犯罪組織に対抗する為、武力で問題の解決にあたる探偵、通称"武偵"俺はその学校に通う普通の高校生とは少し違った学生だ。
武偵にはランクがあり、S.A.B.C.D.Eといった順でありSランクだなんてそうそうなれるものではない。
その中でも俺は落ちこぼれに分類するランクE、最低ランクだが今の俺には丁度良い。
さて、そんな俺は今は布団の中だ。
「……ちゃん…………ちゃんってば!………………」
「うっう~ん」
「もう!“双ちゃん”!朝だよ!起きて!」
「あと、五分……………………」
「お・き・て」
「!!!?」
どうやら布団を剥がされたらしい。
「寒い………」
「そんなに寒くないよ!ほら、朝ご飯冷めるから起きて!」
「あっあぁ」
コイツは幼馴染みの篠原望海《しのはらのぞみ》、訳があって一緒に暮らしている。
家事全般、望海に任せっきりになっている。
「あっそうだ、双ちゃん。私、今日帰り任務で遅くなるから!」
「了解。流石、Aランク武偵だな。落ちこぼれの俺とは違うな」
「皮肉ばっか言わないの!双ちゃんだって本気出せばすぐだよ?」
「どうだろうな………Eランクって事はそういう事だ」
「でも双ちゃん」
「ほら、遅刻するだろ?支度しろって」
「うっうん……」
納得はいってない顔だな。
「いただきます。」
俺はテーブルに付き朝食を食べる。
朝から煮物か何時から起きてるんだ?
俺の好きな味付けだし。
「ご馳走様」
「はいお粗末様。双ちゃん、防弾ネクタイ曲がってるよ」
「すまない」
望海がネクタイを直してくれる。
「あと、ホルスター?と銃だよ」
「装備の名前、覚えられるだろ?」
「だって、よく分からないんだもん。それに私は“コレ”の方が好きだし」
そう言い望海は腰に着けている“日本刀”を見せる。
望海は銃の扱いが一切できないだけではなく装備系の名前と物が一致しない。
よく、Aランクになれたな本当。
「正に武士だな」
「違うよ!皆してすぐそう言う!」
「日本食ばっかだし」
「健康的で良いでしょ!私はオムライス好きだもん!」
「なら子供だな」
「違うもん!」
「その何々だもんがまさに」
「いじわる!双ちゃんなんて知らない!事件に捲き込まれても助けてあげないから!」
「縁起悪い事言うなよってかそこは助けてくれよ」
「武偵なら自分でどうにかして!」
「んな事わかってるよ。今日ケーキ買ってくるから機嫌直してくれよ」
「本当!?プリンチーズケーキ忘れないでね!」
「あいよ」
そのケーキ美味しいのかと聞きたかったが面倒だから止めておいた。
雑談をしながら俺は望海と学校へと向かう。
[武偵高]
「それじゃね双介君」
「あぁ、またな」
俺と望海はそれぞれの教室に向かう。
学校では双ちゃんと呼ばない約束だ。
「はようさん」
教室の中に入る
「ちっEランクかよ」
「どうどうと入ってくるなよ」
「落ちこぼれが」
周りの野次が聞こえる。
まぁ、当然ちゃ当然か。
なんせEランクだからな。
落ちこぼれのEランクなんて呼ばれてるんだ、嫌味なら歯肉なんて当たり前か。
「……………………」
俺は無視をし自分の席についた。
「ソウスケ!おはようネ!」
「おはよう、“カユゥ”」
コイツの名前は“リン・カユゥ”日本人と中国人のハーフで席が隣だ。
装備品を売買していてお世話になっている。
「ソウスケ、聞くネ。新しい弾薬が入ったネ!買うネ!」
「こないだ買ったばっかだから無理だ」
「そんなの聞いてないネ!」
「だろうなネットで買ったからな」
「ダメネ!ネットのは当たり外れアルネ!」
「間に合わせで買ったんだ」
「イケナイネ!」
などと騒いでると
「………うっさい」
教室に入ってきた一人の女子が言う。
すると、周りの声も静かになる。
「はぁ…………」
「おはよう“有川”」
「…………………おはよ」
嫌々ながらも挨拶を返してくれた。
「ふん……………………」
すると俺の席の前に座る。
「姫!おはようネ!」
「うっさい」
「ハイハイ、それよりそんなにイライラして女の子の日カ?」
「はぁ?」
かなり不機嫌な顔で返事をする。
カユゥと話してる女子の名は
このクラスは有川に逆らえない。
コイツも一般で入ってきた一人、ちなみに同じ中学出身だ。
