学園都市(キヴォトス)でも暴走は俺の物   作:アルトターボ

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プロローグ−② 斬込隊長は承らない

マッドレックスが目を覚ます少し前…

「何故こんな事に…」

溜息交じりにそう呟いたのは、青みがかった黒色の長髪に尖った耳、眼鏡と白色の制服を身に着けた大人びた印象の少女─キヴォトス連邦生徒会首席行政官・七神(ななかみ)リンである。焦りからか、彼女の歩みは早まり、その額からは汗が滲み出していた。

(会長……何処に行ってしまわれたんですか…)

弱音を吐きそうになったが、すぐに思い直した。

「いいえ、大丈夫です。"先生"なら···生徒会長が認めた方なら、きっとこの状況を何とかしてくれる筈…」

祈るような気持ちでそう独りごち、深呼吸をした。

何もしなければ、状況は悪化する一方だ。今はもう"先生"に賭けるしかない。その想いを胸に、ドアノブに手を掛けた。

「失礼します、先生。」

そう言いながらドアを開け、彼女の目に入ったのは…

 

臙脂色のライダースジャケット。

 

肩から伸びたドリル。

 

腰に巻かれた、まだらに色が塗られたナンバープレート。

 

背中に背負われた、穂先がドリル状になっている大槍。

 

左の太腿から顔を出す、犬のような生き物(?)。

 

そして何より、車のエンジンを思わせる、青紫色の頭部。

 

予想の斜め上を行くその容姿に、彼女は困惑を隠せなかった。

 

「あァン!?誰だテメェ!?」

喧嘩腰で返された事で、彼女の困惑は更に深まった。

(これが、先生…?いえ、慌てては駄目。落ち着いて、まずは挨拶を…)

「は、初めまして…。私は、このキヴォトスの行政機関である連邦生徒会の首席行政官・七神リンと申します。あの…マッドレックス…さん?で間違い無いでしょうか…?」

リンは気圧されながらも、タブレットに記載された情報を基に確認するように目の前の"先生(?)"にそう質問した。

「何で俺の名前を知ってンだ?まぁ良い、それより、お前…リンと言ったか…此処は一体何てェ惑星(ほし)だ?」

「(星…?)その、先程も申し上げた通り、此処は複数の学園が集まる学園都市「キヴォトス」ですけど…」

「ガクエントシ…キヴォトス…聞いた事ねぇなァ。で?俺に何の用だ?」

「(柄悪いなこの人…)はい。貴方には、連邦生徒会長の設立した特務機関・連邦捜査部"S.H.A.R.E(シャーレ)"の顧問─所謂"先生"として活動して頂きたいのです。」

「ハァ?何で俺がそんな事しなきゃなんねぇんだ?」

「その…連邦生徒会長─私の上司に当たる方が、貴方を顧問として推薦されまして…」

「じゃあソイツを連れて来い。テメェよりソイツと話した方が手っ取り早そうだからよォ。」 

「それはご尤もなのですが…連邦生徒会長は、現在失踪しておりまして…」

「ハァ?巫山戯(フザケ)てんのか!?じゃあ何か?俺はそのカイチョーとやらの尻拭いの為に呼ばれたってのか?冗談じゃ無ぇよ!!」

「……そこを何とかお願いします…他に頼める人もいないんです…(涙目)」

勝手に責任を押し付けられた事に怒りを顕にするマッドレックスとは対照的に、リンは既に心が折れそうになっていた。

「(···仕方ないか…)分かりました。引き止めるのも悪いので、今回の件は無かった事にします。ただ、その場合、貴方にどうしてもして貰わなくてはならない事が有りまして…その一件だけ、お力をお貸しして欲しいのですが…」

「……分かったよ。但し、俺が力を貸すのは1回だけだからな。」

「…ありがとうございます。では、先生をシャーレの部室にまでご案内します。詳しい話はそちらで…」

そう言って部屋を出たリンの後を、不承不承といった様子でマッドレックスも着いて行った。

エレベーターに乗っている最中、ガラス張りの窓からかなりの大都会の様子が見えた。

「ほぅ、中々大した街じゃねぇか。」

マッドレックスは、感心と皮肉が混じったような口調でそう呟いた。

「お褒め頂きありがとうございます。こちらはD.U.と言いまして、このキヴォトスの中心都市なのです。」

リンもD.Uを褒められて悪い気はしなかったのか、さっきまでより少しは持ち直したようであった。そんな時、

「パラリラパラリラ!パラリラパラリラ!」

再び、ハシリ犬が大声で鳴き出した。

「おっ、どうしたどうした〜?腹が減ったか〜?それとも散歩か〜?」

マッドレックスは、先程までとは打って変わって猫撫で声で左腿のハシリ犬に話しかけた。

「えっと…その子?は、一体何なんですか?」

リンはおずおずとそう尋ねた。マッドレックスの変わり様にも驚いたし、初対面の頃から気になっていたからだ。

「あぁ、コイツは"ハシリ犬"だ。俺に取っちゃあ一番の相棒って所かな。」

「そう、なんですか…。」

「しかし、今日は随分よく吠えるな。普段はもう少し大人しいんだが…」

そんなやり取りをしていると、エレベーターが止まった。

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