皇帝(一般TS転生者)   作:ルドルフ応援隊下っ端

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六話:久しぶり、だと……?!

おはよう諸君。今日は待ちに待った選抜レースの日である。

 

……否、嘘である。別に待ちに待ったわけではない。当たり前だろうが。俺は先頭民族でも(ry

 

閑話休題。走るからには勝たなければならない。真面目にしないのは舐めプと一緒なのである。

 

「シンボリルドルフさん! 次出走なのでお願いします!!」

 

係員らしき人間呼ばれ、ゲートへと向かう。

 

『さぁやってきました春の選抜レース!! 続いては芝2400m。9人のウマ娘が競います!』

 

ちゃんとしたレースでもないのにある実況の大きな声を聞きながら、俺はターフに立った。向こう正面まで広がる芝の道は、今世でようやく見ることのできた、競馬ファンにとって夢のような道だ。

 

振り返ると、観戦席には人だかりが出来ている。先ほどまでより多い。まぁ恐らくは俺という存在を見に来たのだろう。シンボリ家だからな。

 

……さて、走るとしますか。

 

思考を切り替え、ゲートへ入る。3番、内枠。有利だ。

 

やがて他のウマ娘達も揃う。

そして―――――――――

 

ガコン、とゲートが開いた。

 

 

 

 

 

 

『さぁ一斉にスタートを切りました。おっと5番パラダイスキング少し遅れたか』

 

風を切る感覚が頬を撫でる。今世でしか味わえない、特別な感覚。

 

響く解説を片耳に挟みながらいち早く先頭に立った俺は、少しだけ速度を落とす。シンボリルドルフの脚質は先行や差しなのだ。所詮脚質なんて人間が付けた名前に過ぎないので、変えようと思えば多分変えれる。

 

そして俺は思うのだ。ゲートってガコンというより、カシャンとかの方が音として合っているのではないかと。

 

そうこう思っていると、斜め前を一人のウマ娘が遮った。

 

「シンボリだからって、好きにはさせないわよ!」

 

そう叫ぶ。その威勢や大変よろしい。青春ってやつだ。青いねぇ。

そして俺の返しは定型文。

 

「なら止めてみろ」

 

第四コーナーに入る直前に俺は一瞬速度を落とし、外へ出る。体力に余力がある場合、することは至って単純だ。

 

外から捲ればいいのである。単純明快。至極当然。

 

『さぁ最後の直線!! ここでシンボリルドルフが動いた!』

 

ターフに体重を落とし、脚力を沈むように前へと流す。足を前へ、前へと送る。

 

『外から一気に抜き去っていく!!早い早い!!圧倒的だ!!』

 

全てが遅く感じるような感覚に陥ったまま、俺はゴールを駆け抜けた。

 

『シンボリルドルフ一着でゴールイン!! 二着と3バ身も突き放した!!』

 

よし。万事抜かりなし。

 

軽く息を整えながら視線を上げると、先ほど宣戦布告してきたウマ娘の子と視線が合った。信じられない、といった目をしていた。この体がシンボリルドルフということを強く再認識した。

 

しかし悠長にしている場合ではない。この後の展開はそう。

 

「君! ぜひ私のチームに来てくれないか?!」

 

砂糖を見つけた蟻のごとく駆け寄ってくるトレーナーの群れがやってくるのである。

密です、という言葉は忘れたのかと言いたくなるほど何人もやってくる。例の都知事キレるよ?

 

「君なら三冠も夢じゃない!」

 

取れるよ三冠。史実通りなら。

 

さてどうしよう。トレーナー契約は重要だが、だからこそ慎重に選ばなければならない。

ここは一旦断ろう。思い切りが大事である。

 

「すまない、私はまだトレーナー契約をするつもりは―――――――」

「ちょ、ちょっとすみません!!」

 

トレーナーの輪の間を縫って現れたのは、同い年くらいの青年だった。学校間違えたか?と思ったが、胸元で輝くバッチを視界に入れトレーナーであると分かった。

 

そうか。この子あれだ。例の最年少トレーナーってやつだ。小並感のある凄いねを送ろう。そんなことを思っていると、青年は俺の前に立ち、衝撃の言葉を放った。

 

「久しぶりだね、ルドルフ!」

 

 

 

久 し ぶ り?

 

ツララに貫かれたような感覚に陥る俺。

 

「……おい、今ルドルフって呼ばなかったか?」

「呼び捨て?」

「新人だよな……?」

 

周りのトレーナー達もざわざわと騒ぐが、台風の目である青年は周りに目もくれず俺を見ている。

 

俺は一度深呼吸した。

 

「……少し、あっちで話そうか」

 

 

 

 

 

 

半ば連行に近い形で青年を近くの人気のない場所に連れ込む。

 

「それで、続きだが……」

「……僕だよ? 僕。覚えてくれてる?」

 

期待の眼差しが俺を貫く。その視線が痛い。致命傷だ。

 

思い出せ。思い出せ。じゃなきゃ俺はアズカバンにでも送られそうだ。

 

……

 

……そうだ。俺をルドルフ呼びするやつなんてごく僅かだ。基本仲のいい子は不本意ながらルナ呼びであるからだ。ルドルフ呼びするのはシリウスと……あ!

 

今、授かった。子宝じゃない。

 

「まさか、小学生の時に告白してきた……?」

「そうそれ!! あれから必死に勉強してトレーナーになったんだ!!」

「……!」

 

な、何だって?! いやマジで。小学生の時君そんな勉強してなかたよね? 中学の三年で合格したってことかよ。

 

前世勉強時間と日々悪戦苦闘していた俺は目の前で何でもないことのように笑う青年を、得体の知れないやつだと思った。

 

「凄すぎやしないか……」

「頑張ったよ。でもこれで約束を果たしてもらえるかなって思うと頑張れたんだ」

「約束か……」

 

確かに言った。トレーナーになった時は契約してやると。

 

「君は凄いな……所詮は口約束でしかないあの約束のためにそこまでできるのか……」

 

この世の中は理不尽だ。口約束で交わしたものなんて、相手にとっちゃそんなんありましたか?記憶にございませんで終わる。俺だって前世で何回も苦渋を飲まされた。

 

だが、青年は違った。

 

「だって僕にとっては、大事な約束だから」

 

そう言って屈託のない笑みを浮かべた。その瞬間、俺は天晴れだと思った。

 

「あっはははは!」

「?」

「面白い。どうやら君は私とは違うようだ。それゆえに、面白い。約束通り君と契約をすることにしよう」

「本当?! ありがとう!!」

 

こういう時は握手だな、と思い右手を差し出す。すると青年は急にキョドり始めたが、少しして恐る恐る俺の手を握った。

 

「よ、よろしくね」

「ああ、これから共に頑張ろう」

 

そうして俺のトレーナー確保はあっさりと終わりを告げた。

 

「そういえば自己紹介してなかったね。僕の名前は五百籏頭満(いおきべみつる)

「んん? いおきべ……? 初めて聞く名前だ」

「それよく言われるよ」

「ああ。いいお気分だべ」

「?そうだね」

 

 

 

 

 




ここで序章終わりにしようかな。
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