生になった俺。普通の近所の中学に通っていた。ここで察しのよい人間は気づくだろう。あれトレセン学園行かないの?と。当たり前だのクラッカー。俺は別に先頭民族でも競走中毒でも何でもない。高等部からでも入れるのに何故入らなければならない、ん?
ということで高等部からトレセン学園に入るという条件付きで家族を説得しますた。ということで中学の間はまた、小学生のころをリピートすることとなった。
「ねぇシンボリルドルフ、どうしてこんな学校に通ってるの? 私らへの当てつけか何か?」
「いいや、そういうわけではない……決して」
そんな俺は今、放課後廊下で同学年のウマ娘に壁ドンされていました。周囲にも何人かのウマ娘がおり、明らか友好的な雰囲気ではない。俺は空気が読めるタイプなのである。
「じゃあなんでトレセン学園に入ってないのよ」
壁ドンしているウマ娘が、じろっと俺を見る。クラスの子だったか? 君K君と似てるね、ほら夏目漱石の作品に出てくる。失礼か。
「何か言ったらどうなの!」
ドン、と肩を押される。壁にもろにぶつかるが、別に痛くも痒くもない。分かるか? 上司に突き飛ばされた時は机にダイブしたのだから。
「フフ……甘いな」
「?! あんた……」
今度は何か得たいの知れないというか、若干可哀そうなものを見る目で俺を見てきた。どこに可哀そうという要素があったのか。
「兎に角! あんたは絶対に走らないで!」
まるでヤンキーのいいそうな捨て台詞を吐き、彼女たちは去っていった。言われなくても言われなければ走りませんよ。何度も言うが俺は先頭民族でも競走中毒(ry。
「まったく……難儀なものだな。何行でもそれについて書けるだろう」
いずれはサイコロ本を目指してもいいかもしれない。
そんなこんなで続く学校生活。ついに体系数学とかいう正直高校では使わなかった記憶しかない数学がみっちり始まる。しかしである。中学数学など高校数学を利用すればより楽に解くことができるのだ。
「凄いねシンボリルドルフ。もう高校の範囲まで勉強したのかい?」
「ええまあ。知っていると便利なので」
ハハハ元から知っているというのはこうも優越感が沸くものなのか! 前世勉強しておいて良かった。
「やっぱり高校はトレセン学園に行くのかい?」
「ええ。そうなると思います」
「そうかそうか。頑張ってね」
アラサーの無精ひげを生やした先生が、微笑みながら去っていく。すると代わるように一人の女子生徒が俺の前の席へと座った。
「ういーっす。調子はどう?」
「普段通りだ」
こんな調子で話しかけてくれる唯一無二の存在、長谷花である。人間で恐らく他にも友達はいるであろうに、俺によく話しかけてくれている。昔何故かと聞いたことがあるが、本人曰くウマ娘が好きだかららしい。
「それならいいじゃん。あ、そういやマルゼンスキーまた勝ったの知ってる?」
「ああ、短距離Sか」
「そそ、でもなんか脚部に不安が出てるらしいよ」
「見た。私もウマッターのアカウントを持っているからな」
私服のズボンからスマホを取り出し、ウマッターを開く。そろそろウマックスに変わると思うが、まだその時ではない。しかしてこういうメディアは情報が回るのが早い。新聞も早いが、速度で言うと圧倒的である。なお信頼性はマリアナ海溝レベルだ。
「へぇルナもウマッターやってたんだ。どれどれ……って通知凄い溜まってるけど大丈夫?」
「ああ、前から時々気分でポストしていたんだが、それが大なり小なり反応されたんだろう」
しかし不思議だ。通知が99+もある。気になって通知欄を見てみると、総通知数が20000でした。あれ……?桁見間違えたかな?
「めっちゃ来てるじゃん! どれどれ私も調べてみよ」
長谷が興奮気味に自身のスマホをポチポチと触る。
「お! これかな?!」
見せてきたのは俺のアカウントの画面。前に撮った証明写真をそのままアイコンにした、至ってどこにでもありそうなアカウント。
しかしフォロワーの数が結構あった。前見た時よりうん十倍はあった。確実に。
「何ポストしてんの?」
「いや、ただの風景写真とかそれくらいだ」
「確かに……でもその風景写真どれもこれも豪華過ぎでしょ!」
長谷がくわっと表情を険しくして、俺にスマホ画面を叩きつけた。我らが母親スイートルナとスピードシンボリのツーショットが写っている。うん確かに昔血迷って投稿したわそれ。
「これのどこが”ただの”風景写真なの?!」
「確かにそれは普通ではないが、それくらいだろう」
「それだけならね……で何で他の投稿が外食で食べたものの写真とか、旅行行った時とかの写真ばかりなの? ルナ写ってないし中年みたいなんだけど。蕎麦て」
”中年”という言葉が俺へドロップキックを決める。いやいや。逆に他に何投稿しろってんだ。前世ずっとこれでやってきたんだから、今更どう変えろと。反抗しようと思ったが、相手はメディアプロだ。分が悪い。適当にはぐらかしていたら長谷は呆れたように去っていった。俺は悪くない。きゃぴきゃぴできるわけない。
一先ず折角ウマッター開いたことだし、更新でもしておきますか。何を書こう。うんむ……あそうだ。お勧めの本を紹介すればいいのだ。
しばらくして。特定の本だけ売上が上がったとか、上がってないとか。
そうしてきっちぃ教育をも何とか耐え続け、俺は編入試験をパスし、遂に来た。いや来てしまった。
――――――トレセン学園に。
「ここがトレセンか……面白そうなところじゃねぇか」
「シリウス、まだ初日だろうに。こういうのは初頭効果といって最初のイメージが重要になってくるのだぞ?」
デッカイリボンにセーラー服基調の濃青の線の入った服。そしてスカート。……スカート。なんで忘れてたんだ。スカートではないか。当たり前ではないか。もっと早く対策しておけば、朝30分も鏡の前で手に汗握ることはなかったのに。俺も耄碌したんか……
結局覚悟を決めて着た時、鏡の前にはまさしく会長の姿があった。お久しぶりでございます。
今からの入学式で残念ながら俺は新入生代表をする。残念だがこれは遅れられない。上司うんぬんかんぬんというか社会人として常識だろう。
「さ、早く行こう。入学式が始まってしまう」
「そうだな」
シリウスの後について、俺もトレセン学園の門を越える。
はぁ。憂鬱だ。某アニメのタイトルの憂鬱と同じくらい憂鬱だ。確実に今俺は会長と同じ道を沿っている。あれゆっくりどこいったー?
大丈夫だぁ。生徒会長にならなければ大分マシなはずである。そうに違いない。
そう信じ、俺はこれから始まる生活に、ある意味胸を躍らせた。今は一ファンとして喜ぼうではないか。心の中で宝塚記念のファンファーレでも鳴らしてやろう。
「あ、そうだ。記念だから写真撮っておこう」
先行くシリウスの首根っこを掴み、ポケットから取り出したスマホの画面におさめる。
「ちょおい何す――――」
「はいチーズ」
カシャッとシャッター音が響く。写真を見ると営業スマイルの俺と慌てるシリウスが写っていた。うんばっちり。後でウマッターにでも載せておこう。