胸のサイズはFカップらしい
「……………………次胸見たら殺す」
「見てないぞ」
胸はな。
「姫は短気ネ、カルシウム足りテルカ!」
「足りてる………うっさいから黙ってて」
「それより聞くネ!ソウスケがネットで弾薬を買ったネ!」
有川の言葉を無視してカユゥは話を続けた。
「はぁ…………………だからなに?」
「姫は冷たいネ!」
「あ?」
おい、カユゥ。
有川を挑発するなよ。
どんどん機嫌悪くなってるだろ。
「これだからギャルはダメネ」
「ギャルじゃないし……………」
「ヤレヤレネ!」
「このっ……………弾薬ぐらい望海ちゃんにお願いしたら? そこの貧乏人よりお金沢山持ってるでしょ」
「おっ!ツンデレネ!」
「カユゥ!」
「怖い怖いネ」
「ちっ…………」
有川はもう知らんみたいな顔をし携帯を眺めている。
後が怖いんだぞカユゥ。
[放課後]
気がついたらあっという間に放課後になっていた。
「ふぁ~眠い」
訓練が終わった俺は帰る支度をし外に出た。
「ソウスケ!待つネ!工房によってくネ!」
「すまない、カユゥ。あと今度な」
「チョ!ソウスケ!」
俺は逃げるように走って行った。
説教されるのは御免だからな。
「せめてメンテだけでも!…………………逃げ足速いんだから。本当に大丈夫なのかしら?」
「はぁっはぁっ………さて迷子の猫探しだな」
今日の俺の任務は迷子の猫探しだ。
Eランクの任務はこういうのが多い。
でも俺はそれが良いと思っている。
落ちこぼれでも役にたてるし尚且つランクが高い武偵だとまず受けない。
なぜなら、報酬が少ないしランクが高い武偵はそれなりの報酬がかかる。
現に俺も望海の報酬で生活がなりたっている。
俺なんてせいぜい弾薬代を稼げるぐらいだし。
「サファリアちゃん~どこにいるんだ〜」
30代主婦からの依頼でオスのシャム猫のサファリアちゃん。
部屋の掃除中に窓から脱走したらしい。
居なくなって半月捜索も打ち切りになってしまった。
なので武偵に依頼を出した。
大切な家族何だ、絶対に見つけてみせる。
俺は今河川敷の下に居る。
そこで似たような猫の目撃情報があったからだ。
「……………見つけた」
間違いない写真と全く一緒だ。それに首輪も同じだ。
少し汚れてはいるが間違いないな。
「ふぅ………………怖くないぞ………ほらおいで」
「にゃーん」
少しすり傷があるが元気そうだ。
それにしても人懐っこい猫ちゃんだ。
多分だがほんの少しの冒険のつもりだったんだろう。
「君のママが心配してたぞ。お家に帰ろうな」
「にやぁ!」
「ははっ良い返事だ」
「本当にありがとうございました!」
「いえいえ無事に届けられて良かったです」
「せめてお茶とかでもっ!」
「報酬もいただきましたし大丈夫です」
「でもっ!」
「また何かあったら依頼を出してくれれば大丈夫ですから」
「本当にありがとうございます!ほら、サファリアもお兄さんにお礼言って!」
「にやゃぁ♪」
「それでは奥様、戸締りはきちんと確認してくださいね」
「はい!いつでも遊びにいらして下さいね!」
「えぇいつか必ず」
とても30代には見えない奥様だったな。
依頼主の頼みだからお茶でもしたかったがあいにく今日の俺は予定がある。
「さてと望海のケーキ買って帰るか」
いつものケーキ屋が閉まるまであと、一時間か。
「少し急ぐとするか」
買って来れなかったら望海は拗ねるだろうしな。
[商店街]
「はぁ……はぁ……はぁ……残り10分って事か…………ん?」
何やら周りが騒がしいぞ。
あれは銀行からか
「これ以上来るな!コイツがどうなっても良いのか!!!」
「ひっ……お巡りさん……助けて……」
「どうします?これ以上近くとあの犯人本当に人質刺しますよ?」
「くっ…………総員!一旦下がれ!」
包囲していた警察達が下る。
どうやら銀行の入口で事件は起きてるみたいだ。
まずいな犯人は酷く昂奮状態だ。
放っては置く訳には行かないよな。
「武偵です!」
俺は近くに居た警察に武偵手帳を見せた。
「Eランク?要請したのはAランクのはず」
「そんな事言ってる場合ではないだろ。それに武偵には変わりはない」
「はぁ?お前な歳上に向かって」
武偵を敵視してるのか?
