「へぇ、こりゃあ大したもんだ。」
「感心してる場合ですか!」
先程まで彼らのいた連邦生徒会のオフィスから一歩外に出ると、そこはまさに"戦場"であった。─ヘルメットを被った少女やマスクを着けた少女たちが、銃を持って暴れ回っている。一方、獣人や機械の体を持つ人々は逃げ惑っている。
そんな動乱の中、マッドレックスはある事に気づいた。
「そういや、アイツらやお前らの頭上にあるのは、ありゃぁ一体なんなんだ?」
『あぁ、"ヘイロー"の事ですか?そういえば、まだ説明していませんでしたね。』
リンは、ヘイローについて説明した。
ヘイローとは、キヴォトスの生徒たちの頭上に浮かぶ謎の輪である。
ヘイローを持たない者にとって銃弾は致命傷をも与えかねないが、持つ者にとっては並の銃弾は脅威足り得ない。
しかし、もし万が一ヘイローが破壊されればその生徒の生命には危機が生じる。
「へぇ…そりゃ面白ぇ。」
「痛っ!!アイツら違法JHP弾使ってるじゃない!?」
「ユウカ、ホローポイント弾は違法指定されてない筈ですが…」
「ミレニアムではもうすぐ違法になるの!コレ身体に傷跡残るから嫌なのに…!」
実際、ユウカは腹部を撃たれても痛がりこそすれ、殆ど意に介さず銃撃戦を続けていた。しかし、数の多さ故か、4人は不良生徒達に対して防戦一方であった。
「てか、さっきから思ってたけど……あいつらなんか纏まりがよくない!?ただのチンピラがあそこまで連携取れるはずないのに!」
「何にせよ、マッドレックスさんはキヴォトスの外から来た方です。危険ですから後方に下がって…?」
黒髪の少女─ハスミがそう言って彼の方を見ると、彼はその場に立ち尽くしていた。
「何やってるんですか!すぐに下がってください!」
白髪の少女─スズミがそう叫んだが、彼は一歩も動かず、その体は小刻みに震えていた。
─戦闘の激しさに狼狽えたか、はたまた恐怖で足が竦んだか…─
誰もがそう思っていたが……事実は違っていた。
「フフフフフ…アァーッハッハッハ!!!!!!」
ドドドドドドドド!!!
彼は…笑っていた。しかも、そのエンジンの様な頭を震わせ、重低音を響かせながら。
「良いぜ良いぜぇ!!良い所じゃねぇか!キヴォトスってのはよぉ!」
そう言いながら、彼は一歩ずつ前に進み始める。
「おい、リン!気が変わったぜ!!なってやろうじゃねぇか、"先生"とやらに!」
『……本当ですか!?…ンンッ…ありがとうございます。いずれにせよ、急いでシャーレの部室に向かわなくては…。』
リンは一瞬目を輝かせたが、すぐに落ち着いた表情に戻りながらそう言った。しかし、その声色からは先程までの様な怒りや苛立ちは消え、安堵した様子であった。