いや今はそんな事よりも
「やめろみっともない」
上官らしき人物が言う。
「しっ失礼至しました!“矢島”警部!」
「俺に言わずそこの武偵に言え!……ったく……下がれ」
「すまんな坊主」
「いえ、俺は別に。それで状況はどうなってます?」
「不甲斐ないが小一時間程緊迫状態だ。犯人は突然男に刃物を突き付けこうなったらしい。上層部の奴、何をしぶってるのか、発砲許可がおりず威嚇射撃すらできない」
「なるほど…………威嚇射撃か…………」
「できそうか坊主?」
「えぇ……ただ……まぁ……俺の獲物は……コイツなので本当に威嚇射撃しかできそうにないですけど」
そう言い俺は腰にぶら下げて居る“デザートイーグル”を見せる。
「そんなもん良く使ってるな」
「まぁそうですよね。近くの看板に射撃しますので皆さんに伝えて下さい」
「あぁ!」
警部は無線で状況を伝える。
「警部、何があっても僕に構わずに!あんまり使い慣れないんで!」
「あぁ!任せておけ!」
「発砲します………」
<<ドカァァァァン!>>
デザートイーグルの号砲が鳴り響く。
「なっなんだ!?」
その音に犯人は驚いて手に握っていたナイフを落す。
「総員!突撃!!!!!!」
警部を叫んだ。
警察が一気に犯人を取り押さえる。
「ぐっ!?……………くぅ!…………………」
デザートイーグルを発砲した後、肩に強烈な痛みが走った。
肩を抑え蹲る。
何だこの痛みは!?
「おい!坊主!?」
「ぐぅっ……つぁっ……!……」
肩が変な方向に曲がってる感じか。
反動で肩が外れたのか?
「坊主!しっかりしろ!おい!救急車呼べ!坊主!坊主!」
猛烈な痛みに意識が段々と薄れていく。
かっこ悪いな俺……そんなんだからEランクなんだよな。
「Aランク武偵2名到着しました!あれ?双ちゃん!?」
「…………の……ぞ……みっ……」
薄らだが望海が見えた。
「肩が変に外れてる!姫ちゃん!双ちゃんを抑えてて!」
「ちっ……はぁっ……板倉!」
「いくよっ!せい!」
鈍い音と同時に痛みが走った。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「暴れるな!板倉!」
柔らかい感触があるように思えるがそんな事を感じてる余裕すらない。
「双ちゃん!しっかり!」
「………くっ……………」
「板倉…………………駄目、気絶した」
「双ちゃん……………ごほんっ…一体何があったんですか?警部?」
「あっあぁ坊主に威嚇射撃をしてもらったんだが撃った直後こうなったんだ」
「威嚇射撃………まさか……この馬鹿……………」
「え?何か知ってるの?姫ちゃん?」
「………この馬鹿はきちんとした弾薬を使わずにネットで購入した物を使った…………」
「えーと何がいけないの?」
「つまり……板倉は不良品を使って怪我した。カユゥの忠告も聞かず使用して怪我した。自業自得」
「え!?本当!?もう!双ちゃんの馬鹿!」
「マジかよ坊主…………そりゃないぜ」
「…………うっ……ここは?……………病院?」
「そうです!病院です!」
「望海?それに有川と警部もどうして?」
「どうしてもこうもありません」
「何をそんなに怒ってるんだ?望海?」
「怒ってません!双ちゃんの馬鹿!」
「……………………くたばれ変態」
「坊主、協力してくれたのは助かったが厄介事増やすなよ」
何故怒られているんだ?
それなに有川、変態は関係ないだろう?
「双ちゃん!ネットで弾薬買ってカユちゃんの忠告を聞かないでで銃を使ったって聞きました!」
「そうだが何故望海が知って………」
有川!?望海にチクったな。
「………………………」
文句あんの?って表情をしている有川。
文句というか望海に言わなくてもな。
「くたばれ…………変態」
そう言い残し有川は病室を出た。
捨て台詞と共に
「坊主、あんな………不良品を使って暴発気味に発砲して自分で怪我したんだよ」
「マジですか…………」
「あぁマジだ。……ったく後は嬢ちゃんに任せる。はぁ~始末書かかねぇと」
警部も病室を出た。
「そのなんだ………望海?」
「はい!なんですか!」
かなり怒ってるな。
どうしたものか
「あっすまんケーキ買ってない」
「馬鹿!!!!!!!!!!」
望海の怒鳴り声が病室に響いた。
「その……病院だから叫ぶなって………」
俺は弱々しく言った。
「もうっ…………心配したんだからっ……………………」
望海は涙を流しながら言った。
「すまん…………」
こんなつもりでは無かったんだがな。
どうにも上手く行かない。
「……………決めた!双ちゃんを強襲科に転科させます!」
「はぁ!?いやっそれは!」
さっきまで泣いてただろ!?
「文句は一切聞きません!双ちゃんを強襲で鍛えます!そして落ちこぼれなんて言わせません!」
「でもっのぞっ」
「おだまり!」
「いってぇ」
有無を言わさないデコピンをされた。
理不尽だ。
「返事は?」
「イッイエスマム!」
「ふざけてるの?」
「承知至しました!篠原お嬢様!」
「あってるけど違う!」
「……………わかったよ望海」
「よろしい!」
「…………………くそ俺の平和が」
「何か言った?」
「いや何も!」
今日1日で大変な事になってしまったな。
強襲科か……望海や有川が所属している科。
主に武力を鍛える科だ。
俺には合わない科なんだかな。
覚悟するしかないのか……
続く